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二位
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ハルトは先程のことを思い出して、恥ずかしさのあまりベッドに顔を埋めていた。
ピコンと着信音が鳴ってノロノロとタブレットを手に取る。表示された文字を目で追って溜息をついた。また実技をやらないといけないらしい。先程の事があって、気まずくてシュイには頼れない。
そっと自室のドアを開けるとリビングにシュイは居なかった。ハルトは廊下へのドアを開けて、一人で指定された砂丘のフロアに向かった。
人工の太陽が照りつけ、乾いた空気が喉を焼く。目の前は一面砂だらけだった。風に晒されたためか砂の上に何本も並行して筋が描かれている。砂の丘の間には四輪バギーが見え隠れしていた。
皆一様に実技のために来ているのか、あちらこちらに人影が見える。
フロアの端には四輪バギーが十台程並んで停まっている。ハルトはそちらへ行こうとして声を掛けられた。
「ハルト、やっと会えた」
ハルトが振り向くと見知らぬ青年が立っていた。歳は自分よりいくつか下だろうか。ストレートの金髪を肩あたりまで伸ばし、コーラルレッドのメッシュを入れている。身長はハルトよりわずかに高い。長く伸びやかな手足がこれから大きく成長することを保証しているようだった。
「えっと...君は」
「セシルです。もしかしてバギーの実技ですか?他のバギーと接触すると減点されますよ。このフロアを貸し切って、二人で実技をやりませんか?」
ハルトは気押されるように半歩後ろに下がった。
「セシル、ええと...フロアの貸し切りなんてできるの?」
「ええ、序列の三位以内にはいくつか特典があるんです。フロアの貸し切りもその一つですね。僕、やっと序列が二位になったんです」
「そ、そうなんだ」
「少し待ってくださいね。あ、三十分後からこのフロア貸し切れますよ。それでどうですか?」
セシルがラバースーツの左腕に浮かんだボタンを操作して言った。
「う...うん」
「じゃあ決まりで」
初対面の青年に押し切られて、一緒に実技をやることが決まってしまった。
そういえばシュイと草原や密林のフロアで実技をした時も、他に人影は無かった。もしかしてシュイが貸し切っていてくれたのだろうか。という事はシュイの序列も三位以内ということになる。
ハルトがぼんやりと突っ立っていると、セシルに手を引かれた。
「日陰に入りましょう」
二人でフロアの端の日陰になっている場所に腰を下ろす。ラバースーツ越しの砂の感触が心地よい。ハルトは今頃になってようやく暑さを覚えて、ずっと羽織っていたマントを脱いだ。
ふと気づくとセシルがこちらをじっと見つめていた。
「どうかした?」
「いえ、その、あなたがとても綺麗だから、見とれていました」
「そんな事、初めて言われたよ」
ハルトは笑って言った。だが、セシルは至って真面目な顔をしている。
「僕なら、統制局に睨まれるなんてヘマはしません。それに、あなたを満足させてみせる」
「その、僕は...」
セシルが身を乗り出して距離が近づく。ハルトは上体を仰け反らせたが、セシルに腕を掴まれた。
「ああ、噂通り良い匂いですね。味見、させてもらえませんか」
ハルトの匂いに惹かれたようにセシルが顔を近づけてくる。唇どうしが触れる寸前、ハルトは言った。
「や、やだ…」
セシルがぴたりと動きを止めた。
ピコンと着信音が鳴ってノロノロとタブレットを手に取る。表示された文字を目で追って溜息をついた。また実技をやらないといけないらしい。先程の事があって、気まずくてシュイには頼れない。
そっと自室のドアを開けるとリビングにシュイは居なかった。ハルトは廊下へのドアを開けて、一人で指定された砂丘のフロアに向かった。
人工の太陽が照りつけ、乾いた空気が喉を焼く。目の前は一面砂だらけだった。風に晒されたためか砂の上に何本も並行して筋が描かれている。砂の丘の間には四輪バギーが見え隠れしていた。
皆一様に実技のために来ているのか、あちらこちらに人影が見える。
フロアの端には四輪バギーが十台程並んで停まっている。ハルトはそちらへ行こうとして声を掛けられた。
「ハルト、やっと会えた」
ハルトが振り向くと見知らぬ青年が立っていた。歳は自分よりいくつか下だろうか。ストレートの金髪を肩あたりまで伸ばし、コーラルレッドのメッシュを入れている。身長はハルトよりわずかに高い。長く伸びやかな手足がこれから大きく成長することを保証しているようだった。
「えっと...君は」
「セシルです。もしかしてバギーの実技ですか?他のバギーと接触すると減点されますよ。このフロアを貸し切って、二人で実技をやりませんか?」
ハルトは気押されるように半歩後ろに下がった。
「セシル、ええと...フロアの貸し切りなんてできるの?」
「ええ、序列の三位以内にはいくつか特典があるんです。フロアの貸し切りもその一つですね。僕、やっと序列が二位になったんです」
「そ、そうなんだ」
「少し待ってくださいね。あ、三十分後からこのフロア貸し切れますよ。それでどうですか?」
セシルがラバースーツの左腕に浮かんだボタンを操作して言った。
「う...うん」
「じゃあ決まりで」
初対面の青年に押し切られて、一緒に実技をやることが決まってしまった。
そういえばシュイと草原や密林のフロアで実技をした時も、他に人影は無かった。もしかしてシュイが貸し切っていてくれたのだろうか。という事はシュイの序列も三位以内ということになる。
ハルトがぼんやりと突っ立っていると、セシルに手を引かれた。
「日陰に入りましょう」
二人でフロアの端の日陰になっている場所に腰を下ろす。ラバースーツ越しの砂の感触が心地よい。ハルトは今頃になってようやく暑さを覚えて、ずっと羽織っていたマントを脱いだ。
ふと気づくとセシルがこちらをじっと見つめていた。
「どうかした?」
「いえ、その、あなたがとても綺麗だから、見とれていました」
「そんな事、初めて言われたよ」
ハルトは笑って言った。だが、セシルは至って真面目な顔をしている。
「僕なら、統制局に睨まれるなんてヘマはしません。それに、あなたを満足させてみせる」
「その、僕は...」
セシルが身を乗り出して距離が近づく。ハルトは上体を仰け反らせたが、セシルに腕を掴まれた。
「ああ、噂通り良い匂いですね。味見、させてもらえませんか」
ハルトの匂いに惹かれたようにセシルが顔を近づけてくる。唇どうしが触れる寸前、ハルトは言った。
「や、やだ…」
セシルがぴたりと動きを止めた。
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