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第三章 戦争編
第81話 再会 ②
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ふとこれは白昼夢だろうかと思ってしまう。
ずっと会いたかった。
気づくとルーナの事を考えていた。
そんな思いが募って、思わず幻覚を見てしまったのだろうか。
「……うぐっ、ひぐっ……な、なんで、置いてくの? わ、私も行くって……言った、のに」
幻覚は涙をボロボロと流しながら、ソレっぽい事を言っている。
ふむ。なんとリアルな。
とりあえず、幻覚の唇を奪ってみた。
幻覚は大人しく応じる。
よく知っている感触だった。
思わず舌を入れてみると、必死に絡めてくる。
ルーナの味がする。
ちょっと信じられないが、もしかして本物なのだろうか。
なんでこんなところにいるんだよ。
俺は不覚にも目頭が熱くなって――。
「喝っーーーーー!!!」
その時、物凄い大音声が響いた。
思わず身を竦ませて、ルーナの唇を離してしまう。
見れば、ヴァンダレイジジイが血管をブチブチ言わせながら、怒り狂っている。
片目から血がブシャーと吹き出ている。
「は、白昼堂々、女人と、せ、接吻するとは! なんたる! ぬぁんたぁる!!! ……ううっ」
途中で、頭に血が上り過ぎたのか、はたまた血を流しすぎたのか、ヴァンダレイジジイがよろめいた。
「お、おい!」
咄嗟に支える。
93人目の死者になるとかシャレにならない。
というか、お嬢様もピートもラッセルも、輜重車に乗った怪我人のジジイ達まで、俺とルーナのキスに呆気に取られている。
よく考えたら、サラッと路チュウしてしまった。
そりゃ呆気にとられる。
さすがに、時と場合を考えるべきだっただろうか。
当のルーナはジジイの激怒と出血にちょっと怯えている。
可愛い。
そんな事を考えていたら、支えていたジジイに手を振り払われてしまった。
「……それで、この娘はなんじゃ? 貴様の嫁か?」
ヴァンダレイジジイはルーナをジロジロと見ている。
恐らく枯れ果てているジジイなので、その目つきにエロさはなかったが、ルーナを視姦していいのは俺だけである。
いくら枯れたジジイとは言え、許せん。
この場でトドメを刺してやろうと思った。
「ぐすっ、そ、そうです。コウの妻のルーナと申します。この度は主人がお世話になりました」
月光魔剣に手をかけていると、ルーナが勝手に答えていた。
涙をゴシゴシと擦ってから、ペコリと頭を下げている。
うわ、ルーナの敬語とか初めて聞いた。
さすが貴族のお嬢様というべきか、泣きべそをかいていたのに気品のようなものがブワッと漂う。
「お、おお、これはどうもご丁寧に。こやつの上官を務めております。ヴァンダレイ・シュヴァインベルクと申します」
ルーナの気品に気圧されたように、ヴァンダレイジジイも頭を下げている。
「お、同じく上官で軍を率いております、レティシア・フィンデルと申します」
レティーお嬢様まで馬から降りて、ルーナに頭を下げている。
貴族のお嬢様がそんなに簡単に頭を下げていいのだろうか。
一応、ルーナは平民ということになるのだが。
というか、こうしてどんどんルーナが事実上の妻になっていく。
もはやルーナと結婚をしているわけではない事実を知っているのは俺とルーナしかいない気がする。
いや、ルーナは最近本気で妻になっていると思いこんでいるフシがある。
犯しすぎた弊害だろうか。
とにかく、もはや事実を知るのは俺だけだ。
この世界に俺だけとか。
孤独すぎてヤバイ。
そんな時、ルーナの足元がぐらりとふらついた。
慌てて抱きかかえる。
「お、おい。大丈夫か?」
「……うん。ちょっと寝不足なだけだ」
