【完結】遠き星にて

紙志木

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欠乏

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シュイが林檎をくれた翌々日の朝、ハルトは風邪が治りすっかり元気になった。
今朝はまだシュイの姿を見ていない。ハルトは心配になってシュイの部屋をノックした。

「シュイ、居る?」

しばらくして、青白い顔をしたシュイがドアを開けた。
「どうしたの?もしかして、僕の風邪がうつった?」

驚いて言うハルトに、シュイは首を弱々しく横に振って答えた。

「...それ以上近づくな。しばらく寝るが気にするな」

シュイはそう言ったきり、ドアも閉めずにベッドにどさりと倒れ込んだ。




他に行くところも思いつかず、ハルトは食堂に向かった。朝食の時間を過ぎて食堂は人がまばらだった。ハルトが一人テーブルに肘をついてぼんやりしていると、ゾルドに声を掛けられた。

「また一人で出歩いているのか。シュイはどうした?」

「青い顔をしてずっと寝てる。近づくなって言われたからここに居るんだ」

「…それは、おそらくゼリィ切れだな」

「ゼリィ?」

「まさか統制局に盾付きでもしたのか」

「…僕、何も知らない」

「何のための序列だ。痩せ我慢しやがって」

ゾルドが溜息混じりに独り言のように呟いたが、ハルトには意味が分からない。首を傾げるハルトを見てゾルドが言った。

「飲ませてやれば良い」

「…何を」

「お前の体液さ」

「…そうしたら、シュイは元気になるの?」

「ああ」



皆が飲ませろとか、飲ませたのかとか言っていたのは、自分の体液のことだったのか。ハルトはようやく合点が行った。なぜそんなものを飲んで体調が良くなるのかは分からないが、とにかく試してみるしかなかった。


ジェットシューズを飛ばして部屋に着くと、乱れた息を整えてシュイの部屋のドアを開けた。

シュイは目を閉じて眠っているようだった。やはり顔色が悪い。
ハルトは身を屈めてシュイの頬に手を添えるとそっと口付けた。舌で唇をなぞるとシュイの口がわずかに開く。舌を差し込んで唾液を少しずつ送り込んだ。
シュイの喉がゴクリと鳴って嚥下する。

「…ハルト?何をしている」

シュイが目を開けて掠れた声で言った。

「シュイ、足りた?」

「…いや、…」

「待っていて」

ハルトはマントを脱いでラバースーツのファスナーを下げると片腕ずつ引き抜いた。
シュイが目を見開いてこっちを見ている。恥ずかしさに顔が赤くなった。
ラバースーツから足を引き抜いてスーツを脱ぎ落とすと、自身の中心を手で掴む。シュイの視線に居た堪れなくなって、目を閉じてぞんざいに擦り上げた。



シュイは目の前の光景を信じられないような気持ちで凝視していた。ハルトがラバースーツを脱いでいく様子がスローモーションのように見える。ドアの隙間から差し込むリビングの照明の光が白い胸元を浮かび上がらせている。細い腕、華奢な肩、平らな胸、仄かに色づく胸の飾り、順番に顕になる度にシュイの心臓がどくどくと音を立てた。

白くスラリとした足をラバースーツから引き抜いて、ハルトが一糸纏わぬ姿で床の上に立った。あまりに扇情的な姿にシュイはくらりとめまいを覚えた。
思わずハルトに手を伸ばそうとすると、ハルトは細い指を自身の中心に這わせて上下に扱き始めた。目を閉じて眉間に皺を寄せ、感じているかのように悩ましげな表情をしている。ハルトの痴態にシュイは興奮で焼き切れそうだった。

「ハルト」

シュイは堪らずベッドから起き上がると、ハルトの細い腰を抱き寄せベッドに押し倒した。

「あ...シュイ」

口付けを落とすとハルトがシュイの首の後ろに手を回した。体が密着してお互いの熱を伝え合う。

「もっと、飲んで」

ハルトは囁くように言うと、シュイの口内に舌を差し込んでわずかに震わせる。シュイは貪るように唾液を嚥下した。存分に味わって唇を離すとハルトは顔も首筋も上気させて息を乱していた。

「...こっちも、良いか?」

感じている様子に余裕を無くして、ハルトの屹立に手を伸ばす。ハルトは困った様な表情で黒い瞳を潤ませて微かに頷いた。



体を下にずらして白く繊細そうな屹立をじっと見る。息が掛かったのがくすぐったかったのか体をよじらせてハルトが言った。

「や、やっぱり僕、自分で...」

シュイは無言で両手で腰を押さえつけると、いきなり屹立を口に含んだ。

「あああっ」

吸い上げながら顔を上下に動かすとハルトが悲鳴じみた嬌声を上げる。

「ひ、あああああっ」

口から出して手で扱くと、ハルトは余裕のない表情をして首を横に振った。

「あ、ああああ、でちゃう」

「ああ、飲ませてくれるのだろう?」

中程まで口に含んで根本を手で擦り上げると、ハルトはあっけなく上り詰めて精を放った。

「ああああああっ」

シュイの口内に隠微な味と匂いが広がる。やがて蜜のような甘みに変わってゴクリと飲み干した。



シュイは飢餓感と体の不調から一気に解放されて、思わず自分の体を見下ろした。汗や唾液とは段違いの効き目だった。

「体調、もう良いの?」

ハルトが乱れた息の下から聞く。

「ああ、飲ませてくれたからな」

「なら良かった」

ハルトが恥ずかしそうに下を向いて、ベッドを降りようとしている。シュイは思わず腕を掴んだ。

「待て、逃すと思うのか」

「あの、僕...」

「こんな姿を見せられて、お預けなんて嘘だろう」

シュイの眼光の強さにハルトは肩をびくりと震わせた。ハルトを掴む手にぐっと力がこもる。怖くなってハルトは思わず言った。

「や、やだ。離して...」

シュイがぐっと息を飲む音がして、ハルトの腕を掴む手が緩む。
ハルトはシュイの腕を振り払って立ち上がると、ラバースーツを拾い上げて自室に駆け込んだ。

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