【完結】遠き星にて

紙志木

文字の大きさ
上 下
8 / 32

欠乏

しおりを挟む

シュイが林檎をくれた翌々日の朝、ハルトは風邪が治りすっかり元気になった。
今朝はまだシュイの姿を見ていない。ハルトは心配になってシュイの部屋をノックした。

「シュイ、居る?」

しばらくして、青白い顔をしたシュイがドアを開けた。
「どうしたの?もしかして、僕の風邪がうつった?」

驚いて言うハルトに、シュイは首を弱々しく横に振って答えた。

「...それ以上近づくな。しばらく寝るが気にするな」

シュイはそう言ったきり、ドアも閉めずにベッドにどさりと倒れ込んだ。




他に行くところも思いつかず、ハルトは食堂に向かった。朝食の時間を過ぎて食堂は人がまばらだった。ハルトが一人テーブルに肘をついてぼんやりしていると、ゾルドに声を掛けられた。

「また一人で出歩いているのか。シュイはどうした?」

「青い顔をしてずっと寝てる。近づくなって言われたからここに居るんだ」

「…それは、おそらくゼリィ切れだな」

「ゼリィ?」

「まさか統制局に盾付きでもしたのか」

「…僕、何も知らない」

「何のための序列だ。痩せ我慢しやがって」

ゾルドが溜息混じりに独り言のように呟いたが、ハルトには意味が分からない。首を傾げるハルトを見てゾルドが言った。

「飲ませてやれば良い」

「…何を」

「お前の体液さ」

「…そうしたら、シュイは元気になるの?」

「ああ」



皆が飲ませろとか、飲ませたのかとか言っていたのは、自分の体液のことだったのか。ハルトはようやく合点が行った。なぜそんなものを飲んで体調が良くなるのかは分からないが、とにかく試してみるしかなかった。


ジェットシューズを飛ばして部屋に着くと、乱れた息を整えてシュイの部屋のドアを開けた。

シュイは目を閉じて眠っているようだった。やはり顔色が悪い。
ハルトは身を屈めてシュイの頬に手を添えるとそっと口付けた。舌で唇をなぞるとシュイの口がわずかに開く。舌を差し込んで唾液を少しずつ送り込んだ。
シュイの喉がゴクリと鳴って嚥下する。

「…ハルト?何をしている」

シュイが目を開けて掠れた声で言った。

「シュイ、足りた?」

「…いや、…」

「待っていて」

ハルトはマントを脱いでラバースーツのファスナーを下げると片腕ずつ引き抜いた。
シュイが目を見開いてこっちを見ている。恥ずかしさに顔が赤くなった。
ラバースーツから足を引き抜いてスーツを脱ぎ落とすと、自身の中心を手で掴む。シュイの視線に居た堪れなくなって、目を閉じてぞんざいに擦り上げた。



シュイは目の前の光景を信じられないような気持ちで凝視していた。ハルトがラバースーツを脱いでいく様子がスローモーションのように見える。ドアの隙間から差し込むリビングの照明の光が白い胸元を浮かび上がらせている。細い腕、華奢な肩、平らな胸、仄かに色づく胸の飾り、順番に顕になる度にシュイの心臓がどくどくと音を立てた。

白くスラリとした足をラバースーツから引き抜いて、ハルトが一糸纏わぬ姿で床の上に立った。あまりに扇情的な姿にシュイはくらりとめまいを覚えた。
思わずハルトに手を伸ばそうとすると、ハルトは細い指を自身の中心に這わせて上下に扱き始めた。目を閉じて眉間に皺を寄せ、感じているかのように悩ましげな表情をしている。ハルトの痴態にシュイは興奮で焼き切れそうだった。

「ハルト」

シュイは堪らずベッドから起き上がると、ハルトの細い腰を抱き寄せベッドに押し倒した。

「あ...シュイ」

口付けを落とすとハルトがシュイの首の後ろに手を回した。体が密着してお互いの熱を伝え合う。

「もっと、飲んで」

ハルトは囁くように言うと、シュイの口内に舌を差し込んでわずかに震わせる。シュイは貪るように唾液を嚥下した。存分に味わって唇を離すとハルトは顔も首筋も上気させて息を乱していた。

「...こっちも、良いか?」

感じている様子に余裕を無くして、ハルトの屹立に手を伸ばす。ハルトは困った様な表情で黒い瞳を潤ませて微かに頷いた。



体を下にずらして白く繊細そうな屹立をじっと見る。息が掛かったのがくすぐったかったのか体をよじらせてハルトが言った。

「や、やっぱり僕、自分で...」

シュイは無言で両手で腰を押さえつけると、いきなり屹立を口に含んだ。

「あああっ」

吸い上げながら顔を上下に動かすとハルトが悲鳴じみた嬌声を上げる。

「ひ、あああああっ」

口から出して手で扱くと、ハルトは余裕のない表情をして首を横に振った。

「あ、ああああ、でちゃう」

「ああ、飲ませてくれるのだろう?」

中程まで口に含んで根本を手で擦り上げると、ハルトはあっけなく上り詰めて精を放った。

「ああああああっ」

シュイの口内に隠微な味と匂いが広がる。やがて蜜のような甘みに変わってゴクリと飲み干した。



シュイは飢餓感と体の不調から一気に解放されて、思わず自分の体を見下ろした。汗や唾液とは段違いの効き目だった。

「体調、もう良いの?」

ハルトが乱れた息の下から聞く。

「ああ、飲ませてくれたからな」

「なら良かった」

ハルトが恥ずかしそうに下を向いて、ベッドを降りようとしている。シュイは思わず腕を掴んだ。

「待て、逃すと思うのか」

「あの、僕...」

「こんな姿を見せられて、お預けなんて嘘だろう」

シュイの眼光の強さにハルトは肩をびくりと震わせた。ハルトを掴む手にぐっと力がこもる。怖くなってハルトは思わず言った。

「や、やだ。離して...」

シュイがぐっと息を飲む音がして、ハルトの腕を掴む手が緩む。
ハルトはシュイの腕を振り払って立ち上がると、ラバースーツを拾い上げて自室に駆け込んだ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

虐げられている魔術師少年、悪魔召喚に成功したところ国家転覆にも成功する

あかのゆりこ
BL
主人公のグレン・クランストンは天才魔術師だ。ある日、失われた魔術の復活に成功し、悪魔を召喚する。その悪魔は愛と性の悪魔「ドーヴィ」と名乗り、グレンに契約の代償としてまさかの「口づけ」を提示してきた。 領民を守るため、王家に囚われた姉を救うため、グレンは致し方なく自分の唇(もちろん未使用)を差し出すことになる。 *** 王家に虐げられて不遇な立場のトラウマ持ち不幸属性主人公がスパダリ系悪魔に溺愛されて幸せになるコメディの皮を被ったそこそこシリアスなお話です。 ・ハピエン ・CP左右固定(リバありません) ・三角関係及び当て馬キャラなし(相手違いありません) です。 べろちゅーすらないキスだけの健全ピュアピュアなお付き合いをお楽しみください。 *** 2024.10.18 第二章開幕にあたり、第一章の2話~3話の間に加筆を行いました。小数点付きの話が追加分ですが、別に読まなくても問題はありません。

処理中です...