22 / 82
22
しおりを挟む特訓しようと誘ったのはリーシャだが、実際、魔法の使えないリーシャは、ただ、サクヤが魔法の練習をするのを見ていただけで、何もしていない。
でも、サクヤは甲斐甲斐しく、リーシャに野菜スープの作り方を教えてくれた。
「逆に、サクヤの魔法の訓練の邪魔をしてしまい……」
途中から薄々気付いてはいたが、自分は何の役にも立っていない。
「仲良ーしてくれたやんか」
「サクヤはとても可愛くて、良い子です。仲良くしない理由が有りません」
これは出会った時から、初めの直感から、かわらずに思い続けている。
「リーシャはんは、魔法、怖くないんか?」
初対面で、サクヤはリーシャを魔法で傷付けたと言った。
普通なら、怖がりそうなものだが、イマルから見ても、リーシャは全く気にしていない様子だった。
「魔法なら見慣れてますから」
魔法使いは王都カナンでも珍しいが、聖女として存在していたリーシャの傍には魔法使いもいた。
世界を救う旅の中で、魔法使いが魔法をぶっぱなしている所も、数多く見てきたので、怖いと思う感情は無い。
「見慣れてるって……そーいや、冒険しとったとか言っとったけど……ほんまやねんな……」
辺境の村であるヘーゼルには、冒険者も滅多に来ない。
その中でも、珍しい魔法使いや僧侶は、1度も来た話を聞かない程、ここでは特に珍しい。
そんな村に、突如、魔法使いの素質を持つ者が誕生したのだ。
驚くのも無理は無い。
「イマルも、サクヤを怖がっていません」
「俺?」
私の事を言うなら、イマルの方が、魔法を見慣れていないし、怖がっても仕方無いはずなのに、一切、怖がっているようには見えなかった。
寧ろ、サクヤの事を心配し、気にかけているように見えた。
「そらー、サクヤは良い奴やもん。怖あらへん」
「なら、私と一緒ですね」
「!…ほんまやな」
同じ答えを言うイマルに、リーシャは笑った。
「送って頂いて、ありがとうございました」
「えーよ。ほな、また明日な」
リーシャを家まで送り届けると、イマルはそのまま、背を向けて歩き出した。
その姿が見えなくなるまで、見送る。
「……好き……です」
サクヤを気にかけ、ちょくちょく様子を見に行っていた、優しいその姿を知る度に、好きになる。
でも、本人に伝える事は出来ないので、リーシャは姿が見えなくなってから、小さな声で、呟いた。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
76
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる