ちょいクズ社畜の異世界ハーレム建国記

油揚メテオ

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第一章 異世界転移編

第3話 魔法取得

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 俺は結局、水魔法を取ることにした。

 色々考えた。
 攻撃力なら火がいいのではないか。
 いや、もしかしたら、風なら飛行魔法とかもあるかもしれない。
 いやいや、土ならその辺にありふれている。リソース的に一番使いやすいかもしれない、等。

 ただ、俺は喉が渇いていた。

 思えば最後に運動らしき運動をしたのは、12,3年前に行ったスノボくらいだった。

 そんな俺がスライムを殴ったり蹴ったりの大活躍?

 喉も乾くってもんである。

 そして、重大な事に気づいた。

 辺りを見渡せば見慣れぬ景色。
 人気のない広大な荒野。

 そんな中、俺は仕事中に着ていたスーツ姿のまま、独り佇んでいる。

 水や食料なんて、もちろん持っていない。

 これは、結構な窮地なのではなかろうか!
 むしろ、遭難中じゃん!

 魔法覚えられると思って、天井知らずにバーストしていたテンションは、ダダ下がりである。

 そんな訳で、取り敢えず、生きるのに最低限必要な水を得るべく、水魔法を習得するのだ。

『スキルポイントを1ポイント消費しました。』
『水魔法LV1を取得しました。』
『水魔法LV1:《水生成》が使用可能になりました。』
『使用可能スキルポイントは0ポイントです。』

 立て続けにログが表示される。
 どうやら、水魔法は覚えられたようだ。
 まったく実感がないけど。

 とりあえず、右手を広げて、《水生成》と念じてみる。

「おお!」

 コポコポと音を立てながら、手の平から水が湧き出した。
 透き通ったキレイな水である。

 早速、口をつけてガブガブ飲んでみた。

「うまい!」

 程良く冷えていて、すごくまろやかな口触りである。
 雪解け水のような軟水だ。
 乾いていた喉に染み渡る。

 なんの問題もない美味しい水だが、あえて問題点を挙げるとすれば、俺の手の平から湧き上がっている事である。

 30男の体液的に見えるのが、ちょっとアレだった。

 これほどの量の体液を流したら、俺は枯れ木のようになっているだろうから、体液ではないのだろうが。

 きっと魔法的な不思議理論で生み出された水なのだろう。
 よくわからんけど。

 その時、視界に『MP』と表示され、数値が1ポイント減少した。
 魔法なのだから、MPを消費するのだろう。

 MPが減るという感覚が新鮮で、俺は《水生成》を発動し続けてみた。
 右手から水がどぱどぱと溢れ出て、地面に水溜りを作っていく。
 MPは大体10秒に1ポイントくらいの速度で減って行った。

 12ポイントあったMPは、今や2ポイント。…1ポイント…ゼ…。

「ぐうっ!」

 突然、視界が歪む。
 耳鳴りがして、心臓の鼓動が早くなる。
 立っているのが辛い。

『睡眠耐性LV10が発動しました。』
『疲労耐性LV10が発動しました。』

 少し楽になるが、ジワリと額に脂汗が浮かぶのがわかる。
 ゴウン、ゴウンと耳鳴りが酷い。

 再び立ち上がれるようになるまで、暫く時間がかかった。

「死ぬかと思った」

 結論、MP枯渇はやばい。
 なんか耐性発動してたし。

 MPを意識すると、視界に現在のMPが表示される。

『MP:2/13』

 なんか、MPの最大値が少し増えていた。

 暫く地面に体育座りをして、MPの回復を待った。
 スーツの汚れが最小限、かつ、楽な姿勢を試行錯誤した結果、この座り方になったのだ。

 今のMPは6/13。
 大体半分くらい回復した。
 座っていた時間を考えると、3分に1ポイントくらいのペースで回復するようだ。
 ソシャゲの行動力回復時間と同じくらいと考えると、ものすごく理に適っている気がする!

 俺は再び行動を開始する。
 せっかく、覚えた魔法を戦闘に使ってみるのだ。

 少し歩くと、うにょうにょと不定形に形を変えながら彷徨うスライムを発見した。

「喰らえ、《水生成》!」

 ノリで魔法名を叫んでみた。
 別にいいのだが、《水生成》って少しダサくないだろうか。
 せめて横文字にして欲しかった。
 オーロラ・エクスキューションとか。
 よく意味がわからないけど。

 俺は手の平を、スライムにかざして、《水生成》を発動させた。
 手の平から水が溢れ出る。

 びちゃびちゃびちゃ。

 水道の蛇口を半分開けたくらいの勢いで、水がスライムにかかる。
 攻撃力はない。
 むしろスライムは心地良さそうに、大人しく水に当たっていた。
 なぜなら、水浴びしているようなものだから。

