ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第一章 異世界転移編

第18話 充実していく引きこもり生活 ②

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 朝、風呂に入った後、俺はある事を思いついた。

 そうだ、洗濯機を作ろう。

 一応、毎日、服を水魔法でバシャバシャと洗っていたのだが、全然よく洗えている気がしなかった。
 昨日、せっかくルーナに服を新品同様にしてもらったので、今後はもっと清潔に保ちたい。

 ちなみに、スーツやワイシャツは、衣紋掛けとハンガーのようなものを《土形成》で作って、ベッドの脇にかけてある。
 ルーナ用のハンガーも作ってみたら喜んでいた。
 今度、部屋を拡張してクローゼットを作るのもいいかもしれない。

 ただ、今は洗濯機を作るのだ。土魔法で。
 いやいや、一発で禁忌に触れて、ノリコさんにぶん殴られると思うじゃないですか。
 俺が作ろうと思っているのは、洗濯機のような形をした容器だ。
 丸い穴の開いた容器を作って、後は《水形成》で水流を作って、穴に沿うようにぐるぐる水を回す。
 すると、まるで洗濯機で洗ったように、衣服がぴかぴかになるはず(勘)。
 少なくとも、ただの《水生成》でばしゃばしゃやるよりは、マシのはずだ。
 数倍の洗浄力を期待している(当社比)。
 しかも、禁忌に触れることもないはずだ。多分。

 せっかくなので、洗濯機を置く洗濯場も作ろうか。
 ベッドのある部屋に置くのも何だし、風呂場にあるのも安っぽいし。
 大体、風呂場は天井がないので、雨が降ったら大変だ。

「なあ、ちょっと家を拡張するから」

「うーん?」

 ルーナは、風呂で濡れた髪を櫛で梳かしながら、風魔法でブオーっと風流を作って、髪を乾かしている。
 なにそれ、便利。
 ドライヤーか。

 さて、どこに洗濯場を作ろうかな。
 俺は服を着ながら考える。
 入り口から向かって、左側に風呂場があるので、右側に作ろうか。

 風呂場を作ったのと同じ要領で、家の右側に、風呂場と同じ面積の部屋を作成する事にした。

 まずは、オーバーロードを使わずに、ベッドのある部屋の半分くらいの容積の土塊を作成する。
 そして、オーバーロードを発動。
 両手に魔力を具現化させた稲妻を纏わせてから、土塊を圧縮させるのだ。
 土塊が発光をし始め、魔力が流れ込んでいく。
 稲妻となった魔力が土塊を駆け抜けて、轟音が響く。
 そして、少し光沢を帯びた、薄茶色の見事な壁が出現する。

 できたばかりの壁に頬を押し当てて、すりすりしてみる。
 今まで作った壁の中で一番、滑らかな肌触りだ。
 軽く叩いてみると、硬質な音がする。
 ここまでで、かかった時間は約10分。
 10分で今までで最高の壁を作ってしまった。
 俺の腕も上がったものである。

 MPはまだまだ余裕があったので、残りの壁と床も連続で作った。
 以前、家を作った時は、MPが少なかったので、すぐにMP枯渇に陥り、壁を作るだけで一日かかっていた。
 それが今や、1時間かからない程度でできたのだ。
 まだ、朝ごはんすら食べてないからね。

「……なあ、ご飯できたけど」

 ちょうどいいタイミングでルーナから声がかかった。
 ルーナは、オタマのようなものを持って、呆然としている。
 スープでも作っていたのだろうか。

「家を拡張するって、何を言っているのかと思ったが……本当に、家を建ててるとは思わなかったぞ。しかも、ほぼ終わってるし……」

「ふふん、まあ俺にかかれば家を建てるなんて、朝飯前だ」

 軽く誇らしげな顔をしてみる。
 こんなに簡単に家を拡張できるのだ。
 もはや一流の、ええと、大工と言っても過言ではない。
 ちょっと、俺はどこに向かっているんだと思うが。

「……色々と言いたいことはあるが、冷めないうちにご飯を食べよう?」

「そうだな」



 俺はルーナに連れられて、部屋に戻った。
 朝ごはんは、羊肉をパンに挟んだものと、香草のスープだった。
 ルーナによると、旅支度として買っておいた携帯用のパンがそろそろ悪くなるので、使ってみたらしい。
 俺にとっては久しぶりの炭水化物だった。
 ただ、ルーナが買ったものを俺が食べさせてもらうのは、どうなんだろう。
 後で何かお礼をすればいいかな。
 まあ、無一文なわけですが(笑)。

