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五章.周辺事情
1.桜の女中
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私は西遠寺家の女中です。そして、その中でも私の仕事は桜様の身の回りのお世話をする、いわば桜様専用の女中です。
西遠寺家のご当主である桜様付きの女中は何人もいるのですが、本当に桜様の命令で動く女中は私を含めて三人しかいません。私は彼女たちの中では最も先輩なのです。
桜様のご結婚のお手伝いをしたのも私です。
あの頃、桜様はまだご当主ではなく、次期当主には桜様のお兄様が決まっておりました。桜様にはお兄様が一人お姉様が一人おられて、どちらも優秀な方でしたから、桜様をご当主候補に挙げられる方はおられませんでした。
桜様は、当時の西遠寺家としてはちょっと特殊でしたしね。
西遠寺家といえば、政府高官の影の陰陽師と言われる家柄で、決して表に出ることの許されない家柄です。権力者を呪う者は昔も今もいなくならないわけですからね。
だから、西遠寺家は常に秘密裏に日本の暗部で活躍してきたといえます。
能力者の確保はいつも一番の問題点でした。口が堅く、そして、能力が高い者の確保はとても難しいことでした。そして、そのようにして一般の人間から集められた能力者は「裏西遠寺」と呼ばれ、一族に取り込まれて行きました。
しかしながら、桜様のお兄様たち当主候補達に望まれたのは、政府高官と信頼関係を築く為の信用の置ける礼儀作法であるとか、話術であるとかいった外交面、そして、能力者たち裏西遠寺を使いこなす能力でした。
つまり、当主には、能力が必ずしも必要ではない‥むしろ、なくても別に問題がないと思われていた。
それが当時の状況でした。そして、それこそが桜様が当時の西遠寺家としては特殊と言われる所以でした。
当時の西遠寺家として、むしろ必要なのは、(さっきも言ったように)「能力者たち裏西遠寺を使いこなす能力」。そういったマナーは、桜様も幼少期からそれはもう厳しく躾けられてきたのです。学校には通われることもなく、何人もの家庭教師によって。(なんといいましても、西遠寺家は目立ってはいけない家でしたからね。あの頃は今よりずっと厳しかったのです)
幼少期からずっとそれが当たり前だった西遠寺家の方々がそれに対し不満に思われることは無かったのですが、やっぱり時には外に出てみたいと思われるのでしょう。桜様のお兄様やお姉様も買い物など自由時間で外出されることはありました。勿論、デートをなさることもありましたしね。そういったことまで制限されることはないのです。
朝、一日のスケジュールが出された地点で、空き時間を作って外出することを伝える。行き先を告げて、車の手配を支持する。それだけです。
ですが、桜様は行き先も決めずぶらり、と外出されることがありました。その際に、桜様の身辺警護と館との連絡係りとなったのは、私でした。
桜様が四朗様を見かけられたのも、そんな私とお忍びで出かけたお寺でした。四朗様(当時はまだ踏襲前で信濃様と呼ばれていました)は修学旅行でそこをたまたま訪れたようでした。
当時18歳でいらっしゃった四朗様は大勢の学生の中で、一際目立つ美しい青年でした。
ああ、この四朗様というのは、桜様のご子息でいらっしゃる四郎様のお父様です。一族がみんなおんなじ名前とは、本当に面倒臭い一族ですね。
まあ、生まれる前から名前の決まっている西遠寺家も変わりませんが。
四朗様は、相生の顔しかしていないと思われがちですが、あの気品は確実に桜様のものです。相生の若様(つまり、四朗様のお父様である先代の四朗様ですね)は、少し軽薄そうな雰囲気があるし、おじい様に至っては、固すぎる人形の様です。まあ、基本的に同じ顔なのですけれど。
その点、四朗様は華やかですし、優し気ですし笑顔が美しい。
あの笑顔なんて、桜様そっくりではありませんか!
