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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第105話
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棗の身体は爆散した。
だが、その身体の大半は機械仕掛けであり、液体金属で作られていた。
「まさか、魔人の血を使って、義手や義足を用意していたとはね……
君も秋月レンジの妹、秋月リサと同じ考えに、先にたどり着いていたというわけか……」
その液体金属は、生身の部分の肉片を回収しながら、体の復元を始めた。
そのような光景をピノアは過去に見たことがあった。
かつてテンス・テラにおいて、ダークマターに魅了されカオス細胞を手に入れ、リバーステラの王とテラの神となろうとした男、ブライ・アジ・ダハーカが、雨野ミカナが持っていた力によってその体を吹き飛ばされたときの再現のようだった。
「やはり君は、少なくとも一度は、108回目の輪廻転生を経験していたということだね」
アンフィスは、肉体の復元を終えた棗を見て言った。
「そして、108回目と109回目の主への裏切りに失敗した君は、輪廻の輪から解脱できず、その魂はイスカリオテのユダの肉体に還り、何度もやり直しているわけだね」
他の者たちには、アンフィスが何を言っているのか誰も理解できなかった。
そこにいたのは、テラに生まれた者たちばかりであり、リバーステラに生まれたのは戯使たちを除けばナユタだけだったからだ。
だが、リバーステラに生まれた神の子と一体化したアンフィスには、棗の魂に宿命づけられた108回の輪廻転生と109回の主への裏切りについてのからくりが理解できた。
定められた回数の輪廻転生は必ず行われる。
108回の輪廻転生の中で、棗が109回の主への裏切りを達成出来なかった場合、彼の魂はイスカリオテのユダの身体に戻り、一からやり直しになるのだ。
「すでに私の魂は擦りきれ、狂っている。
狂っていることに慣れてしまっているだけだとお伝えしたはずですよ。
何百回も、この2000年をやり直し続けてきたのですから」
棗は、ゲートを作り出した。
「麻衣の、八百比丘尼の血を舐めておいてよかったですよ。
前までの私は必ずここで死んでしまい、私が裏切るべき主さえもわからないままでしたからね」
彼は笑っていた。
「私の主は人とは限らない。
目から鱗とはこういうことを言うのですね。
道理で何度繰り返しても、裏切るべき相手を間違え続けてきたわけだ……
愛するあの国とあの世界を滅せば、私はようやくこの苦しみから解放される……」
だが、ゲートはアンフィスによって閉じられた。
「君が裏切るべき主を、なぜ私がわざわざ教えたと思う?」
「貴方は生まれてくるべきではなかったと考えているからでしょう?
そして、とうにリバーステラを見限っているからでしょう?」
「君は何もわかっていないようだね。
君に日本やリバーステラを滅ぼさせるわけにはいかないと言っただろう?
君が不老不死の体を手にしている以上、君はいつか必ず裏切るべき主にたどり着く。
だから、今、この場にいる者たちの力を借りるために、君ではなく、皆に教えるために告げたんだよ」
ピノアは、自らの髪の毛を引き抜き、再生医療魔法によってクローンを産み出していた。
「ピノアちゃん、まさか兄さんのときみたいに……」
ナユタには、ピノアが何をするつもりなのかわかってしまった。
「なんかよくわかんないけどさ、ゴールデン・バタフライ・エフェクトで、こいつの負の感情をどうにかしたりしたところで、こいつはまた一からやり直すだけなんでしょ。
それに、こいつはお父さんとは違う形で進化した、不老不死の存在。ナユタに近いかもね。
だから、封印する。
ムスブのときみたいに失敗はしない。間違えない。
わたしのクローンが持つエーテル細胞を結晶化させて、そいつを永遠に封印する」
クローン・ピノアはすでに結晶化しており、ピノアの姿でありながら、鉄の処女と呼ばれる処刑用装置「アイアン・メイデン」のような魔装具になっていた。
その前面が蓋のように開き、棗の肉体と魂と力は、蓋の内側にある結晶化したエーテルの無数の串によって、蓋が閉じられた瞬間に串刺しとなった。
「あんたが二度とループしないでいいように、余剰次元の彼方の時の牢獄に送ってあげる。
大厄災がなくなったこの世界にも、ナユタやタカミやミカナや真依たちが生きる世界にも、ループする奴も世界を滅ぼそうとしたり作り直そうとする奴もいらない」
ピノアが時と次元のゲートを作り出そうとすると、アンフィスがそれを制した。
「ピノア、それは私の仕事だよ。
彼の魂に、そのような宿命を与えたのは私だからね。
私は、リバーステラに生まれるべきではなかった。そんな風に後悔していた私が、私を生んだあの世界を呪い、彼が最後にあの世界を滅ぼさせるようにしたのだから」
ステラはもう大丈夫、君は二度とナユタくんを悲しませるような真似をしちゃいけない、アンフィスはそう言うと、
「たとえ中に入っているのが棗という男であったとしても、私は愛する君の姿をした結晶化したエーテルと共にありたい」
アンフィスは、結晶化したクローン・ピノアを愛おしそうに抱きかかえた。
