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第四章 恋の身支度

100.偽聖女、戦場を駆け巡る

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「すみません。症状を聞いてもいいですか?」

「気持ち悪いのと腹が痛くて……おぇ!」

 私はすぐに桶を口元に近づけて、横向きに体を傾ける。

 口元から嘔吐物を吐くが、ほとんど出し切っている影響か胃液ばかりが流れていく。

 気管に入って窒息や肺炎にならないようにする。

 少し背中を優しく撫でてあげると、安心したのかその場で息が落ち着いてきた。

「マヨネーズを食べてから症状が出たってことで間違いないですか?」

「ああ」

 そんな状況の中から全員問診して状態を確かめていた。

 ほとんどの人が嘔吐と下痢が主症状で、他には熱と腹痛がある程度だ。

 誰もが重篤な症状ではないことに、まずは一安心する。

「少し苦しいと思いますが、これを飲んでもらっても良いですか?」

「これは?」

「ジュースです。嘔吐と下痢で体から水分が抜けていくので、まずはしっかり脱水対策をしてください」

「よく飲んでいるやつか。そんなもので治るのか?」

「あとは呪いを全て体から出せば少しずつよくなっていきますよ」

 ジュースを知っているってことは、きっとこの人は冒険者なんだろう。

 菌が体にいる時に嘔吐や下痢を止めるのは悪影響になってしまう。

 よほどのことがない限りは下痢止め等も処方されることはない。

 私は回復魔法で水分が吸収されやすいように、腸の働きを促してその場を離れていく。

 あとは子ども達がジュースと呼んでいる経口補水液を飲ませれば問題はない。

「ああ、少し楽になった気がする」

「まずはしっかり治すことを考えてくださいね」

「ああ、俺達が街を守らないといけないのにすまないな」

 少しでも良くなれば魔物討伐に向かいそうな気がするため、言葉一つ一つ選んで声をかけないといけない。

 今こんな状況で行ったら、命を無駄にするだけだろう。

「今回は騎士も参加しているらしいので大丈夫ですよ」

「ああ、そうか」

 アルヴィンとレナードが参加しているため、全てが嘘ではない。

 言葉一つで安心できるのなら、多少の嘘も必要になってくる。

 冒険者は安心して再び眠りについた。

 次の人を見る前に外に出ると、子ども達が一生懸命手を洗っていた。

 私は隣で手を洗うクロに声をかけた。

「お疲れ様。手が荒れそうだね」

 手袋があればすぐに捨てれば良いが、それもできない環境では何度も手を洗うことになる。

 それにアルコールを少し塗るため、少しずつ手も赤く染まっていた。

「ママ先生が作った石鹸はツルツルになるから大丈夫だよ」

 気を使わせないように優しい言葉を選んでいるのだろう。

 こういう時こそみんなで支え合うのが大事になってくる。

 改めて子ども達に大事なことを思い知らされる。

「あともう少しだから乗り越えようね」

「うん!」

 外にいると魔法による爆発音や魔物の声が聞こえてくる。

 今頃二人は必死に戦っているのだろうか。

 私達もまだまだ頑張らないといけない。

 一通り経口補水液を飲ませて、回復魔法をかけていくと症状が止まって穏やかな顔になってきた。

 マヨネーズを食べた子ども達も重症化していないため、このまま無事に問題は解決しそうだ。

「マミさん、犯人がわかりました!」

 その中で主婦達はどこでマヨネーズを買ったのかを突き止めていた。

「誰でしたか?」

「卵と牛乳を売っているおじさんらしいです」

 その言葉を聞いてどこか胸で突っかかっていたものが落ちた気がした。

 私が作り方を教えた人達じゃなくてよかったと――。

 元の原因を作ったのは私だけど、仲良くしてくれている人達を疑いたくなかったってのが本音だ。

 それにあの時、男はテバサキを押さえつけていた。

 ひょっとしたらテバサキは何かを感じていたのかもしれない。

 これからどうするか迷っていると、会いたくない人物がやってきた。

「マミイモこれってどういう状況だ?」

 そこにいたのはバッカアだった。

 彼もこの戦場を見て戸惑っていた。

 正直この状況で彼に構っている時間はない。

「すみません、今は忙しいので――」

「俺は何をしたらいいんだ? そのおじさんを捕まえてくれば良いのか?」

 まさかの言葉に驚きを隠せない。

 バッカアといえば基本的に私に迷惑をかけて、すぐに帰っていくいたずらっ子なイメージだ。

 良い大人をいたずらっ子って言うのもどうかと思うが、その印象が強い。

「ここで俺がかっこいいところ見せたら、マミイモがデートしてくれるかもしれないからな!」

 少し照れた顔をしているが、本当に素直な人なんだろう。

「それなら頼れるバッカアさんにお願いします」

「ふん、頼られたらやらないわけにはいかないからな」

 メガネをクイっと上げて嬉しそうに走っていく。

 知的な人が好きと適当に答えてからつけたメガネを彼は今でもつけている。

 しかも、レンズをくり抜いて意味もないフレームだけの伊達メガネだ。

 思わずその姿に笑ってしまう。

「彼も本当は良い人なのね」

「マミさんにはアルヴィンさんがいますよ」

 ボソッと呟いた言葉は主婦達に聞こえていたようだ。

 思わず恥ずかしくなって顔が赤くなっているだろう。

 やっとこれで一段落すると思ったが、そうもいかなかった。

「マミさん、なんか貴族の人達がたくさん来てます!」

 どうやら私の戦いは終わらないようだ。

───────────────────
【あとがき】

わーい、100話まで来ました(*´꒳`*)
書き始めて約1ヶ月ぐらいですが、コツコツと頑張っております!
コンテスト期間残りわずかとなりました。
投票していない人はぜひよろしくお願いします!

残り数日一緒に戦いましょう笑
このまま3位で終われるように祈っててください_(:3 」∠)_

では、続きをお楽しみください!
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