ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第二章 吸血鬼編

第46話 逆襲 ①

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 怠い身体を押して、荒野を歩き続けた。
 今日はどちらかと言うと涼しいので、気分はそんなに悪くない。

 歩きながら思うのだ。

 引きこもりの俺が、人がたくさんいる場所に向かって歩くなんてありえないな、と。
 まあ、BBQとかお花見に参加するとかではなく、人殺しに行くと思うとかなり気が楽になる。
 それはそれで、どうかと思うけど。

 思えば、この世界に来てから俺も随分変わった気がする。
 最初は社畜根性が抜けきらなかったけど、最近は随分規則正しい生活をしている。
 朝早く起きて、昼間にそれなりに活動して、夜はちゃんと寝る。
 日本にいた頃だったら、考えられない生活だ。
 こっちの世界には、電気というものがないので、夜はヤルか寝るかしかないのだ。
 人間としては、今のほうが正しいのかもしれないと思う。

 そもそも、俺が何のために山賊のアジトに向かっているのかというと、薄汚い山賊からルーナを守るためだったりする。
 その事実を、日本に住んでいた頃の俺が知ったら、すごく驚くだろう。
 今の俺からしても、改めて考えてみると、恥ずかし恥ずかしと地面をのたうち回りたくなる。
 やっぱやめようかな。
 そう思って立ち止まるけど、怪我をして青白い顔でベッドに横たわるルーナの姿が脳裏に浮かぶ。
 いや、やっぱぶっ殺してやる。
 そう思い直して、俺は再び歩きだす。
 本当に俺も、変わったものだ。


 暫く歩くと、小さな山が見えてきた。
 あれが、カンナさんが言っていたエルベ山だろうか。
 そのまま、歩を進めると、山の麓に馬小屋が見えてきた。
 馬小屋には、数十頭の馬が繋がれているのが見える。
 そして、その馬小屋の奥に、山の斜面をくり抜くように設置された小さな木の扉が見える。
 山の斜面に開いた洞窟のような場所にアジトを形成しているのだろうか。
 ちょっと秘密基地っぽくて楽しそうだ。

 木の扉の近くには、2人のガラの悪い男が地べたに座り込んでカードゲームのようなものをしていた。
 いるだろうなとは思っていたけど、あれは見張りだろう。
 2人ともカードゲームに熱中していて、俺には気づいていない。
 見張りになってないじゃないかと思う。
 働け。馬鹿野郎。

 さて、どうしよう。
 ゲームとかなら、隠密モードに入ってこっそり近づいてサクッと殺すとか、遠くから弓とかの遠隔攻撃でサクッと殺すかのどちらかだ。
 とにかく他の連中に気づかれないように、サクッと殺すのが重要なのだ。
 ただ、俺には隠密スキルとかもないし、弓も使えない。
 なので、悩むだけ無駄なのである。

 俺は普通に扉に向かって、歩き出した。

「……あん? なんだお前? なんか用か?」

 カードゲームをしていた男の一人が、俺に気づいて声をかけてきた。
 対人恐怖症の俺は、少しビクッとしたが、構わず剣を振り抜いた。

 剣は、あっさりと男の首を跳ね飛ばす。
 頭を失くした首からは、血が噴水のように吹き出していた。

『18ポイントの経験値を獲得しました。』

「ひいっ!」

 もう一人の男は、突然の惨劇に腰を抜かしていた。

「な、なんだよ、お前! と、突然何をするんだ!?」

 答えはせずに、俺は男に向かって剣を振り下ろす。
 剣は男を袈裟斬りに切り裂く。
 男は短い悲鳴を上げて、動かくなった。

『12ポイントの経験値を獲得しました。』

 あっさりと2件の殺人を犯してしまった。
 突然何をするんだと今の男は言っていたが、全くだと思う。
 というか、これって正当防衛とか適用されるんだろうか。
 カードゲームに興じていた男たちに突然刃物で襲いかかって惨殺した。
 動機は、その男たちがいつか自分の女を襲うかもしれないからだ。
 完全に頭がおかしい奴だった。
 この世界に警察がいなくて本当に良かった。

 とりあえず、今殺した男たちの持ち物を漁る。
 死体のポケットをゴソゴソするのは、結構嫌だったが、戦闘の後の戦利品収集は当然のご褒美だ。

 男たちのポケットからは、お金だろうか、数枚の銅貨をゲットした。
 銅貨はなんというか10円臭が物凄くした。
 男たちは銅貨を合計で8枚持っていた。
 2人合わせても全財産が80円だ。
 かわいそう。

