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第143話
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司雀はロウソクを手に持ち、日向の方へと近づいてくる。
片眉を上げて、不思議そうに日向を見つめながら、ロウソクの灯りを日向の方へと差し出した。
「驚きました……貴方様がここにいるなんて」
司雀は日向の視線に合うように、腰を曲げた。
あまり見たことの無い、司雀の驚いた表情。
日向がこの地下にたどり着いていることが、余程驚きだったようだ。
日向は困惑しながらも、状況を説明しようと口をひらく。
「あ、あの、実は楊がここに連れてきてくれて。僕はついてきただけなんだよ」
「え、楊様が……?」
「うん。ピィー!って鳴きながら。そんで、追いかけたらここに来た」
「楊様に……?」
「うん、楊に」
「……お言葉ですが……その、楊様はどちらに?」
「え?あぁ、あの机の上に…………………………
あれ?」
楊はあっちにいる、と話そうとした途端。
日向の目に映るのは、机だけ。
先程あの上に乗っていた楊の姿が、何故かどこにもない。
そこでようやく、日向はその場に楊がいないことに気づく。
「えっ!?や、楊!?どこ行った!?」
「あの、日向様。本当に楊様がここへ……?楊様は、基本魁蓮と行動を共にしているので、単独行動はしない印象があるのですが……」
「いや、ほんと!まじ!お願い信じてぇー!!嘘は言ってないんだってばぁ!」
(あの黒鷲、どこ行きやがった!?!?!?!?)
引っ張られ、ついてこいと言われ、逃げられた。
なんという自由すぎる行動だろう、自由さで言うなら主である魁蓮そっくりだ。
だが問題なのは、このままでは日向が嘘をついていることになってしまう。
日向は何とか司雀に信じてもらおうと、あれやこれやと理由を考えるが、楊がいない以上説得力がない。
(うおおお!どうしよ!!!!!!!)
「本当に、楊様がここへ導いたのですか…………」
「あっ……え?」
頭を抱えて悩んでいると、ふと司雀の小さな声が聞こえた。
どこか弱々しく、そして震えて聞こえた声に、日向はパッと顔を上げる。
「っ…………」
顔を上げた先にあったのは、何故か悲しい表情を浮かべる司雀の姿。
小さく口を引き結び、綺麗な瞳はゆらゆらと揺れている。
眉は八の字になっていて、今にも涙を流しそうな、そんな表情だった。
日向は初めて見る司雀の表情に、言葉を失った。
「まあ、楊様が導いたとなると、納得できますね」
「っ……」
「とにかく、ご無事で何よりです」
司雀は静かに納得すると、いつもの優しい笑みへと戻った。
何だったのだろうか、今の表情は。
触れていいものかも分からず、日向は少し戸惑いながら、「うん」と一言だけ漏らす。
すると司雀はコホン、と1つ咳払いをして、話を仕切り直した。
「いらっしゃいませ、日向様。
ここは、私が使用している研究室です」
「……えっ……えっ!?魁蓮じゃねぇの!?」
司雀の言葉に、日向はガッと目を見開いた。
楊が必死になって連れてくるものだから、てっきり魁蓮が使っている部屋だと思っていたのだが。
そんな日向の反応を見た司雀は、ふふっと笑みを零す。
「魁蓮は、研究に興味を持つような方ではありません。むしろ、面倒だと吐き捨てるような方です」
「ま、まあ、言われてみればそうだな……」
確かに、司雀の頭脳明晰な点を見れば、これだけの研究をしていると言われても納得出来る。
恐らく、知識的な面を見れば、司雀は魁蓮より賢いだろう。
古いものにも詳しいようだから。
「つか、城に地下があるなんて知らなかったわ。前くれた間取りには、書かれてなかったよな?」
「えぇ。というより、そもそもこの場は誰にも話していませんので、知っている方はいないかと」
「……えっ?あの魁蓮も、知らないってこと?」
「はい。地下があること自体、彼は知りません」
「っ!」
どういうことだろうか。
この場所は、魁蓮がよく出入りしている書物庫の床から入ることが出来る。
1000年前の時代でも、この城で過ごしていたであろう魁蓮が、床にあった花の模様に気が付かないわけが無い。
それなのに、この場所を知らない?地下があること自体、彼は知らない?