そういえば、ルーナの顔色は悪い。
しかも、まるで長年放浪し続けている旅人のような格好をしている。
着ているマントはボロボロで、髪もパサパサ、素肌は土埃に汚れている。
頬も心なしかコケているように見える。
たった10日程会わなかっただけで、なぜこうも変わり果てるのか。
「寝不足? というかなんでそんなにボロボロなんだよ? お前」
そう聞いてみると、再びルーナの目がじわじわしだした。
「だって、だってえ、早く行かないと、お、お前が死んじゃうと思ったんだ。せ、セレナと姉メイドは、妻なら妻らしく家で夫の帰りを待つべきだって言ってて、私もそうだとは思ったけど、が、我慢できなくて……ひっく、ぐす……セレナに電撃を食らったり、凍らされたり、姉メイドに眠らされたりしたけど、頑張って、脱出してきたんだ」
ルーナはもはやボロボロ泣き出す。
先程までの気品はどこへ行ってしまったのだろうか。
というか。
「……お前、すげえな」
あの2人から逃げ出すとか。
俺には出来そうもない。
とりあえず、ルーナの頭を撫でてやると、一瞬嬉しそうな顔をした。
「……うん。えへへ。それでな? 寝る間も惜しんで追いかけてきたんだ。慌てて家を飛び出してきたから、旅支度もできなかったし、お金も持ってこなかったから、食料も買えなくて、狩りをしようにも、そ、そんな事している間に、お前が死んじゃったらと思ったら……ぐすっ、ひっく……で、でも身体がだんだん言うことを聞かなくなってきて、あちこち転げ回って、痛くて、でも、早く追いつきたくて、それなのに、早く歩けなくて、ふ、不安でえ」
そのままびえーんと泣き出してしまった。
とりあえず、頭を撫でながらなだめる。
子供か。
そこまで思ってくれたのは嬉しくはあるが。
いや、俺が悪い。
家を出る前に、ちゃんと言い聞かせるべきだった。
いやいや、言い聞かせてはみたのだが、ルーナは頑として頷かなかった。
だから、気絶するまで抱いて、こっそりと置いてきたのだ。
カンナさんに頼んでおいたので、上手くやってくれると思っていたのだが、結局、ルーナは追いかけてきてしまった。
こんなボロボロになって。
「……水分はちゃんととっていたのか?」
ルーナは泣きじゃくりながら、首をフルフルする。
とりあえず、指を加えさせて《水生成》を発動させた。
ルーナは大人しくコクコク飲んでいる。
うーむ、母性本能に目覚めてしまいそうだ。
というか、実際に戦争を体験してみて。
ルーナを連れてこなくて良かったと心の底から思う。
損耗率90%超えの大激戦だったのだ。
あの場にルーナがいたらと思うと、ゾッとする。
「と、とりあえず、輜重車が空いてるので、奥さまをそこで休ませては? 糧食も大分余ってるので、食べて結構ですから」
俺とルーナのやり取りを黙って見ていたレティーお嬢様がそんな提案をしてくれた。
泣きじゃくるルーナに若干引いている気がするが。
とはいえ、ありがたい提案だった。
とりあえず、ルーナをひょいっと抱えて、輜重車に乗せる。
ルーナが離れがたいようにしがみついて来たが、優しく引き離した。
「すぐ近くにいるから」
「……うん」
荷馬車と言ってもいい輜重車の淵に手をついて、俺を見つめるルーナを見ていると、ドナドナのBGMが聞こえてくる気がしてしまう。
「さあ、奥さん、これを食べなさい」
「長旅、疲れたじゃろう」
輜重車に乗っていた怪我人ジジイ達がルーナに干し肉とかを渡してくれている。
少しの間、ジジイ達に任せておけば安心だろう。
「……お世話になります」
「いやいや、なんの。それにしても、奥さん、べっぴんさんじゃのう」
あん?
俺の女に何色目使ってんだジジイ。
べっぴん?
ルーナはコンビニでしぶとく売り続けているエロ本じゃねえんだぞ!?
あれ、まだあるよね?
