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友人達の村で
415:賊のアジト・イリンと環
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「確かこの辺だったよな?」
俺たちは今、賊のアジトへと向かっている。
あの話し合いの後、アジトに放置しておいた賊をどうするかという話になって、見にいくことにしたのだ。
メンバーは昨日のアジト襲撃メンバーに加え、ニナが一緒に来ている。依頼を受けてここにいる以上はギルドに報告する必要があるから見て起きたいんだそうだ。あとは生き残っている賊への質問とそいつらの処遇についても色々ある。
そんなわけで俺たちは賊達のアジトへとむかっているわけだが、昨日とは違い賊に気づかれないように森の中の木々をかき分けて進んでいるわけではなく、森の中を賊の集団が移動してできたであろう獣道を堂々と進んでいる。
もう賊はいないわけだし、いたとしてもごく少数だ。だからこそこの道が使えるようになった。
そのおかげで昨日に比べると移動がかなり楽になったが、初めての道なので後どのくらいでアジトに着くのか分からなくかった。
歩いた距離からなんとなくこのへん、と判断はできるがそれだって正確じゃない。まあ昨日と同じ道を使ったところで森の移動に慣れていない俺にはわからないと思うけど。
「はい。後少し進めば着くかと」
「そうか」
イリンの言葉を受けてそのまま歩いていると、途中で分かれ道があったのでそちらへと進んでいく。
「ああ、ここだな」
まずたどり着いたのはイリンと環の担当した洞窟だ。
中に入ると、まるで我が家のように闊歩して先へと進んでいく環とイリン。
俺たちはそんな二人の後をついて進んでいく。
「この先に賊がいるわ。動けないとは思うけれど、警戒はしておいてちょうだい」
環にそう言われた俺たちはその言葉に頷いて先に進む。
俺が言った洞窟と作りが同じなんだな、なんて考えながら通路を進んでいると、どこからか微妙な呻き声のようなものが聞こえ始めた。
それは捕らえられた賊の声なんだとすぐにわかったが、なんだかすすり泣くような声や笑い声まで聞こえてきて、薄暗い通路と相まって正直怖い。
だが歩みを止めるわけにもいかずそのまま進むと、今までの通路とは違い大きな空間に出た。
そこは最低限の灯りすら残っていなかったせいか通路よりも暗く、先を見通すことができない。
そんな空間で、すすり泣く声と壊れたように笑う声、あとは念仏でも唱えているような声が先ほどよりもはっきり聞こえてきた。
ここに賊がいるんだろうけど、どんな状態になってるんだ?
「今灯りをつけるわね」
そう思っていると環がそう言って一歩前に出た。
そうして現れたのは灯りの魔術具などではなく、彼女のスキルによる炎の鬼達だった。
炎でできている彼らは自身の体から発する光で広間を照らした。
環のすぐを場に現れた炎の鬼達はすぐに動き出し広間の中央を囲うように並んだが、そうして露わになった光景は凄まじいものだった。
「……うわぁ」
その広間の中には賊がいた。それも、手足をなくし、中には顔や胴体に火傷を負った状態で地面に這い蹲っている状態でだ。
そんな奴らが笑ってたり泣いてたり念仏(?)を唱えている。
周囲を炎の鬼が囲っていることも考えるとそれは生贄の生贄の儀式のように思えてしまい、俺は顔が引きつるのが自分でも理解できた。
「……これ、警戒する必要とかないだろ」
どう見たってここにいる賊達が暴れたりするようには思えない。
確かに口は残っているから魔術なんかは使えるかもしれないけど、この状況でそこまでして反撃しようとする猛者はいないだろ。そんな根性のある奴は賊なんてやってないだろうし、もしいたのなら賞賛してやってもいいとさえ思う。
ガムラ達の様子を伺ってみると、ガムラもニナも若干引き気味になっている気がする。……気がする、じゃなくて本当に引いてるなこれは。
「何したんだ?」
「ちょっと暴れたから燃やしたのよ」
この惨状を見ながら笑顔でそう言ってのけた環。そこに一抹の恐怖を感じたが、それでも俺はこの子と結婚してるんだよなぁ……。
そんな事を若干遠い目をしながら考えていると、ニナが俺のそばに寄ってきて耳打ちしてきた。
「アンドー。これはなんなんだ? あの人型は一体……」
「ああ、あれは彼女の魔術だ。ゴーレムってあるだろ? それの土じゃなくて炎版のやつだと思ってくれ」
「ゴーレム……。こんな数出せるもんだったかねぇ……」
土を操って人型を作り、それを動かして戦わせるゴーレムというのはこの世界の魔術にもある。
だが、普通はゴーレム専門の魔術師であってもせいぜいが十体程度だ。それも大きさを抑えめにした子供サイズくらいのやつ。
だが、今目の前には成人と変わらない程度の大きさの鬼が計三十体ほど並んでいる。しかもその術者である環はまだまだ余裕がありそうな様子。はっきり言って異常だ。
「ま、それはおいておいて早く調べよう。炎を使っている以上あまり長居はしたくないし」
酸素不足による時間制限もそうだが、そうでなくてもこんなところに居たくはない。
「あ、それなら大丈夫よ。魔術で空気の入れ替えも同時にやってるから」
そう言われて俺たちの来た通路を振り向き、注意深く意識を向けると確かに空気の流れと、それを操る魔力らしきものを感じられた。