この城の主だというのに、そんなこと本当にあるのか?
「確かにこの城は、魁蓮の力で築かれたもの。ですが、この地下に関しては、私の力で築いています」
「司雀が作ったん!?この地下を!?」
「はい。そして、この場所の情報が漏れないようにするために、強力な結界を張って誤魔化しています。誰も知ることがないように」
「結界だけで、誤魔化せるもんなの?だって魁蓮って、一応妖魔の中じゃ最強なんだよね?他の妖魔の結界とか、あんま効かなそうだけど……」
「私の結界は、少々特殊でして。最強と言われる魁蓮でも、私の結界だけは破ることが出来ません。そのため、彼ほどの強者に隠し通すことができたら、他の誰も気づくことはないのです」
「特殊な、結界…………」
確かに、日向は司雀の結界を見たことがある。
分厚いだけでなく、完成度も高い唯一無二の結界術。
仙人の中でも結界術が得意な凪の、上位互換ほど。
司雀の結果に関しては、魁蓮だけでなく他の肆魔も、厚い信頼を置いていた。
あまり戦っている印象がない代わりに、援助や守りという点に関しては、頭一つ抜けているのだろう。
魁蓮が司雀をそばに置き、信頼している理由の一つとしてもあげられる。
「あっ」
その時、日向は自分の後ろにあるものを思い出す。
背後で輝く、黒神の剣。
ここの研究室の持ち主が誰なのか、分かったのならば聞く必要があるだろう。
見た限りでは、保管されているようだから。
ここは、彼の結界が守っている、彼だけが知っている場所。
あの剣も、司雀は事情を知っているはずだ。
「あ、あのさ司雀。あの剣の事なんだけどっ」
「日向様」
「あ、はい」
「……この研究室では、危険な薬物も扱っています。我々妖魔は耐えることが出来ても、人間の貴方様が吸い込んでしまえば、命に関わるものだってあるかもしれません」
「えっ」
「それに、ここは私以外の立ち入りを禁止しています。万が一何かあった場合、手遅れになる可能性は十分ありますので。
ですから、早めに出られた方がよろしいかと」
「あ、あのっ」
「それとお願いなのですが、どうかこの場所のことについては、他言無用でお願い致します」
珍しい、司雀の言葉の圧力。
黒神の剣について聞きたかったのに、まるで何も聞くなと言われているようで。
笑顔で言う司雀の表情も、何故か嘘のように見えた。
触れてはいけないものだ、そう解釈してしまう。
「わ、わかっ……た……」
「ありがとうございます。地上へは、元来た道を辿れば行けますので。あ、道中の階段には、お気をつけください」
「あ、う、うん……」
どうしても、切り出せなかった。
日向は気まずさを感じながら、半ばその場から逃げるようにして、研究室を歩いていく。
下ってきた階段に向かいながら、日向は横目で黒神の剣に振り返る。
(黒神……君は一体、何者なんだ…………)
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
日向が研究室から出てしばらく。
司雀は最奥にある黒神の剣を見つめていた。
仙人の剣特有の、強く頑丈なもの。
不滅にも近い妖魔を倒すことが出来る、人間にとっては誇るべき武器だ。
剣には、微量な霊力も混ざっており、力の弱い妖魔であれば、触れただけで消滅してしまう。
妖魔にとっては、十分に気をつけなければならない代物だ。
「はぁ……」
司雀は、その剣に近づきながら、ため息を零す。
近づけば近づくほど、剣からは異常な力の気配を感じた。
大事に手入れされてきたのか、使い込まれても尚、新品の頃の美しさを残している。
司雀は目の前まで近づくと、持ち手に刻まれた文字を見つめた。
「黒神……」
黒神が存在していたのは1000年以上前だが、妖魔であれば、名前くらいは知っている者は多かった。
その実力と強さは、計り知れない。
妖魔にとって恐ろしい存在だったというのは、剣の使い込まれた感じから見て取れた。
「魁蓮が……殺した最強の仙人、ですか…………」
無意識に、何も考えずに吐いた言葉。
その言葉に導かれるように、ふと脳内に蘇る記憶。
魁蓮と交わした、あの会話……。
【黒神など、くだらない。
奴は死んだ、もう気にすることもないだろう】
【私は、事実を話すのが懸命だと思います!
