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第七章
138.お前っ!!首切り事件が目の前で起こっていたのに、黙って絵の中にいたのか
しおりを挟む「その孫を犬死にさせろと?マテリアってのは簡単には使いこなせない。今、焦っても無駄だと言っている」
ユディトの化け物じみた強さは悔しいが自覚している。
サライは諦めて天井を見上げた。
「そもそもなんで本物が僕の家に?母親が置いていった絵だ」
「さあな。巡り巡ってってことだろ」
「迷惑な話だ」
「その言い草。随分、ムンディにお守りをしてもらっただろうが。子供の頃、死にそうな目にあっても生きてこられたのはそのお陰だ。不死身のサライ。村じゃそう呼ばれていたそうじゃないか」
サライは数々の奇跡を思い出す。
そうか。どんなことがあっても生き延びてきたのは、こいつのおかげ。
だったら、今回の事件はどうして起こった?
サライは、ツカツカとムンディの傍に行き、彼の着ている衣の襟首を掴んだ。
「お前っ!!首切り事件が目の前で起こっていたのに、黙って絵の中にいたのか。卑怯者!臆病者!僕だけじゃなく、じいちゃんも守れってんだよっ!!」
青い衣の男はうつむいている。
「口がきけないのか?!じいちゃんを殺した犯人は誰だ?」
「よせ、サライ。ムンディは出られなかった。そう考えるのが自然だ」
「肝心なときに!!おい。役立たず!」
サライは今度はレオに噛み付いていく。
「落ち着け。マテリアを出てこられないようにする塗料というものがある。今は拭き取られているが、その痕跡がカンバスには残っている」
「で?」
「一連の事件を起こしている敵は、まず、ムンディが出られないよう塗料を塗って、老人一人とドメニコ会の僧侶七人を殺し、額ごと盗み出した。そして、ロレンツォの館にわざわざ持ってきた。そこで、今度は塗料を除去。さらには、洗浄。お前がファーストマテリアを出す瞬間を見計らって瞼を斬った。あとな、ムンディってのは声を持たない。コミュニケーションは身振り手振りか水晶玉だ」
「ふざけんな」
「今回の事件、リチャード・クリスティン側で解決する。ロレンツォが管轄のイタリアで起こった事件だからヤツが解決するのを待ったが、妙に長引かせやがる。そのせいで、ユディトはロンドンまでやってきて、ロレンツォの馬鹿息子とドブネズミと一緒になってオークションを妨害。もう、あの男には任せておけない。お前も大人しくしておけ」
サライは無言で部屋を出た。
怒りながら、次の客室に向かう。
ベットにヨハネがうつ伏せに寝そべっていた。
携帯を弄っている。
メールをしているようだ。
風が出てきて開けている窓がバタバタ言い始め、ヨハネが手をそっちに手のひらを向けると、窓がバタンと開く。
「どうなってんだよ、その手」
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