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第34話:公爵夫人になりました
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エレナ騒動の調査が続く中、ジークハルトが正式に公爵位を継ぐことになった。
ディルクとディアナも共に城へ行き、国王立会の元、爵位の引き継ぎが行われる。
「ジークハルト・ランカスターを公爵として認めよう。これからも国のために良い働きをしてくれることを期待している」
「陛下のご期待に添えるよう尽力致します」
この日ジークハルトはランカスター家の当主となり、公爵位に着いた。
シズリアは公爵夫人となったのだ。
「ランカスター家の者達よ、この後祝いの席を設けようと思うのだが時間はあるか?」
国王からの申し出を断る筈もなく、王の茶会が開かれる事に。
カーチェス宰相は同席しているが、さすがにエレナの姿はない。
ホッとしていたジークハルトとシズリアだったのだが…
「無礼講だ、王妃が気に入っている茶菓子も色々と用意した、好きに食べてくれ」
「ありがとうございます陛下」
普段は威厳溢れる国王だが、その笑顔は安心感を与える優しいもの。
和やかな雰囲気で茶会が進んでいると、
「そういえば…娘が気になる事を申しておりました」
カーチェス宰相が口を開いた。
「気になる事?」
「はい、先日街でシズリア夫人にお会いしたそうで」
来たかと身構えるシズリア。
ちなみに、両親にも話してあり二人とも怒りを感じているため顔が強張っている。
「街か。エレナは時折買い物に出るらしいな」
「はい、王立学校に通っていた頃からの友人らと会ったりしているようで」
「ふむ。それで?」
「夫人と偶然出会い、お茶をしたらしいのですが…娘のハンカチに刃物が仕込まれていたと。震えながら話してくれました」
「なんだと?そのような危険な話、なぜすぐに言わなかった」
「申し訳ございません陛下、まだ調査中でして」
カーチェスの口元はいやらしく歪んでいる、あくまでも被害者であると国王にまで印象付けようとしているようだ。
シズリアは発言の許可を求めてから口を開いた。
「あの日は初めて街に出まして、エレナ様とお会いしたのでお勧めだというお店へ行きました。そこでエレナ様がハンカチを落とされ、私の侍女が拾ったところ指を切りまして…」
キリアの身を案じる主人として、眉を寄せ目を伏せるシズリア。
「怪我をしたのか」
「幸いにも傷は浅く、数日の休養で済みました。エレナ様も私共も全く身に覚えがなく、なんと恐ろしいことかと震えてしまいましたわ…」
「全く恐ろしい事です、娘に怪我があったらと思うと」
ギロリと睨んでくるカーチェスをシズリアは真っ直ぐに見つめ返し、微笑んでみせる。
「エレナ様のご様子はいかがですか?きっとエレナ様が狙われていたのだろうと思い、お気をつけくださいとお伝えしましたの。さぞご不安でしょう…」
エレナを案ずるフリをするシズリアを見て、カーチェスは顔を歪めたが国王は同意するように頷く。
「エレナのハンカチに仕込まれていたということは、誰かの嫌がらせか?そのような卑劣な真似をする者を野放しにできぬ。近しいものの犯行だろうが…調査が進んでおらぬなら我が隠密たちを貸しても良いぞ、カーチェス」
国王の隠密とは、秘密裏に情報収集をしたり、見張りや護衛なども行う部隊。
素顔を晒す事なく、その姿自体滅多に見られるものではない。
買収など不可能な国王の『影』達が調査に乗り出せば、不正など一切ない真実が暴かれることだろう。
宰相が父として純粋に娘を案じているのか、それとも娘の計画を知っていて話に乗っているのか。
シズリア達の視線を集める中、カーチェスは首を振る。
「いえいえ、陛下の優秀な影達をお借りするまでもありません。あの日エレナの支度を手伝った者の犯行でしょうから、すでに聞き取りなどを行なっているところです」
