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友人達の村で
418:村での活動・終了
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本日二話目!
_______
「なら、アンドー。お前がイリン達を守ったらどうだ? イリン達は守られるだけの存在でいるつもりなどないし、その言葉を言うだけの実力はある。だが、あんたは心配なんだろ? だったら、何があっても守ってやればいいではないか」
そう言われた俺は目を瞬かせ、驚きをあらわにする。
「……は、はは。ああそうだな。ああそうだ。単純なことだったな」
……そうか。そうだな。俺はイリンと環に約束したはずだ。絶対に手を離さない、守ってみせるって。なら、今更だな。
「馬鹿なこと言ってたな。二人とも、一緒に行こうか」
何があっても守ってみせよう。
「守られるだけで終わるつもりはありません」
「私たちがあなたのことを守ってみせるわ」
俺の言葉に応えるように、二人は俺を見つめてそう言い、俺もまた二人を見つめた。
「いい感じの雰囲気のところ悪いんだが、そろそろ戻らないか?」
が、そこでガムラの邪魔が……ではなく横槍、でもなく、なんだ、あー……なにかが入り俺はハッと意識を二人から戻した。
「っと、そうだな」
「ならこいつらを村まで連れてかなくちゃだが、なんか縛るもんもってっか?」
「あるぞ」
そんなもん収納の中にいくらでもある。ロープも鎖も手錠も、もっていないものを店先で見るたびにとりあえずまとめて買って放り込んでおいたから大抵のものは入ってる。中には記憶違いで重複してるものもあるけど、いつか使い道は来るだろう。
俺が縄を取り出すと、それを受け取ったガムラは賊を手早く縛り始めた。それをみたニナとイリンもガムラの作業を手伝っていき、残った縛り方を知らない俺と環はその場に立ったまま三人の作業を眺めるのだった。
賊を縛ってから水をぶっかけたり気付け薬を使ったりして意識を取り戻させた後は、特にやることもなかったので縛った賊を引き連れて村へと帰ってきた。
その際賊が抵抗しようと歩くのをやめたが、化け物級の腕力を持っているニナとガムラとイリン、それと自己強化魔術を使える俺と環の前には意味がなかった。
足を止めたところでその程度で止まるはずがなく、そいつはものすごくかわいそうなことに、引きずられながら百メートルほど進むこととなった。ちなみに、擦り傷だらけとなったその賊だが、回復はしていない。今までやってきたことも併せて考えると自業自得だ。
そして、そんなこんなで俺たちは行きとは違い、後ろにぞろぞろと人を引き連れながら村へと戻ってきた。
「ああガムラ」
「おう。戻ったぞ」
村に戻ると、以前キリーが魔物の解体をしていた付近に賊達を連れて行った。あの辺は匂いや何やらの関係で人があまり集まらないからちょうどよかったのだが、そこにはキリーとナナがいた。
「後ろのは賊の生き残りか。そいつらはどうするんだい?」
キリーは賊を見ると不機嫌そうな気配を隠すことなくそう尋ねる。
「アンドー達がニナと一緒に街まで連れて行くことになった」
「それじゃあ、あんたらはもう行っちまうのか」
キリーはつい今まで感じていた不機嫌さを消して、驚きをあらわにしてそう言った。
「そうなるな。本当はもう少しいるはずだったんだけどな」
だがキリーが驚くのも無理はない。何せここに来てからまだ一週間と経っていないのだ。
ことがこと掛けに仕方ないではあるのだが、随分と慌ただしいことだ。
「数日しかいられなかったが、楽しかったぞ」
「そうかい。……まあ、こっちも楽しかったけどね。それに……」
キリーは視線をそばにいるナナへと一瞬だけ向けてから再び俺へと戻し、笑った。
「色々と世話になったし、感謝してるよ」
「そうか。そう言ってもらえると、けしかけた本人としてはホッとするよ」
俺が自己満足のために背中を押したせいで、二人は喧嘩になってしまい余計なことをしたかなって後悔したくらいだ。
結果的にはうまくいったが、うまくいってくれて本当に良かった。