だけど、本当に相生の若様は男前でした。
‥若様だけでなく、相生の皆様は‥と言った方がいいですね。
相生だけでなく‥信濃四家と呼ばれる方々は皆、揃って容姿が秀麗でした。
伝手を頼って四家の恒例の親族会に潜入したときには(別に忍び込んだわけではありませんが)その華やかさにびっくりしたものです。
相崎の先代はまるで咲き誇る大輪のボタンの様な鮮やかさで、
相模の先代は清らかな睡蓮の花の様で、
相馬の先代は、凛とした青竹の様で、
そして、相生は‥まさに月下美人の様でした。
凛としていて、決して出しゃばらず、しかし目を引き付けてやまない、花の様な容姿と佇まい。まさに、魔性の美しさでした。
その危険な美しさに、私も思わず息をのんで見入ってしまいました。
「やっぱり、あの人でなければ、嫌」
桜様が我が儘を言うのを初めて見ました。
「どうされましたか? 美しいお嬢様」
相崎の先代のスマートな態度を無視して、ふらふらと四朗様の元に歩いて行った桜様は、その瞳を不躾に覗き込んで微笑んだ。
「ああ、本当にきれいな瞳。貴方の瞳には何も映っていませんのね。その瞳に私が映れたらいいのに」
相生の先代が信じられない様な顔で桜様を見た。
そして、桜様の元に座られると
「失礼。貴方のお名前をお聞かせいただけますか? 私は、相生 四朗と申します」
桜様の目に自分を映しながら言った。丁寧に、ゆっくりと。
周りに座っている人たちが、あからさまに視線を逸らすのが見えた。相生の先代の視線に映って「巻き込まれる」のを避けるためだろう。確かに、桜様の隣にいて直接は視線が合っていない私でさえ、ぞくりとするほどその微笑は美しかったのですから。
桜様は、目をそらさずにっこりと微笑まれた。目がそらせなかったのではなく、桜様はわざわざ先代に視線を合わせたのだ。
そのことにも、相生の先代は驚いた様子でした。
「わたくしは西遠寺 桜と申しますわ」
相生の先代が「西遠寺‥」と呟くのが、口の形から分かりました。
しかし、それでもその表情が変わることはありませんでした。
瞳を合わさない様に‥私は相生の先代の目を見ました。(私程になってくると、視線を合わさないで目を「見る」ことが出来るんです。何せ、うちの桜様で慣れておりますから)
穏やかに微笑む先代の表情はさっきと少しも変わらなかったですが、その瞳だけが、さっきより明らかに黄色く見えて‥私ははっとしました。
能力発動時に目が黄色に変わるのは、桜様も同じ。
先代が「何らかの」能力を発動させている。
もしや、桜様に何か危害を!?
一瞬身構えましたが、先代は西遠寺という名前を「理解していた」様子。西遠寺がどのような家かを知っていて、その御令嬢に危害を加えようなんて考える者はいないだろう。
周りの者たちも「関わりたくない」という感じだが、止めようとしている者はいない。
関わりたくないが実害はない。それに周りの者たちの様子‥赤面して、少々落ち着かない様子をしている‥からして、相生の先代の能力は‥推測するに「魅了」。(※ 後に違うことが判明したが、その時の私はそう推測した。だけど、全く見当違いってわけでもないこともその後発覚。この一族は‥魔性の一族だ! )
魅了して相手を催眠状態に陥らせる魔性の魅力ということだろう。
‥卑怯で下劣な能力を‥
私は腸が煮えくり返る思いがしたが、ここで私が桜様と先代の「勝負」の邪魔をすることはできない。
私は浮かしかけた腰を下ろして、‥先代を睨みつけながら勝負のいきさつを見守った。
勝負といっても‥表面上は、穏やかに見つめ合っているだけのものだ。
だけど、近くにいて感じる圧は‥ただ事ではない。
これは‥静かな威圧戦だ。うっかり巻き込まれると‥ただじゃすまない。
私は首筋に冷や汗が流れるのを感じた。
その生ぬるい不快さが、やがて肌寒さに変わっても‥私はそこから動くことはできなかった。
表情や‥顔色一つ変えない桜様も流石だけど‥できる。この御仁。桜様とこんなに視線を合わせているのに、無事だなんて。
先代といえ、40歳にもならないような‥言うならば若造が発することが出来る圧ではない‥そして、それに対峙している桜様はまだ16歳のいわば「小娘」だ。
しばらくして、その緊張状態がふ、と解ける。
先代はふわ‥と、まるで大輪の牡丹が咲きほころぶ様に鮮やかに微笑み
「息子がお望みですか? 西の姫君。では、お心のままに」
と言った。
‥さっきのあれで対話が成立していたのか‥っ!
