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最終章 第2話
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雨野ユワがタカミに抱きつくのを、少し離れた場所から朝倉レインは見つめていた。
タカミにとっての最後の戦いは、おそらく城塞戦車キャッスルチャリオットの女王の間に現れた、アリステラの歴代女王のうちのふたり、6翼のアマヤと8翼のアシーナとの戦いになるのだろう。
タカミはまだ知らないだろうが、あの戦いはもう、3年も前の話になる。
時は、西暦2029年になっていた。
もっとも、今となっては西暦という暦にはもはや何の意味もなくなってしまっていた。新たな暦が必要な世界でもなかった。
あの戦いから1年も経たないうちに、人類も新生アリステラも、機械の体を得たアリステラの歴代の女王たちも、そのすべてが滅んでしまっていたからだ。
どの陣営も、大量破壊兵器や大量破壊魔法を所持していたため、その最期は撃たれたから撃ち返す、撃ち返されたからまた撃つという醜い繰り返しだった。
インプラント手術により、肩甲骨にその根元となる部分を埋め込むことで、機械の片翼を背中から生やしてはいたが、それ以外のレインの体は生身のままであった。
彼女が放射能に汚染されることなくこの日まで生きてこられたのは、小久保ハルミが産み出したエーテルのおかげだった。
彼女がまがい物と揶揄していたエーテルには、放射能を発する放射性物質を無毒化する作用があったのだ。
今となってはもはや確かめるすべはないが、小久保ハルミは世界中から希代の詐欺師と揶揄され、新生アリステラに与しながらも、それでも常に人類のことを考えていたのかもしれない。
千年細胞という世紀の大発見をしただけでなく、その細胞から放射性物質を無毒化するエーテルさえも産み出したのだ。
彼女はおそらく、アリステラのエーテルを完全に再現することもできただろう。だが、研究途中の段階で放射性物質を無毒化することができると知り、完全に再現した場合にはその能力が失われてしまうことに気づいた彼女は、あえて研究途中のエーテルを、地球産のまがい物として新生アリステラに提出したのだ。
同じ細胞から産み出したカーズウィルスと共に。
人類を想う聖母のような優しさと、人類を憎む悪女のような恐ろしさ、その二面性こそが、人類がただの野蛮なホモサピエンスではなかったと証明してくれていた。
だが結局は、人類も新生アリステラも、機械の体を得たアリステラの歴代の女王たちも皆、殺し合うことしかできない野蛮な生物でしかなかった。
3年前のあのとき、6翼のアマヤの「業火連弾」により、城塞戦車の女王の間の半分が吹き飛ばされ、ユワの体は世界から完全に失われてしまった。
タカミからゲートを使い避難するよう言われたレインは、彼に指定された東京の巨大な地下空洞にあるという要人専用の核シェルターではなく、雨野市の彼のマンションの部屋へと避難した。
彼のハッキングプログラム「機械仕掛けの魔女ディローネ」を利用して、レインが持っていたユワの知識や記憶、経験といった記録を、人造人間兵士の魔導人工頭脳に与えるためだった。
その際に念のため、自らの記録のバックアップをエーテルを使ってタカミのパソコンに残してもいた。
レインはハッキングやプログラムについての知識は皆無だったが、エーテルがディローネへの命令を可能にしてくれた。あるいは、ディローネがエーテルにより自己進化を遂げていたのかもしれなかった。
彼女はディローネに、人工衛星などを使い、常に世界中を監視するように、そして自分がもし死んでしまうようなことがあれば、ユワや他の歴代の女王たちと同じように、機械の体を与えてくれるように頼んでいた。
ディローネ自身も、いつ雨野市ごと消されてしまうかわからなかったから、人工衛星に避難させていた。
地球上に存在したヒト型種族のすべてが滅んでから2年あまり、レインはユワに機械の体を与えてはいけなかったのではないかとずっと後悔していた。
世界に残されていたのは奇数翼の穏健派に属していたレインと、偶数翼の強硬派に属していたユワのたったふたりだけだった。
もはや戦う必要も理由もないというのに、奇数翼と偶数翼の戦いは、たったふたりになっても続いた。
それぞれの陣営の思惑とは関係なく、ユワは私怨によってだけレインを殺そうとしていた。
レインには、ユワと十分に戦えるだけの力があったが、どうしてもユワを殺せなかった。
ユワは、レインにとってのアンナやショウゴのように、ショウゴやタカミにとって大切で特別な存在だったからだ。
彼女の本当の体に二度目の死を迎えさせたのは、他の誰でもなくレインだったからだ。
だから彼女は、2年あまりもユワの攻撃に対し常に防戦するだけだった。
いっそこのまま殺されてしまえばどんなに楽だろう。何度そう考えたかわからなかった。
レインはとうに心身ともに疲れはてていた。
7年前、ショウゴと共に逃げ続けることに疲れはて、自ら死を望んだオリジナルのユワも、もしかしたら同じような気持ちだったのかもしれない。
タカミがこの場に現れることがなければ、いずれレインはユワに殺されていただろう。殺されることを望んでいただろう。