「どうせまた来るんだろ?」
「ああ。それがいつかはわからないけどな」
「そうかい。ま、今日は流石に泊まるんだろ?」
「まあな」
「ならゆっくりしてきな。時間はないけど、今夜は腕によりをかけて作らせてもらうよ」
キリーが笑ってそう言ったので、俺もそれに笑いを返して応えた。
「じゃあ、楽しみに待ってな」
そう言って俺たちに背を向けて去って行ったキリーの後をついて行くようにナナと、それからガムラもキリーの後を追っていった。
「後この村でやっておかないといけないことは……」
そんな三人の背中を見送った俺は、やり残したことがないようにと考えて行く。
……ああそうだ。そういえば賊に協力していた例のオリハルコン級の冒険者。確か……『雷光』だったか? あれの確認をしておこう。
場所は……
「ここでいいか」
ここにはあまり人が来ないし、死体の処理にもちょうどいい。いつまでも死体を収納の中に入れておきたくないからな。
……それにしても、死体の処理に丁度いいって、我ながらどうかしてる言葉だよな。日本で普通に生活してた時では考えらえない言葉だ。
「? どうかされましたか?」
そうして周りに人がいないか確認をするために辺りを見回していると、イリンが俺の様子に気がついて声をかけてきた。
「ああ、ちょっとな。例の雷光って冒険者の確認をしておこうかと思ったんだ」
「なら、私も行こう。アンドーはあいつの顔を知らないんだろ?」
俺の言葉にニナはそう言って反応した。
確かに、俺はその雷光ってやつの顔を知らない。冒険者らしいから死体を調べて冒険者証を確認しようと思ってたが、それをしなくても分かるってんならそっちの方が楽でいい。
「まあそうだな。なら頼むよ」
「任せろ。……それで、どこに置かれてるんだ? 村の外か?」
「うん? いや、俺の収納の中に入ってる。待ってろ今出すから」
バラバラのは出さなくてもいいだろう。先にまともに残ってる奴体。どうしてもその中にいないって言うんだったら仕方がないから出すけど、できることならあれらは見たくない。
なので、とりあえず豪華な装備をつけてる奴から取り出すことにした。
「まずはこれだな」
そう言って出てきたのは金ピカ装備に身を包んだイケメン。
こういうと僻みや負け惜しみに聞こえるかもしれないが、俺はイケメンにあまりいい感情を抱いていない。それは結婚した今も変わらない。こればっかりは無意識というか染み付いた癖みたいなやつなのでどうしようもない。男なら誰だって理解してくれることだと思う。
が、今ばかりは例外だ。この男には嫉妬も何も感じない。感じるとしたら同情だろうか?
それほどまでにこの男の顔はひどいものだった。
別に大きく傷ついて破損しているわけではない。多少の傷はあるものの、顔の作りがいいのはしっかりとわかる。
だが、自分の人生を全て否定され空っぽになったような表情と、無力な子供が自分の死を悟って浮かべる嘆きを混ぜたような、見ているこっちまでもがのまれてしまいそうな凄まじい表情をしている。
「これはまた……」
死体の検分をしているニナは、そのあまりの壮絶な死に顔に声をなくしている。
「だが、あたりだ。こいつは『雷光』で間違いない」
だが、それでも元の目的を忘れることはなく、しっかりと果たしてくれていた。
「そうか」
最初の一体目で当たってくれたのはありがたい。長時間したいと向き合う必要がないからな。
でも、なら後のやつはいらないな。
俺は雷光とやらの死体を収納にしまうと、今度は獲物の解体後の残骸を捨てるゴミ捨て場に賊の死体を放り込んでいく。
「環。頼めるか?」
「ええ」
流石にそのままにしておくのはアレだったので、環に頼んでそれらを燃やしてもらった。
「何をしてるんだ?」
ニナに問われた俺だが、今俺は燃えている死体に向かって手を合わせていた。
「……ん、まあ気分的なもんだ。気にするな」
普通は自分を襲ってきた賊相手に手を合わせたりなんてしない。
他人の命を狙う奴なんて、逆に殺されてもなんの問題もないと誰もが思っているからだ。
俺も殺すこと自体を戸惑うことはないが、こうして落ち着いている状況なら、手を合わせるくらいはいいだろうと思ってしまう。
