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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第106話
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「リバーステラの私がしたことの責任は、私にもあるんだ」
「ないよ。絶対にない。
たとえ記憶があったとしても、それはアンフィスがしたことじゃない。
それに、ふたりとも、ステラだけじゃなくて、わたしのことも、リバーステラのことも助けてくれた」
「ピノア、私は君と魔導大戦を終結させた。君には振られてしまったけど、ジパングの民の始祖となれた。
それが、イレブンス・テラに生まれた私に与えられた役割だった」
「役割を果たすだけが人生じゃないことくらい、アンフィスならわかるよね?」
「わかるよ。だから役割を終えた私は、自分の人生を生きた。したいことはすべてした。生きたいように生きた。
見た目は変わっていないけど、私は間もなく死を迎えるんだ。それだけの時を生きてきたんだ。
すでに邪馬台国は、君も知る卑弥呼という女性にまかせている。そこにいる月の審神者の三姉妹も私は知っている。まだ生まれたばかりだけどね。
そして今、こうして君と再会できただけでなく、2000年後の子孫たちに出会えた。
ナユタくんにも出会えた。
だから、もう私は満足なんだよ。
リバーステラに生まれた私が抱いていた、生まれてくるべきではなかったという考えは間違っていたのだと心から思うよ。
日本という国やあの世界は滅ぶべきではない。
私にとってナユタくんは、ピノアや、ジパングの人々のように愛おしい存在だ。
ナユタくんは、そしてピノアが大好きな雨野家の人々は、リバーステラに生まれた私の遠い遠い子孫なんだよ」
ナユタにはにわかには信じられない話であったが、アンフィスが嘘をつく理由はどこにもなかった。
だから真実なのだと思った。
「ナユタくん、私が愛したピノアは君は愛し、君もまたピノアを愛した。
リバーステラの私は、処刑された三日後に復活を遂げ、私や弟子たちがジパングの民の始祖となったように、彼もまた日本へ渡来し日本人の始祖となった。
だが、リバーステラの私は、本当に私を愛してくれた者に世界を滅ぼす宿命を与えてしまった。
そのために、日本で新たな教えを、神道を説いた後、私は本当の裏切り者であった弟子たちに殺され、血肉を食われた。
弟子たちとその子孫たちは、セフィロトを意味する榊という姓を名乗り、棗はその分家だ。
日本の歴史を常に裏で操り続けてきた榊が、偽史に貶めた存在を回収し、監理、管轄するのが棗だった。
明智光秀くん、君が信長を討ったのは、彼が匣を持っていた、ただそれだけの理由ではないのだろう?
裏に榊がいたはずだ」
いました、と光秀は応えた。
信長は、積極的に宣教師を受け入れていたために、榊に目をつけられたのだと。
「榊にとっては、リバーステラの私の古き教えは邪教でしかなかった。
新たな教えに基づき、傀儡の王家を用意までしたのだからね」
その後の邪教徒狩りもまた、榊にとっては新たな教えがすべてであったからだという。
「仏陀の教えが入ってくることを止められなかったように、榊は鎖国をしても古き教えが入ってくることを止められなかった。おまけに黒船が来てしまった。
だから榊は、匣をいつまでも幕府にもたせているのではなく、傀儡の王の元へ戻そうとした。
そして、それを軍に渡し、新たな教えを絶対とする軍事国家を作ろうとした」
それが、匣をめぐる戦争の歴史の陰で行われていた、新たな教えと榊の歴史であったという。
「リバーステラの私は死んだが、私の子孫は生き延び、後に雨野という姓を名乗った。
だからナユタくんには、棗よりも戯使遣いの素質がある。
内閣さえも意のままに操る榊よりも、そして今の私よりも『真の父母』となり『王の王』となる素質がある。
君にはアマテラスやスサノオ、ツクヨミと同一の存在である卑弥呼や和多流、月の審神者たちが共にあるからだ。
地球外知的生命体であったアンサーと人の子でしかないリバーステラの私と違い、今の君は人でありながら神である神人とでもいうべき存在だ。
ふたつの世界は、君たちにまかせるよ」
アンフィスはそう言い終えると、ゲートを開いた。
「さよなら、ピノア。さよなら、ナユタ。それにみんな。