「いただきます」

「はい。召し上がれ」

 パンは固くてボソボソしていたが、焼き立ての羊肉から溢れる肉汁が上手くカバーしていた。
 羊バーガーと言った所だろうか。
 美味だった。

「……それにしても、お前の土魔法は凄いな。家を作ったり、武器を作ったり、そんな風に土魔法を使うなんて聞いたことがないぞ」

「そうなのか? 土魔法はなんでもできて、便利だぞ」

「いや、なんでもできるのはお前の土魔法だけだ。普通の土魔法はあくまでも攻撃魔法だぞ。たまに、土壁を防壁として使う場合もあるけど」

 そう言いながら、ルーナは床を撫でる。

「……こんな固くて滑らかな土壁なんて見たことがない。というか、これ本当に土なのか」

「れっきとした土だ」

 俺は、片手でオーバロードさせた《土形成》を発動させて、ルーナの目の前にテーブルを生成してみた。
 ついでに、椅子も2つ生成する。

「…………」

「こっちで食べよう」

 床に座って食事をするのもどうかと思ったので作ってみた。
 ルーナは呆れたように、できたばかりのテーブルを眺めている。

「……改めて、お前が勇者なんだと実感した」

「そうか。だが、俺は勇者じゃない、大工だ」

「…………」

 ルーナは呆れているが、間違ってはいないはずだ。
 勇者というよりは、大工に近い。
 ただ、もう少しこう、かっこいい言い回しはないものか。
 いや、別に大工がダサいといっているわけじゃないが、厨二要素が足りない。

 ルーナは、作ったばかりの椅子に腰掛けながら、俺を心配そうな顔つきで見つめている。

「……なあ、この土魔法も私以外の人間には見せちゃダメだからな?」

「わかっている。というか、そもそも他の人間と関わる気がない」

「前から少し気になっていたが、お前は、なんでそんなに人間嫌いなんだ?」

「……言うな。病気なんだ」

 引きこもりという、現代社会が産んだ不治の病だ。
 現代医学でも治せる薬はない。

「……お前が、異常な力を見せるたびに、誇らしい気持ちと、切ない気持ちが同時にやってくる。お前がどこかに行ってしまうような気がして、不安だぞ、私は」

 そう言いながら、ルーナは小さなため息をついて、俺の手をぎゅっと握った。
 エルフ特有の長い耳が、少し垂れ下がっている。

 うーん、やはりルーナは何か勘違いをしている。
 そもそも引きこもりの俺が何処かに行くわけがない。
 生活するために仕方なく社会人をしていたが、もう少しうちの実家が裕福だったら、間違いなくニートになっていたはずだ。
 自分の部屋から一歩も出ずに、たまに「ジャ○プとコーラを買ってこい」と書いたノートの切れ端を部屋のドアの隙間から出して、親をパシらせるくらいのことは平気でできる。
 だから、ルーナの心配は杞憂なのだ。

 ただ、以前にも思ったが、なぜルーナが俺と一緒にいたがるのかが気になる。
 まあ、なんとなくはわかる。
 絶対にめんどくさくなるからあえて口にはしないが。

「そんなに俺と一緒にいたいのか?」

 うおい!
 気づいたときにはそんな事を言っていた。
 なんというか、対人スキルの低い俺に高度な腹芸は無理なようだ。

「な、なにを言ってるんだ!」

 ルーナが一瞬でゆでダコのように赤くなって動揺している。
 ただ、何かに気づいたのか、突然、眉を吊り上げた。

「って、当たり前だろう? お前、わかっているのか? 私達全然避妊してないんだぞ? いつ子供ができてもおかしくないのに、お前が勇者だってバレて戦争に行っちゃったら、私が一人で――」

 ルーナは予想以上にリアルでめんどくさい事を言い出した。
 異世界に来てまで避妊とか。
 そういえば、こっちの世界で避妊ってどうやってやるんだろうか。
 まあ、する気はないが。
 俺の美学に反する。
 いつか未来の俺が苦しめばいいのだ。
 今の俺には関係ない。