‥皆様、心のなかでそう突っ込まれたことでしょう。かくいう私も、ついそう突っ込まずにはいられませんでした(勿論口には出しませんでしたが)
だけど、それは周りも同じ‥って感じでしょうか。なかなかたいしたものです。
この人たちは‥どうやら、田舎の「歴史が古いだけの一族」ではない様です。私はまだ調査が甘かったようですわね。
まあ。(歴史云々は関係ないとしても)桜様とこの御仁二人に逆らえる人なんて、多分いないでしょう。
「わかりました」
先代の息子、四朗様にとっても、それは言えたらしく‥四朗様はまるで他人事の様に微笑んでそれを受け入れた。
私の記憶の中の四朗様は‥ずっとその笑顔を浮かべていた。
だから、私にはあの時の四朗様が嬉しかったのか、悲しかったのか、悔しかったのかは‥分からない。
ただ、桜様の気持ちは(付き合いが長いので)分かりました。桜様は‥四朗様に一目惚れしたんだ。どんな家柄でどんな性格か‥そんなことどうでもいいぐらい。‥それほど桜様は相生の若様のことが好きになってしまわれた。
‥思えば、それが桜様の最初で最後の我儘だった様な気がします。
西遠寺家のご当主である桜様付きの女中は何人もいるのですが、本当に桜様の命令で動く女中は私を含めて三人しかいません。私は彼女たちの中では最も先輩なのです。
桜様のご結婚のお手伝いをしたのも私です。
あの頃、桜様はまだご当主ではなく、次期当主には桜様のお兄様が決まっておりました。桜様にはお兄様が一人お姉様が一人おられて、どちらも優秀な方でしたから、桜様をご当主候補に挙げられる方はおられませんでした。
桜様は、当時の西遠寺家としてはちょっと特殊でしたしね。
西遠寺家といえば、政府高官の影の陰陽師と言われる家柄で、決して表に出ることの許されない家柄です。権力者を呪う者は昔も今もいなくならないわけですからね。
だから、西遠寺家は常に秘密裏に日本の暗部で活躍してきたといえます。
能力者の確保はいつも一番の問題点でした。口が堅く、そして、能力が高い者の確保はとても難しいことでした。そして、そのようにして一般の人間から集められた能力者は「裏西遠寺」と呼ばれ、一族に取り込まれて行きました。
しかしながら、桜様のお兄様たち当主候補達に望まれたのは、政府高官と信頼関係を築く為の信用の置ける礼儀作法であるとか、話術であるとかいった外交面、そして、能力者たち裏西遠寺を使いこなす能力でした。
つまり、当主には、能力が必ずしも必要ではない‥むしろ、なくても別に問題がないと思われていた。
それが当時の状況でした。そして、それこそが桜様が当時の西遠寺家としては特殊と言われる所以でした。
当時の西遠寺家として、むしろ必要なのは、(さっきも言ったように)「能力者たち裏西遠寺を使いこなす能力」。そういったマナーは、桜様も幼少期からそれはもう厳しく躾けられてきたのです。学校には通われることもなく、何人もの家庭教師によって。(なんといいましても、西遠寺家は目立ってはいけない家でしたからね。あの頃は今よりずっと厳しかったのです)
幼少期からずっとそれが当たり前だった西遠寺家の方々がそれに対し不満に思われることは無かったのですが、やっぱり時には外に出てみたいと思われるのでしょう。桜様のお兄様やお姉様も買い物など自由時間で外出されることはありました。勿論、デートをなさることもありましたしね。そういったことまで制限されることはないのです。
朝、一日のスケジュールが出された地点で、空き時間を作って外出することを伝える。行き先を告げて、車の手配を支持する。それだけです。