貴方はただ、守ろうとしただけでしょう!?】
【口を慎め、司雀。妖魔と同じく、人間は何を考えているか分からん生物だ。我の弁明なぞ、世が受け入れると思うか?】
【でしたら、私も共に戦います!貴方はもう、全てを背負わなくていいんです!
影に落ちてしまった真実を話さなければっ……貴方がずっと苦しむだけ!貴方は1人では無い。私がいるんですから、一緒にっ】
【では、そのままでいろ】
【……えっ……?】
【真実を知る者が、1人居れば十分だ。お前が今言ったことが我を思っての言葉ならば……。
司雀、お前だけは……我を裏切るな】
【魁蓮っ……】
【黒神は死んだ。世間では我が殺し、我の勝利だと掲げられている。だが…………
俺は…………敗れたんだ】
「……はぁ……魁蓮っ……」
ふと思い出される、魁蓮との思い出。
だが、その思い出される記憶は全て、胸を締め付けられるものばかり。
楽しい思い出もあるはずなのに、呼び起こされるのは、決まって彼の辛い表情が際立った瞬間だ。
辛い表情をしている魁蓮を、見たくなくて。
ずっと傍にいたのに…………。
司雀は、じんわりと涙で滲む瞳で、黒神の剣を見つめた。
「貴方が死んだとしても、私は許さない……。
全てを取り戻す、必ず………全て………!!!!!」
片眉を上げて、不思議そうに日向を見つめながら、ロウソクの灯りを日向の方へと差し出した。
「驚きました……貴方様がここにいるなんて」
司雀は日向の視線に合うように、腰を曲げた。
あまり見たことの無い、司雀の驚いた表情。
日向がこの地下にたどり着いていることが、余程驚きだったようだ。
日向は困惑しながらも、状況を説明しようと口をひらく。
「あ、あの、実は楊がここに連れてきてくれて。僕はついてきただけなんだよ」
「え、楊様が……?」
「うん。ピィー!って鳴きながら。そんで、追いかけたらここに来た」
「楊様に……?」
「うん、楊に」
「……お言葉ですが……その、楊様はどちらに?」
「え?あぁ、あの机の上に…………………………
あれ?」
楊はあっちにいる、と話そうとした途端。
日向の目に映るのは、机だけ。
先程あの上に乗っていた楊の姿が、何故かどこにもない。
そこでようやく、日向はその場に楊がいないことに気づく。
「えっ!?や、楊!?どこ行った!?」
「あの、日向様。本当に楊様がここへ……?楊様は、基本魁蓮と行動を共にしているので、単独行動はしない印象があるのですが……」
「いや、ほんと!まじ!お願い信じてぇー!!嘘は言ってないんだってばぁ!」
(あの黒鷲、どこ行きやがった!?!?!?!?)
引っ張られ、ついてこいと言われ、逃げられた。
なんという自由すぎる行動だろう、自由さで言うなら主である魁蓮そっくりだ。
だが問題なのは、このままでは日向が嘘をついていることになってしまう。
日向は何とか司雀に信じてもらおうと、あれやこれやと理由を考えるが、楊がいない以上説得力がない。
(うおおお!どうしよ!!!!!!!)