 あとは、最初に殺した男が、皮製の剣帯付きのベルトをしていたので、それを拝借して、自分の腰に巻いてみた。

『〔皮の腰当て〕を装備しました。防御力補正+5』

 そんなログが出力された時、俺は雷に打たれたような衝撃を受けた気がした。
 なん……だと……?
 こっちの世界に来て、もうすぐ2ヶ月程になるが、初めて防具の存在が確認された瞬間だった。
 いや、普通に考えたら武器を装備できるんだから、防具を装備できてもおかしくない。
 そもそも今まで、人間のコミュニティと隔絶した生活を送っていたせいで、防具にお目にかかる機会がなかったのだ。
 あえて言うなら、ルーナがつけてた青い胸当てとかブーツが防具っぽい。
 帰ったら、こっそりつけてみようと思う。
 変態か。

 今しがた殺した男たちを見てみると、ほぼ半裸の上に、皮鎧のようなものと、ブーツを身に着けていたので、それも引剥して服の上から装備してみた。

『〔皮の鎧〕を装備しました。防御力補正+10』
『〔皮のブーツ〕を装備しました。防御力補正+3』

 おお、装備が充実していく。
 あとはきっと皮の小手と皮の兜があるはずだ。
 アジトの中に入るのがちょっと楽しみになってきた。

 あとは、男たちの武器を拝借した。
 最初に殺した男は、銅の剣、次に殺した男は銅のナイフを装備していた。
 それぞれ手に持ってみる。

『〔銅の剣〕を装備しました。攻撃力補正+8』
『〔銅のナイフ〕を装備しました。防御力補正+4』

 今、俺が装備している土の剣の方が攻撃力が高かったが、いつ壊れるかわからないので、予備として皮の腰当てに挿しておく。

 これで、見張りの男たちから剥がせるものは全て剥がした。
 結構な時間が経った気がするが、アジトの中から人が出てくる気配はない。
 この中には、まだ100人近い山賊がいるのだろうか。
 ちょっとビビるが、山賊って経験値もくれて、装備もくれるので、物凄く美味しい獲物なんじゃないかと思う。

 俺は、ちょっとわくわくしながら木の扉を開けた。


 扉の中は、ただの洞窟だった。
 薄暗く、僅かな松明の照明だけがぼんやりと辺りを照らしている。
 すえた臭いと僅かなアルコールの臭いがする。

「あん? 誰だ、お前?」

 扉の直ぐ側には、酔っ払った男がいたので、とりあえず剣を振り下ろす。

「ぐわっ! いきなり何するんだっ!」

 しかし、暗さが災いしたのか、一撃で殺すまでには至らず、男は結構な大声で叫んだ。
 俺は舌打ちしながら、男にトドメを刺した。

『13ポイントの経験値を獲得しました。』

「おい、今の声はなんだ?」

 洞窟の奥の方から、ドタドタと複数の男たちが向かってくる音が聞こえた。
 やばい、完全にバレた。
 とはいえ、もともとコソコソする気はなかったのだ。
 俺は、やってくる男たちを迎え撃つように、剣を構えた。

 やってきた盗賊は3人だった。
 皆、思い思いの武器を構えているが、洞窟の中は狭く、一列に並ぶようにして俺に向かってくる。
 俺にとっては、1対1を3回繰り返せば良いだけなのでありがたい。

 最初に向かってきた男が、剣を振りかぶってきた。
 俺は男の剣をあっさり受け止めると、もう片方の剣で男の胴を薙ぎ払った。
 臓物を撒き散らして、男が倒れていく。

「に、二刀流だと!?」

 その奥にいた男は、二刀流にビビっている間に、首を飛ばす。

 最後に残った男は、何やら大きな剣を持っていた。

「な、なんなんだお前!? 何が目的なんだ!」

 大剣を持った男のセリフに思わず吹き出してしまった。
 完全に怖気づいている。
 男の足は哀れにも震えていた。
 野盗とは、襲うのには慣れているが、襲われるのには慣れていないらしい。

