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 特訓しようと誘ったのはリーシャだが、実際、魔法の使えないリーシャは、ただ、サクヤが魔法の練習をするのを見ていただけで、何もしていない。
 でも、サクヤは甲斐甲斐しく、リーシャに野菜スープの作り方を教えてくれた。

「逆に、サクヤの魔法の訓練の邪魔をしてしまい……」
 途中から薄々気付いてはいたが、自分は何の役にも立っていない。

「仲良ーしてくれたやんか」
「サクヤはとても可愛くて、良い子です。仲良くしない理由が有りません」
 これは出会った時から、初めの直感から、かわらずに思い続けている。

「リーシャはんは、魔法、怖くないんか?」
 初対面で、サクヤはリーシャを魔法で傷付けたと言った。
 普通なら、怖がりそうなものだが、イマルから見ても、リーシャは全く気にしていない様子だった。

「魔法なら見慣れてますから」

 魔法使いは王都カナンでも珍しいが、聖女として存在していたリーシャの傍には魔法使いもいた。
 世界を救う旅の中で、魔法使いが魔法をぶっぱなしている所も、数多く見てきたので、怖いと思う感情は無い。


「見慣れてるって……そーいや、冒険しとったとか言っとったけど……ほんまやねんな……」

 辺境の村であるヘーゼルには、冒険者も滅多に来ない。
 その中でも、珍しい魔法使いや僧侶は、1度も来た話を聞かない程、ここでは特に珍しい。
 そんな村に、突如、魔法使いの素質を持つ者が誕生したのだ。
 驚くのも無理は無い。

「イマルも、サクヤを怖がっていません」
「俺?」

 私の事を言うなら、イマルの方が、魔法を見慣れていないし、怖がっても仕方無いはずなのに、一切、怖がっているようには見えなかった。
 寧ろ、サクヤの事を心配し、気にかけているように見えた。

「そらー、サクヤは良い奴やもん。怖あらへん」
「なら、私と一緒ですね」
「!…ほんまやな」
 同じ答えを言うイマルに、リーシャは笑った。


「送って頂いて、ありがとうございました」
「えーよ。ほな、また明日な」
 リーシャを家まで送り届けると、イマルはそのまま、背を向けて歩き出した。
 その姿が見えなくなるまで、見送る。


「……好き……です」

 サクヤを気にかけ、ちょくちょく様子を見に行っていた、優しいその姿を知る度に、好きになる。
 でも、本人に伝える事は出来ないので、リーシャは姿が見えなくなってから、小さな声で、呟いた。


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