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第一章 肝試しの夜
第九話 日記の異常性(芦田・鹿野田・望月グループ)
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『八月八日
今日も、後ろの席で、怪談話が始まった。
今日は、この学校の七不思議らしい。
そういえば、動く人体模型や花子さんの話も前にしていたから、今回で三つ……いや、もしかしたら他にもあったかな?
とにかく、また面白そうな話を期待してる……のだけど……?
黒板の怪談?
誰かの口から伝わったら終わる?
黒板を見たら黒板の世界に引き込まれる?
え?
それだけ??
今日は、随分とまぁ、短くて面白みがなかった。
そういえば、この日記を書き始めて、今日で一月だ。
最初はそんなに続くとは思っていなかったけど、毎日の怪談話が意外と刺激になった。
……あれ?
何か、おかし(この後は、黒く塗り潰されていて読めない)』
「「「…………」」」
今日と同じ日付の八月八日。これが、何年前の日記なのかは不明だが、ちょうどその日にこの場所に来てしまったということは、偶然だとしても嫌な予感しかしない。
「俺は、あまり頭はいい方じゃないが、ひとまず状況整理をしないか?」
「うん、そうだねー。この日記を読んで気づいたことを共有して、少しでも手がかりが欲しいもんねー」
「……うん、じゃあ、まず、私から良い?」
先程から青ざめていたとはいえ、更に顔色が悪く見える望月。その望月の言葉に、芦田も鹿野田もしっかりと頷く。
「この日記、だけど、最初の方からおかしいの」
「最初?」
「んー、特に問題なさそうに見えたけどー?」
パラパラと最初の『七月八日』のページに戻しながら、望月は説明を始める。
「これ、さ……曜日を書いてないから分からないんだけど、毎日、怪談話が続いてるよね? 後ろの席の人が話していた話、という形で」
「んー? あっ……そっか、確かに、おかしいねー」
「? 何がおかしいんだ?」
芦田だけ、その異常に気づいていない。しかし、望月が具体的に説明すれば、芦田もすぐに、その異常性に気づくこととなる。
「あのね、学校って、週に五日だよね? そうしたら、毎日、学校に来て、後ろの座席の人の話を聞いてるって状況が考えにくいんだけど……。しかも、ここにあったってことは、ここで、毎日怪談話を聞いてたんだと思うし……」
そう、日記の怪談話は、毎日書かれていた。日記という性質上、例えば、土日に特別な行事として学校に来ているのであれば、それが書かれていてもおかしくはないはず。そして……。
「今、私達は夏休みで、この日記の持ち主もそのはず、だよね?」
最初の『七月八日』からずっと、毎日欠かすことなく教室に来ていたかのような日記の内容。それは確かに、不自然でしかない。
「確かに、あり得ない、な……」
「うん、この日記の持ち主も、それに気づいてたのかなぁ? あっ、優愛ちゃんの気づいたことがそれで終わりなら、僕も気づいたことを話してみても良いー?」
「私はこれで終わり。じゃあ、鹿野田君、よろしく」
「あっ、呼び方戻ったー? まっ、いっか。僕が気になったのは、日記の書き出しなんだよねー」
そう言って、鹿野田は『今日も変わり映えのない日』という一文を指す。
「この人、どうして日記を書こうと思ったんだろーって、どうしても気になって……」
「宿題、にしちゃあ、中途半端か」
「確かに。夏休みの宿題とかならまだしも、そもそも自由帳に書いてるし……。自分の意思で書いてるはずなのに、どうしてこんな何もない日に始めようとしたんだろ?」
日記を書こうと言うならば、相応の理由があるようにも思える。
「芦田君は、日記を書こうと思うのってどんな時ー?」
「そうだな。何か特別なことがあって、残しておきたいと思えば書くか?」
「優愛ちゃんはー?」
「んー、宿題以外でやりたくない!」
「あはは、だよねぇ。よっぽど文章を書くのが好きな人なら別かもだけど……それにしても、タイミングが必要だったり、動機づけがあるよねー? ……どこにも理由らしい理由がなくて、何となく気になるだけなんだけどさ、手がかりになればなぁって」
確かに、その情報は望月がもたらしたものほどの強烈な違和感はない。しかし、そんな些細な気付きでも、今は貴重だった。
「大丈夫だ。俺も違和感はある。何もなかったとしても、今はどんな情報でもまとめておきたい」
そんな芦田の言葉に、鹿野田はホッとしたような表情を浮かべた。
「そして、悪いが、俺はどうもこういった推理は苦手で、何も気付けなかった。他に何もなければ、ここに来た経緯から今までをまとめておこうと思うが、良いか?」
自分の力不足を素直に口にした芦田。しかし、そんな芦田の言葉に不快感を抱くような者はここには居ない。
鹿野田も望月も、芦田の言葉に従って、これまでの経緯をまとめ始めた。
今日も、後ろの席で、怪談話が始まった。
今日は、この学校の七不思議らしい。
そういえば、動く人体模型や花子さんの話も前にしていたから、今回で三つ……いや、もしかしたら他にもあったかな?
