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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第117話
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アカシックレコードは、セーメーの式神である十二神将を式札に戻すだけでなく、その魂と力を奪った。
さらにその魂と力をデウスエクスマキナへと移し、支配し、九頭龍 天禍天詠を、友であるアベノ・セーメーを襲わせた。
もはや、アカシックレコードに特攻を仕掛けるしかない。
セーメーがそう覚悟を決めたとき、
「諦めるのはまだ早いよ、セーメー」
マイスイートハニーの声がした。
「17年もほったらかしにしててごめんね」
振り返るとピノアがいた。
すっかり忘れちゃってた、と彼女は笑い、
「でも、あんたがいてくれてよかった」
と言った。
この17年は決して無駄なものではなかった。
彼女の役に立てることが彼の喜びだった。
「悪いけど、『スーパーピノアちゃん・サンドリオン』であんたの大事な友達の存在自体を消すよ。
でもあとで必ず、ステラか千古に『エーテリオン』で必ずその存在を復活させてもらうから安心して」
ピノアがそう言い終える頃には、デウスエクスマキナと化した十二神将やその84000の眷族の夜叉たちの存在が消えていた。
しかし、すぐにピノアが消したはずのデウスエクスマキナの群れがアカシックレコードから射出された。
「まじで!? あいつ、エーテリオンまで使えるの!?」
セーメーはかつて、ピノアから聞いたことがあった。
エーテリオンは、ピノアの姉であるステラと、原初のテラに生まれたふたりの母親と同一人物である女性が、アカシックレコードで産み出した魔法であると。
アカシックレコードは、ありとあらゆる情報を記録している。
エーテリオンだけではなく、おそらくは大厄災の魔法も、ありとあらゆる魔法が使えるのだ。
ピノアは、新たなデウスエクスマキナの群れに大厄災の魔法を使い、すぐにその存在を消滅させた。
だが、アカシックレコードは瞬時に復活させてしまった。
彼女はそれを何度も繰り返したが結果は同じだった。
「セーメー! このままじゃ九頭龍がフギに墜ちちゃう!
今のうちに体勢を立て直して、太平洋に不時着させて!!」
セーメーは彼女の言葉に頷き、龍脈の力を丹田に集中させた。
だが、
「すまない、マイスイートハニー……
九頭龍の力を、私はもう扱うことができないようだ……」
彼は気づいてしまった。
九頭龍さえもアカシックレコードに奪われてしまっていたことに。
「嘘でしょ……」
もはやセーメーには、そしてピノアにすら、出来ることは何もないように思えた。
だが、ふたりの目には、超高速で飛行しデウスエクスマキナの群れを屠る何者かがこちらに向かっているのが見えた。
そして、ピノアは東からその何者かを、セーメーは北からその何者かが向かってきているのを見ていた。
その何者かはふたりいたのだ。
全身に翡翠色の強化外骨格をまとった何者かを見たピノアは、
「レンジ……? 違う……ナユタ?」
と、問うた。
ナユタはこくりと頷いた。
目の前に現れたふたりの何者かを見たセーメーもまた、
「ジパングの三種の神器と、まさか裏神器か……?」
驚きを隠せなかった。
それは、セーメーが知る限り誰も扱うことができないものだったからだ。
だが夢ではない。幻覚でもなかった。
現実だ。
「取り返すよ、ぼくが」
とナユタは言った。
「俺たちが、だろ? ナユタ」
そう言い、ナユタは「そうだね、兄さん」と嬉しそうに言った。
「兄さん……? ムスブなの……?」
ムスブもまたピノアの言葉に頷いた。
「取り返すって……?」
「九頭龍だよ」
「でも、そんなの、どうやって……」
「こうするんだ」
ふたりは、九頭龍に剣を突き刺し、
「天地開闢(てんちかいびゃく)」
「大禍津日(オオマガツヒ)」
小さく呟いた。
ナユタは九頭龍を取り戻し、そしてムスブはデウスエクスマキナの群れを消滅させた。
そして、アカシックレコードは九頭龍を再び奪うこともできなければ、デウスエクスマキナを復活させることも出来なかった。
ふたりが使ったのは、戯使の力であったからだ。
