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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第116話
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リバーステラの世界地図を鏡写しにしたようなこの世界において、ジパングは極東ではなく極西の島国にあたり、「名もなき海」という名の海を挟んだ東の大陸の半島にはダンクンという国がある。ダンクンはリバーステラの朝鮮半島のように北と南に分かれることはなく、独裁国家でもない。
ジパングを嫌ってもいない。ジパングとダンクンは、同じアベルズに属する国であったし、ジパングの代々の女王は戦争を好まず、第二次魔導大戦の際にも戦火がジパング本土に及ぶ寸前までその立場を貫き通し、終結後もまた貫き通してきたからだ。
ダンクンの地続きにフギがある。フギは朱雀や青龍をはじめとする九聖獣の力を有する練丹術の大国だ。
練丹術は、エウロペの近隣諸国のひとつ、アストリアの錬金術と似ており、始女帝ジョカのために不老不死の霊薬を産み出した。そのため、ジョカは3000年近く国を治めている。
錬金術は魔法と同様にエーテルを触媒とし精霊の力を借りるのに対し、練丹術はエーテルではなく人体の丹田に精獣の力を集め、借りる。ジパングのシャーマンや陰陽師もまた丹田に龍脈の力を集め、借りる。
その北にあるンゲンは、リバーステラにかつてあった「元」のチンギス・ハンと同姓同名の者が国をおこし、現在に至っている。
リバーステラのチンギス・ハンは源義経であった。
それは、棗弘幸の手によってその証拠となる文献がすべて回収され判明していた。
だが、テラのジパングの歴史にアベノ・セーメーはいても源義経はいなかった。おそらくテラのチンギス・ハンは、源義経と同一の遺伝子情報を持っていたが、最初からチンギス・ハンとして存在したのだろう。
ローシアは、ンゲンのさらに北、世界一の国土を誇る国であり、ほぼ全土が寒冷気候に属する。
短き涼しき夏と長き寒き冬があり、一応は四季はあるが、春と秋は夏よりも期間が短い。今はその短い秋だったが、ジパングの冬よりもはるかに寒いという。
11月に入り冬になると、3月まで長き寒き時期が続き、特に内陸部は-50℃以下になるような場所もあるらしい。バナナが凍る寒さというやつだろう。
短き夏は明るい時間が長くて過ごしやすく、平均気温は15℃前後とジパングの初夏ぐらいの気候らしい。
真夜中になっても薄明になっているか、または太陽が沈んでも暗くならない「白夜の時」というものが6月~7月にかけてあり、反対に太陽が一日も昇らない「極夜の時」は12月~1月にかけて訪れる。
白夜の時を見損ねたムスブは、極夜の時までこの地にとどまるのも悪くないと考えていた。
雨野ムスブは、テラで生きることを選んだ。
エウロペやランス、ペインにいるテンス・テラの救厄の聖者たちだけでなく、ヘブリカやフギ、シルシタには本来ならばイレブンス・テラの救厄の聖者たちになるはずだったであろう勇者たちがいた。
リバーステラで幸せに暮らすナユタやピノアの力を借りなくとも、テラに生きる人々と共に、いずれ起きるだろう第三次魔導大戦やアカシックレコードとの戦いを未然に防ぐためだ。
そのためには、テラのことをよく知る必要があった。
世界中を旅する中で、エビス・サブローやアハシマ・カグツチと出会った。
17年前、イレブンス・テラで大厄災を起こすはずだった者は、当時のテラにはまだ存在しなかった。
ピノアたちが「我々」を壊滅させ、「匣」をすべて破壊していなければ、自分こそが「大厄災を起こす者」であったことをムスブは知った。
ムスブは、サブローやカグツチだけでなく、本来イレブンス・テラの救厄の聖者となるはずだった者たちとも親交を深めていた。
ヘブリカの「機戦」と呼ばれる機動召喚魔法使い部隊、その隊長ギルガメッシュ・ナイトや副隊長エンキドゥ・サイドキック。
アストリアには不老不死の錬金術師サン・ジェルマン。
フギには神通力に長け、自ら死籍を消すに至ったことから、天界からも危険視される存在となったスン・ウーコンという者。
ジパングには、比良坂ヨモツにコヨミという陰陽師の兄妹がいた。
そして、ローシアにも聖者はいた。
セマルグル・オーバーロードという青年で、ペルーン、ヴォーロス、ダジボーグ、モコシ、ストリボーグ、スヴァローグ、ホルスというそれぞれが異なる力を持つ七つの人格を持つ者だった。
ムスブは、戦争という概念を消すことによって、世界の理を変える力をすべて使い果たし失ってしまっていた。
だが聖者たちと共に、エーテルや龍脈の力を使い、リバーステラのインターネットのようなものをテラに産み出していた。
まだ回線が不安定ではあったが、錬金術師サン・ジェルマンが産み出した「賢者の石」を聖者たちがそれぞれ持ち、その賢者の石は世界中の情報が逐一更新されるデバイスだった。
たった数ヵ月間で彼は出来ることをすべてしてきた。
だが、あまりにも早く、そして予想外のことが起きすぎていた。
ローシアに転移してきた宇宙船は破壊できた。
だが、アカシック・インパクトや、アトランダムやレムレス、ギガラニカの出現は想定外過ぎた。
あれらは、おそらくリバーステラの伝説上の島や大陸であるアトランティスやレムリア、メガラニカにあたるものだろう。