「……お前らの全滅だ」

 俺は剣を振りかぶった。
 男は怯えたように、大きな剣でガードしようとするが、俺はその剣ごと叩き斬る。
 男は断末魔の叫びを上げて、倒れていく。
 結構な無茶をしたせいか、今の一撃で貴重な土の剣の一本が壊れてしまった。
 いつもなら、ここで新しい剣を生成する所だが、今の俺には魔法を使うことができなかった。
 まあ、武器なら結構ある。
 俺はさっき殺した男が持っていた剣を拾って装備してみた。
 男の剣は、またもや銅の剣だった。

 最後に殺した男が、やかましく喚いたせいで、奥からまたもや数人の男がドタドタと向かってくる音が聞こえてきた。

 俺はその野盗達をここで迎え撃つことにした。

 奥がどうなっているのかわからないが、この狭い通路は、多人数と戦う場合、俺に有利になる。
 数の利を活かせない場所なのだ。

 俺はその場に仁王立ちして、次々にやってくる野盗を殺しまくった。
 辺りに死体が積み上がっていく。

 しばらくすると、最後に残った土の剣も壊れてしまったので、途中から銅の剣を装備して振り回した。
 ただ、この銅の剣、いまいち切れ味が悪い上に、すぐに壊れる。
 なので、野盗の何人かが持っていた銅の大剣を装備してみた。

『〔銅の大剣〕を装備しました。攻撃力補正+12』
『〔銅の大剣〕を装備しました。攻撃力補正+12』

「……馬鹿な、あんなでかい剣を片手で持ち上げられるのか」

 大剣二刀流をしてみると、次々にやってくる野盗が驚きの声を上げていた。
 筋力ステータスが100を超えている俺にとっては、こんな大剣なんて全く重さを感じない。
 丸太に比べたら、割り箸くらいの重さだ。

 とりあえず、大剣を振り回してみると、一振りで数人が吹き飛んだ。
 狭い通路では振り回しにくいのが難点だが、銅の剣でちまちまやるよりは効率がいい。

「……ば、化物だ」

 通路にわらわらと押しかけていた野盗達が、俺を見て後ずさっている。
 ただ、俺が言うのも何だが、大きな武器を持っている相手に距離を空けてはいけない。
 武器を振り回す余裕ができてしまうのだ。

 俺は再び、大剣を振り回す。

 2、3個の頭があっさりと飛ぶ。

『レベルが16になりました。』
『スキルポイント1を獲得しました。』

 突然、そんなログが流れた。
 久しぶりのレベルアップだ。

 俺はテンションが上がるのを感じながら、大剣を振り回し続けた。
 辺りには、盗賊の死体が積み上がりすぎて、動き回り辛くなってきたので、少し奥に歩を進める。

 野盗達は、相変わらずわらわらと奥から湧いてくる。
 ただ、全く手応えがない。

「ぐはっ!」
「ひぎいっ!」

 皆、個性あふれる断末魔を残して、斬り飛ばされていく。

 何十人切ったのか、途中から数えるのが面倒くさくなってきた所で、野盗の出現が止まった。

 辺りはしんと静まり返っている。

 もしかして、もう皆殺しにしてしまったのだろうか。
 俺にダメージは全くないが、病み上がりだったせいか呼吸が荒い。
 いやいや、こんな馬鹿でかい剣を振り回していたら、呼吸が荒いくらいではすまないはずなのだが。
 ステータスの恩恵だろうか。
 銅の大剣は、さすがに振り回していると、ひしゃげて来たので、途中で何度か新しいものに交換していた。

 俺はとりあえず、一息をついてから、辺りの死体から戦利品を物色してみた。
 というか、自分でやっといてなんだが、バラバラにされた人間の手足が散乱している。
 ホラーが苦手な俺としては、一刻もはやくこの場を離れたくなった。
 薄暗くてちょっと不気味だし。

 なので、とりあえず目についた皮の手袋とヘッドギアのようなものを拾い上げると、そそくさとその場を後にした。

『〔皮の小手〕を装備しました。防御力補正+5』
『〔皮の兜〕を装備しました。防御力補正+6』

 俺は奥に向かって歩きながら、皮の装備をコンプしてみた。
 皮の防具は、どれも格好良くはなかった。
 なんというか、無骨な感じで、剣闘士みたいな格好だ。
 それはそれで、シンプルでいいかもしれないと思えた。

 洞窟は、まだまだ奥深く続いている。
 この先に、さっき殺した野盗達の住処があるのだろう。
 そう思うと、かなりの広さであることが予想される。

 俺は慎重になりながら、奥に向かって歩を進めた。
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