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第二章

39.なるほど。スエンだけを信頼していると

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「おお。いつも落ち着き払っていやがるくせに、これ見せた途端、相当焦ってやがるな。よほど大切なものなか?」
「だから、返してと言っているでしょう!!」
「お前がな、どういう経緯で『神との添い寝』役に選ばれたのか、キ国を出る前に調べたんだ。今回は、辺境の地まで行っても添い寝役は見つからず、担当者は途方にくれていたそうだ。その最中、ジグラット付近の森で怪しい行き倒れがいると報告を受けお前を発見。こっそり地下牢に運び込んだ。これは、お前の側に転がっていたものだ。どうやって使う?」
 森羅は落ちた衝撃でヒビ割れた液晶を見ながら首を振る。
「話せません」
 ウトゥの眉がぴくりと動く。
「何だと?」
 彼は空いて片手に光を出し、ナイフの形に変える。そして、当然のように森羅の喉元に突きつけてきた。
 脅しだと分かっていた。
 自分を殺してしまえば携帯が何であるか分からないまま、聖遺物みたいな扱いになるのがオチだ。
 ウトゥはそれは避けたいはず。
 たぶん、喉に傷も付けない。
 今、森羅を傷つけてスエンと仲違いするのは得策では無いからだ。
「オレは、ほとんどこっちの世界のことを知りません。神々の勢力構造だって。だから、ウトゥさんが手に持っているそれはオレは唯一優位となれるもの。素直に喋ったら貴方がオレを利用し始める可能性だってあります。最初にオレがこの物体が何なのか話すとしたら先生にです」
 ウトゥが光るナイフを消し、もう片方の手で手首をしならせて携帯をポーンポーンと手のひらで弾ませる。
「なるほど。スエンだけを信頼していると。あちこちにいい顔しないのは、賢明な判断だ。けどな、黒焦げ土人形。無害な野草みたいなあいつだって、少なからず野心は持っていると思うぜ」
 そして、森羅に眼前にしゃがみこんできて携帯を差し出し煽ってくる。
「これ、どういう使い方をするのか皆目検討がつかないが、キ国には無い物質で途方もない加工がされているのは明かだ。なら、これをスエンに渡すとしよう。あいつはこう思うかもしれない。一発逆転で神々の世界の頂点に立てるかもしれない。だったら、懐いているあの黒焦げ土人形をもっと壊獣しなければ」
 ウトゥは「ヘッ」と上から目線で笑う。
「カタブツはカタブツなりに、必死にお前を口説いて情報を引き出そうとするだろうさ。楽しみだな」
 ウトゥは半腰になって窓の外を見る。
「これから、野草園にいるスエンの元に行ってくる。調査団が間もなくやってくることも合わせて伝えれば、焦った奴は「シンラ!早急に聖婚しましょう!」と言ってくるはずだ。よかったなあ、お前。大好きな先生の物になれて」
「調査団、どこまできているんですかっ?」
 ウトゥが外に出ていき、「ピー。ピピピ」と不思議なリズムの指笛を鳴らす。
 矢のように空を飛んできたのは、
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