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王国との戦争
331:予想外の客人
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俺がこの街の復興に加わってから二週間ほどが経過した
俺は定期的に瓦礫やゴミの回収をしたり、資材の移動を手伝ったりして復興に協力していた。
その間、一緒にいたイリンは炊き出しや瓦礫を収集場所へ持ってきたりと復興に協力しており、環ちゃんは俺と違ってまともな勇者としての能力を使い、魔術で家の土台づくりや街の住民の治癒なんかを行っていた。俺も治癒や土の魔術が使えればよかったんだが、使えないので仕方がない。
とはいえ、流石にずっと働き通しってわけでもない。グラティースが気を使ったのか何日かに一日は休みがあるし、早く終わったら適当に街を歩いたりしていた。
休みの日にはイリンとは時折一緒に出かけたりしているし、家でもわりと一緒にいる時が多い。
だが、環ちゃんには未だはっきりと結論を出すことができずに、どっちつかずな態度で接してしまっている。それは彼女にとってはかなり苦しいことだろう。俺はかなりひどいことをしているし、その自覚はあった。
だがそれでも、イリンと接しているところを見て諦めてくれればいいとも思っていた。
……けど、なんだろうな。心の片隅、ほんのわずかではあったが、そう思っていない自分もいるように感じられた。そんな気がするんだ。
だが、そんな考えに気づかないフリして、俺は日々を過ごしてた。
そして今では元どおり──とはいかないが、それでもまあなんとか住民が風雨を凌げる程度の建物は出来たし、一ヶ月でこれなら十分すぎるだろう。
その復興に自分が役に立てたという、なんともいえない満足感を感じながら俺はいつものようにイリンと環ちゃんを左右に連れて家へと帰っていく。
「なんでお前がいるんだよ」
復興の手伝いを終えて家に帰って来たのだが、家に入ると中には予期せぬ客人が居た。
「ああ、お疲れ様です。復興を手伝っていただいて感謝していますよ」
こんなの予想できる訳がない。なんでこんなところにこの国の王様がいるんだよ……グラティース。
「予想よりも早く復興が進んでいるのはあなた方のおかげです」
「……全く役に立っていないとは流石に言わないが、それでも俺がやった事なんて大した事じゃないだろ?」
「いいえ。大した事ですよ。復興というのはまず壊れた家屋の瓦礫を撤去することから始まります。そして全部片付けてから家を建てていくのです。が、言葉にするのは簡単でも実行するのは非常に難しく時間のかかるものなのですよ」
ああ、聞いた事がある気がするな。ゼロからのスタートではなくマイナスからのスタートだって。
「ですが、それもあなたが瓦礫を片付けてくれたおかげでかなり早く次の段階に入る事ができました。あなたは大した事がないと言いましたが、あれだけで二、三ヶ月は早くなりましたよ」
「そうか。……まあ役にたったならいいさ」
俺だってそれなりにこの街を気に入ってるし、復興が早くなったならそれに越したことはない。これが王国だったらザマアミロだけど。
「で、お前達はなんでここにいるんだ?」
復興の件は良いとしても、肝心のなんでここにいるのかを答えてもらっていない。
「一応、本日は招待されてここに来たのですが?」
「招待? 俺がお前達をここにか?」
そんな覚えは全くない。イリンと環ちゃんに視線を向けると二人とも首を降っているので、俺が忘れているだけどいうこともないだろう。
「あなたかどうかは分かりませんが、とにかく許可は取っているから来い、と娘が」
「娘……」
「ああ、この子ではありませんよ」
そう言ってグラティースは自身の横に座っていた少女へと視線を向けた。
視線を向けられたその少女は、優雅な動きで立ち上がると俺たちの前へと歩いてきた。