とりあえず、輜重車のジジイども全員にガンを飛ばしておいた。
ジジイどもは皆一様に苦笑いをしていた。
いや、気にしすぎなのはわかってるんだけどね。
ルーナとの思わぬ再会のせいで、俺たちの足は完全に止まっていた。
とりあえず、軽く詫びて、再び歩きだす。
「……それにしても、女が戦場まで追いかけてくるなんて、70年生きてきて、初めて聞いたぞ。なんなんじゃ、貴様は」
ヴァンダレイジジイがぼそっとそんな事を呟いていた。
30年生きてきた俺も初めて聞いた。
まあ、俺がどうのというより、ルーナの情が深いだけだが。
情が深すぎて、ちょっと心配になってしまう。
もしも、あの戦場で俺が死んでいたら、ルーナはどうなっていたのだろうか。
ふと輜重車のルーナを見ると、干し肉をはむはむと頬張っていた。
俺と目が会うと、嬉しそうにニコっと笑う。
たぶん、俺が死んだらすげえ泣くんだろうな。
そう考えると、胸が痛む。
というか、あの戦場で俺が死んで、王国軍が負けてたら、オークが国中に雪崩込んでくるとヴァンダレイジジイは言っていた。
ルーナなんて即犯されるだろう。
エルフとはそういう運命の下に生まれついている。
……腸が煮えくり返りそうになる。
今回は、なんとか撃退出来たが。
「……なあ、オークの侵攻って頻繁に起きるんだよな?」
歯をぎりぎりと噛み締めながら、ヴァンダレイジジイに聞いてみた。
「何じゃ、藪から棒に。……そうじゃな。数ヶ月に一度は侵攻してきおる。あんな騎馬隊が出てきたのは初めてじゃがのう」
ということは、すぐにまた攻めてくるということになる。
次は大丈夫なのだろうか。
正直、もう二度と戦争なんて行きたくない。
ただ王国軍がオークに負ける可能性を考えると不安になる。
俺一人の力なんて微々たるものだろうし、王国軍が負けたらルーナ達を連れて逃げればいいのだが。
ただ、胸中に黒いシミが出来るように。
俺は漠然とした不安を感じた。
しばらく歩いていたら、ラッセルに話しかけられた。
「……綺麗な奥さんだね」
久しぶりに声を聞いた気がする。
口下手すぎて好感が持てる。
ラッセルには俺に近いものを感じる。
伸びるよ、この子は。
「ああ、まあな。そういえば、悪かったな」
「何がだい?」
「いや、その、あいつの事黙っててさ」
ピートとラッセルとの童貞話が楽しくて、ルーナの事は言っていなかった。
俺は子羊の皮を被った狼だった事になる。
裏切った感が半端ない。ごめんなさい。
「そんな。謝ることじゃないさ」
ラッセルは何事もなかったかのように笑って許してくれた。
いい奴だ。
恐る恐るピートの方にも目を向けてみる。
「いえ、本当に……その、さすがだと思いました!」
さすが?
嫌味だろうか。
ちょっと落ち込む。
そのまま、俺たちは帰り道をひたすら歩き続けた。
「……コウ」
輜重車の縁から顔だけをひょこっと出したルーナが甘えた声を出す。
なんだろうと思って、振り返る。
「なんでもない。えへへ」
そう言って、ルーナは嬉しそうに微笑むのだ。
そんなやり取りを何度もした。
多分、他の人間がやってたら迷わず斬り殺していたと思う。
ただ、ルーナが可愛くて仕方なかった。
なんというか。
ムラムラ感がどんどん溜まっていく。
周りの皆は気まずそうにしていたが。
斬り殺されなかったので、皆の度量が大きいのだろう。
そんなこんなでたまり続けたムラムラ感は夜に爆発した。
夜営中、俺とルーナは度量の大きい皆の配慮から、少し離れた場所に2人で寝ていた。
とは言え、一応行軍中だ。
ちょっといちゃつくだけで、大人しく寝ようと思っていたのだ。
しかし、10日あまりの禁欲生活に加えて、日中ルーナが俺のドキドキダイナモをせっせと貯めるので、大人しく寝ていたのは数秒だけで、俺はルーナに襲いかかっていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! そ、そのずっと旅をしていたから、お風呂入ってなくて、き、汚いから……」
はあ?