 俺はとりあえず、意識を飛ばして、ガミガミとしたルーナの説教を聞き流した。



 朝ごはんを食べ終わった後は、洗濯場作りの続きを行う。

 さっきの時点で、壁と床はできたので、後は天井だ。
 風呂場と違って、洗濯場は全天候型にしたい。
 なので、天井は必要だ。
 ただ、天井を作るとどうしても暗くなってしまう。
 まあ、窓を作ればいいか。

 そんなわけで、東と西に採光用に1メートル四方くらいの窓を作ってみた。

 そして、天井を生成する。
 部屋の上部を覆うように、横に倒した三角柱の天井を生成してみる。
 以前は、フリーハンドで三角形を作るのは難しいと思って諦めていたが、あれから学習している。
 大切なのは、イメージなのだ。

 俺はキレイな三角形をイメージしながら《土形成》を発動させる。
 空中に巨大な土塊を生成させて、それを一気にオーバーロードで圧縮させるのだ。

 もはや聞き慣れた轟音を残して、見事な天井が出現した。
 少し魔力の残滓として、所々がパリパリいっているがそのうち消えるだろう。

「……すごい」

 隣で口をぽかんと開けているルーナを尻目に、俺はできたばかりの天井を少し外部に拡張させて、軒先を生成してみた。
 これで、外からは、立派な屋根に見えるはずだ。

「なあ、あっちの部屋の天井みたいに透明にしないのか? 私、あれ結構好きだぞ」

 ルーナがひょいっと気軽に地雷原に踏み込んできた。
 それ、今聞いちゃう?

 そんなわけで、俺はルーナに溢れ出る天井への想いをぶつけてやった。
 マシンガンのように繰り出される天井自慢。
 俺があの天井にどんな思いを込めたか。
 そして、それがいかに困難で無謀な挑戦であったか。
 度重なる失敗と挫折。
 やがては神であるノリコさんまで登場してきて――。

 そんなところまで話した所で、既に陽は昇りきっていた。
 おかしい、体感時間は数十分のはずなのに、数時間は経過していたようだ。

 ルーナは少し引きながらも、俺の話を黙って聞いてくれた。
 たまにめんどくさい事を言うのがアレだが、基本的にはいい女だ。

「――ちょっと、待て。じゃあ、アレは神様に作ってもらったのか? それって神器じゃないか!」

「うむ。次はないって激おこだったから二度と作れないがな」

「何を言っているのかよくわからないが、つまりたった一度の機会を、お前は天井に使ったってことか?」

「え? うん」

 あれ、なんか不穏な空気がしてきた。

「もっと他に神器として相応しいものがあるだろう? 私の知っている伝説の神器は剣とか鎧とかだぞ?」

「…………」

 あれ、あれええええ!?
 そういえば、どうせ怒られるんならエクスカリバーみたいな胸アツな聖剣とか作ってもらえばよかったんじゃ……。
 枝にデュランダルとか名付けてる場合ではない。
 神器が天井って斬新過ぎて、聞いたことが無い。
 もっと言えば、パソコンとかも作ってもらえたかもしれないのに。
 それが、天井て!

「……俺ってバカなのかな」

 俺は自然と体育座りに移行していた。
 なんだろう、この姿勢、すごく落ちつくんだ。

「げ、元気だそう? ほら、あの天井すごく素敵だと思うぞ?」

 ルーナに優しく慰められながらも、俺は復活するのにしばらくかかった。



 気を取り直して、洗濯機を作る。
 まずは、高さ1メートルくらいで、50センチ四方くらいの直方体を生成する。
 そして、直方体の真ん中を圧縮させて、円柱の穴を作るのだ。
 縦ドラム式である。
 浴槽を作った時と同じように、洗濯物に土がつかないように、念入りに圧縮させる。

 これで完成である。

 洗濯機自体はすぐにできた。
 ただの容器だからね。

 というか、なぜ洗濯機を作ろうと思って一棟の家屋まで作ることになるのか。
 世界は不思議で満ちているのである。

「なあ、洗濯物持ってきてくれ」

「はーい」

 ルーナが自分の洗濯物を持ってきて、俺の指示で洗濯槽に入れていく。
 下着なんかも混じっていて、ちょっとドキッとした。

「俺のも一緒に洗っていいか?」

「うん? いいに決まっているだろ?」

 さも当然のようにルーナは言う。
 まあ、気にしないならいいが、俺はずっと同じパンツを履いているので少し気が引ける。
 気が引ける所は、もっと他にあるだろうとも思うが。
 ちなみに、俺はタムシ系とか他にも変な病気は持ってないからね?