「アンフィス……? わたし、あんたにそんなことをさせるために、ここに来てもらったんじゃないよ……?」
ピノアの言葉にアンフィスは首を横に振った。
だが、その身体の大半は機械仕掛けであり、液体金属で作られていた。
「まさか、魔人の血を使って、義手や義足を用意していたとはね……
君も秋月レンジの妹、秋月リサと同じ考えに、先にたどり着いていたというわけか……」
その液体金属は、生身の部分の肉片を回収しながら、体の復元を始めた。
そのような光景をピノアは過去に見たことがあった。
かつてテンス・テラにおいて、ダークマターに魅了されカオス細胞を手に入れ、リバーステラの王とテラの神となろうとした男、ブライ・アジ・ダハーカが、雨野ミカナが持っていた力によってその体を吹き飛ばされたときの再現のようだった。
「やはり君は、少なくとも一度は、108回目の輪廻転生を経験していたということだね」
アンフィスは、肉体の復元を終えた棗を見て言った。
「そして、108回目と109回目の主への裏切りに失敗した君は、輪廻の輪から解脱できず、その魂はイスカリオテのユダの肉体に還り、何度もやり直しているわけだね」
他の者たちには、アンフィスが何を言っているのか誰も理解できなかった。
そこにいたのは、テラに生まれた者たちばかりであり、リバーステラに生まれたのは戯使たちを除けばナユタだけだったからだ。
だが、リバーステラに生まれた神の子と一体化したアンフィスには、棗の魂に宿命づけられた108回の輪廻転生と109回の主への裏切りについてのからくりが理解できた。
定められた回数の輪廻転生は必ず行われる。
108回の輪廻転生の中で、棗が109回の主への裏切りを達成出来なかった場合、彼の魂はイスカリオテのユダの身体に戻り、一からやり直しになるのだ。
「すでに私の魂は擦りきれ、狂っている。
狂っていることに慣れてしまっているだけだとお伝えしたはずですよ。
何百回も、この2000年をやり直し続けてきたのですから」
棗は、ゲートを作り出した。
「麻衣の、八百比丘尼の血を舐めておいてよかったですよ。
前までの私は必ずここで死んでしまい、私が裏切るべき主さえもわからないままでしたからね」
彼は笑っていた。
「私の主は人とは限らない。
目から鱗とはこういうことを言うのですね。
道理で何度繰り返しても、裏切るべき相手を間違え続けてきたわけだ……
愛するあの国とあの世界を滅せば、私はようやくこの苦しみから解放される……」
だが、ゲートはアンフィスによって閉じられた。
「君が裏切るべき主を、なぜ私がわざわざ教えたと思う?」
「貴方は生まれてくるべきではなかったと考えているからでしょう?
そして、とうにリバーステラを見限っているからでしょう?」
「君は何もわかっていないようだね。
君に日本やリバーステラを滅ぼさせるわけにはいかないと言っただろう?
君が不老不死の体を手にしている以上、君はいつか必ず裏切るべき主にたどり着く。
だから、今、この場にいる者たちの力を借りるために、君ではなく、皆に教えるために告げたんだよ」
ピノアは、自らの髪の毛を引き抜き、再生医療魔法によってクローンを産み出していた。
「ピノアちゃん、まさか兄さんのときみたいに……」
ナユタには、ピノアが何をするつもりなのかわかってしまった。
「なんかよくわかんないけどさ、ゴールデン・バタフライ・エフェクトで、こいつの負の感情をどうにかしたりしたところで、こいつはまた一からやり直すだけなんでしょ。
それに、こいつはお父さんとは違う形で進化した、不老不死の存在。ナユタに近いかもね。
だから、封印する。
ムスブのときみたいに失敗はしない。間違えない。
わたしのクローンが持つエーテル細胞を結晶化させて、そいつを永遠に封印する」
クローン・ピノアはすでに結晶化しており、ピノアの姿でありながら、鉄の処女と呼ばれる処刑用装置「アイアン・メイデン」のような魔装具になっていた。
その前面が蓋のように開き、棗の肉体と魂と力は、蓋の内側にある結晶化したエーテルの無数の串によって、蓋が閉じられた瞬間に串刺しとなった。
「あんたが二度とループしないでいいように、余剰次元の彼方の時の牢獄に送ってあげる。
大厄災がなくなったこの世界にも、ナユタやタカミやミカナや真依たちが生きる世界にも、ループする奴も世界を滅ぼそうとしたり作り直そうとする奴もいらない」
ピノアが時と次元のゲートを作り出そうとすると、アンフィスがそれを制した。
「ピノア、それは私の仕事だよ。
彼の魂に、そのような宿命を与えたのは私だからね。
私は、リバーステラに生まれるべきではなかった。そんな風に後悔していた私が、私を生んだあの世界を呪い、彼が最後にあの世界を滅ぼさせるようにしたのだから」
ステラはもう大丈夫、君は二度とナユタくんを悲しませるような真似をしちゃいけない、アンフィスはそう言うと、
「たとえ中に入っているのが棗という男であったとしても、私は愛する君の姿をした結晶化したエーテルと共にありたい」
アンフィスは、結晶化したクローン・ピノアを愛おしそうに抱きかかえた。
「アンフィス……? わたし、あんたにそんなことをさせるために、ここに来てもらったんじゃないよ……?」
ピノアの言葉にアンフィスは首を横に振った。
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