ルーナの汚れなんてオプションみたいなもので、場所が場所なら、くっ! とか言いながら追加料金を払っているところだ。
とはいえ、ルーナも嫌がっているし、よく考えたら、いくら離れていると言ってもすぐそばに他人がいる場所でするのも申し訳ない気がする。
そんなわけで、ルーナを抱えて、河原までやってきた。
ここなら、多少の声も、川のせせらぎがかき消してくれるだろう。
水浴びをしながら、ルーナを抱いた。
久しぶりのルーナは格別だった。
「……本当に、無事で良かった。おかえり、コウ。大好きだぞ」
「ただいま、ルーナ」
そんな遣り取りをしながら、明け方までルーナを抱いた。
久しぶりにスッキリした。
気分爽快に朝を迎えた。
しかし、そんな俺を迎えていたのは、目の下にクマを作った我が戦友たちと、ブチ切れたヴァンダレイジジイだった。
川のせせらぎは何もかき消してくれなかったらしい。
そりゃそうだよね。だってせせらぎだもの。
朝からヴァンダレイジジイに説教されてしまった。
次回からは、ルーナに声を抑えさせよう。
ちなみに、やりすぎて足腰が立たなくなったルーナはこの日も輜重車のお世話になった。
誠に遺憾な事に、翌日も、そのまた翌日も毎朝ヴァンダレイジジイの説教は続いた。
いろいろ工夫したつもりだったのに。
本当に遺憾である。
というか、ヴァンダレイジジイは怒る度に血圧が目に見えて上がっている。
身体は大切にした方がいいぞと言ってみたら、血管が千切れるくらい大激怒していた。
無事に街まで帰還できるか心配になった。
そんな心配も無事に街に到着したことで杞憂になった。
ルーナといちゃつき倒したお陰か、最後の方は皆慣れたもので、俺たちが何をしていても、皆ノーリアクションになった。
過ぎたるは猶及ばざるが如しということわざがあるが、アレは嘘だと思う。
皆が呆れるまでやり通せば、俺の勝ちなのだ。
ジジイだけは最後までプンスカ怒っていたが。
街に到着すると、俺たちはあっさり解散になった。
あっさり過ぎて、ちょっとさみしかった。
「ふん、またな」
「……また」
「いつか、近いうちに!」
ヴァンダレイジジイ、ラッセル、ピートの順にそんな短い言葉をかけて去っていく。
ラッセルとピートはともかく、ヴァンダレイジジイは肩透かしを食らった感が半端なかった。
もっとこうさあ。
鬼教官と出来の悪い教え子のラスト的な何かが欲しかった。
貴様は、儂の最高の弟子じゃった。
くらい言ってくれてもいい気がするのだが。
そうすれば、俺も泣きながら抱きつく、事は絶対にしないが、元気でな、くらいは言ってあげたのに。
空気の読めないジジイである。
別にさみしいわけではないが。
いや、本当に。
……。
「それでは、コウ。大将軍閣下もおっしゃってましたが、恐らく近いうちに王都からの使者が来ると思います。その時は、一緒に王都に行きましょう」
レティーお嬢様はそう言い残して帰っていった。
お嬢様にまた会えるのは嬉しいが、王都って日本で言う新宿みたいなものだろうか。
絶対に人が一杯いるだろうから、行きたくないのだが。
「王都? なんで王都から使者が来るんだ?」
ルーナが不思議そうな顔をしている。
「いや、なんか王様がご褒美くれるんだってさ。戦争で頑張ったからって」
「ふうん? 慰安みたいなものかな。お前みたいな一兵卒にまで声をかけるなんて気前のいい王様だな」
なんかルーナが勘違いしているが、真実を告げると怒られるだろうから黙っておこうと思う。
全軍の前で土魔法使ったなんて言ったら、絶対に怒られる。
「なあなあ、それよりも街だぞ? 色んなところ見て回ろう? 日用品も買って行きたいし、服とかお菓子とかいっぱいあるぞ」
ルーナは嬉しそうに俺の腕に抱きつく。
さながらデートと言ったところか。
まあ、せっかく戦争も無事終わったことだしいいのだが。
