上 下
36 / 115
愛しい幼なじみ side哲平

しおりを挟む
それから、仕事が忙しくて美桜には会えなかったけど、毎日欠かさず連絡は取っていた。
やっと仕事が一段落したので、美桜と晩飯に行こうと思い連絡した。

仕事終わりに惣菜店まで迎えに行くことを伝えたら、美桜から『家にいる』という返事が返ってきた。
体調が悪いのかと聞けば、そんなことはないと言う。
だったら何なんだと聞けば理由は会ってから話すと言われ、アパートまで迎えに行き、俺の行きつけの居酒屋に連れてきた。

そこで美桜が口にしたのは予想だにしない理由だった。
まさか、美桜がストーカー被害に遭っているなんて思わなかった。
本人は勘違いかも知れないけどなんて言ってたけど、それは間違いなくストーカーだろう。
店の弁当が気に入って毎日買いに来くるのはまあ、あるとは思う。

百歩譲って、食事先で会ったのは偶然かもしれない。
だけど、わざわざ店の裏側に回ってくるとか普通はしないだろ。
しかも配達帰りを狙ったかのように。
美桜が言うように待ち伏せしているとしか思えない。

美桜がそんな環境に置かれているなんて考えただけでゾッとする。
今はまだ何も起こってないけど、今後何があるか分からない。
仕事を休むように助言してくれたおばさん、グッジョブ!

俺の知らないところで美桜が危険な目に遭うなんて絶対に嫌だ。
俺が守らなきゃという使命感が沸々とわいてきた。
その為には美桜が目の届く範囲にいないと守れない。
ストーカーに美桜の家を知られている可能性もある。
幸い仕事を辞めるらしいので、俺の家に住むことを提案した。
美桜は黙りこくり、難しい表情で考えている。
そんなに考えることでもないだろ。
ただ頷けばいい話なのに。
なかなか口を開かない美桜に言葉をかける。

「俺の知らないところで美桜が危険な目に遭うのだけはマジで嫌なんだ。だから、俺の家に来て欲しい。美桜のこと、そばで守らせてくれ」

そう言うと、困ったように眉尻を下げて俺を見る。
美桜の中でいろいろ葛藤があるのかもしれない。
好きだから守りたいと思うのは当然だ。
どう言ったら美桜に分かってもらえるんだろうと考えて、俺のことを利用すればいいと言った。
そしたら、それは出来ないとばかりに表情を曇らせる。

美桜は正義感が強くて優しいからそういうことは出来ないと思うんだろう。
こういう時に美桜がずる賢い性格だったらよかったのに……。
まぁ、美桜がそんなヤツだったら俺も好きにならないんだけど。

「俺たちは深い関係になっているのに、今さら何を遠慮してるんだよ」

意味深に言えば美桜の顔はみるみるうちに真っ赤に染まっていく。

「俺だって美桜と一緒にいれるのは願ったり叶ったりだし、ウィンウィンだと思うけど」

ここまで言っても美桜は首を縦に振らない。
こうなったら押し切るしかないと思い、一緒に住むことは決定事項として話を強引に終わらせた。
そこまでしないと美桜を守ることが出来ない。
美桜に対する想いは誰にも負けないぐらい強いんだ。

俺はこれから始まる美桜との生活に向けて考えを巡らせていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元カノと復縁する方法

なとみ
恋愛
「別れよっか」 同棲して1年ちょっとの榛名旭(はるな あさひ)に、ある日別れを告げられた無自覚男の瀬戸口颯(せとぐち そう)。 会社の同僚でもある二人の付き合いは、突然終わりを迎える。 自分の気持ちを振り返りながら、復縁に向けて頑張るお話。 表紙はまるぶち銀河様からの頂き物です。素敵です!

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編3が完結しました!(2024.8.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜

湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」 「はっ?」 突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。 しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。 モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!? 素性がバレる訳にはいかない。絶対に…… 自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。 果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ネカフェ難民してたら鬼上司に拾われました

瀬崎由美
恋愛
穂香は、付き合って一年半の彼氏である栄悟と同棲中。でも、一緒に住んでいたマンションへと帰宅すると、家の中はほぼもぬけの殻。家具や家電と共に姿を消した栄悟とは連絡が取れない。彼が持っているはずの合鍵の行方も分からないから怖いと、ビジネスホテルやネットカフェを転々とする日々。そんな穂香の事情を知ったオーナーが自宅マンションの空いている部屋に居候することを提案してくる。一緒に住むうち、怖くて仕事に厳しい完璧イケメンで近寄りがたいと思っていたオーナーがド天然なのことを知った穂香。居候しながら彼のフォローをしていくうちに、その意外性に惹かれていく。

憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~

けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。 私は密かに先生に「憧れ」ていた。 でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。 そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。 久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。 まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。 しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて… ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆… 様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。 『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』 「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。 気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて… ねえ、この出会いに何か意味はあるの? 本当に…「奇跡」なの? それとも… 晴月グループ LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長 晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳 × LUNA BLUホテル東京ベイ ウエディングプランナー 優木 里桜(ゆうき りお) 25歳 うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。

シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました

入海月子
恋愛
一花はフラワーデザイナーだ。 仕事をドタキャンされたところを藤河エステートの御曹司の颯斗に助けられる。彼はストーカー的な女性に狙われていて、その対策として、恋人のふりを持ちかけてきた。 恋人のふりのはずなのに、颯斗は甘くて惹かれる気持ちが止まらない。 それなのに――。

処理中です...