 とりあえず、俺は服をポイポイと脱ぎ捨てて全裸になる。
 さすがに、スーツは洗うのはやめようと思って、ハンガーにかけておいた。

 今日も俺の脱ぎ芸が炸裂したのに、ルーナはどこ吹く風と言った具合で、洗濯機を見つめていた。
 何が起こるのかわからなくて、わくわくしている感じだ。
 ……まあ、いいんだけどさ。

 洗濯機にパンツとか靴下、インナーにワイシャツを入れて、水魔法を発動させる。

 洗濯槽の半分くらいまで水を入れて、そこで《水形成》の発動だ。

 イメージは渦潮。

 グルグルーと勢い良く、水が洗濯物を巻き込んで回転していく。

「おお!」

 ルーナが驚きの声を上げている。

 渦を一旦止めて、水を上下左右に揺らせて、もみ洗いを表現してみる。
 しばらく水をうにょうにょとさせた後、再び勢い良く水流を回転させる。
 しばらくすると、一旦止めて、逆回転させたりしてみた。

 物凄く洗剤が欲しくなるが、今は我慢だ。
 錬金スキルとかで作れないだろうか。

 回転、逆回転、もみ洗いを数十分繰り返した所で、水を捨てた。

 やってみて思ったけど、これ結構疲れる。

 洗濯機がいかに偉大か思い知った。
 これからは敬意を込めてアニキと呼ぼう。
 洗濯機をアニキと呼んじゃうのは、少しアレかな、病んでるのかな、と思うが。

 結構なMPを使った。
 まだ水魔法には慣れていないのも大きいのだろう。

 さて、干して乾かすかと思った時、ある事を思いついて、ルーナを見た。

「お前、毎朝、髪を乾かしているよな?」

「え? ああ、風魔法の初級でな。あれをしないと髪がボサボサになっちゃうんだ」

 言いながらルーナはサラサラの長い金髪をつまんでいる。
 お湯で洗っているだけなのに、なんであんなにサラサラなんだ……。
 日本でトリートメントとか作っている人たちに謝れと言いたくなる。

「風魔法をさっきの水魔法みたいに使って、あの洗濯物を乾燥させられないか?」

「あー、なるほど。風竜巻(ウィンドトルネード)を小さくすれば、出来るかもしれない」

 ルーナは、洗濯槽に両手を掲げると僅かに魔力を込めた。

 すると、洗濯槽の中にある洗濯物がふわふわと浮かびながら、回転し始める。

「おー、上手い上手い。そんな感じだ。強くしすぎて、洗濯物を傷つけないようにな」

「うん。わかっている」

 しばらくすると、コツを掴んだのか、洗濯物が勢い良く回転し始める。
 水分が遠心力によって、みるみる飛ばされていく。

「すごいぞ! 乾燥機そのものだ」

 褒めるとルーナはくすぐったそうにはにかんだ。
 全自動洗濯乾燥機が完成した瞬間だった。
 全自動ではないかもしれないけど。



 洗濯場から外に出られる入り口を作った。
 そして、外に出てから、物干し竿を《土形成》で生成して干した。

 もうお昼を過ぎていたが、ルーナが乾燥させてくれたおかげですぐに乾ききるだろう。

 というか、今日改めて作った洗濯場を改めて見渡してみる。
 結構な広さの部屋に、洗濯機がぽつねんと一つ置かれている。
 この部屋は何!? と思ってしまった。
 そもそも洗濯場って部屋なのか。
 大体お風呂の脱衣所にある気がする。
 あー、そう言えばうちには脱衣所がない。
 まあ、それは置いておいて、この広さの部屋に洗濯機だけが置いてあるのもいかがなものかと思う。

