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【第五部 異世界転移奇譚 NAYUTA 2 - アトランダム -(RENJI 5)】もしもしっくすないんしてる途中で異世界転移しちゃったら。
第104話
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「あのときに君のお兄さんが、君の目の前から姿を消したのは、不可思議の力ではなかった。シャーマニズムか、あるいは陰陽道の力……
そして、君のお兄さんは戦争という概念そのもの不可思議の力によって消滅させ、遥か彼方の外宇宙で起きていた銀河間戦争自体をなかったことにしましたが、世界全体が特異点となっていたテラにだけ戦争という概念は残ってしまっているんですよ」
棗は淡々と真実を告げた。
戯使たちが力を貸してくれるようになり、ナユタは戯使遣いとしての力を手に入れた。
那由他の力がなくとも、龍脈やシャーマニズム、陰陽道が使えるようになった。
だが、何もステラにできることはないのだ。
ピノアか、ステラか、選ばなければいけないのだ。
ピノアを止めることはもうできない。
ステラを見殺しにすることもできない。
絶望しかなかった。
追い討ちをかけるように、棗のそばに戯使が現れた。
「気を付けろよナユタ。あいつは安倍晴明とは比べ物にならない奴だ」
「最強の戯使と言ってもいいだろうね。私たちが束になっても勝てるかどうか……
よりによって彼が棗の側についてしまったのか……」
義経と光秀がナユタに言い、
「アンフィス……?」
ピノアはその戯使を見てそう言った。
イレブンス・テラでは2000年前に、そして、テンス・テラでは救厄の聖者のひとりとしてピノアを愛した神の子であり、アルビノの魔人の名前だった。
「君が、テラに生まれた私が愛したピノア・カーバンクルか。
美しい……テラの私もなかなか見る目があるものだな。
愛する姉のためにその身を差し出すことを決め、愛する男との永遠の別れを選び、涙を流すその顔……
私には身体はもはやないが、君の今の顔には性的な興奮を覚えるよ」
そこにいたのは、アンフィス・バエナ・イポトリルではなかった。
リバーステラの神の子だった。
「君が今、私と間違えて呼んだその男を、2000年前の時代からここに召喚したまえ。
安倍晴明とアベノ・セーメーが一体化したように、私とその者が一体化すれば、ステラ・リヴァイアサンは助けられる」
「貴方は一体何を……」
棗の声が上ずっていた。動揺していた。
計算外のことが起きたのだ。
「棗、君は勘違いしている。
私は戯使だ。そして、今、君が持っていた戯使遣いの力は、君にはもうない。
この少年が持っている。
それに私は、君には108回目と109回目の主への裏切りを許すわけにはいかないのだよ。
君の主は、加藤麻衣でもなければ、この少年でもない。
君が裏切るべき主とは、君が最も愛する存在であり、その対象は人とは限らない」
ピノアは新たなゲートを開き、アンフィスを召喚していた。
「ピノア? ここは?
それに、なんだ? あの私に似た男は……」
おそらくはイレブンス・テラのアンフィスだった。
「いきなりごめんね、アンフィス。
わたし、あんたを振っておいて、虫が良すぎるよね」
アンフィスは首を横に振った。
「二度と会えないと思っていた君にこうしてまた会えただけで十分だよ。
それに、たぶんここは未来。
そこにいるのは私の弟子たちの子孫だね?」
ジパングのふたりの女王や月の審神者たちを見て、彼は言った。
そうだよ、とピノアは応えた。
「この世界のあんたは、直接はステラを知らないけど、前に話したよね、前の世界のあんたや、ステラのこと。
今、ステラ、死んじゃいそうなの。
ステラを助けられるの、あんただけみたいだから来てもらったの」
「彼女が……本当に君にそっくりなんだね……
私を頼ってくれたのは嬉しいけど、君にもどうしようもできない彼女を私が救えるとは思えない……」
「そこにいるあんたにそっくりの奴が、あんたが持ってる力を全部引き出してくれる。
だから、ステラを助けて」
「……わかった。私に、君のためにできることがあるというなら、なんでもするよ」
その戯使はアンフィスに向かって歩いていくと、その身体を通り抜けるように一部となり、
「よく見ておいて、ピノア。たぶん君なら同じことができると思うから。
これはリバーステラにおける私が、アンサーと人の間に生まれた私が持っていた力。
魔法の先にある、奇跡だよ」
ステラの身体を「奇跡」が包んだ。
「それから、棗くんだったかな?