調査を断るカーチェスを見て、これは共犯だと確信した。
ディルクとディアナも共に城へ行き、国王立会の元、爵位の引き継ぎが行われる。
「ジークハルト・ランカスターを公爵として認めよう。これからも国のために良い働きをしてくれることを期待している」
「陛下のご期待に添えるよう尽力致します」
この日ジークハルトはランカスター家の当主となり、公爵位に着いた。
シズリアは公爵夫人となったのだ。
「ランカスター家の者達よ、この後祝いの席を設けようと思うのだが時間はあるか?」
国王からの申し出を断る筈もなく、王の茶会が開かれる事に。
カーチェス宰相は同席しているが、さすがにエレナの姿はない。
ホッとしていたジークハルトとシズリアだったのだが…
「無礼講だ、王妃が気に入っている茶菓子も色々と用意した、好きに食べてくれ」
「ありがとうございます陛下」
普段は威厳溢れる国王だが、その笑顔は安心感を与える優しいもの。
和やかな雰囲気で茶会が進んでいると、
「そういえば…娘が気になる事を申しておりました」
カーチェス宰相が口を開いた。
「気になる事?」
「はい、先日街でシズリア夫人にお会いしたそうで」
来たかと身構えるシズリア。
ちなみに、両親にも話してあり二人とも怒りを感じているため顔が強張っている。
「街か。エレナは時折買い物に出るらしいな」
「はい、王立学校に通っていた頃からの友人らと会ったりしているようで」
「ふむ。それで?」
「夫人と偶然出会い、お茶をしたらしいのですが…娘のハンカチに刃物が仕込まれていたと。震えながら話してくれました」
「なんだと?そのような危険な話、なぜすぐに言わなかった」
「申し訳ございません陛下、まだ調査中でして」
カーチェスの口元はいやらしく歪んでいる、あくまでも被害者であると国王にまで印象付けようとしているようだ。
シズリアは発言の許可を求めてから口を開いた。
「あの日は初めて街に出まして、エレナ様とお会いしたのでお勧めだというお店へ行きました。そこでエレナ様がハンカチを落とされ、私の侍女が拾ったところ指を切りまして…」
キリアの身を案じる主人として、眉を寄せ目を伏せるシズリア。
「怪我をしたのか」
「幸いにも傷は浅く、数日の休養で済みました。エレナ様も私共も全く身に覚えがなく、なんと恐ろしいことかと震えてしまいましたわ…」
「全く恐ろしい事です、娘に怪我があったらと思うと」
ギロリと睨んでくるカーチェスをシズリアは真っ直ぐに見つめ返し、微笑んでみせる。
「エレナ様のご様子はいかがですか?きっとエレナ様が狙われていたのだろうと思い、お気をつけくださいとお伝えしましたの。さぞご不安でしょう…」
エレナを案ずるフリをするシズリアを見て、カーチェスは顔を歪めたが国王は同意するように頷く。
「エレナのハンカチに仕込まれていたということは、誰かの嫌がらせか?そのような卑劣な真似をする者を野放しにできぬ。近しいものの犯行だろうが…調査が進んでおらぬなら我が隠密たちを貸しても良いぞ、カーチェス」
国王の隠密とは、秘密裏に情報収集をしたり、見張りや護衛なども行う部隊。
素顔を晒す事なく、その姿自体滅多に見られるものではない。
買収など不可能な国王の『影』達が調査に乗り出せば、不正など一切ない真実が暴かれることだろう。
宰相が父として純粋に娘を案じているのか、それとも娘の計画を知っていて話に乗っているのか。
シズリア達の視線を集める中、カーチェスは首を振る。
「いえいえ、陛下の優秀な影達をお借りするまでもありません。あの日エレナの支度を手伝った者の犯行でしょうから、すでに聞き取りなどを行なっているところです」
調査を断るカーチェスを見て、これは共犯だと確信した。
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