「……お前、金持ってるのか?」
「……持ってない」
「奇遇だな。俺も……」
ルーナのテンションがみるみる下がっていく。
俺のテンションもさすがに下がってしまう。
「もう俺たち32なんだからさ、外出する時はサイフくらい持って出ような」
「……うん」
そのまま、俺たちは大人しく自宅へ帰った。
まあ、街には縁がないということだろう。
ずっと会いたかった。
気づくとルーナの事を考えていた。
そんな思いが募って、思わず幻覚を見てしまったのだろうか。
「……うぐっ、ひぐっ……な、なんで、置いてくの? わ、私も行くって……言った、のに」
幻覚は涙をボロボロと流しながら、ソレっぽい事を言っている。
ふむ。なんとリアルな。
とりあえず、幻覚の唇を奪ってみた。
幻覚は大人しく応じる。
よく知っている感触だった。
思わず舌を入れてみると、必死に絡めてくる。
ルーナの味がする。
ちょっと信じられないが、もしかして本物なのだろうか。
なんでこんなところにいるんだよ。
俺は不覚にも目頭が熱くなって――。
「喝っーーーーー!!!」
その時、物凄い大音声が響いた。
思わず身を竦ませて、ルーナの唇を離してしまう。
見れば、ヴァンダレイジジイが血管をブチブチ言わせながら、怒り狂っている。
片目から血がブシャーと吹き出ている。
「は、白昼堂々、女人と、せ、接吻するとは! なんたる! ぬぁんたぁる!!! ……ううっ」
途中で、頭に血が上り過ぎたのか、はたまた血を流しすぎたのか、ヴァンダレイジジイがよろめいた。
「お、おい!」
咄嗟に支える。
93人目の死者になるとかシャレにならない。
というか、お嬢様もピートもラッセルも、輜重車に乗った怪我人のジジイ達まで、俺とルーナのキスに呆気に取られている。
よく考えたら、サラッと路チュウしてしまった。
そりゃ呆気にとられる。
さすがに、時と場合を考えるべきだっただろうか。
当のルーナはジジイの激怒と出血にちょっと怯えている。
可愛い。
そんな事を考えていたら、支えていたジジイに手を振り払われてしまった。
「……それで、この娘はなんじゃ? 貴様の嫁か?」
ヴァンダレイジジイはルーナをジロジロと見ている。
恐らく枯れ果てているジジイなので、その目つきにエロさはなかったが、ルーナを視姦していいのは俺だけである。
いくら枯れたジジイとは言え、許せん。
この場でトドメを刺してやろうと思った。
「ぐすっ、そ、そうです。コウの妻のルーナと申します。この度は主人がお世話になりました」
月光魔剣に手をかけていると、ルーナが勝手に答えていた。
涙をゴシゴシと擦ってから、ペコリと頭を下げている。
うわ、ルーナの敬語とか初めて聞いた。
さすが貴族のお嬢様というべきか、泣きべそをかいていたのに気品のようなものがブワッと漂う。
「お、おお、これはどうもご丁寧に。こやつの上官を務めております。ヴァンダレイ・シュヴァインベルクと申します」
ルーナの気品に気圧されたように、ヴァンダレイジジイも頭を下げている。
「お、同じく上官で軍を率いております、レティシア・フィンデルと申します」
レティーお嬢様まで馬から降りて、ルーナに頭を下げている。
貴族のお嬢様がそんなに簡単に頭を下げていいのだろうか。
一応、ルーナは平民ということになるのだが。
というか、こうしてどんどんルーナが事実上の妻になっていく。
もはやルーナと結婚をしているわけではない事実を知っているのは俺とルーナしかいない気がする。
いや、ルーナは最近本気で妻になっていると思いこんでいるフシがある。
犯しすぎた弊害だろうか。
とにかく、もはや事実を知るのは俺だけだ。
この世界に俺だけとか。
孤独すぎてヤバイ。
そんな時、ルーナの足元がぐらりとふらついた。
慌てて抱きかかえる。
「お、おい。大丈夫か?」