ですが、桜様は行き先も決めずぶらり、と外出されることがありました。その際に、桜様の身辺警護と館との連絡係りとなったのは、私でした。
桜様が四朗様を見かけられたのも、そんな私とお忍びで出かけたお寺でした。四朗様(当時はまだ踏襲前で信濃様と呼ばれていました)は修学旅行でそこをたまたま訪れたようでした。
当時18歳でいらっしゃった四朗様は大勢の学生の中で、一際目立つ美しい青年でした。
ああ、この四朗様というのは、桜様のご子息でいらっしゃる四郎様のお父様です。一族がみんなおんなじ名前とは、本当に面倒臭い一族ですね。
まあ、生まれる前から名前の決まっている西遠寺家も変わりませんが。
四朗様は、相生の顔しかしていないと思われがちですが、あの気品は確実に桜様のものです。相生の若様(つまり、四朗様のお父様である先代の四朗様ですね)は、少し軽薄そうな雰囲気があるし、おじい様に至っては、固すぎる人形の様です。まあ、基本的に同じ顔なのですけれど。
その点、四朗様は華やかですし、優し気ですし笑顔が美しい。
あの笑顔なんて、桜様そっくりではありませんか!
だけど、本当に相生の若様は男前でした。
‥若様だけでなく、相生の皆様は‥と言った方がいいですね。
相生だけでなく‥信濃四家と呼ばれる方々は皆、揃って容姿が秀麗でした。
伝手を頼って四家の恒例の親族会に潜入したときには(別に忍び込んだわけではありませんが)その華やかさにびっくりしたものです。
相崎の先代はまるで咲き誇る大輪のボタンの様な鮮やかさで、
相模の先代は清らかな睡蓮の花の様で、
相馬の先代は、凛とした青竹の様で、
そして、相生は‥まさに月下美人の様でした。
凛としていて、決して出しゃばらず、しかし目を引き付けてやまない、花の様な容姿と佇まい。まさに、魔性の美しさでした。
その危険な美しさに、私も思わず息をのんで見入ってしまいました。
「やっぱり、あの人でなければ、嫌」
桜様が我が儘を言うのを初めて見ました。
「どうされましたか? 美しいお嬢様」
相崎の先代のスマートな態度を無視して、ふらふらと四朗様の元に歩いて行った桜様は、その瞳を不躾に覗き込んで微笑んだ。
「ああ、本当にきれいな瞳。貴方の瞳には何も映っていませんのね。その瞳に私が映れたらいいのに」
相生の先代が信じられない様な顔で桜様を見た。
そして、桜様の元に座られると
「失礼。貴方のお名前をお聞かせいただけますか? 私は、相生 四朗と申します」
桜様の目に自分を映しながら言った。丁寧に、ゆっくりと。
周りに座っている人たちが、あからさまに視線を逸らすのが見えた。相生の先代の視線に映って「巻き込まれる」のを避けるためだろう。確かに、桜様の隣にいて直接は視線が合っていない私でさえ、ぞくりとするほどその微笑は美しかったのですから。
桜様は、目をそらさずにっこりと微笑まれた。目がそらせなかったのではなく、桜様はわざわざ先代に視線を合わせたのだ。
そのことにも、相生の先代は驚いた様子でした。
「わたくしは西遠寺 桜と申しますわ」
相生の先代が「西遠寺‥」と呟くのが、口の形から分かりました。
しかし、それでもその表情が変わることはありませんでした。
瞳を合わさない様に‥私は相生の先代の目を見ました。(私程になってくると、視線を合わさないで目を「見る」ことが出来るんです。何せ、うちの桜様で慣れておりますから)
穏やかに微笑む先代の表情はさっきと少しも変わらなかったですが、その瞳だけが、さっきより明らかに黄色く見えて‥私ははっとしました。
能力発動時に目が黄色に変わるのは、桜様も同じ。
先代が「何らかの」能力を発動させている。
もしや、桜様に何か危害を!?
