もしも、えっちなことをしてる途中で異世界転移しちゃったら。【異世界転移奇譚 NAYUTA 1~】

雨野 美哉(あめの みかな)

文字の大きさ
上 下
105 / 123
【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。

第105話

しおりを挟む
棗の身体は爆散した。

だが、その身体の大半は機械仕掛けであり、液体金属で作られていた。

「まさか、魔人の血を使って、義手や義足を用意していたとはね……
君も秋月レンジの妹、秋月リサと同じ考えに、先にたどり着いていたというわけか……」

その液体金属は、生身の部分の肉片を回収しながら、体の復元を始めた。

そのような光景をピノアは過去に見たことがあった。
かつてテンス・テラにおいて、ダークマターに魅了されカオス細胞を手に入れ、リバーステラの王とテラの神となろうとした男、ブライ・アジ・ダハーカが、雨野ミカナが持っていた力によってその体を吹き飛ばされたときの再現のようだった。

「やはり君は、少なくとも一度は、108回目の輪廻転生を経験していたということだね」

アンフィスは、肉体の復元を終えた棗を見て言った。

「そして、108回目と109回目の主への裏切りに失敗した君は、輪廻の輪から解脱できず、その魂はイスカリオテのユダの肉体に還り、何度もやり直しているわけだね」

他の者たちには、アンフィスが何を言っているのか誰も理解できなかった。
そこにいたのは、テラに生まれた者たちばかりであり、リバーステラに生まれたのは戯使たちを除けばナユタだけだったからだ。

だが、リバーステラに生まれた神の子と一体化したアンフィスには、棗の魂に宿命づけられた108回の輪廻転生と109回の主への裏切りについてのからくりが理解できた。

定められた回数の輪廻転生は必ず行われる。
108回の輪廻転生の中で、棗が109回の主への裏切りを達成出来なかった場合、彼の魂はイスカリオテのユダの身体に戻り、一からやり直しになるのだ。

「すでに私の魂は擦りきれ、狂っている。
狂っていることに慣れてしまっているだけだとお伝えしたはずですよ。
何百回も、この2000年をやり直し続けてきたのですから」

棗は、ゲートを作り出した。

「麻衣の、八百比丘尼の血を舐めておいてよかったですよ。
前までの私は必ずここで死んでしまい、私が裏切るべき主さえもわからないままでしたからね」

彼は笑っていた。

「私の主は人とは限らない。
目から鱗とはこういうことを言うのですね。
道理で何度繰り返しても、裏切るべき相手を間違え続けてきたわけだ……
愛するあの国とあの世界を滅せば、私はようやくこの苦しみから解放される……」

だが、ゲートはアンフィスによって閉じられた。

「君が裏切るべき主を、なぜ私がわざわざ教えたと思う?」

「貴方は生まれてくるべきではなかったと考えているからでしょう?
そして、とうにリバーステラを見限っているからでしょう?」

「君は何もわかっていないようだね。
君に日本やリバーステラを滅ぼさせるわけにはいかないと言っただろう?
君が不老不死の体を手にしている以上、君はいつか必ず裏切るべき主にたどり着く。
だから、今、この場にいる者たちの力を借りるために、君ではなく、皆に教えるために告げたんだよ」


ピノアは、自らの髪の毛を引き抜き、再生医療魔法によってクローンを産み出していた。

「ピノアちゃん、まさか兄さんのときみたいに……」

ナユタには、ピノアが何をするつもりなのかわかってしまった。

「なんかよくわかんないけどさ、ゴールデン・バタフライ・エフェクトで、こいつの負の感情をどうにかしたりしたところで、こいつはまた一からやり直すだけなんでしょ。
それに、こいつはお父さんとは違う形で進化した、不老不死の存在。ナユタに近いかもね。
だから、封印する。
ムスブのときみたいに失敗はしない。間違えない。
わたしのクローンが持つエーテル細胞を結晶化させて、そいつを永遠に封印する」

クローン・ピノアはすでに結晶化しており、ピノアの姿でありながら、鉄の処女と呼ばれる処刑用装置「アイアン・メイデン」のような魔装具になっていた。

その前面が蓋のように開き、棗の肉体と魂と力は、蓋の内側にある結晶化したエーテルの無数の串によって、蓋が閉じられた瞬間に串刺しとなった。

「あんたが二度とループしないでいいように、余剰次元の彼方の時の牢獄に送ってあげる。
大厄災がなくなったこの世界にも、ナユタやタカミやミカナや真依たちが生きる世界にも、ループする奴も世界を滅ぼそうとしたり作り直そうとする奴もいらない」

ピノアが時と次元のゲートを作り出そうとすると、アンフィスがそれを制した。

「ピノア、それは私の仕事だよ。
彼の魂に、そのような宿命を与えたのは私だからね。
私は、リバーステラに生まれるべきではなかった。そんな風に後悔していた私が、私を生んだあの世界を呪い、彼が最後にあの世界を滅ぼさせるようにしたのだから」

ステラはもう大丈夫、君は二度とナユタくんを悲しませるような真似をしちゃいけない、アンフィスはそう言うと、

「たとえ中に入っているのが棗という男であったとしても、私は愛する君の姿をした結晶化したエーテルと共にありたい」

アンフィスは、結晶化したクローン・ピノアを愛おしそうに抱きかかえた。

「アンフィス……? わたし、あんたにそんなことをさせるために、ここに来てもらったんじゃないよ……?」

ピノアの言葉にアンフィスは首を横に振った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

何でリアルな中世ヨーロッパを舞台にしないかですって? そんなのトイレ事情に決まってるでしょーが!!

京衛武百十
ファンタジー
異世界で何で魔法がやたら発展してるのか、よく分かったわよ。 戦争の為?。違う違う、トイレよトイレ!。魔法があるから、地球の中世ヨーロッパみたいなトイレ事情にならずに済んだらしいのよ。 で、偶然現地で見付けた微生物とそれを操る魔法によって、私、宿角花梨(すくすみかりん)は、立身出世を計ることになったのだった。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

スキルテスター!本来大当たりなはずの数々のスキルがハズレ扱いされるのは大体コイツのせいである

騎士ランチ
ファンタジー
鑑定やアイテム増資といったスキルがハズレ扱いされるのは何故だろうか?その理由はまだ人類がスキルを持たなかった時代まで遡る。人類にスキルを与える事にした神は、実際にスキルを与える前に極少数の人間にスキルを一時的に貸し付け、その効果を調査する事にした。そして、神によって選ばれた男の中にテスターという冒険者がいた。魔王退治を目指していた彼は、他の誰よりもスキルを必要とし、効果の調査に協力的だった。だが、テスターはアホだった。そして、彼を担当し魔王退治に同行していた天使ヒースもアホだった。これは、声のでかいアホ二人の偏った調査結果によって、有用スキルがハズレと呼ばれていくまでの物語である。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

処理中です...