「……うん。ちょっと寝不足なだけだ」
そういえば、ルーナの顔色は悪い。
しかも、まるで長年放浪し続けている旅人のような格好をしている。
着ているマントはボロボロで、髪もパサパサ、素肌は土埃に汚れている。
頬も心なしかコケているように見える。
たった10日程会わなかっただけで、なぜこうも変わり果てるのか。
「寝不足? というかなんでそんなにボロボロなんだよ? お前」
そう聞いてみると、再びルーナの目がじわじわしだした。
「だって、だってえ、早く行かないと、お、お前が死んじゃうと思ったんだ。せ、セレナと姉メイドは、妻なら妻らしく家で夫の帰りを待つべきだって言ってて、私もそうだとは思ったけど、が、我慢できなくて……ひっく、ぐす……セレナに電撃を食らったり、凍らされたり、姉メイドに眠らされたりしたけど、頑張って、脱出してきたんだ」
ルーナはもはやボロボロ泣き出す。
先程までの気品はどこへ行ってしまったのだろうか。
というか。
「……お前、すげえな」
あの2人から逃げ出すとか。
俺には出来そうもない。
とりあえず、ルーナの頭を撫でてやると、一瞬嬉しそうな顔をした。
「……うん。えへへ。それでな? 寝る間も惜しんで追いかけてきたんだ。慌てて家を飛び出してきたから、旅支度もできなかったし、お金も持ってこなかったから、食料も買えなくて、狩りをしようにも、そ、そんな事している間に、お前が死んじゃったらと思ったら……ぐすっ、ひっく……で、でも身体がだんだん言うことを聞かなくなってきて、あちこち転げ回って、痛くて、でも、早く追いつきたくて、それなのに、早く歩けなくて、ふ、不安でえ」
そのままびえーんと泣き出してしまった。
とりあえず、頭を撫でながらなだめる。
子供か。
そこまで思ってくれたのは嬉しくはあるが。
いや、俺が悪い。
家を出る前に、ちゃんと言い聞かせるべきだった。
いやいや、言い聞かせてはみたのだが、ルーナは頑として頷かなかった。
だから、気絶するまで抱いて、こっそりと置いてきたのだ。
カンナさんに頼んでおいたので、上手くやってくれると思っていたのだが、結局、ルーナは追いかけてきてしまった。
こんなボロボロになって。
「……水分はちゃんととっていたのか?」
ルーナは泣きじゃくりながら、首をフルフルする。
とりあえず、指を加えさせて《水生成》を発動させた。
ルーナは大人しくコクコク飲んでいる。
うーむ、母性本能に目覚めてしまいそうだ。
というか、実際に戦争を体験してみて。
ルーナを連れてこなくて良かったと心の底から思う。
損耗率90%超えの大激戦だったのだ。
あの場にルーナがいたらと思うと、ゾッとする。
「と、とりあえず、輜重車が空いてるので、奥さまをそこで休ませては? 糧食も大分余ってるので、食べて結構ですから」
俺とルーナのやり取りを黙って見ていたレティーお嬢様がそんな提案をしてくれた。
泣きじゃくるルーナに若干引いている気がするが。
とはいえ、ありがたい提案だった。
とりあえず、ルーナをひょいっと抱えて、輜重車に乗せる。
ルーナが離れがたいようにしがみついて来たが、優しく引き離した。
「すぐ近くにいるから」
「……うん」
荷馬車と言ってもいい輜重車の淵に手をついて、俺を見つめるルーナを見ていると、ドナドナのBGMが聞こえてくる気がしてしまう。
「さあ、奥さん、これを食べなさい」
「長旅、疲れたじゃろう」
輜重車に乗っていた怪我人ジジイ達がルーナに干し肉とかを渡してくれている。
少しの間、ジジイ達に任せておけば安心だろう。
「……お世話になります」
「いやいや、なんの。それにしても、奥さん、べっぴんさんじゃのう」
あん?
俺の女に何色目使ってんだジジイ。
べっぴん?
ルーナはコンビニでしぶとく売り続けているエロ本じゃねえんだぞ!?
あれ、まだあるよね?
