俺、異世界で置き去りにされました!?

星宮歌

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第四章 隠し事

第四十七話 性別

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「ところで海斗。本来の性別は、まだ誰にも言っていませんの?」


 一通りゲームのルートの話を聞き終えて、色々な違いを確認した後、俺はリリスにそう問われる。


「本来の性別……なら、やっぱり、カイトさんは元々男なんですね?」


 ローレルからもそう尋ねられ、俺はうなずく。


「あぁ、元は男だ。この世界に来た時にはこの姿だったけどな。それで、性別のことはまだ誰にも言ってない」


 本当は、ライナードにだけなら教えても良いのではないかと思い始めているものの……男が片翼だったと知れば、ライナードはショックを受けるのではないかと思って、言えずにいた。


「では、わたくし達も言わない方が良いですわね?」

「ライナードさんと精神男なカイトさん……BL……じゅるり」

「リリスさん、ちょっと、ローレルさんが怖いんだがっ!?」


 どこか、狂気を宿したその瞳に、俺はとにかく怯える。


「ローレルさんは腐女子でしたのね」

「腐女子……」

「うふふ、うふふふふっ」


 不気味に笑うローレルさんを前に、俺は、とにかく全力で逃げたい衝動に駆られる。頼むから、俺で妄想しないでほしい。


「止めるのは無理そうですので、諦めてくださいまし」

「いや、待って!? 本当に怖いんだけど!?」


 お茶を優雅に飲むリリスさんに抗議してみるものの、どこ吹く風だ。


(だ、誰か……いや、助けてっ! ライナード!)


 リリスさんが頼りにならないと分かり、俺はこの世界で最も頼りにしているライナードに助けを求めようと辺りを見渡すが、元々、このお茶会は女子会の名目で行われている。ライナードが、側に居るはずもなかった。


「そ、そもそも、俺はノーマルだっ!」

「男性からの求婚は後をたちませんでしたけどね」

「ばっ!」


 そんな日本での情報を暴露され、慌ててリリスさんを押し留めようとしたものの、もう、それは遅かった。


「く・わ・し・くっ!」


 キランッと目を光らせて、ローレルさんはリリスさんへと詰め寄る。


「言うなっ!」

「ですが、海斗。協力者は多い方が良いですわよ?」

「何の協力者かは知らないが、それ、俺の何かが減る!」

「良いではないですか。多少減ったところで、そのうち回復しますわ」

「そういう問題じゃないっ!」


 俺は、頑張った。必死に必死に、リリスさんに俺の黒歴史を暴露されないように頑張った。しかし……。


「うるさいですわね。《黙れ》」

「な――――――」


 とうとう、リリスさんは実力行使に出る。何かの魔法によって、俺は、声を発することもできなくなってしまう。


「さて、静かになりましたわね。ローレルさん。答えは簡単ですのよ? ただ、海斗が男の娘だったというだけのことです」

(いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁあっ)


 そう、日本での俺は、まさしく絶世の美少女……に見える男だった。華奢で、撫で肩で、小顔で、パッチリとした目で……髪さえ短くなければ、大和撫子と言われ続けた見た目だ。


「あぁ、もう良いですわよ。《解除》」

「う、うぅ……」

「男の娘……はぁうっ、素敵ですっ」


 そんな見た目だったおかげで、俺は演劇でお姫様役をすることが多かった。女の部員も居るはずなのに、満場一致で俺が推薦されてしまうのだ。だから、ある意味女の演技はそこそこできるということになる。


(でも、でもっ、知られたくなかったぁぁあっ!!)


 なぜ、リリスさんがローレルさんにこの事実を教えたのかは分からないが、今は、とにかく心のダメージが半端ない。唯一の救いは、ここにはリリスさんとローレルさんしか居ないということくらいだろうか。


「元、男の娘だった主人公が、性別を見誤った神様によって、聖女として異世界に送り出された。そこから始まる、異世界恋愛ライフ……あぁあっ! 素敵っ! どうしようっ、妄想が止まらないっ!」


 ただ、ローレルさんに知られたことこそが致命的に思えるのは、俺の気のせいだろうか?


「海斗、これから先、この世界で暮らすのであれば、それなりに味方は必要ですわ。今回のこれは、必要なことでしたの」

(ニヤニヤしながら言われても説得力ないぞっ!?)


 そう思いつつも、もはや反論する気力もない。その後、俺はローレルさんの妄想をただひたすら、放心した状態で聞き流す。……聞き流せたことにしてほしい。


「とりあえずは、本来の性別は隠すという方向でよろしいですわね?」


 話が大幅に逸れてしまったものの、ローレルさんの妄想が一段落ついたところで、俺はリリスさんに、そう確認される。


「あぁ、頼む」


 そう言えば、リリスさんもローレルさんも、理由を聞くことなく了承する。そうして、波乱に満ちたお茶会は終わりを迎えるのだった。
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