「さ、これで本当にやることは終わったな」
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「なら、アンドー。お前がイリン達を守ったらどうだ? イリン達は守られるだけの存在でいるつもりなどないし、その言葉を言うだけの実力はある。だが、あんたは心配なんだろ? だったら、何があっても守ってやればいいではないか」
そう言われた俺は目を瞬かせ、驚きをあらわにする。
「……は、はは。ああそうだな。ああそうだ。単純なことだったな」
……そうか。そうだな。俺はイリンと環に約束したはずだ。絶対に手を離さない、守ってみせるって。なら、今更だな。
「馬鹿なこと言ってたな。二人とも、一緒に行こうか」
何があっても守ってみせよう。
「守られるだけで終わるつもりはありません」
「私たちがあなたのことを守ってみせるわ」
俺の言葉に応えるように、二人は俺を見つめてそう言い、俺もまた二人を見つめた。
「いい感じの雰囲気のところ悪いんだが、そろそろ戻らないか?」
が、そこでガムラの邪魔が……ではなく横槍、でもなく、なんだ、あー……なにかが入り俺はハッと意識を二人から戻した。
「っと、そうだな」
「ならこいつらを村まで連れてかなくちゃだが、なんか縛るもんもってっか?」
「あるぞ」
そんなもん収納の中にいくらでもある。ロープも鎖も手錠も、もっていないものを店先で見るたびにとりあえずまとめて買って放り込んでおいたから大抵のものは入ってる。中には記憶違いで重複してるものもあるけど、いつか使い道は来るだろう。
俺が縄を取り出すと、それを受け取ったガムラは賊を手早く縛り始めた。それをみたニナとイリンもガムラの作業を手伝っていき、残った縛り方を知らない俺と環はその場に立ったまま三人の作業を眺めるのだった。
賊を縛ってから水をぶっかけたり気付け薬を使ったりして意識を取り戻させた後は、特にやることもなかったので縛った賊を引き連れて村へと帰ってきた。
その際賊が抵抗しようと歩くのをやめたが、化け物級の腕力を持っているニナとガムラとイリン、それと自己強化魔術を使える俺と環の前には意味がなかった。
足を止めたところでその程度で止まるはずがなく、そいつはものすごくかわいそうなことに、引きずられながら百メートルほど進むこととなった。ちなみに、擦り傷だらけとなったその賊だが、回復はしていない。今までやってきたことも併せて考えると自業自得だ。
そして、そんなこんなで俺たちは行きとは違い、後ろにぞろぞろと人を引き連れながら村へと戻ってきた。
「ああガムラ」
「おう。戻ったぞ」
村に戻ると、以前キリーが魔物の解体をしていた付近に賊達を連れて行った。あの辺は匂いや何やらの関係で人があまり集まらないからちょうどよかったのだが、そこにはキリーとナナがいた。
「後ろのは賊の生き残りか。そいつらはどうするんだい?」
キリーは賊を見ると不機嫌そうな気配を隠すことなくそう尋ねる。
「アンドー達がニナと一緒に街まで連れて行くことになった」
「それじゃあ、あんたらはもう行っちまうのか」
キリーはつい今まで感じていた不機嫌さを消して、驚きをあらわにしてそう言った。
「そうなるな。本当はもう少しいるはずだったんだけどな」
だがキリーが驚くのも無理はない。何せここに来てからまだ一週間と経っていないのだ。
ことがこと掛けに仕方ないではあるのだが、随分と慌ただしいことだ。
「数日しかいられなかったが、楽しかったぞ」
「そうかい。……まあ、こっちも楽しかったけどね。それに……」
キリーは視線をそばにいるナナへと一瞬だけ向けてから再び俺へと戻し、笑った。
「色々と世話になったし、感謝してるよ」
「そうか。そう言ってもらえると、けしかけた本人としてはホッとするよ」
俺が自己満足のために背中を押したせいで、二人は喧嘩になってしまい余計なことをしたかなって後悔したくらいだ。
結果的にはうまくいったが、うまくいってくれて本当に良かった。
「どうせまた来るんだろ?」
「ああ。それがいつかはわからないけどな」
「そうかい。ま、今日は流石に泊まるんだろ?」
「まあな」