「……まあそれでも急ごうか」
時間制限はなくなったが、それでもいつまでもここにいると気が滅入りそうだ。
俺たちは今、賊のアジトへと向かっている。
あの話し合いの後、アジトに放置しておいた賊をどうするかという話になって、見にいくことにしたのだ。
メンバーは昨日のアジト襲撃メンバーに加え、ニナが一緒に来ている。依頼を受けてここにいる以上はギルドに報告する必要があるから見て起きたいんだそうだ。あとは生き残っている賊への質問とそいつらの処遇についても色々ある。
そんなわけで俺たちは賊達のアジトへとむかっているわけだが、昨日とは違い賊に気づかれないように森の中の木々をかき分けて進んでいるわけではなく、森の中を賊の集団が移動してできたであろう獣道を堂々と進んでいる。
もう賊はいないわけだし、いたとしてもごく少数だ。だからこそこの道が使えるようになった。
そのおかげで昨日に比べると移動がかなり楽になったが、初めての道なので後どのくらいでアジトに着くのか分からなくかった。
歩いた距離からなんとなくこのへん、と判断はできるがそれだって正確じゃない。まあ昨日と同じ道を使ったところで森の移動に慣れていない俺にはわからないと思うけど。
「はい。後少し進めば着くかと」
「そうか」
イリンの言葉を受けてそのまま歩いていると、途中で分かれ道があったのでそちらへと進んでいく。
「ああ、ここだな」
まずたどり着いたのはイリンと環の担当した洞窟だ。
中に入ると、まるで我が家のように闊歩して先へと進んでいく環とイリン。
俺たちはそんな二人の後をついて進んでいく。
「この先に賊がいるわ。動けないとは思うけれど、警戒はしておいてちょうだい」
環にそう言われた俺たちはその言葉に頷いて先に進む。
俺が言った洞窟と作りが同じなんだな、なんて考えながら通路を進んでいると、どこからか微妙な呻き声のようなものが聞こえ始めた。
それは捕らえられた賊の声なんだとすぐにわかったが、なんだかすすり泣くような声や笑い声まで聞こえてきて、薄暗い通路と相まって正直怖い。
だが歩みを止めるわけにもいかずそのまま進むと、今までの通路とは違い大きな空間に出た。
そこは最低限の灯りすら残っていなかったせいか通路よりも暗く、先を見通すことができない。
そんな空間で、すすり泣く声と壊れたように笑う声、あとは念仏でも唱えているような声が先ほどよりもはっきり聞こえてきた。
ここに賊がいるんだろうけど、どんな状態になってるんだ?
「今灯りをつけるわね」
そう思っていると環がそう言って一歩前に出た。
そうして現れたのは灯りの魔術具などではなく、彼女のスキルによる炎の鬼達だった。
炎でできている彼らは自身の体から発する光で広間を照らした。
環のすぐを場に現れた炎の鬼達はすぐに動き出し広間の中央を囲うように並んだが、そうして露わになった光景は凄まじいものだった。
「……うわぁ」
その広間の中には賊がいた。それも、手足をなくし、中には顔や胴体に火傷を負った状態で地面に這い蹲っている状態でだ。
そんな奴らが笑ってたり泣いてたり念仏(?)を唱えている。
周囲を炎の鬼が囲っていることも考えるとそれは生贄の生贄の儀式のように思えてしまい、俺は顔が引きつるのが自分でも理解できた。
「……これ、警戒する必要とかないだろ」
どう見たってここにいる賊達が暴れたりするようには思えない。
確かに口は残っているから魔術なんかは使えるかもしれないけど、この状況でそこまでして反撃しようとする猛者はいないだろ。そんな根性のある奴は賊なんてやってないだろうし、もしいたのなら賞賛してやってもいいとさえ思う。
ガムラ達の様子を伺ってみると、ガムラもニナも若干引き気味になっている気がする。……気がする、じゃなくて本当に引いてるなこれは。
「何したんだ?」
「ちょっと暴れたから燃やしたのよ」
この惨状を見ながら笑顔でそう言ってのけた環。そこに一抹の恐怖を感じたが、それでも俺はこの子と結婚してるんだよなぁ……。
そんな事を若干遠い目をしながら考えていると、ニナが俺のそばに寄ってきて耳打ちしてきた。
「アンドー。これはなんなんだ? あの人型は一体……」
「ああ、あれは彼女の魔術だ。ゴーレムってあるだろ? それの土じゃなくて炎版のやつだと思ってくれ」
「ゴーレム……。こんな数出せるもんだったかねぇ……」
土を操って人型を作り、それを動かして戦わせるゴーレムというのはこの世界の魔術にもある。
だが、普通はゴーレム専門の魔術師であってもせいぜいが十体程度だ。それも大きさを抑えめにした子供サイズくらいのやつ。
だが、今目の前には成人と変わらない程度の大きさの鬼が計三十体ほど並んでいる。しかもその術者である環はまだまだ余裕がありそうな様子。はっきり言って異常だ。
「ま、それはおいておいて早く調べよう。炎を使っている以上あまり長居はしたくないし」
酸素不足による時間制限もそうだが、そうでなくてもこんなところに居たくはない。
「あ、それなら大丈夫よ。魔術で空気の入れ替えも同時にやってるから」
そう言われて俺たちの来た通路を振り向き、注意深く意識を向けると確かに空気の流れと、それを操る魔力らしきものを感じられた。
「……まあそれでも急ごうか」
時間制限はなくなったが、それでもいつまでもここにいると気が滅入りそうだ。
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