とりあえず、輜重車のジジイども全員にガンを飛ばしておいた。
ジジイどもは皆一様に苦笑いをしていた。
いや、気にしすぎなのはわかってるんだけどね。
ルーナとの思わぬ再会のせいで、俺たちの足は完全に止まっていた。
とりあえず、軽く詫びて、再び歩きだす。
「……それにしても、女が戦場まで追いかけてくるなんて、70年生きてきて、初めて聞いたぞ。なんなんじゃ、貴様は」
ヴァンダレイジジイがぼそっとそんな事を呟いていた。
30年生きてきた俺も初めて聞いた。
まあ、俺がどうのというより、ルーナの情が深いだけだが。
情が深すぎて、ちょっと心配になってしまう。
もしも、あの戦場で俺が死んでいたら、ルーナはどうなっていたのだろうか。
ふと輜重車のルーナを見ると、干し肉をはむはむと頬張っていた。
俺と目が会うと、嬉しそうにニコっと笑う。
たぶん、俺が死んだらすげえ泣くんだろうな。
そう考えると、胸が痛む。
というか、あの戦場で俺が死んで、王国軍が負けてたら、オークが国中に雪崩込んでくるとヴァンダレイジジイは言っていた。
ルーナなんて即犯されるだろう。
エルフとはそういう運命の下に生まれついている。
……腸が煮えくり返りそうになる。
今回は、なんとか撃退出来たが。
「……なあ、オークの侵攻って頻繁に起きるんだよな?」
歯をぎりぎりと噛み締めながら、ヴァンダレイジジイに聞いてみた。
「何じゃ、藪から棒に。……そうじゃな。数ヶ月に一度は侵攻してきおる。あんな騎馬隊が出てきたのは初めてじゃがのう」
ということは、すぐにまた攻めてくるということになる。
次は大丈夫なのだろうか。
正直、もう二度と戦争なんて行きたくない。
ただ王国軍がオークに負ける可能性を考えると不安になる。
俺一人の力なんて微々たるものだろうし、王国軍が負けたらルーナ達を連れて逃げればいいのだが。
ただ、胸中に黒いシミが出来るように。
俺は漠然とした不安を感じた。
しばらく歩いていたら、ラッセルに話しかけられた。
「……綺麗な奥さんだね」
久しぶりに声を聞いた気がする。
口下手すぎて好感が持てる。
ラッセルには俺に近いものを感じる。
伸びるよ、この子は。
「ああ、まあな。そういえば、悪かったな」
「何がだい?」
「いや、その、あいつの事黙っててさ」
ピートとラッセルとの童貞話が楽しくて、ルーナの事は言っていなかった。
俺は子羊の皮を被った狼だった事になる。
裏切った感が半端ない。ごめんなさい。
「そんな。謝ることじゃないさ」
ラッセルは何事もなかったかのように笑って許してくれた。
いい奴だ。
恐る恐るピートの方にも目を向けてみる。
「いえ、本当に……その、さすがだと思いました!」
さすが?
嫌味だろうか。
ちょっと落ち込む。
そのまま、俺たちは帰り道をひたすら歩き続けた。
「……コウ」
輜重車の縁から顔だけをひょこっと出したルーナが甘えた声を出す。
なんだろうと思って、振り返る。
「なんでもない。えへへ」
そう言って、ルーナは嬉しそうに微笑むのだ。
そんなやり取りを何度もした。
多分、他の人間がやってたら迷わず斬り殺していたと思う。
ただ、ルーナが可愛くて仕方なかった。
なんというか。
ムラムラ感がどんどん溜まっていく。
周りの皆は気まずそうにしていたが。
斬り殺されなかったので、皆の度量が大きいのだろう。
そんなこんなでたまり続けたムラムラ感は夜に爆発した。
夜営中、俺とルーナは度量の大きい皆の配慮から、少し離れた場所に2人で寝ていた。
とは言え、一応行軍中だ。
ちょっといちゃつくだけで、大人しく寝ようと思っていたのだ。
しかし、10日あまりの禁欲生活に加えて、日中ルーナが俺のドキドキダイナモをせっせと貯めるので、大人しく寝ていたのは数秒だけで、俺はルーナに襲いかかっていた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! そ、そのずっと旅をしていたから、お風呂入ってなくて、き、汚いから……」
はあ?
