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第一夜
021.緑の君との初夜(三)
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「うわぁ!」という悲鳴と、ドスンという音で、わたしは目を覚ました。ベッドの上に、悲鳴の主はいない。見ると、ベッドの下に布団ごと落ちている。まぁ、見知らぬ女が隣で寝ていたら、そういう反応になるよね。
「おはよー、リヤーフ」
「なっ、なん、なんだ、おま、」
「やだ、妻の顔も忘れたの? 昨夜は来てくれなかったから、わたしから会いに来ちゃった」
へたり込んでいるリヤーフの隣に降り、同じように座る。深い緑色の瞳は、やっぱり綺麗。宝石みたい。
「お前が、聖女?」
「あ、和泉ね。よろしく、リヤーフ」
「おま、お前なんかと、よろしくなど……!」
うるさい唇を塞ぐ。何が起きたのかわかっていないのか、呆然としている夫の唇を優しく啄んだあと、頬や鼻、額にキスをしていく。拒否はされないから、キスは嫌いじゃないんだろう。
戸惑うリヤーフの視線が胸元にあることは、ちゃんとわかっている。ボタン留めてないもん。この人、おっぱい好きなんだろうなぁ。「触りたい?」なんて聞いたら絶対「触らない!」って言うよね、彼。言い方を間違えないようにしないと。素直じゃない夫を素直にさせる方法、なんて本があったら熟読しておきたいものだわ。
「あ、ごめんなさい。はしたない格好で」
「ん」
「そういえば、昨日着てくれていた服、めちゃくちゃ格好良かったな。緑と金色の。もっとじっくり見たかった」
「そ、そうか」
ムスッとしながらも、ちょっと照れて明後日の方向を見ているリヤーフが可愛い。ボタン留めたら明らかにしょんぼりしているし。意外とわかりやすいな。
リヤーフは立ち上がり、窓の扉を開ける。既に一つ時は過ぎてそうだ。その明るい日差しに緑がかった黒髪が美しく輝く。玉虫色って言うのかな、めっちゃ綺麗。風に揺られる玉虫色の長髪。王子様だなぁ、本当に。
「やっぱり綺麗な髪だねぇ。わたしのと違って、緑色が混じってる。本当に綺麗」
「そ、う、か」
「うん。わたしは好きだな、リヤーフの髪」
これは事実。手触りはいいし美しい。コンプレックスに思う必要なんて、ないのにな。
「……嘘だ」
「え」
「どうせ嘘に決まっている。黒の王子と呼ばれている俺を、憐れんでいるだけだろう! バラーか? サーディクか? 余計なことを吹き込んだのは」
ひねくれ者がすぐに素直になるわけがない。わかっている。それにしても、かなり拗らせているみたい。かわいそうに。これは長期戦になりそう。
「お、俺は、お前と結婚したくはなかった! 本来なら婚約者と結婚をするはずだったんだ。親に言われて、国のために、仕方なく、お前と結婚する道を選んだのだ。勘違いするな、俺はお前のことなど、す、す、好きでも何でもな」
「ねぇ! リヤーフ」
声を張って、夫の声を遮る。ちょっとイラッとするよね、「好きじゃない」なんて面と向かって言われたら。それでなくとも、素直じゃない夫との会話は手探りで大変なのだから。本心ではないと知っていても、苛立つものだ。
「寝室で他の女のことを持ち出すのはやめて。聞きたくない」
「な」
「聞きたくない」
リヤーフの服をぐいと引き、口づける。もっと可愛く言えばよかったかな、なんて思うけど、後の祭り。怒らせちゃったかな? まぁ、いっか。これはリヤーフが悪いんだもの。
ここは寝室だ。わたしだって他の夫のことは口にしないと決めてあるのだから、彼も従うべきだ。従わないなら、嫌がらせのように他の夫のことを話しちゃうよ、わたし。
苛立ちついでに、舌を突っ込んでやる。夫は慌てた様子でジタバタしていたけれど、強く拒絶することはない。観念して、舌を絡ませてくる。それを吸い、口蓋をなぞり、唾液を流し込んでみる。リヤーフは大人しく、応じ続ける。キスをすると素直になるんだから、何か言われるたびにキスしてやろうかしら。
しばらくディープなキスを楽しんでいると、ずるりとリヤーフの背中が壁を滑った。もう限界? わたしもそれに合わせて、彼の上に跨る。……めっちゃ硬いね。
「お、お前は、っ」
「和泉。妻の名前くらい覚えてよ」
「す、好きでもない男と、こんなこ、っ」
「好きでもない女の体に欲情してるのはあなたでしょ」なんて言ったら激昂するよね、きっと。売り言葉に買い言葉はダメだわ。壊れたら夫婦関係を修復できなくなる。わたしとリヤーフは、ほぼ初対面なんだもの。
だから、むぎゅと抱きついて、そのうるさい唇を塞ぐ。彼にはもうこうするしかないのかな? 頻繁にキスしないといけないじゃん。ひねくれ者の褐色イケメンに、わたしがムラムラするから困るんだけどなぁ。
「好きよ、リヤーフ」
もう直球勝負しかないってことでしょ。卑屈な男の扱い方なんてわかんないわ。どんなに誠意を込めた言葉でも、どうせ「嘘だ」って否定されるんだろうし。ぜんぶに付き合ってらんないよ。
「う、そだ」
「わたしは好き。それでいいでしょ」
「う」
さて、と。わたしはリヤーフにキスをしながら、手早くボタンを外す。夫のズボンと、わたしの寝間着のボタンを。
「ちょ、っおま、何を」
