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第四章 恋の身支度
74.偽聖女、じゃがいも女として話題になる
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私は大きな袋を持ちながらあるものを探していた。
「この世界に牛乳と卵ってどこに売っているのかしら?」
牛乳は高価だと言われているため、商店街で取り扱っている店を見たことがない。
そもそも私が買えるのかどうかもわからない。
ただ、レナードの魔法のコントロールも含めて、アイス作りをしようと思ったのだ。
そろそろ暖かい季節も終わるため、食べるなら今がちょうど良い機会だろう。
私はキョロキョロしながら歩いていると、いつのまにか貴族街の境目である門まで来ていた。
「そこの者止ま……ママ先生ですか」
門番の一人は胸の前で拳を作り敬礼していた。
もう一人は私のことを誰かわからないのだろう。
「あっ、この間はご迷惑をおかけしました」
そこにいたのはこの間訓練場で子ども達の相手をしてもらっていた第二騎士団所属の人だった。
「先輩、この人を知っているんですか?」
「ああ、まるで聖女のような人だよ」
なぜかとんでもないほど過大評価されている気がする。
聖女は憧れの存在なのか、その言葉を聞いて私のことを知らない門番は目を輝かせていた。
「私はそんな人ではないですよ」
「何を言ってるんですか! あのバッカアを自分の命をかけて治療していたじゃないですか。あの日から第二騎士団ではあなたの話が持ちきりですよ」
あの時は単純に魔力の使いすぎがわからず、制御できずに倒れてしまった。
きっと勉強している騎士からしたら、魔力を使い切るまで治療すること自体が命懸けと思われたのだろう。
「えっ、ひょっとしてみんなが婚約したいと話題になっている人ですか!?」
そんなに私は話題になっているのだろうか。
彼は私をジーッと見て何かを考えているのだろう。
これは"じゃがいも女"が聖女のはずがないと言われるやつだ。
「確かに素朴な女性ですね」
きっと気を使わせてしまったのだろう。
じゃがいもって確かに素朴な味だし、肉じゃがと言ったら母親の味だ。
「そこは気にせずじゃがいも女って――」
「おい、じゃがいも女!」
やっぱりじゃがいも女だと思っていたのか!
ただ、正直に言われると心に刺さるものがある。
これからはママ先生じゃなくて"じゃがいも先生"って呼ばれる時が来るのかもしれない。
それにしてもさっきの門番より低い声だった気がする。
「おい、俺を無視するな!」
いや、そもそもじゃがいも女は失礼だ。
いくら騎士でイケメンだとしても許してはいけない。
「じゃがいも女だと言う方が――ってバカ野郎じゃん!」
「おまっ、誰がバカ野郎だ! せめてバッカア野郎だろ!」
門の近くにはこの間襲ってきたバッカアがいた。
この人は今まで見てきた騎士の中で、一番頭が残念な人だった。
それに今はアルヴィンもいないし、門番の仕事を増やしたら、じゃがいも女に迷惑な人が追加されてしまう。
「特に用事はなかったのでこれで失礼しますね」
牛乳や砂糖を探している場合ではない。
私はその場で静かに立ち去ろうとするが、大きな声でバカ野郎は追いかけてくる。
「おい、じゃがいも女! 待てよ!」
「待ちません!」
必死に足を動かすが、身長が低い私の足は短い。
一方、バカ野郎は身長が高いため、一歩がとにかく大きい。
「マミさん!?」
商店街の人達に声をかけられるが、今は逃げることを優先した方が良い。
私一人では王族の血を引いた貴族で騎士の相手はできない。
「だから、待てって言ってるだろ!」
バカ野郎はいつのまにか追いついたのか私の手を強く握った。
きっとこの男じゃなければ、少しは胸がキュンとしただろう。
だが、引き止めたのはバカ野郎だ。
「離してください!」
「逃げないなら離す」
「ぐぬぬ」
これは逃れられないのだろう。
周りの人達も騎士の格好をしているバカ野郎に何もできずにただ見ていた。
「おい、じゃがいも女! 俺と婚約してくれ!」
「はぁん!?」