「はじめまして、アンドー様。イリン様。タキヤ様。私はクリスティアと申します。こうして直接顔を合わせるのは初めてですが、お噂は聞いております。私自身一度あなた方とお話する事ができれば、と思っておりました。今後は仲良くして下さると嬉しいです」
クリスティアっていうと、毒をくらって倒れたけど、回復し次第すぐに国境まで飛んで行って爆撃した『姫様』か。
「どうもご丁寧に。ご存知のようですが、私は安堂彰人と申します。そのように言っていただけると私としても喜ばしく思います」
一度会ってみたいと思ってたんだよな。いや会ってみたいというか、見てみたい、かな? まあ野次馬根性みたいなもんだ。
「それで、私たちを呼んだ娘ですが、あなたもよく知っているでしょう? 最近はこの家に厄介になっているようですし」
「クーデリアか……」
「ええ。ですが、やはりあなたには許可は取っていませんでしたか」
「予想はしてた、というかほとんど確信していたって感じだな」
「まああの子ですし……」
その言葉で納得してしまった。あいつならそういう連絡不備とか普通にあるだろうし、俺に許可を取らないでいることもあるだろう。そしてそれは父親であるグラティースには当然のように予想の範囲内だったようだ。
「おお、帰ったなアンドー!」
と、そこでちょうど話に上がっていたクーデリアがキッチンから顔を出した。
……なんでそんなところから? キリーに料理でも教わってたんだろうか?
「クーデリア……これはどういうことだ?」
「ん? ああ。お父様達を招待したんだ。クーにはキリーの料理を食べさせてやりたかったし、お父様は……うん? 私はなんでお父様を呼んだんだ?」
クーってのは流れからしてクリスティア王女のことだろうか。だが、クーデリアは本気でなんでグラティースを呼んだのか自分でも分からないらしい。
「おい」
「まあ気にするな。ついでだ!」
「……私はついでですか……」
そう言ったグラティースの姿はどこか哀愁漂うものだった。
……子供からの父親に対する扱いなんてのは、たとえ王様であってもこんなものなのかもしれないな。
そう思うと、次からは『父親』という存在には少し優しくしてやろうと思えた。
俺は定期的に瓦礫やゴミの回収をしたり、資材の移動を手伝ったりして復興に協力していた。
その間、一緒にいたイリンは炊き出しや瓦礫を収集場所へ持ってきたりと復興に協力しており、環ちゃんは俺と違ってまともな勇者としての能力を使い、魔術で家の土台づくりや街の住民の治癒なんかを行っていた。俺も治癒や土の魔術が使えればよかったんだが、使えないので仕方がない。
とはいえ、流石にずっと働き通しってわけでもない。グラティースが気を使ったのか何日かに一日は休みがあるし、早く終わったら適当に街を歩いたりしていた。
休みの日にはイリンとは時折一緒に出かけたりしているし、家でもわりと一緒にいる時が多い。
だが、環ちゃんには未だはっきりと結論を出すことができずに、どっちつかずな態度で接してしまっている。それは彼女にとってはかなり苦しいことだろう。俺はかなりひどいことをしているし、その自覚はあった。
だがそれでも、イリンと接しているところを見て諦めてくれればいいとも思っていた。
……けど、なんだろうな。心の片隅、ほんのわずかではあったが、そう思っていない自分もいるように感じられた。そんな気がするんだ。
だが、そんな考えに気づかないフリして、俺は日々を過ごしてた。
そして今では元どおり──とはいかないが、それでもまあなんとか住民が風雨を凌げる程度の建物は出来たし、一ヶ月でこれなら十分すぎるだろう。
その復興に自分が役に立てたという、なんともいえない満足感を感じながら俺はいつものようにイリンと環ちゃんを左右に連れて家へと帰っていく。
「なんでお前がいるんだよ」
復興の手伝いを終えて家に帰って来たのだが、家に入ると中には予期せぬ客人が居た。
「ああ、お疲れ様です。復興を手伝っていただいて感謝していますよ」
こんなの予想できる訳がない。なんでこんなところにこの国の王様がいるんだよ……グラティース。