ナユタは、日本神話の冒頭、天地開闢においてはじめに出現した神々「別天津神(ことあまつかみ)」のうちの二柱、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)と、天之常立神(あめのとこたちのかみ)の力を。
そして、ムスブは大禍津日(オオマガツヒ)という、カグツチを産んだ際に死んでしまったイザナミ(=マグ・ダラ)を、黄泉の国から連れ戻すことに失敗したイザナギ(=アンフィス・バエナ・イポトリル)の禊(みそぎ)によって生まれた、アマテラス(=卑弥呼)ら三貴神とは対となる神の力を。
「大厄災の魔法と効果は似ているが、この力は大厄災とは似て非なる災厄、大禍津日(オオマガツヒ)のものだ。
大禍津日は、黄泉の穢れから生まれた日本神話の災厄の神であり、テラに実在した人物。
その力で消滅させた存在は、エーテリオンでは黄泉返らせることはできない」
「ぼくは、生まれたばかりの混沌とした世界に天界『高天原』を生み、神々を生んだ力を使って、九頭龍を取り戻してみた。
うまくいくかどうか不安だったけどね」
別天津神を構成するのは、
・天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
・高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
・神産巣日神(かみむすひのかみ)
・宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
・天之常立神(あめのとこたちのかみ)
の五柱だ。
このうち、アメノミナカ、タカミムスヒ、カミムスヒは造化三神と呼ばれ、その正体は古代のリバーステラに匣をもたらした地球外生命体であるアンサーであった。
だが、残りの二柱である、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)、天之常立神(あめのとこたちのかみ)はアンサーではなく、棗弘幸がすでに回収していた神話という名の偽史に貶められた実在する人物だった。
「アカシックレコードは、ぼくたちから力を奪うことはできない」
ナユタは、九頭龍を太平洋に不時着させようとした。
だが、そこには目に見えないだけでラ・ムー大陸が存在していた。
そして、ナユタらは知るよしもなかったが、ラ・ムー大陸にはすでに秋月リサが視認できない城を作り、大量破壊兵器による自動防衛システムを作っていた。
無数の大量破壊兵器が九頭龍に直撃しても、ナユタらには何が起きているのかわからなかった。
さらにその魂と力をデウスエクスマキナへと移し、支配し、九頭龍 天禍天詠を、友であるアベノ・セーメーを襲わせた。
もはや、アカシックレコードに特攻を仕掛けるしかない。
セーメーがそう覚悟を決めたとき、
「諦めるのはまだ早いよ、セーメー」
マイスイートハニーの声がした。
「17年もほったらかしにしててごめんね」
振り返るとピノアがいた。
すっかり忘れちゃってた、と彼女は笑い、
「でも、あんたがいてくれてよかった」
と言った。
この17年は決して無駄なものではなかった。
彼女の役に立てることが彼の喜びだった。
「悪いけど、『スーパーピノアちゃん・サンドリオン』であんたの大事な友達の存在自体を消すよ。
でもあとで必ず、ステラか千古に『エーテリオン』で必ずその存在を復活させてもらうから安心して」
ピノアがそう言い終える頃には、デウスエクスマキナと化した十二神将やその84000の眷族の夜叉たちの存在が消えていた。
しかし、すぐにピノアが消したはずのデウスエクスマキナの群れがアカシックレコードから射出された。
「まじで!? あいつ、エーテリオンまで使えるの!?」
セーメーはかつて、ピノアから聞いたことがあった。
エーテリオンは、ピノアの姉であるステラと、原初のテラに生まれたふたりの母親と同一人物である女性が、アカシックレコードで産み出した魔法であると。
アカシックレコードは、ありとあらゆる情報を記録している。
エーテリオンだけではなく、おそらくは大厄災の魔法も、ありとあらゆる魔法が使えるのだ。
ピノアは、新たなデウスエクスマキナの群れに大厄災の魔法を使い、すぐにその存在を消滅させた。
だが、アカシックレコードは瞬時に復活させてしまった。
彼女はそれを何度も繰り返したが結果は同じだった。
「セーメー! このままじゃ九頭龍がフギに墜ちちゃう!
