230 / 412
第二章 少女期 瘴気編
第二百二十九話 ほっそりタヌキ
しおりを挟む
一部の出来事から全力で目を逸らしつつもパーティーを楽しんでいた私は、イルト様が飲み物をもらいに離れている間、ふと、見覚えのある……ただし、少しフォルムが違うような気がする人物を見つける。
「エルドン侯爵……?」
「おぉっ、アルテナ嬢、お久しぶりですなっ」
そこに居たのは、かつて、第一王子の穏健派と過激派を行き来して、最終的に過激派がイルト様に対する襲撃事件で大きな打撃を受けたため、ずっと穏健派一筋だったかのように鞍替えしたタヌキ、もとい、エルドン侯爵だった。しかし、そのエルドン侯爵は、昔と比べ、随分とほっそり……いや、むしろ、窶れているようにも見える。
朗らかな笑みを浮かべているつもりであろうエルドン侯爵の顔は、疲労を誤魔化しているのが良く分かる状態だ。
「お、お久しぶりです」
「あぁ、本当に、本当に良かった! ワシは、ワシは、危うく洗の……いや、うむ、とにかく、良かったっ」
何やら万感の思いで告げているらしいエルドン侯爵。よくよく見てみると、エルドン侯爵の目には、あの私を崇拝する色が存在しない。
(えっと……エルドン侯爵は、洗脳されかかってたけど、どうにか免れたってことかな?)
ティトから全ての話を聞けたわけではないにしろ、恐らくは、エルドン侯爵はアルト様達の協力者だったのではないかという予測くらいできる。
エルドン侯爵家は、侯爵家の中では最も力を持つ家だ。その発言は、王家でも無視できないほどであり、だからこそ、かつて、エルドン侯爵は穏健派と過激派の間をさまよって、その意向を悟らせないようにしてきたのだとも考えられる。
(まぁ、一番の理由は、エルドン侯爵が王家に借りがあるから、なんだろうけど)
その借りの内容までは分からないものの、エルドン侯爵は、王家に高い忠誠を誓っていることが分かっている。もちろん、それを知る者は徹底的にエルドン侯爵のことを洗い出した私以外には居ないはずだ。そして、それを知られていることを、エルドン侯爵自身も知らないと思われる。
「その、ご迷惑をおかけしたようで「ひっ」」
『申し訳ありません』と続くはずだった私の言葉は、エルドン侯爵の短い悲鳴で遮られる。
「おや、エルドン侯爵ではありませんか?」
やってきたのは、にこやかな表情のティト。
「わ、ワシは、これで失礼「ダメですよ?」ひぃいっ」
なぜか、ティトに怯えるエルドン侯爵。
(ティトは、何をしたんだろう?)
そうは思うものの、ひとまずは救出すべきだろうと、私は口を開く。
「ティト、少し話したいことがあるんだけど、良い?」
「っ、えぇ、もちろんです。ユミリア様」
ティトがこちらに意識を向けたのを確認して、チラリとエルドン侯爵に目配せすれば、エルドン侯爵は感謝を込めた視線を向けて、早々にその場を立ち去る。
(これで、とりあえずは大丈夫かな?)
後で、何があったのかを聞かなければと思いながら、私は、どうにかして、ティト達の布教活動を止めるべく、思考を巡らせるのだった。
「エルドン侯爵……?」
「おぉっ、アルテナ嬢、お久しぶりですなっ」
そこに居たのは、かつて、第一王子の穏健派と過激派を行き来して、最終的に過激派がイルト様に対する襲撃事件で大きな打撃を受けたため、ずっと穏健派一筋だったかのように鞍替えしたタヌキ、もとい、エルドン侯爵だった。しかし、そのエルドン侯爵は、昔と比べ、随分とほっそり……いや、むしろ、窶れているようにも見える。
朗らかな笑みを浮かべているつもりであろうエルドン侯爵の顔は、疲労を誤魔化しているのが良く分かる状態だ。
「お、お久しぶりです」
「あぁ、本当に、本当に良かった! ワシは、ワシは、危うく洗の……いや、うむ、とにかく、良かったっ」
何やら万感の思いで告げているらしいエルドン侯爵。よくよく見てみると、エルドン侯爵の目には、あの私を崇拝する色が存在しない。
(えっと……エルドン侯爵は、洗脳されかかってたけど、どうにか免れたってことかな?)
ティトから全ての話を聞けたわけではないにしろ、恐らくは、エルドン侯爵はアルト様達の協力者だったのではないかという予測くらいできる。
エルドン侯爵家は、侯爵家の中では最も力を持つ家だ。その発言は、王家でも無視できないほどであり、だからこそ、かつて、エルドン侯爵は穏健派と過激派の間をさまよって、その意向を悟らせないようにしてきたのだとも考えられる。
(まぁ、一番の理由は、エルドン侯爵が王家に借りがあるから、なんだろうけど)
その借りの内容までは分からないものの、エルドン侯爵は、王家に高い忠誠を誓っていることが分かっている。もちろん、それを知る者は徹底的にエルドン侯爵のことを洗い出した私以外には居ないはずだ。そして、それを知られていることを、エルドン侯爵自身も知らないと思われる。
「その、ご迷惑をおかけしたようで「ひっ」」
『申し訳ありません』と続くはずだった私の言葉は、エルドン侯爵の短い悲鳴で遮られる。
「おや、エルドン侯爵ではありませんか?」
やってきたのは、にこやかな表情のティト。
「わ、ワシは、これで失礼「ダメですよ?」ひぃいっ」
なぜか、ティトに怯えるエルドン侯爵。
(ティトは、何をしたんだろう?)
そうは思うものの、ひとまずは救出すべきだろうと、私は口を開く。
「ティト、少し話したいことがあるんだけど、良い?」
「っ、えぇ、もちろんです。ユミリア様」
ティトがこちらに意識を向けたのを確認して、チラリとエルドン侯爵に目配せすれば、エルドン侯爵は感謝を込めた視線を向けて、早々にその場を立ち去る。
(これで、とりあえずは大丈夫かな?)
後で、何があったのかを聞かなければと思いながら、私は、どうにかして、ティト達の布教活動を止めるべく、思考を巡らせるのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5,540
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる