229 / 412
第二章 少女期 瘴気編
第二百二十八話 信者なんて聞いてない
しおりを挟む
「そこから先は、私から説明しましょう」
一人、混乱の只中にあった私は、そんなティトの言葉に、先ほどの言葉が聞き違いであったという希望を胸に、顔を上げてティトを見る。
「ユミリア様がおられない間、我々は懸命に同志を増やす活動を続けて参りました。手段を選ばず、順調に洗の……教育を施した後、ユミリア様に従順な下ぼ……配下が誕生したというわけです」
ところどころ、『洗脳』やら『下僕』やらと言いたげだった部分を除いたとしても、不穏な内容であるソレに、頭を抱えた私は悪くないと思う。
「何を、どうしたら、そうなるのっ!?」
変に目立ちたくないため、小さく叫ぶに、ティトは順番に、私が居なくなった後のことを教えてくれる。
初めは私の失踪に関しての情報を知らされないまま、療養で実家に帰ったお継母様のところに私が向かったのだという情報しかなかったこと。その間に、瘴気に呑まれかけたイルト様やセイ達をアルト様とミーシャが浄化するという作業があり、王国滅亡の危機が回避されていたこと。私の失踪を知らされた後、アルト様を筆頭としたティト達は、私のために裏工作や情報操作を、イルト様達は、私の失踪を魔王と関連づけて、ミーシャの記憶を頼りにクリスタルロードの攻略を行ったこと。
「あ、えっと……ご迷惑を、おかけしました」
さすがに、その内容を事細かに説明されては、私もそれ以外に言うべき言葉が見つからない。……いや、様々な裏工作のために、多くの貴族が洗脳されたという事実から目を逸らしたかっただけかもしれないが……。
「いいえ、このような些事を気に病むことはありません。事後承諾ではありますが、ユミリア様には、救国の女神になっていただきました。これで、黒の差別も一部、解消されましたよ?」
かつて、たまたま大量生産して余らせていた薬草をティトにねだられるがままに渡していたおかげで、私は、その質の悪い病を癒す薬草を無償提供した女神として崇められているらしい。実際のところ、その病は急速に広まっていたこともあり、貴族社会に不安を植えつけるべく、ディランを休ませたりなどの小細工を繰り返せば、ガッツリと恐怖を蔓延させることに成功したそうだ。
最初は小さな街を救うことから始め、エルドン侯爵を釣り上げて協力(もはや脅迫とか洗脳ではないかと思うが)を仰ぎ、多くの領土に薬を流通させたのだとか。薬草を入れた瓶には、黒猫のマークが刻まれ、貴族だけではなく、平民にも、黒の獣つきである私が救い主であるという噂を流した。薬の出所は匿名としながらも、その中心に私と仲の良い面々が居ると知れば、誰もが勝手に私が薬を提供しているのだと誤解していく。そうして、着々と布教を進めた結果…………現在、信者が溢れているらしい。
この話を聞いて、私が遠い目になって、現実逃避をしたのは、言うまでもないだろう。
「ユミリア。大丈夫だよ。不躾な視線を送る奴らは、殲滅するから」
「ダメです。イルト様。私は、気にしていませんので」
私を崇拝しているらしい視線に対して、イルト様の闇が漏れ出すのを抑える私は、とりあえず、正確な現状把握は後回しにして、イルト様とパーティーを楽しむことにしたのだった。
一人、混乱の只中にあった私は、そんなティトの言葉に、先ほどの言葉が聞き違いであったという希望を胸に、顔を上げてティトを見る。
「ユミリア様がおられない間、我々は懸命に同志を増やす活動を続けて参りました。手段を選ばず、順調に洗の……教育を施した後、ユミリア様に従順な下ぼ……配下が誕生したというわけです」
ところどころ、『洗脳』やら『下僕』やらと言いたげだった部分を除いたとしても、不穏な内容であるソレに、頭を抱えた私は悪くないと思う。
「何を、どうしたら、そうなるのっ!?」
変に目立ちたくないため、小さく叫ぶに、ティトは順番に、私が居なくなった後のことを教えてくれる。
初めは私の失踪に関しての情報を知らされないまま、療養で実家に帰ったお継母様のところに私が向かったのだという情報しかなかったこと。その間に、瘴気に呑まれかけたイルト様やセイ達をアルト様とミーシャが浄化するという作業があり、王国滅亡の危機が回避されていたこと。私の失踪を知らされた後、アルト様を筆頭としたティト達は、私のために裏工作や情報操作を、イルト様達は、私の失踪を魔王と関連づけて、ミーシャの記憶を頼りにクリスタルロードの攻略を行ったこと。
「あ、えっと……ご迷惑を、おかけしました」
さすがに、その内容を事細かに説明されては、私もそれ以外に言うべき言葉が見つからない。……いや、様々な裏工作のために、多くの貴族が洗脳されたという事実から目を逸らしたかっただけかもしれないが……。
「いいえ、このような些事を気に病むことはありません。事後承諾ではありますが、ユミリア様には、救国の女神になっていただきました。これで、黒の差別も一部、解消されましたよ?」
かつて、たまたま大量生産して余らせていた薬草をティトにねだられるがままに渡していたおかげで、私は、その質の悪い病を癒す薬草を無償提供した女神として崇められているらしい。実際のところ、その病は急速に広まっていたこともあり、貴族社会に不安を植えつけるべく、ディランを休ませたりなどの小細工を繰り返せば、ガッツリと恐怖を蔓延させることに成功したそうだ。
最初は小さな街を救うことから始め、エルドン侯爵を釣り上げて協力(もはや脅迫とか洗脳ではないかと思うが)を仰ぎ、多くの領土に薬を流通させたのだとか。薬草を入れた瓶には、黒猫のマークが刻まれ、貴族だけではなく、平民にも、黒の獣つきである私が救い主であるという噂を流した。薬の出所は匿名としながらも、その中心に私と仲の良い面々が居ると知れば、誰もが勝手に私が薬を提供しているのだと誤解していく。そうして、着々と布教を進めた結果…………現在、信者が溢れているらしい。
この話を聞いて、私が遠い目になって、現実逃避をしたのは、言うまでもないだろう。
「ユミリア。大丈夫だよ。不躾な視線を送る奴らは、殲滅するから」
「ダメです。イルト様。私は、気にしていませんので」
私を崇拝しているらしい視線に対して、イルト様の闇が漏れ出すのを抑える私は、とりあえず、正確な現状把握は後回しにして、イルト様とパーティーを楽しむことにしたのだった。
111
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした
ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!?
容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。
「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」
ところが。
ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。
無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!?
でも、よく考えたら――
私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに)
お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。
これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。
じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――!
本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。
アイデア提供者:ゆう(YuFidi)
URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464
戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました
志熊みゅう
恋愛
十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。
卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。
マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。
その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。
――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。
彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。
断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる