俺、異世界で置き去りにされました!?

星宮歌

文字の大きさ
48 / 121
第四章 隠し事

第四十八話 今さらながらに

しおりを挟む
 リリスさんとローレルさんを見送って、俺は自室で少しグッタリする。


「何か、色々と濃かった……」


 特に、ローレルさんとか、ローレルさんとか、ローレルさんとか……。
 ちなみに、そのローレルさんには、日本に帰る方法を聞いて、バッサリと『知らないっ』と告げられはしたのだが……何だかもう、色々とあり過ぎて、大した感想も抱けなかった。


「もう少ししたら、ライナードのところに行こう……」


 てっきり、ライナードはお茶会が終わればすぐにでも突撃してくるかと思っていたのだが、何やら用事があるらしく、今は屋敷に居ないそうだ。お茶会が終わったことは、ドム爺が何らかの手段で伝えてくれたようなので、もうしばらくすれば帰ってくるらしい。


「……って、ちょっと待てよ? 俺、このままだと不味くないか?」


 そうやって、ぼんやりと布団の上でゴロゴロとしている中、俺は、はたと一つの事実に気づく。


(片翼ってことは、ライナードは俺が好きで、手放したくなくて、それで、俺はここに残るって話をしたわけで……)


 正確には、もう帰ることができないということを話したわけだが、他に行くところがない俺は、どうしてもこの屋敷に残るということになってしまう。


(それに、あの時、ライナードは酔っていたとはいえ、側に居るって約束をしたし……)


 そう、別に、俺はあの約束を忘れたわけではない。もちろん、帰る方法が見つかれば、説明して、納得してもらおうとは考えていたものの、それまではずっと側に居るつもりだった。


(片翼、イコール好きな人……俺、貞操の危機だったりしないか?)


 本当に今さらではあるものの、俺は、その事実に気づいた途端、布団の上で頭を抱える。


(いやいやいやいや、俺にとって、ライナードは頼りになる友達的な存在であって、決して、恋愛対象ではないというか……)


 そう、あくまでも、俺はノーマルだ。一瞬、チラリと大浴場で見たライナードの素晴らしい肉体が頭に過ったものの、ノーマルなはず……だ。


(でも……俺ってもしかして、この世界に居る限り、女性と恋愛できないんじゃあ……)


 自分の体が女性のものだということを考えれば、相手が同性愛者でもない限り、女性との恋愛は厳しい。いや、そもそも、俺は男の体に戻りたいわけで、その男の体で女性と恋愛したいわけで……。


(……この世界に、性転換の魔法とかあったりしないかなぁ?)


 そんな特殊すぎる魔法について思いを馳せていると、障子戸の向こうに影ができる。


「カイト、入っても良いか?」


 それは、今、思考の中心に居た人物、ライナードの声で、俺は声が上ずらないように気をつけながら、起き上がって許可を出す。
 障子を開けて入ってきたライナードは、俺の姿を認めると、ズンズンと大股で近寄ってきて、ぎゅうぅっと抱き締めてくる。


(うわっ、うわぁっ!)


 魔本にやられて、目覚めてからは、会う度に抱き締められて、慣れていたはずなのだが……今だけは、色々と余計なことを考えていたため、勘弁してほしかった。


「カイト、会いたかった」


 切なそうに、そして、男の俺からしてもエロいと思えるその声音に、俺は思わずビクッと震える。


(いやいやいや、一日も離れてないからっ! せいぜい、三時間くらいのものだからっ!)


 そう思いながら、ライナードが俺を案じてくれているということも分かっているため、抵抗らしい抵抗もできない。


「カイト、カイトっ」


 そして、そんなライナードに抱き締められている間に、俺はまた、余計なことへと思考を飛ばしてしまう。


(そういえば……ライナードが女性だったら、男の理想にピッタリだったりしないか……?)


 そう思ってしまった途端に、なぜだか分からないが、顔に熱が集まるのを感じる。


「ライナード……」


 思わずライナードの名前を呼ぶが、その声は随分と可愛らしいものになったような気がした。


「っ、カ、カイト?」


 ビクゥッと肩を跳ねさせて、恐る恐るといった具合に俺から体を離して顔を見てくるライナード。そして、そのライナードは……。

 ポフンッ!


「っ、す、すまないっ、すぐ、戻るっ!」


 一瞬にして真っ赤になったかと思えば、一気に俺から離れて、部屋から出ていく。


「……えっと……?」


 ライナードの温もりが離れて、何だか寂しい気がしたものの、そのひんやりとした感覚で、俺はどうにか正気を取り戻す。


(……ライナードが戻るまでに、冷静にならないと)


 何がどうして、こんなことになったのかは分からないが、今はとにかく、冷静になることが優先だ。そうして、俺は火照った顔に両手を当てて、長い、長いため息を吐くのだった。
しおりを挟む
感想 234

あなたにおすすめの小説

捨てられた地味な王宮修復師(実は有能)、強面辺境伯の栄養管理で溺愛され、辺境を改革する ~王都の貴重な物が失われても知りませんよ?~

水上
恋愛
「カビ臭い地味女」と王太子に婚約破棄された王宮修復師のリディア。 彼女の芸術に関する知識と修復師としての技術は、誰からも必要性を理解されていなかった。 失意の中、嫁がされたのは皆から恐れられる強面辺境伯ジェラルドだった! しかし恐ろしい噂とは裏腹に、彼はリディアの不健康を見逃せない超・過保護で!? 絶品手料理と徹底的な体調管理で、リディアは心身ともに美しく再生していく。 一方、彼女を追放した王都では、貴重な物が失われたり、贋作騒動が起きたりとパニックになり始めて……。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない

三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

処理中です...