「本当に、楊様がここへ導いたのですか…………」
「あっ……え?」
頭を抱えて悩んでいると、ふと司雀の小さな声が聞こえた。
どこか弱々しく、そして震えて聞こえた声に、日向はパッと顔を上げる。
「っ…………」
顔を上げた先にあったのは、何故か悲しい表情を浮かべる司雀の姿。
小さく口を引き結び、綺麗な瞳はゆらゆらと揺れている。
眉は八の字になっていて、今にも涙を流しそうな、そんな表情だった。
日向は初めて見る司雀の表情に、言葉を失った。
「まあ、楊様が導いたとなると、納得できますね」
「っ……」
「とにかく、ご無事で何よりです」
司雀は静かに納得すると、いつもの優しい笑みへと戻った。
何だったのだろうか、今の表情は。
触れていいものかも分からず、日向は少し戸惑いながら、「うん」と一言だけ漏らす。
すると司雀はコホン、と1つ咳払いをして、話を仕切り直した。
「いらっしゃいませ、日向様。
ここは、私が使用している研究室です」
「……えっ……えっ!?魁蓮じゃねぇの!?」
司雀の言葉に、日向はガッと目を見開いた。
楊が必死になって連れてくるものだから、てっきり魁蓮が使っている部屋だと思っていたのだが。
そんな日向の反応を見た司雀は、ふふっと笑みを零す。
「魁蓮は、研究に興味を持つような方ではありません。むしろ、面倒だと吐き捨てるような方です」
「ま、まあ、言われてみればそうだな……」
確かに、司雀の頭脳明晰な点を見れば、これだけの研究をしていると言われても納得出来る。
恐らく、知識的な面を見れば、司雀は魁蓮より賢いだろう。
古いものにも詳しいようだから。
「つか、城に地下があるなんて知らなかったわ。前くれた間取りには、書かれてなかったよな?」
「えぇ。というより、そもそもこの場は誰にも話していませんので、知っている方はいないかと」
「……えっ?あの魁蓮も、知らないってこと?」
「はい。地下があること自体、彼は知りません」
「っ!」
どういうことだろうか。
この場所は、魁蓮がよく出入りしている書物庫の床から入ることが出来る。
1000年前の時代でも、この城で過ごしていたであろう魁蓮が、床にあった花の模様に気が付かないわけが無い。
それなのに、この場所を知らない?地下があること自体、彼は知らない?
この城の主だというのに、そんなこと本当にあるのか?
「確かにこの城は、魁蓮の力で築かれたもの。ですが、この地下に関しては、私の力で築いています」
「司雀が作ったん!?この地下を!?」
「はい。そして、この場所の情報が漏れないようにするために、強力な結界を張って誤魔化しています。誰も知ることがないように」
「結界だけで、誤魔化せるもんなの?だって魁蓮って、一応妖魔の中じゃ最強なんだよね?他の妖魔の結界とか、あんま効かなそうだけど……」
「私の結界は、少々特殊でして。最強と言われる魁蓮でも、私の結界だけは破ることが出来ません。そのため、彼ほどの強者に隠し通すことができたら、他の誰も気づくことはないのです」
「特殊な、結界…………」
確かに、日向は司雀の結界を見たことがある。
分厚いだけでなく、完成度も高い唯一無二の結界術。
仙人の中でも結界術が得意な凪の、上位互換ほど。
司雀の結果に関しては、魁蓮だけでなく他の肆魔も、厚い信頼を置いていた。
あまり戦っている印象がない代わりに、援助や守りという点に関しては、頭一つ抜けているのだろう。
魁蓮が司雀をそばに置き、信頼している理由の一つとしてもあげられる。
「あっ」
その時、日向は自分の後ろにあるものを思い出す。
背後で輝く、黒神の剣。
ここの研究室の持ち主が誰なのか、分かったのならば聞く必要があるだろう。
見た限りでは、保管されているようだから。
ここは、彼の結界が守っている、彼だけが知っている場所。
あの剣も、司雀は事情を知っているはずだ。
「あ、あのさ司雀。あの剣の事なんだけどっ」
「日向様」
「あ、はい」
