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第九章
191.アレッサンドロの馬鹿だけが貧乏くじを引いたって訳だ
しおりを挟むやがて、内側から破裂するかのように身体が弾けた。
「あいつもマテリアだったのか」
ヨハネが立ち尽くしている。
サライは、彼を追い越し真っ白な破片が小山になっている扉付近へと駆け寄る。
その側に祖父の頭部があるからだ。
(やっと戻ってきた)
しっかりと抱きしめる。
アンジェロが欠片を掬いヨハネに見せる。
「いや。ピアノ室に入ってきたときは、メリージ本人だった」
「訳わかんねえ」
とヨハネが欠片を足で蹴散らしていると、
「そうか」
とアンジェロが納得の声を上げる。
「絵だらけの部屋を俺に見せようとしたとき。あのときで、入れ替わったんだ」
同じマテリアとして動揺があったらしいヨハネが、あっと声を上げる。
「繋がった!メリージに連れられてロンドンまで瞬間移動したってアンジェロが言った時点で、ボク、おかしいなあと思っていたことと今が。さっきまでいたのは進化型マテリアか」
「御名答」
鎌を手に持ったメリージが長椅子の一番奥の列にポツンと座っていた。
何故かレオが銃をしまう。
アンジェロのムンディが、レナトゥスをかばうように前に立った。
「おい!おっさん。今こそ撃てよ!」
サライは急かした。千載一遇のチャンスだ。
「じいちゃんを殺した犯人はあいつなんだから。ロレンツォ公の鎌をコピーして、罪をなすりつけようとした」
メリージが死神ロレンツォのように大げさに両手を広げる。
「いい加減しつけえな。オレじゃねえって」
「そうしてやろうと思っていたんだが、何者かに先を越されていた。そうだな?」
とレオ。
「オレもホラ吹き王と同じく罪をなすりつけられそうになった被害者だ」
とメリージは悲痛な声を出して見せる。
「マエストロ。こいつがピエトロを殺ってようがいまいが、撃っちまえよ。RCの敵なんだから」
「無駄無駄ぁ」
メリージが首を振る。
「脇役。雷小僧。教えておく。その銃は生身の人間に当ててもさほどの威力はねえ。なんでかって言うと、対マテリア用だから。もしくは、インベントリアにも使用可能かもしれないがな。ああ、そのうち見てみてえ。死神が撃たれる様を」
鎌を肩にもたせてから、メリージが拍手を始める。
パンパンパンパン。
地下礼拝堂に反響して、ひどく耳障りだ。
「RCは結構なものを発明をしたみたいじゃないか。そして、その武器の情報をどこからか得ていたフィレンツェの為政者は、この場で使う様をぜひ見てみたかった。オレのお陰で得したな。死神。そして、アレッサンドロの馬鹿だけが貧乏くじを引いたって訳だ」
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