とにかく、また面白そうな話を期待してる……のだけど……?
黒板の怪談?
誰かの口から伝わったら終わる?
黒板を見たら黒板の世界に引き込まれる?
え?
それだけ??
今日は、随分とまぁ、短くて面白みがなかった。
そういえば、この日記を書き始めて、今日で一月だ。
最初はそんなに続くとは思っていなかったけど、毎日の怪談話が意外と刺激になった。
……あれ?
何か、おかし(この後は、黒く塗り潰されていて読めない)』
「「「…………」」」
今日と同じ日付の八月八日。これが、何年前の日記なのかは不明だが、ちょうどその日にこの場所に来てしまったということは、偶然だとしても嫌な予感しかしない。
「俺は、あまり頭はいい方じゃないが、ひとまず状況整理をしないか?」
「うん、そうだねー。この日記を読んで気づいたことを共有して、少しでも手がかりが欲しいもんねー」
「……うん、じゃあ、まず、私から良い?」
先程から青ざめていたとはいえ、更に顔色が悪く見える望月。その望月の言葉に、芦田も鹿野田もしっかりと頷く。
「この日記、だけど、最初の方からおかしいの」
「最初?」
「んー、特に問題なさそうに見えたけどー?」
パラパラと最初の『七月八日』のページに戻しながら、望月は説明を始める。
「これ、さ……曜日を書いてないから分からないんだけど、毎日、怪談話が続いてるよね? 後ろの席の人が話していた話、という形で」
「んー? あっ……そっか、確かに、おかしいねー」
「? 何がおかしいんだ?」
芦田だけ、その異常に気づいていない。しかし、望月が具体的に説明すれば、芦田もすぐに、その異常性に気づくこととなる。
「あのね、学校って、週に五日だよね? そうしたら、毎日、学校に来て、後ろの座席の人の話を聞いてるって状況が考えにくいんだけど……。しかも、ここにあったってことは、ここで、毎日怪談話を聞いてたんだと思うし……」
そう、日記の怪談話は、毎日書かれていた。日記という性質上、例えば、土日に特別な行事として学校に来ているのであれば、それが書かれていてもおかしくはないはず。そして……。
「今、私達は夏休みで、この日記の持ち主もそのはず、だよね?」
最初の『七月八日』からずっと、毎日欠かすことなく教室に来ていたかのような日記の内容。それは確かに、不自然でしかない。
「確かに、あり得ない、な……」
「うん、この日記の持ち主も、それに気づいてたのかなぁ? あっ、優愛ちゃんの気づいたことがそれで終わりなら、僕も気づいたことを話してみても良いー?」
「私はこれで終わり。じゃあ、鹿野田君、よろしく」
「あっ、呼び方戻ったー? まっ、いっか。僕が気になったのは、日記の書き出しなんだよねー」
そう言って、鹿野田は『今日も変わり映えのない日』という一文を指す。
「この人、どうして日記を書こうと思ったんだろーって、どうしても気になって……」
「宿題、にしちゃあ、中途半端か」
「確かに。夏休みの宿題とかならまだしも、そもそも自由帳に書いてるし……。自分の意思で書いてるはずなのに、どうしてこんな何もない日に始めようとしたんだろ?」
日記を書こうと言うならば、相応の理由があるようにも思える。
「芦田君は、日記を書こうと思うのってどんな時ー?」
「そうだな。何か特別なことがあって、残しておきたいと思えば書くか?」
「優愛ちゃんはー?」
「んー、宿題以外でやりたくない!」
「あはは、だよねぇ。よっぽど文章を書くのが好きな人なら別かもだけど……それにしても、タイミングが必要だったり、動機づけがあるよねー? ……どこにも理由らしい理由がなくて、何となく気になるだけなんだけどさ、手がかりになればなぁって」
確かに、その情報は望月がもたらしたものほどの強烈な違和感はない。しかし、そんな些細な気付きでも、今は貴重だった。
「大丈夫だ。俺も違和感はある。何もなかったとしても、今はどんな情報でもまとめておきたい」
そんな芦田の言葉に、鹿野田はホッとしたような表情を浮かべた。
「そして、悪いが、俺はどうもこういった推理は苦手で、何も気付けなかった。他に何もなければ、ここに来た経緯から今までをまとめておこうと思うが、良いか?」
自分の力不足を素直に口にした芦田。しかし、そんな芦田の言葉に不快感を抱くような者はここには居ない。
鹿野田も望月も、芦田の言葉に従って、これまでの経緯をまとめ始めた。
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