リヤーフは慌ててズボンを押さえようとするけれど、わたしのほうが早かった。硬くなったモノを前にした肉食女子を舐めてもらっては困る。ずるりと出てきた褐色の剛直を、わたしは手早く「いただきます」と口に含んだのだ。
「おはよー、リヤーフ」
「なっ、なん、なんだ、おま、」
「やだ、妻の顔も忘れたの? 昨夜は来てくれなかったから、わたしから会いに来ちゃった」
へたり込んでいるリヤーフの隣に降り、同じように座る。深い緑色の瞳は、やっぱり綺麗。宝石みたい。
「お前が、聖女?」
「あ、和泉ね。よろしく、リヤーフ」
「おま、お前なんかと、よろしくなど……!」
うるさい唇を塞ぐ。何が起きたのかわかっていないのか、呆然としている夫の唇を優しく啄んだあと、頬や鼻、額にキスをしていく。拒否はされないから、キスは嫌いじゃないんだろう。
戸惑うリヤーフの視線が胸元にあることは、ちゃんとわかっている。ボタン留めてないもん。この人、おっぱい好きなんだろうなぁ。「触りたい?」なんて聞いたら絶対「触らない!」って言うよね、彼。言い方を間違えないようにしないと。素直じゃない夫を素直にさせる方法、なんて本があったら熟読しておきたいものだわ。
「あ、ごめんなさい。はしたない格好で」
「ん」
「そういえば、昨日着てくれていた服、めちゃくちゃ格好良かったな。緑と金色の。もっとじっくり見たかった」
「そ、そうか」
ムスッとしながらも、ちょっと照れて明後日の方向を見ているリヤーフが可愛い。ボタン留めたら明らかにしょんぼりしているし。意外とわかりやすいな。
リヤーフは立ち上がり、窓の扉を開ける。既に一つ時は過ぎてそうだ。その明るい日差しに緑がかった黒髪が美しく輝く。玉虫色って言うのかな、めっちゃ綺麗。風に揺られる玉虫色の長髪。王子様だなぁ、本当に。
「やっぱり綺麗な髪だねぇ。わたしのと違って、緑色が混じってる。本当に綺麗」
「そ、う、か」
「うん。わたしは好きだな、リヤーフの髪」
これは事実。手触りはいいし美しい。コンプレックスに思う必要なんて、ないのにな。
「……嘘だ」
「え」
「どうせ嘘に決まっている。黒の王子と呼ばれている俺を、憐れんでいるだけだろう! バラーか? サーディクか? 余計なことを吹き込んだのは」
ひねくれ者がすぐに素直になるわけがない。わかっている。それにしても、かなり拗らせているみたい。かわいそうに。これは長期戦になりそう。
「お、俺は、お前と結婚したくはなかった! 本来なら婚約者と結婚をするはずだったんだ。親に言われて、国のために、仕方なく、お前と結婚する道を選んだのだ。勘違いするな、俺はお前のことなど、す、す、好きでも何でもな」
「ねぇ! リヤーフ」
声を張って、夫の声を遮る。ちょっとイラッとするよね、「好きじゃない」なんて面と向かって言われたら。それでなくとも、素直じゃない夫との会話は手探りで大変なのだから。本心ではないと知っていても、苛立つものだ。
「寝室で他の女のことを持ち出すのはやめて。聞きたくない」
「な」
「聞きたくない」
リヤーフの服をぐいと引き、口づける。もっと可愛く言えばよかったかな、なんて思うけど、後の祭り。怒らせちゃったかな? まぁ、いっか。これはリヤーフが悪いんだもの。
ここは寝室だ。わたしだって他の夫のことは口にしないと決めてあるのだから、彼も従うべきだ。従わないなら、嫌がらせのように他の夫のことを話しちゃうよ、わたし。
苛立ちついでに、舌を突っ込んでやる。夫は慌てた様子でジタバタしていたけれど、強く拒絶することはない。観念して、舌を絡ませてくる。それを吸い、口蓋をなぞり、唾液を流し込んでみる。リヤーフは大人しく、応じ続ける。キスをすると素直になるんだから、何か言われるたびにキスしてやろうかしら。
しばらくディープなキスを楽しんでいると、ずるりとリヤーフの背中が壁を滑った。もう限界? わたしもそれに合わせて、彼の上に跨る。……めっちゃ硬いね。
「お、お前は、っ」
「和泉。妻の名前くらい覚えてよ」
「す、好きでもない男と、こんなこ、っ」
「好きでもない女の体に欲情してるのはあなたでしょ」なんて言ったら激昂するよね、きっと。売り言葉に買い言葉はダメだわ。壊れたら夫婦関係を修復できなくなる。わたしとリヤーフは、ほぼ初対面なんだもの。
だから、むぎゅと抱きついて、そのうるさい唇を塞ぐ。彼にはもうこうするしかないのかな? 頻繁にキスしないといけないじゃん。ひねくれ者の褐色イケメンに、わたしがムラムラするから困るんだけどなぁ。
「好きよ、リヤーフ」
もう直球勝負しかないってことでしょ。卑屈な男の扱い方なんてわかんないわ。どんなに誠意を込めた言葉でも、どうせ「嘘だ」って否定されるんだろうし。ぜんぶに付き合ってらんないよ。
「う、そだ」
「わたしは好き。それでいいでしょ」
「う」
さて、と。わたしはリヤーフにキスをしながら、手早くボタンを外す。夫のズボンと、わたしの寝間着のボタンを。
「ちょ、っおま、何を」
リヤーフは慌ててズボンを押さえようとするけれど、わたしのほうが早かった。硬くなったモノを前にした肉食女子を舐めてもらっては困る。ずるりと出てきた褐色の剛直を、わたしは手早く「いただきます」と口に含んだのだ。
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