「……この研究室では、危険な薬物も扱っています。我々妖魔は耐えることが出来ても、人間の貴方様が吸い込んでしまえば、命に関わるものだってあるかもしれません」
「えっ」
「それに、ここは私以外の立ち入りを禁止しています。万が一何かあった場合、手遅れになる可能性は十分ありますので。
ですから、早めに出られた方がよろしいかと」
「あ、あのっ」
「それとお願いなのですが、どうかこの場所のことについては、他言無用でお願い致します」
珍しい、司雀の言葉の圧力。
黒神の剣について聞きたかったのに、まるで何も聞くなと言われているようで。
笑顔で言う司雀の表情も、何故か嘘のように見えた。
触れてはいけないものだ、そう解釈してしまう。
「わ、わかっ……た……」
「ありがとうございます。地上へは、元来た道を辿れば行けますので。あ、道中の階段には、お気をつけください」
「あ、う、うん……」
どうしても、切り出せなかった。
日向は気まずさを感じながら、半ばその場から逃げるようにして、研究室を歩いていく。
下ってきた階段に向かいながら、日向は横目で黒神の剣に振り返る。
(黒神……君は一体、何者なんだ…………)
┈┈┈┈┈┈┈ ❁ ❁ ❁ ┈┈┈┈┈┈┈┈
日向が研究室から出てしばらく。
司雀は最奥にある黒神の剣を見つめていた。
仙人の剣特有の、強く頑丈なもの。
不滅にも近い妖魔を倒すことが出来る、人間にとっては誇るべき武器だ。
剣には、微量な霊力も混ざっており、力の弱い妖魔であれば、触れただけで消滅してしまう。
妖魔にとっては、十分に気をつけなければならない代物だ。
「はぁ……」
司雀は、その剣に近づきながら、ため息を零す。
近づけば近づくほど、剣からは異常な力の気配を感じた。
大事に手入れされてきたのか、使い込まれても尚、新品の頃の美しさを残している。
司雀は目の前まで近づくと、持ち手に刻まれた文字を見つめた。
「黒神……」
黒神が存在していたのは1000年以上前だが、妖魔であれば、名前くらいは知っている者は多かった。
その実力と強さは、計り知れない。
妖魔にとって恐ろしい存在だったというのは、剣の使い込まれた感じから見て取れた。
「魁蓮が……殺した最強の仙人、ですか…………」
無意識に、何も考えずに吐いた言葉。
その言葉に導かれるように、ふと脳内に蘇る記憶。
魁蓮と交わした、あの会話……。
【黒神など、くだらない。
奴は死んだ、もう気にすることもないだろう】
【私は、事実を話すのが懸命だと思います!
貴方はただ、守ろうとしただけでしょう!?】
【口を慎め、司雀。妖魔と同じく、人間は何を考えているか分からん生物だ。我の弁明なぞ、世が受け入れると思うか?】
【でしたら、私も共に戦います!貴方はもう、全てを背負わなくていいんです!
影に落ちてしまった真実を話さなければっ……貴方がずっと苦しむだけ!貴方は1人では無い。私がいるんですから、一緒にっ】
【では、そのままでいろ】
【……えっ……?】
【真実を知る者が、1人居れば十分だ。お前が今言ったことが我を思っての言葉ならば……。
司雀、お前だけは……我を裏切るな】
【魁蓮っ……】
【黒神は死んだ。世間では我が殺し、我の勝利だと掲げられている。だが…………
俺は…………敗れたんだ】
「……はぁ……魁蓮っ……」
ふと思い出される、魁蓮との思い出。
だが、その思い出される記憶は全て、胸を締め付けられるものばかり。
楽しい思い出もあるはずなのに、呼び起こされるのは、決まって彼の辛い表情が際立った瞬間だ。
辛い表情をしている魁蓮を、見たくなくて。
ずっと傍にいたのに…………。
司雀は、じんわりと涙で滲む瞳で、黒神の剣を見つめた。
「貴方が死んだとしても、私は許さない……。
全てを取り戻す、必ず………全て………!!!!!」
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