「ならゆっくりしてきな。時間はないけど、今夜は腕によりをかけて作らせてもらうよ」
キリーが笑ってそう言ったので、俺もそれに笑いを返して応えた。
「じゃあ、楽しみに待ってな」
そう言って俺たちに背を向けて去って行ったキリーの後をついて行くようにナナと、それからガムラもキリーの後を追っていった。
「後この村でやっておかないといけないことは……」
そんな三人の背中を見送った俺は、やり残したことがないようにと考えて行く。
……ああそうだ。そういえば賊に協力していた例のオリハルコン級の冒険者。確か……『雷光』だったか? あれの確認をしておこう。
場所は……
「ここでいいか」
ここにはあまり人が来ないし、死体の処理にもちょうどいい。いつまでも死体を収納の中に入れておきたくないからな。
……それにしても、死体の処理に丁度いいって、我ながらどうかしてる言葉だよな。日本で普通に生活してた時では考えらえない言葉だ。
「? どうかされましたか?」
そうして周りに人がいないか確認をするために辺りを見回していると、イリンが俺の様子に気がついて声をかけてきた。
「ああ、ちょっとな。例の雷光って冒険者の確認をしておこうかと思ったんだ」
「なら、私も行こう。アンドーはあいつの顔を知らないんだろ?」
俺の言葉にニナはそう言って反応した。
確かに、俺はその雷光ってやつの顔を知らない。冒険者らしいから死体を調べて冒険者証を確認しようと思ってたが、それをしなくても分かるってんならそっちの方が楽でいい。
「まあそうだな。なら頼むよ」
「任せろ。……それで、どこに置かれてるんだ? 村の外か?」
「うん? いや、俺の収納の中に入ってる。待ってろ今出すから」
バラバラのは出さなくてもいいだろう。先にまともに残ってる奴体。どうしてもその中にいないって言うんだったら仕方がないから出すけど、できることならあれらは見たくない。
なので、とりあえず豪華な装備をつけてる奴から取り出すことにした。
「まずはこれだな」
そう言って出てきたのは金ピカ装備に身を包んだイケメン。
こういうと僻みや負け惜しみに聞こえるかもしれないが、俺はイケメンにあまりいい感情を抱いていない。それは結婚した今も変わらない。こればっかりは無意識というか染み付いた癖みたいなやつなのでどうしようもない。男なら誰だって理解してくれることだと思う。
が、今ばかりは例外だ。この男には嫉妬も何も感じない。感じるとしたら同情だろうか?
それほどまでにこの男の顔はひどいものだった。
別に大きく傷ついて破損しているわけではない。多少の傷はあるものの、顔の作りがいいのはしっかりとわかる。
だが、自分の人生を全て否定され空っぽになったような表情と、無力な子供が自分の死を悟って浮かべる嘆きを混ぜたような、見ているこっちまでもがのまれてしまいそうな凄まじい表情をしている。
「これはまた……」
死体の検分をしているニナは、そのあまりの壮絶な死に顔に声をなくしている。
「だが、あたりだ。こいつは『雷光』で間違いない」
だが、それでも元の目的を忘れることはなく、しっかりと果たしてくれていた。
「そうか」
最初の一体目で当たってくれたのはありがたい。長時間したいと向き合う必要がないからな。
でも、なら後のやつはいらないな。
俺は雷光とやらの死体を収納にしまうと、今度は獲物の解体後の残骸を捨てるゴミ捨て場に賊の死体を放り込んでいく。
「環。頼めるか?」
「ええ」
流石にそのままにしておくのはアレだったので、環に頼んでそれらを燃やしてもらった。
「何をしてるんだ?」
ニナに問われた俺だが、今俺は燃えている死体に向かって手を合わせていた。
「……ん、まあ気分的なもんだ。気にするな」
普通は自分を襲ってきた賊相手に手を合わせたりなんてしない。
他人の命を狙う奴なんて、逆に殺されてもなんの問題もないと誰もが思っているからだ。
俺も殺すこと自体を戸惑うことはないが、こうして落ち着いている状況なら、手を合わせるくらいはいいだろうと思ってしまう。
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