数ヵ月前、ムスブはムー大陸がラ・ムー大陸として存在しているのを知った。
そこにあった帝国の存在自体は、月の審神者の三姉妹が消滅させ、アジトとしていたが、あのときにその可能性を考えておくべきだった。
結局、ナユタとピノアの力を借りなければいけない自分が不甲斐なかった。
ジパングを嫌ってもいない。ジパングとダンクンは、同じアベルズに属する国であったし、ジパングの代々の女王は戦争を好まず、第二次魔導大戦の際にも戦火がジパング本土に及ぶ寸前までその立場を貫き通し、終結後もまた貫き通してきたからだ。
ダンクンの地続きにフギがある。フギは朱雀や青龍をはじめとする九聖獣の力を有する練丹術の大国だ。
練丹術は、エウロペの近隣諸国のひとつ、アストリアの錬金術と似ており、始女帝ジョカのために不老不死の霊薬を産み出した。そのため、ジョカは3000年近く国を治めている。
錬金術は魔法と同様にエーテルを触媒とし精霊の力を借りるのに対し、練丹術はエーテルではなく人体の丹田に精獣の力を集め、借りる。ジパングのシャーマンや陰陽師もまた丹田に龍脈の力を集め、借りる。
その北にあるンゲンは、リバーステラにかつてあった「元」のチンギス・ハンと同姓同名の者が国をおこし、現在に至っている。
リバーステラのチンギス・ハンは源義経であった。
それは、棗弘幸の手によってその証拠となる文献がすべて回収され判明していた。
だが、テラのジパングの歴史にアベノ・セーメーはいても源義経はいなかった。おそらくテラのチンギス・ハンは、源義経と同一の遺伝子情報を持っていたが、最初からチンギス・ハンとして存在したのだろう。
ローシアは、ンゲンのさらに北、世界一の国土を誇る国であり、ほぼ全土が寒冷気候に属する。
短き涼しき夏と長き寒き冬があり、一応は四季はあるが、春と秋は夏よりも期間が短い。今はその短い秋だったが、ジパングの冬よりもはるかに寒いという。
11月に入り冬になると、3月まで長き寒き時期が続き、特に内陸部は-50℃以下になるような場所もあるらしい。バナナが凍る寒さというやつだろう。
短き夏は明るい時間が長くて過ごしやすく、平均気温は15℃前後とジパングの初夏ぐらいの気候らしい。
真夜中になっても薄明になっているか、または太陽が沈んでも暗くならない「白夜の時」というものが6月~7月にかけてあり、反対に太陽が一日も昇らない「極夜の時」は12月~1月にかけて訪れる。
白夜の時を見損ねたムスブは、極夜の時までこの地にとどまるのも悪くないと考えていた。
雨野ムスブは、テラで生きることを選んだ。
エウロペやランス、ペインにいるテンス・テラの救厄の聖者たちだけでなく、ヘブリカやフギ、シルシタには本来ならばイレブンス・テラの救厄の聖者たちになるはずだったであろう勇者たちがいた。
リバーステラで幸せに暮らすナユタやピノアの力を借りなくとも、テラに生きる人々と共に、いずれ起きるだろう第三次魔導大戦やアカシックレコードとの戦いを未然に防ぐためだ。
そのためには、テラのことをよく知る必要があった。
世界中を旅する中で、エビス・サブローやアハシマ・カグツチと出会った。
17年前、イレブンス・テラで大厄災を起こすはずだった者は、当時のテラにはまだ存在しなかった。
ピノアたちが「我々」を壊滅させ、「匣」をすべて破壊していなければ、自分こそが「大厄災を起こす者」であったことをムスブは知った。
ムスブは、サブローやカグツチだけでなく、本来イレブンス・テラの救厄の聖者となるはずだった者たちとも親交を深めていた。
ヘブリカの「機戦」と呼ばれる機動召喚魔法使い部隊、その隊長ギルガメッシュ・ナイトや副隊長エンキドゥ・サイドキック。
アストリアには不老不死の錬金術師サン・ジェルマン。
フギには神通力に長け、自ら死籍を消すに至ったことから、天界からも危険視される存在となったスン・ウーコンという者。
ジパングには、比良坂ヨモツにコヨミという陰陽師の兄妹がいた。
そして、ローシアにも聖者はいた。
セマルグル・オーバーロードという青年で、ペルーン、ヴォーロス、ダジボーグ、モコシ、ストリボーグ、スヴァローグ、ホルスというそれぞれが異なる力を持つ七つの人格を持つ者だった。
ムスブは、戦争という概念を消すことによって、世界の理を変える力をすべて使い果たし失ってしまっていた。
だが聖者たちと共に、エーテルや龍脈の力を使い、リバーステラのインターネットのようなものをテラに産み出していた。
まだ回線が不安定ではあったが、錬金術師サン・ジェルマンが産み出した「賢者の石」を聖者たちがそれぞれ持ち、その賢者の石は世界中の情報が逐一更新されるデバイスだった。
たった数ヵ月間で彼は出来ることをすべてしてきた。
だが、あまりにも早く、そして予想外のことが起きすぎていた。
ローシアに転移してきた宇宙船は破壊できた。
だが、アカシック・インパクトや、アトランダムやレムレス、ギガラニカの出現は想定外過ぎた。
あれらは、おそらくリバーステラの伝説上の島や大陸であるアトランティスやレムリア、メガラニカにあたるものだろう。
数ヵ月前、ムスブはムー大陸がラ・ムー大陸として存在しているのを知った。
そこにあった帝国の存在自体は、月の審神者の三姉妹が消滅させ、アジトとしていたが、あのときにその可能性を考えておくべきだった。
結局、ナユタとピノアの力を借りなければいけない自分が不甲斐なかった。
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