一瞬身構えましたが、先代は西遠寺という名前を「理解していた」様子。西遠寺がどのような家かを知っていて、その御令嬢に危害を加えようなんて考える者はいないだろう。
周りの者たちも「関わりたくない」という感じだが、止めようとしている者はいない。
関わりたくないが実害はない。それに周りの者たちの様子‥赤面して、少々落ち着かない様子をしている‥からして、相生の先代の能力は‥推測するに「魅了」。(※ 後に違うことが判明したが、その時の私はそう推測した。だけど、全く見当違いってわけでもないこともその後発覚。この一族は‥魔性の一族だ! )
魅了して相手を催眠状態に陥らせる魔性の魅力ということだろう。
‥卑怯で下劣な能力を‥
私は腸が煮えくり返る思いがしたが、ここで私が桜様と先代の「勝負」の邪魔をすることはできない。
私は浮かしかけた腰を下ろして、‥先代を睨みつけながら勝負のいきさつを見守った。
勝負といっても‥表面上は、穏やかに見つめ合っているだけのものだ。
だけど、近くにいて感じる圧は‥ただ事ではない。
これは‥静かな威圧戦だ。うっかり巻き込まれると‥ただじゃすまない。
私は首筋に冷や汗が流れるのを感じた。
その生ぬるい不快さが、やがて肌寒さに変わっても‥私はそこから動くことはできなかった。
表情や‥顔色一つ変えない桜様も流石だけど‥できる。この御仁。桜様とこんなに視線を合わせているのに、無事だなんて。
先代といえ、40歳にもならないような‥言うならば若造が発することが出来る圧ではない‥そして、それに対峙している桜様はまだ16歳のいわば「小娘」だ。
しばらくして、その緊張状態がふ、と解ける。
先代はふわ‥と、まるで大輪の牡丹が咲きほころぶ様に鮮やかに微笑み
「息子がお望みですか? 西の姫君。では、お心のままに」
と言った。
‥さっきのあれで対話が成立していたのか‥っ!
‥皆様、心のなかでそう突っ込まれたことでしょう。かくいう私も、ついそう突っ込まずにはいられませんでした(勿論口には出しませんでしたが)
だけど、それは周りも同じ‥って感じでしょうか。なかなかたいしたものです。
この人たちは‥どうやら、田舎の「歴史が古いだけの一族」ではない様です。私はまだ調査が甘かったようですわね。
まあ。(歴史云々は関係ないとしても)桜様とこの御仁二人に逆らえる人なんて、多分いないでしょう。
「わかりました」
先代の息子、四朗様にとっても、それは言えたらしく‥四朗様はまるで他人事の様に微笑んでそれを受け入れた。
私の記憶の中の四朗様は‥ずっとその笑顔を浮かべていた。
だから、私にはあの時の四朗様が嬉しかったのか、悲しかったのか、悔しかったのかは‥分からない。
ただ、桜様の気持ちは(付き合いが長いので)分かりました。桜様は‥四朗様に一目惚れしたんだ。どんな家柄でどんな性格か‥そんなことどうでもいいぐらい。‥それほど桜様は相生の若様のことが好きになってしまわれた。
‥思えば、それが桜様の最初で最後の我儘だった様な気がします。
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