私はこれから先、いつかテラやリバーステラが星の寿命を迎えるそのときまで、ずっと君たちを見守っているよ」
彼は、棗と共に余剰次元の彼方の時の牢獄へと消えていった。
「ないよ。絶対にない。
たとえ記憶があったとしても、それはアンフィスがしたことじゃない。
それに、ふたりとも、ステラだけじゃなくて、わたしのことも、リバーステラのことも助けてくれた」
「ピノア、私は君と魔導大戦を終結させた。君には振られてしまったけど、ジパングの民の始祖となれた。
それが、イレブンス・テラに生まれた私に与えられた役割だった」
「役割を果たすだけが人生じゃないことくらい、アンフィスならわかるよね?」
「わかるよ。だから役割を終えた私は、自分の人生を生きた。したいことはすべてした。生きたいように生きた。
見た目は変わっていないけど、私は間もなく死を迎えるんだ。それだけの時を生きてきたんだ。
すでに邪馬台国は、君も知る卑弥呼という女性にまかせている。そこにいる月の審神者の三姉妹も私は知っている。まだ生まれたばかりだけどね。
そして今、こうして君と再会できただけでなく、2000年後の子孫たちに出会えた。
ナユタくんにも出会えた。
だから、もう私は満足なんだよ。
リバーステラに生まれた私が抱いていた、生まれてくるべきではなかったという考えは間違っていたのだと心から思うよ。
日本という国やあの世界は滅ぶべきではない。
私にとってナユタくんは、ピノアや、ジパングの人々のように愛おしい存在だ。
ナユタくんは、そしてピノアが大好きな雨野家の人々は、リバーステラに生まれた私の遠い遠い子孫なんだよ」
ナユタにはにわかには信じられない話であったが、アンフィスが嘘をつく理由はどこにもなかった。
だから真実なのだと思った。
「ナユタくん、私が愛したピノアは君は愛し、君もまたピノアを愛した。
リバーステラの私は、処刑された三日後に復活を遂げ、私や弟子たちがジパングの民の始祖となったように、彼もまた日本へ渡来し日本人の始祖となった。
だが、リバーステラの私は、本当に私を愛してくれた者に世界を滅ぼす宿命を与えてしまった。
そのために、日本で新たな教えを、神道を説いた後、私は本当の裏切り者であった弟子たちに殺され、血肉を食われた。
弟子たちとその子孫たちは、セフィロトを意味する榊という姓を名乗り、棗はその分家だ。
日本の歴史を常に裏で操り続けてきた榊が、偽史に貶めた存在を回収し、監理、管轄するのが棗だった。
明智光秀くん、君が信長を討ったのは、彼が匣を持っていた、ただそれだけの理由ではないのだろう?
裏に榊がいたはずだ」
いました、と光秀は応えた。
信長は、積極的に宣教師を受け入れていたために、榊に目をつけられたのだと。
「榊にとっては、リバーステラの私の古き教えは邪教でしかなかった。
新たな教えに基づき、傀儡の王家を用意までしたのだからね」
その後の邪教徒狩りもまた、榊にとっては新たな教えがすべてであったからだという。
「仏陀の教えが入ってくることを止められなかったように、榊は鎖国をしても古き教えが入ってくることを止められなかった。おまけに黒船が来てしまった。
だから榊は、匣をいつまでも幕府にもたせているのではなく、傀儡の王の元へ戻そうとした。
そして、それを軍に渡し、新たな教えを絶対とする軍事国家を作ろうとした」
それが、匣をめぐる戦争の歴史の陰で行われていた、新たな教えと榊の歴史であったという。
「リバーステラの私は死んだが、私の子孫は生き延び、後に雨野という姓を名乗った。
だからナユタくんには、棗よりも戯使遣いの素質がある。
内閣さえも意のままに操る榊よりも、そして今の私よりも『真の父母』となり『王の王』となる素質がある。
君にはアマテラスやスサノオ、ツクヨミと同一の存在である卑弥呼や和多流、月の審神者たちが共にあるからだ。
地球外知的生命体であったアンサーと人の子でしかないリバーステラの私と違い、今の君は人でありながら神である神人とでもいうべき存在だ。
ふたつの世界は、君たちにまかせるよ」
アンフィスはそう言い終えると、ゲートを開いた。
「さよなら、ピノア。さよなら、ナユタ。それにみんな。
私はこれから先、いつかテラやリバーステラが星の寿命を迎えるそのときまで、ずっと君たちを見守っているよ」
彼は、棗と共に余剰次元の彼方の時の牢獄へと消えていった。
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