 そんな事を考えながら、洗濯物を干し終わって、一息つきながら日向ぼっこをしているルーナに目を向ける。

「なあ、キッチン作らないか? 外で料理するの大変だろう?」

「ええ!? いいのか?」

「ああ。いつも美味しいご飯を食べさせてくれるお礼だ」

 そう言いながら、俺は洗濯場が置いてある場所に壁を作る。

 洗濯機とキッチンが同じ部屋にあるのもどうかと思ったのだ。

 洗濯場は、1メートル×2メートルくらいの部屋になった。
 残りの3メートル×2メートルの部屋がキッチンだ。

 さて、キッチンを作り始めようと思うが。
 未だかつて、キッチンが欲しいと思ったことがないので、何を作ればいいかわかりません!
 そんなわけでルーナに聞いてみる。

「まず、何がほしい?」

「うーん、カマドかな」

「カマドか……」

 ルーナと相談しながら、部屋の隅に土台を作った。
 土台の上には、ただの土を盛っていく。
 この盛り土の上で火を起こせるようにするのだ。
 そして、土台と盛り土を囲むようにカマドを生成した。
 カマドの天井部分には穴が開いていて、ルーナの持っている鍋がちょうどフィットするようにした。
 ルーナの鍋は中華鍋のように、丸底だったので、穴に嵌って安定するのだ。
 カマドの高さは、ルーナが屈まなくてもいいように調節してみた。

 カマドの横に、同じような土台と盛り土を作る。
 こっちは、焼き物用だ。
 鉄製の網なんかがあればいいのだが、ルーナも持っていないらしい。
 なので、とりあえず焚き火が起こせるように盛り土だけをしておく。
 あとはいつもみたいに、串に刺した肉を固定できればいいだろう。
 そんなわけで、こっちの盛り土は、カマドのより深めに作ってある。

 カマドと焼き物用の盛り土の天井部分には、煙が外に逃げるような吸気口と、煙を覆う傘上のものを作ってみた。
 イメージは換気扇だ。

 これで火回りは完成で、更にその横にキッチンカウンターを作る。
 このカウンターもルーナの腰の高さに合わせて作った。

 カウンターには、外壁に開けた穴と繋がる流しも作ってみた。
 試しに水魔法で水を流してみると、ちゃんと外に排水された。
 カウンターの上には、他にもルーナの持っていたまな板が固定できるような窪みを作っておいた。
 ついでに、包丁も何本か生成して、包丁差しを作って入れておく。

 最後に、キッチンカウンターの天井部分に、皿なんかを格納できる戸棚を作ってみた。
 料理しながら皿を取り出せるようにと思って、上に付けてみたが、ルーナが頭をぶつけないように、それでいて、ちゃんと手の届く高さに調節するのに苦労した。

 これでとりあえずキッチンは完成だ。
 改めて眺めてみると、なかなかの出来である。
 土魔法で作ったせいで、全体的に薄茶色なのが気になるが、仕方ない。
 後はルーナに使ってもらいながらカスタマイズしていこうと思う。

「どうだ? こんな感じで」

「うん……」

 心なしかルーナの反応が弱い。
 アレだろうか、やっぱり今流行りのアイランドキッチンにしなかったのがダメだったのだだろうか。
 でも、流しを作るには壁に固定する方が簡単だったのだ。
 というか、アイランドキッチンって何がいいんだろうか。
 アイランドって言いたいだけじゃないのか。

「……いや、その、私専用のキッチンって憧れてたし、私が使いやすいようにって、すごく私の事考えてくれて、その、嬉しくて」

 言いながら、ルーナが抱きついてくる。
 ルーナの身体は感極まったかのように、少し震えている。

「……ありがとう。いっぱい美味しいもの作るからな」

「ああ」

 俺はとりあえず、ルーナの柔らかい髪を撫でた。
 ただ、この女はまた勘違いをしている。
 俺は別にこの女の気を引きたかったわけではない。
 匠になりたかっただけだ。
 ……なんかもっとかっこいい言い回しはないだろうか。



 結局、そのままルーナとしばらくいちゃついていた。

 ただのじゃれ合いのつもりだった。
 それなのに、だんだんムラムラしてきて、ルーナを押し倒してしまった。

 夜更け頃にルーナがあうあうと何を言っているのかわからなくなった。
 俺は爽やかな達成感(やってやった感)を感じた。

 あれ、そういえば昨日とってきた羊毛の存在をすっかり忘れていた。
 今日は《糸生成》を試そうと思ったのに。
 もう夜更けだし、ルーナはびくんびくんと痙攣を繰り返しながら、生死を彷徨っている感じなのでもう無理だろう。

 ……全く家造りって奴ぁ、俺を狂わせるぜ。

 明日こそ《糸生成》を試そうと思いながら、俺は眠りについた。
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