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第二章

40.ニャーゴ。おい。ニャーゴって」

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「羽の生えたニャーゴ?」
 手綱を付けていて、その上に人が乗っているようだ。
 神々だろうか?それとも土人形?
「足止めしていたんだよ、オレが命じて」
 ウトゥはそう言って、森羅の家の中に残し野草園へ。
 畝に沿って作業していたスエンに駆け寄っていき、携帯を見せている。
 スエンが携帯をじっくり眺めた後、今度は窓辺にいる森羅を凝視する。
 やがて、ウトゥを野草園に残しゆっくり家に向かって歩き始めた。
「こっちに向かってくる」
 間もなく調査団がやってくるのだから、この黒い肌をなんとかしなければならない。
 今のところの唯一の方法はスエンに舐めてもらって、肌を元の色に再生させること。
 でも、寿命が伸びてしまうから、スエンはその方法をよしとしてない。
 だが、見たこともない物体を持っていた森羅には今までとは違った視点で興味を持つかもしれない。
 ウトゥが言うように、野心があるのなら聖婚だってなんなくすると思う。
 森羅を自分の物にして、誰も知らない情報を独占する。行く先は支配者の座だ。
 森羅は表玄関から出て、辺りを見回した。
 まっすぐ歩いていけば昼と夜の境目ドルアンキ。
 そこを越えればキ国だ。
「でも、そっちから調査団が来るはず」
 時計回りに家の側面を歩く。
 そこから見えたのは、鬱蒼した原種の森だ。
「シンラ。シンラ。どこですか?」
 すでに家の近くまでやってきたのか、スエンの声が聞こえてくる。
「ニャーゴ。おい。ニャーゴって」
 庭で寝そべっていた茶トラを呼んだ。
「野草園までオレと一緒に行ってくれ」
 ニャーゴの影に隠れて森羅は動き出す。
 ウトゥももう野草園から去ったようだ。
 森羅は畝を突き抜けた。
 そして、どこまでも走って平原に出ると原種の森へ続く道を歩き始めた。
 ホッホー。ホッホー。
 バササササササ。
 チイッ。チイッ。
 色々な鳥の鳴き声と羽ばたき。
 原種の森が薄暗い。
 倒木した木の枝には何千年の歴史を感じさせる苔がびっしり覆われていて、胞子がたんぽぽの綿毛みたいにふわふわ飛んでいる。
「湿度が高いな」
 地面は晴れ間など一度も無かったみたいにぬかるんでいる。
 革のサンダルはたちまち水を吸って重くなった。
 長衣を引っ張られた。
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