【未完】オレ、異世界で偽装聖婚して恋愛小説家デビューすることになりました!

遊佐ミチル

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第二章

38.な?オレの言った通りだったろ?

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 どこからそんな声を出してんのオレ?!
とツッコミをいれたくなる甘い声が漏れる。
「シンラ?苦しいのですか?」
 スエンが自分の夜着をはだけながら、抱きしめてくれた。
 軟膏を塗った肌がスエンの肌にぴたっと吸い付く。
 夜着で擦れないようにという配慮なのだろうが、質感が物凄く気持ちがいい。
 ドキドキドキドキ。
 心拍数が上がっていく。
 元いた世界でこんな状況になったら、脈拍以上を医療機器が感知して医者らが病室に駆け込んでくるだろう。
 そう兄貴分みたいな若い医者が。
 彼に感じたときめきと今のドキドキはとても似ている。
 そう思った瞬間、どろっとしたものが心を覆っていった。

「な?オレの言った通りだったろ?」
 スエンが早々と食事を済ませ野草園に向かったのを見計い、ウトゥが耳打ちしてくる。
「……そうでしたね」
 森羅は硬いパンをちぎって口の中に放り込む。
 出される食事はほぼ毎回同じで大麦のパンと野菜スープ。味付けは不明。とにかく薄味だ。ウトゥも同じのを食べているので、森羅に病人食として出されているわけでは無さそうだ。
 たまに出される肉は塩味。おやつにでてくるハシバミの実もそうだ。
 牢屋の食事もこれとそこまで変わらなかったので、この世界はまだ食材の種類は少なく、調味量も発達してないようだ。
「野草園に行かないんですか?」
 森羅は居間の隅に積み重ねてあった粘土板を読み始める。
 神々の恋愛話で、古語であることとやたら性愛描写が多く、しかもどれもどぎついことを除けばいい暇つぶしになる。
 ウトゥがスエンに貸したままにしていた物を今回持ち帰るために、居間まで運び出したらしい。
  そして、調査団は未だやってこない。
 森羅の張り詰めていた神経も徐々に緩んできている。
「お前に見せたいものがあってな」
 他の革袋とは一味違った宝石が縫い付けられたそれから取り出されたのは、手のひらサイズの塊。ウトゥがそれを動かすと天井の梁を映しながら、部屋の灯りを反射してキラッ、キラッと光る。
 この地にある鉱物ではない。
 多少手を加えた加工物でもない。
「それ、オレの携帯っ!!」
 悲鳴を上げてウトゥに飛びつこうとしたが、携帯を持った手を高く上げられてしまった。
「返して!返して下さい!!」
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