まさかの言葉に反応しようとしたら、隣から大きな声が聞こえてきた。
そこには何かの箱を持ったアルヴィンがいた。
「この世界に牛乳と卵ってどこに売っているのかしら?」
牛乳は高価だと言われているため、商店街で取り扱っている店を見たことがない。
そもそも私が買えるのかどうかもわからない。
ただ、レナードの魔法のコントロールも含めて、アイス作りをしようと思ったのだ。
そろそろ暖かい季節も終わるため、食べるなら今がちょうど良い機会だろう。
私はキョロキョロしながら歩いていると、いつのまにか貴族街の境目である門まで来ていた。
「そこの者止ま……ママ先生ですか」
門番の一人は胸の前で拳を作り敬礼していた。
もう一人は私のことを誰かわからないのだろう。
「あっ、この間はご迷惑をおかけしました」
そこにいたのはこの間訓練場で子ども達の相手をしてもらっていた第二騎士団所属の人だった。
「先輩、この人を知っているんですか?」
「ああ、まるで聖女のような人だよ」
なぜかとんでもないほど過大評価されている気がする。
聖女は憧れの存在なのか、その言葉を聞いて私のことを知らない門番は目を輝かせていた。
「私はそんな人ではないですよ」
「何を言ってるんですか! あのバッカアを自分の命をかけて治療していたじゃないですか。あの日から第二騎士団ではあなたの話が持ちきりですよ」
あの時は単純に魔力の使いすぎがわからず、制御できずに倒れてしまった。
きっと勉強している騎士からしたら、魔力を使い切るまで治療すること自体が命懸けと思われたのだろう。
「えっ、ひょっとしてみんなが婚約したいと話題になっている人ですか!?」
そんなに私は話題になっているのだろうか。
彼は私をジーッと見て何かを考えているのだろう。
これは"じゃがいも女"が聖女のはずがないと言われるやつだ。
「確かに素朴な女性ですね」
きっと気を使わせてしまったのだろう。
じゃがいもって確かに素朴な味だし、肉じゃがと言ったら母親の味だ。
「そこは気にせずじゃがいも女って――」
「おい、じゃがいも女!」
やっぱりじゃがいも女だと思っていたのか!
ただ、正直に言われると心に刺さるものがある。
これからはママ先生じゃなくて"じゃがいも先生"って呼ばれる時が来るのかもしれない。
それにしてもさっきの門番より低い声だった気がする。
「おい、俺を無視するな!」
いや、そもそもじゃがいも女は失礼だ。
いくら騎士でイケメンだとしても許してはいけない。
「じゃがいも女だと言う方が――ってバカ野郎じゃん!」
「おまっ、誰がバカ野郎だ! せめてバッカア野郎だろ!」
門の近くにはこの間襲ってきたバッカアがいた。
この人は今まで見てきた騎士の中で、一番頭が残念な人だった。
それに今はアルヴィンもいないし、門番の仕事を増やしたら、じゃがいも女に迷惑な人が追加されてしまう。
「特に用事はなかったのでこれで失礼しますね」
牛乳や砂糖を探している場合ではない。
私はその場で静かに立ち去ろうとするが、大きな声でバカ野郎は追いかけてくる。
「おい、じゃがいも女! 待てよ!」
「待ちません!」
必死に足を動かすが、身長が低い私の足は短い。
一方、バカ野郎は身長が高いため、一歩がとにかく大きい。
「マミさん!?」
商店街の人達に声をかけられるが、今は逃げることを優先した方が良い。
私一人では王族の血を引いた貴族で騎士の相手はできない。
「だから、待てって言ってるだろ!」
バカ野郎はいつのまにか追いついたのか私の手を強く握った。
きっとこの男じゃなければ、少しは胸がキュンとしただろう。
だが、引き止めたのはバカ野郎だ。
「離してください!」
「逃げないなら離す」
「ぐぬぬ」
これは逃れられないのだろう。
周りの人達も騎士の格好をしているバカ野郎に何もできずにただ見ていた。
「おい、じゃがいも女! 俺と婚約してくれ!」
「はぁん!?」
まさかの言葉に反応しようとしたら、隣から大きな声が聞こえてきた。
そこには何かの箱を持ったアルヴィンがいた。
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