話が途中だったね。
君が裏切るべき主とは、君が最も愛する存在であり、その対象は人とは限らないという話だ。
君が愛する主は、日本という国と、リバーステラ自体だ。
だから、君にピノアが今ナユタくんと生きる世界を壊させはしない」
棗の身体もまた「奇跡」が包んだ。
そして、棗の身体は爆散した。
そして、君のお兄さんは戦争という概念そのもの不可思議の力によって消滅させ、遥か彼方の外宇宙で起きていた銀河間戦争自体をなかったことにしましたが、世界全体が特異点となっていたテラにだけ戦争という概念は残ってしまっているんですよ」
棗は淡々と真実を告げた。
戯使たちが力を貸してくれるようになり、ナユタは戯使遣いとしての力を手に入れた。
那由他の力がなくとも、龍脈やシャーマニズム、陰陽道が使えるようになった。
だが、何もステラにできることはないのだ。
ピノアか、ステラか、選ばなければいけないのだ。
ピノアを止めることはもうできない。
ステラを見殺しにすることもできない。
絶望しかなかった。
追い討ちをかけるように、棗のそばに戯使が現れた。
「気を付けろよナユタ。あいつは安倍晴明とは比べ物にならない奴だ」
「最強の戯使と言ってもいいだろうね。私たちが束になっても勝てるかどうか……
よりによって彼が棗の側についてしまったのか……」
義経と光秀がナユタに言い、
「アンフィス……?」
ピノアはその戯使を見てそう言った。
イレブンス・テラでは2000年前に、そして、テンス・テラでは救厄の聖者のひとりとしてピノアを愛した神の子であり、アルビノの魔人の名前だった。
「君が、テラに生まれた私が愛したピノア・カーバンクルか。
美しい……テラの私もなかなか見る目があるものだな。
愛する姉のためにその身を差し出すことを決め、愛する男との永遠の別れを選び、涙を流すその顔……
私には身体はもはやないが、君の今の顔には性的な興奮を覚えるよ」
そこにいたのは、アンフィス・バエナ・イポトリルではなかった。
リバーステラの神の子だった。
「君が今、私と間違えて呼んだその男を、2000年前の時代からここに召喚したまえ。
安倍晴明とアベノ・セーメーが一体化したように、私とその者が一体化すれば、ステラ・リヴァイアサンは助けられる」
「貴方は一体何を……」
棗の声が上ずっていた。動揺していた。
計算外のことが起きたのだ。
「棗、君は勘違いしている。
私は戯使だ。そして、今、君が持っていた戯使遣いの力は、君にはもうない。
この少年が持っている。
それに私は、君には108回目と109回目の主への裏切りを許すわけにはいかないのだよ。
君の主は、加藤麻衣でもなければ、この少年でもない。
君が裏切るべき主とは、君が最も愛する存在であり、その対象は人とは限らない」
ピノアは新たなゲートを開き、アンフィスを召喚していた。
「ピノア? ここは?
それに、なんだ? あの私に似た男は……」
おそらくはイレブンス・テラのアンフィスだった。
「いきなりごめんね、アンフィス。
わたし、あんたを振っておいて、虫が良すぎるよね」
アンフィスは首を横に振った。
「二度と会えないと思っていた君にこうしてまた会えただけで十分だよ。
それに、たぶんここは未来。
そこにいるのは私の弟子たちの子孫だね?」
ジパングのふたりの女王や月の審神者たちを見て、彼は言った。
そうだよ、とピノアは応えた。
「この世界のあんたは、直接はステラを知らないけど、前に話したよね、前の世界のあんたや、ステラのこと。
今、ステラ、死んじゃいそうなの。
ステラを助けられるの、あんただけみたいだから来てもらったの」
「彼女が……本当に君にそっくりなんだね……
私を頼ってくれたのは嬉しいけど、君にもどうしようもできない彼女を私が救えるとは思えない……」
「そこにいるあんたにそっくりの奴が、あんたが持ってる力を全部引き出してくれる。
だから、ステラを助けて」
「……わかった。私に、君のためにできることがあるというなら、なんでもするよ」
その戯使はアンフィスに向かって歩いていくと、その身体を通り抜けるように一部となり、
「よく見ておいて、ピノア。たぶん君なら同じことができると思うから。
これはリバーステラにおける私が、アンサーと人の間に生まれた私が持っていた力。
魔法の先にある、奇跡だよ」
ステラの身体を「奇跡」が包んだ。
「それから、棗くんだったかな?
話が途中だったね。
君が裏切るべき主とは、君が最も愛する存在であり、その対象は人とは限らないという話だ。
君が愛する主は、日本という国と、リバーステラ自体だ。
だから、君にピノアが今ナユタくんと生きる世界を壊させはしない」
棗の身体もまた「奇跡」が包んだ。
そして、棗の身体は爆散した。
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