「予想よりも早く復興が進んでいるのはあなた方のおかげです」
「……全く役に立っていないとは流石に言わないが、それでも俺がやった事なんて大した事じゃないだろ?」
「いいえ。大した事ですよ。復興というのはまず壊れた家屋の瓦礫を撤去することから始まります。そして全部片付けてから家を建てていくのです。が、言葉にするのは簡単でも実行するのは非常に難しく時間のかかるものなのですよ」
ああ、聞いた事がある気がするな。ゼロからのスタートではなくマイナスからのスタートだって。
「ですが、それもあなたが瓦礫を片付けてくれたおかげでかなり早く次の段階に入る事ができました。あなたは大した事がないと言いましたが、あれだけで二、三ヶ月は早くなりましたよ」
「そうか。……まあ役にたったならいいさ」
俺だってそれなりにこの街を気に入ってるし、復興が早くなったならそれに越したことはない。これが王国だったらザマアミロだけど。
「で、お前達はなんでここにいるんだ?」
復興の件は良いとしても、肝心のなんでここにいるのかを答えてもらっていない。
「一応、本日は招待されてここに来たのですが?」
「招待? 俺がお前達をここにか?」
そんな覚えは全くない。イリンと環ちゃんに視線を向けると二人とも首を降っているので、俺が忘れているだけどいうこともないだろう。
「あなたかどうかは分かりませんが、とにかく許可は取っているから来い、と娘が」
「娘……」
「ああ、この子ではありませんよ」
そう言ってグラティースは自身の横に座っていた少女へと視線を向けた。
視線を向けられたその少女は、優雅な動きで立ち上がると俺たちの前へと歩いてきた。
「はじめまして、アンドー様。イリン様。タキヤ様。私はクリスティアと申します。こうして直接顔を合わせるのは初めてですが、お噂は聞いております。私自身一度あなた方とお話する事ができれば、と思っておりました。今後は仲良くして下さると嬉しいです」
クリスティアっていうと、毒をくらって倒れたけど、回復し次第すぐに国境まで飛んで行って爆撃した『姫様』か。
「どうもご丁寧に。ご存知のようですが、私は安堂彰人と申します。そのように言っていただけると私としても喜ばしく思います」
一度会ってみたいと思ってたんだよな。いや会ってみたいというか、見てみたい、かな? まあ野次馬根性みたいなもんだ。
「それで、私たちを呼んだ娘ですが、あなたもよく知っているでしょう? 最近はこの家に厄介になっているようですし」
「クーデリアか……」
「ええ。ですが、やはりあなたには許可は取っていませんでしたか」
「予想はしてた、というかほとんど確信していたって感じだな」
「まああの子ですし……」
その言葉で納得してしまった。あいつならそういう連絡不備とか普通にあるだろうし、俺に許可を取らないでいることもあるだろう。そしてそれは父親であるグラティースには当然のように予想の範囲内だったようだ。
「おお、帰ったなアンドー!」
と、そこでちょうど話に上がっていたクーデリアがキッチンから顔を出した。
……なんでそんなところから? キリーに料理でも教わってたんだろうか?
「クーデリア……これはどういうことだ?」
「ん? ああ。お父様達を招待したんだ。クーにはキリーの料理を食べさせてやりたかったし、お父様は……うん? 私はなんでお父様を呼んだんだ?」
クーってのは流れからしてクリスティア王女のことだろうか。だが、クーデリアは本気でなんでグラティースを呼んだのか自分でも分からないらしい。
「おい」
「まあ気にするな。ついでだ!」
「……私はついでですか……」
そう言ったグラティースの姿はどこか哀愁漂うものだった。
……子供からの父親に対する扱いなんてのは、たとえ王様であってもこんなものなのかもしれないな。
そう思うと、次からは『父親』という存在には少し優しくしてやろうと思えた。
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