それは、明日であったかもしれないし、もしかしたら今日であったかもしれなかった。
タカミにとっての最後の戦いは、おそらく城塞戦車キャッスルチャリオットの女王の間に現れた、アリステラの歴代女王のうちのふたり、6翼のアマヤと8翼のアシーナとの戦いになるのだろう。
タカミはまだ知らないだろうが、あの戦いはもう、3年も前の話になる。
時は、西暦2029年になっていた。
もっとも、今となっては西暦という暦にはもはや何の意味もなくなってしまっていた。新たな暦が必要な世界でもなかった。
あの戦いから1年も経たないうちに、人類も新生アリステラも、機械の体を得たアリステラの歴代の女王たちも、そのすべてが滅んでしまっていたからだ。
どの陣営も、大量破壊兵器や大量破壊魔法を所持していたため、その最期は撃たれたから撃ち返す、撃ち返されたからまた撃つという醜い繰り返しだった。
インプラント手術により、肩甲骨にその根元となる部分を埋め込むことで、機械の片翼を背中から生やしてはいたが、それ以外のレインの体は生身のままであった。
彼女が放射能に汚染されることなくこの日まで生きてこられたのは、小久保ハルミが産み出したエーテルのおかげだった。
彼女がまがい物と揶揄していたエーテルには、放射能を発する放射性物質を無毒化する作用があったのだ。
今となってはもはや確かめるすべはないが、小久保ハルミは世界中から希代の詐欺師と揶揄され、新生アリステラに与しながらも、それでも常に人類のことを考えていたのかもしれない。
千年細胞という世紀の大発見をしただけでなく、その細胞から放射性物質を無毒化するエーテルさえも産み出したのだ。
彼女はおそらく、アリステラのエーテルを完全に再現することもできただろう。だが、研究途中の段階で放射性物質を無毒化することができると知り、完全に再現した場合にはその能力が失われてしまうことに気づいた彼女は、あえて研究途中のエーテルを、地球産のまがい物として新生アリステラに提出したのだ。
同じ細胞から産み出したカーズウィルスと共に。
人類を想う聖母のような優しさと、人類を憎む悪女のような恐ろしさ、その二面性こそが、人類がただの野蛮なホモサピエンスではなかったと証明してくれていた。
だが結局は、人類も新生アリステラも、機械の体を得たアリステラの歴代の女王たちも皆、殺し合うことしかできない野蛮な生物でしかなかった。
3年前のあのとき、6翼のアマヤの「業火連弾」により、城塞戦車の女王の間の半分が吹き飛ばされ、ユワの体は世界から完全に失われてしまった。
タカミからゲートを使い避難するよう言われたレインは、彼に指定された東京の巨大な地下空洞にあるという要人専用の核シェルターではなく、雨野市の彼のマンションの部屋へと避難した。
彼のハッキングプログラム「機械仕掛けの魔女ディローネ」を利用して、レインが持っていたユワの知識や記憶、経験といった記録を、人造人間兵士の魔導人工頭脳に与えるためだった。
その際に念のため、自らの記録のバックアップをエーテルを使ってタカミのパソコンに残してもいた。
レインはハッキングやプログラムについての知識は皆無だったが、エーテルがディローネへの命令を可能にしてくれた。あるいは、ディローネがエーテルにより自己進化を遂げていたのかもしれなかった。
彼女はディローネに、人工衛星などを使い、常に世界中を監視するように、そして自分がもし死んでしまうようなことがあれば、ユワや他の歴代の女王たちと同じように、機械の体を与えてくれるように頼んでいた。
ディローネ自身も、いつ雨野市ごと消されてしまうかわからなかったから、人工衛星に避難させていた。
地球上に存在したヒト型種族のすべてが滅んでから2年あまり、レインはユワに機械の体を与えてはいけなかったのではないかとずっと後悔していた。
世界に残されていたのは奇数翼の穏健派に属していたレインと、偶数翼の強硬派に属していたユワのたったふたりだけだった。
もはや戦う必要も理由もないというのに、奇数翼と偶数翼の戦いは、たったふたりになっても続いた。
それぞれの陣営の思惑とは関係なく、ユワは私怨によってだけレインを殺そうとしていた。
レインには、ユワと十分に戦えるだけの力があったが、どうしてもユワを殺せなかった。
ユワは、レインにとってのアンナやショウゴのように、ショウゴやタカミにとって大切で特別な存在だったからだ。
彼女の本当の体に二度目の死を迎えさせたのは、他の誰でもなくレインだったからだ。
だから彼女は、2年あまりもユワの攻撃に対し常に防戦するだけだった。
いっそこのまま殺されてしまえばどんなに楽だろう。何度そう考えたかわからなかった。
レインはとうに心身ともに疲れはてていた。
7年前、ショウゴと共に逃げ続けることに疲れはて、自ら死を望んだオリジナルのユワも、もしかしたら同じような気持ちだったのかもしれない。
タカミがこの場に現れることがなければ、いずれレインはユワに殺されていただろう。殺されることを望んでいただろう。
それは、明日であったかもしれないし、もしかしたら今日であったかもしれなかった。
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