今のうちに体勢を立て直して、太平洋に不時着させて!!」
セーメーは彼女の言葉に頷き、龍脈の力を丹田に集中させた。
だが、
「すまない、マイスイートハニー……
九頭龍の力を、私はもう扱うことができないようだ……」
彼は気づいてしまった。
九頭龍さえもアカシックレコードに奪われてしまっていたことに。
「嘘でしょ……」
もはやセーメーには、そしてピノアにすら、出来ることは何もないように思えた。
だが、ふたりの目には、超高速で飛行しデウスエクスマキナの群れを屠る何者かがこちらに向かっているのが見えた。
そして、ピノアは東からその何者かを、セーメーは北からその何者かが向かってきているのを見ていた。
その何者かはふたりいたのだ。
全身に翡翠色の強化外骨格をまとった何者かを見たピノアは、
「レンジ……? 違う……ナユタ?」
と、問うた。
ナユタはこくりと頷いた。
目の前に現れたふたりの何者かを見たセーメーもまた、
「ジパングの三種の神器と、まさか裏神器か……?」
驚きを隠せなかった。
それは、セーメーが知る限り誰も扱うことができないものだったからだ。
だが夢ではない。幻覚でもなかった。
現実だ。
「取り返すよ、ぼくが」
とナユタは言った。
「俺たちが、だろ? ナユタ」
そう言い、ナユタは「そうだね、兄さん」と嬉しそうに言った。
「兄さん……? ムスブなの……?」
ムスブもまたピノアの言葉に頷いた。
「取り返すって……?」
「九頭龍だよ」
「でも、そんなの、どうやって……」
「こうするんだ」
ふたりは、九頭龍に剣を突き刺し、
「天地開闢(てんちかいびゃく)」
「大禍津日(オオマガツヒ)」
小さく呟いた。
ナユタは九頭龍を取り戻し、そしてムスブはデウスエクスマキナの群れを消滅させた。
そして、アカシックレコードは九頭龍を再び奪うこともできなければ、デウスエクスマキナを復活させることも出来なかった。
ふたりが使ったのは、戯使の力であったからだ。
ナユタは、日本神話の冒頭、天地開闢においてはじめに出現した神々「別天津神(ことあまつかみ)」のうちの二柱、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)と、天之常立神(あめのとこたちのかみ)の力を。
そして、ムスブは大禍津日(オオマガツヒ)という、カグツチを産んだ際に死んでしまったイザナミ(=マグ・ダラ)を、黄泉の国から連れ戻すことに失敗したイザナギ(=アンフィス・バエナ・イポトリル)の禊(みそぎ)によって生まれた、アマテラス(=卑弥呼)ら三貴神とは対となる神の力を。
「大厄災の魔法と効果は似ているが、この力は大厄災とは似て非なる災厄、大禍津日(オオマガツヒ)のものだ。
大禍津日は、黄泉の穢れから生まれた日本神話の災厄の神であり、テラに実在した人物。
その力で消滅させた存在は、エーテリオンでは黄泉返らせることはできない」
「ぼくは、生まれたばかりの混沌とした世界に天界『高天原』を生み、神々を生んだ力を使って、九頭龍を取り戻してみた。
うまくいくかどうか不安だったけどね」
別天津神を構成するのは、
・天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)
・高御産巣日神(たかみむすひのかみ)
・神産巣日神(かみむすひのかみ)
・宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)
・天之常立神(あめのとこたちのかみ)
の五柱だ。
このうち、アメノミナカ、タカミムスヒ、カミムスヒは造化三神と呼ばれ、その正体は古代のリバーステラに匣をもたらした地球外生命体であるアンサーであった。
だが、残りの二柱である、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)、天之常立神(あめのとこたちのかみ)はアンサーではなく、棗弘幸がすでに回収していた神話という名の偽史に貶められた実在する人物だった。
「アカシックレコードは、ぼくたちから力を奪うことはできない」
ナユタは、九頭龍を太平洋に不時着させようとした。
だが、そこには目に見えないだけでラ・ムー大陸が存在していた。
そして、ナユタらは知るよしもなかったが、ラ・ムー大陸にはすでに秋月リサが視認できない城を作り、大量破壊兵器による自動防衛システムを作っていた。
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