ルーナの汚れなんてオプションみたいなもので、場所が場所なら、くっ! とか言いながら追加料金を払っているところだ。
とはいえ、ルーナも嫌がっているし、よく考えたら、いくら離れていると言ってもすぐそばに他人がいる場所でするのも申し訳ない気がする。
そんなわけで、ルーナを抱えて、河原までやってきた。
ここなら、多少の声も、川のせせらぎがかき消してくれるだろう。
水浴びをしながら、ルーナを抱いた。
久しぶりのルーナは格別だった。
「……本当に、無事で良かった。おかえり、コウ。大好きだぞ」
「ただいま、ルーナ」
そんな遣り取りをしながら、明け方までルーナを抱いた。
久しぶりにスッキリした。
気分爽快に朝を迎えた。
しかし、そんな俺を迎えていたのは、目の下にクマを作った我が戦友たちと、ブチ切れたヴァンダレイジジイだった。
川のせせらぎは何もかき消してくれなかったらしい。
そりゃそうだよね。だってせせらぎだもの。
朝からヴァンダレイジジイに説教されてしまった。
次回からは、ルーナに声を抑えさせよう。
ちなみに、やりすぎて足腰が立たなくなったルーナはこの日も輜重車のお世話になった。
誠に遺憾な事に、翌日も、そのまた翌日も毎朝ヴァンダレイジジイの説教は続いた。
いろいろ工夫したつもりだったのに。
本当に遺憾である。
というか、ヴァンダレイジジイは怒る度に血圧が目に見えて上がっている。
身体は大切にした方がいいぞと言ってみたら、血管が千切れるくらい大激怒していた。
無事に街まで帰還できるか心配になった。
そんな心配も無事に街に到着したことで杞憂になった。
ルーナといちゃつき倒したお陰か、最後の方は皆慣れたもので、俺たちが何をしていても、皆ノーリアクションになった。
過ぎたるは猶及ばざるが如しということわざがあるが、アレは嘘だと思う。
皆が呆れるまでやり通せば、俺の勝ちなのだ。
ジジイだけは最後までプンスカ怒っていたが。
街に到着すると、俺たちはあっさり解散になった。
あっさり過ぎて、ちょっとさみしかった。
「ふん、またな」
「……また」
「いつか、近いうちに!」
ヴァンダレイジジイ、ラッセル、ピートの順にそんな短い言葉をかけて去っていく。
ラッセルとピートはともかく、ヴァンダレイジジイは肩透かしを食らった感が半端なかった。
もっとこうさあ。
鬼教官と出来の悪い教え子のラスト的な何かが欲しかった。
貴様は、儂の最高の弟子じゃった。
くらい言ってくれてもいい気がするのだが。
そうすれば、俺も泣きながら抱きつく、事は絶対にしないが、元気でな、くらいは言ってあげたのに。
空気の読めないジジイである。
別にさみしいわけではないが。
いや、本当に。
……。
「それでは、コウ。大将軍閣下もおっしゃってましたが、恐らく近いうちに王都からの使者が来ると思います。その時は、一緒に王都に行きましょう」
レティーお嬢様はそう言い残して帰っていった。
お嬢様にまた会えるのは嬉しいが、王都って日本で言う新宿みたいなものだろうか。
絶対に人が一杯いるだろうから、行きたくないのだが。
「王都? なんで王都から使者が来るんだ?」
ルーナが不思議そうな顔をしている。
「いや、なんか王様がご褒美くれるんだってさ。戦争で頑張ったからって」
「ふうん? 慰安みたいなものかな。お前みたいな一兵卒にまで声をかけるなんて気前のいい王様だな」
なんかルーナが勘違いしているが、真実を告げると怒られるだろうから黙っておこうと思う。
全軍の前で土魔法使ったなんて言ったら、絶対に怒られる。
「なあなあ、それよりも街だぞ? 色んなところ見て回ろう? 日用品も買って行きたいし、服とかお菓子とかいっぱいあるぞ」
ルーナは嬉しそうに俺の腕に抱きつく。
さながらデートと言ったところか。
まあ、せっかく戦争も無事終わったことだしいいのだが。
「……お前、金持ってるのか?」
「……持ってない」
「奇遇だな。俺も……」
ルーナのテンションがみるみる下がっていく。
俺のテンションもさすがに下がってしまう。
「もう俺たち32なんだからさ、外出する時はサイフくらい持って出ような」
「……うん」
そのまま、俺たちは大人しく自宅へ帰った。
まあ、街には縁がないということだろう。
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