「ふん!」

 少しイラッとして、スライムを踏み潰して消滅させた。

『1ポイントの経験値を取得しました。』

 なんとなく、気づいていたが水魔法は微妙だった。
 現代社会の水道以下だ。
 何もない所から、水を出せるのはすごい。
 すごいが、コレジャナイ感もすごかった。

 再びスライムが近寄ってくる。
 取り敢えず、《水生成》を食らわせてやると、スライムは気持ちよさそうに(顔がないから、正確にはわからないが雰囲気。)身じろぎしている。

「おら!」

 今度は本格的にイラついたので、脳天振り下ろしの正拳突きを食らわせてやった。

『1ポイントの経験値を取得しました。』

 メイジビルドだっつってんのに、少し格闘に慣れてきているのが、悲しい。

『レベルが3になりました。』
『スキルポイント1を獲得しました。』

 どうやら、レベルアップしたらしい。
 わくわくしながらステータスを確認する。

#############################################
【ステータス】
名前:コウ
LV:3
称号:悲哀なる社畜
HP:1223/1228(+5)
MP:5/16(+3)
筋力:3
防御:3(+1)
敏捷:4(+1)
器用:6(+2)
知能:10(+3)
精神:12(+2)
スキルポイント:1
#############################################

 筋力が上がらなかった!
 なんかやはり知能とか精神とかの上がりがいい気がする。
 どう見ても魔法使いのステータス構成だ。
 新しく貰ったスキルポイントは魔法に使うべきだろう。

 そんな事を考えていると、先程倒したスライムがいた場所に何かが落ちているのを見つけた。

 スライムを倒すといつも、液体化して地面に吸い込まれるように消滅する。
 なので、スライムを倒した後はいつも地面が湿っているのだが、今回はそこに何か、べちゃっとしたモノが残っている。

 ドロップアイテムというやつだろうか。

 べちゃっとしたモノは理科の実験などで作った"普通の"スライムに似ていて、触ってみると、意外とべたつかなかった。

 もしかしたらレアドロップかもしれないので、取り敢えずポケットにしまっておいた。

 さてと、スキルでも取得するか!

 今回は何をとるか、既に決めている。

 火魔法だ。
 魔法といえば、火だから!

 水魔法が結構アレだったので、今回は過度な期待はしない。
 でも、せめてライター以上の火力が欲しい。

 そんなわけで、早速火魔法を取ってみる。

『スキルポイントを1ポイント消費しました。』
『火魔法LV1を取得しました。』
『火魔法LV1:《火生成》が使用可能になりました。』
『使用可能スキルポイントは0ポイントです。』

 火魔法とったった!

 火魔法LV1っことはLV2があるのだろうか。
 さっき火魔法を取る際に見た【取得可能スキル一覧】には、既に取っている水魔法の記載はなく、水魔法LV2の記載もなかった。
 魔法のレベルはスキルポイントで取得ではないのであろう。
 たんにスキルポイント1ではとれずに、スキルポイント2が必要とかかもしれないが。
 それは面倒くさいから、やだな。
 魔法を使っているうちに、熟練度的なものが上がっていって、やがて魔法のレベルが上がるのだろうか。
 微妙な水魔法も使っているうちにレベルが上って、優秀な魔法を覚えられるかもしれない。

 取り敢えず、火魔法を使ってみたい。

 スライムはどこだ!

 俺は動く的(スライム)を探す。

 すると、50メートルほど先に、うにょうにょとと蠢くアイツを見つけた。
 弱くてお手軽な頼れる安牌。
 もう少しで惚れてしまうかもしれない。

 俺はスライムのそばまで近寄ると、右手を掲げた。

「《火生成》!」

 相変わらず魔法名がダサい。
 どうせ誰も見ていないのだ、次からはファイヤーボール!とか叫んでみようか。

 《火生成》と脳内で念じてみると、手の平から発火現象が、起きる訳ではなく、目の前のスライムが突然、燃え上がった。

 ゴーっとすごい音を立てて燃え上がりながら、音もなく燃え尽きた。
 あとに残ったのは少し焦げた地面だけだ。

「…………」

 ライターの方が火力高いじゃん!と用意していたツッコミを飲み込む。
 火魔法すげええええ!

 スライムがまさかの可燃性だった可能性も捨て切れないが、目標物を発火させる所が気に入った。
 攻撃手段としては、間違いなく優秀である。
 だって避けようがないもん。
 パイロキネシスみたいだ。
 ただ、名前はファイヤボールじゃないかもしれない。
 なんだろう。
 イグナイトだろうか。
 なんか少し厨二病くさいかな。
 いやいや、俺は32歳にして、まだ少し患っているんだから、それくらい…。

 そんなどうでも良い事を考えていながら、ふとある事に気づいた。

 スライムを焼き殺したのに、経験値取得のログが表示されていない!

 おそらくレベルが上った事が原因だろう。
 所詮、スライムはスライムだった。
 惚れてしまうかもしれないとか言って損した!
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