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web拍手再録(本編設定)
拍手お礼SS 3章番外編の番外編(2020/08/06~2020/08/31)
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サディアス視点です。
あ、腫れもの扱いされている。
彼を見て真っ先にそう感じた。
――その日、わたしは初めてメルクーシン家の三男に出会った。メルクーシン家の主催するパーティーに参加するように言われたので、参加した。次男の誕生日パーティーだったらしい。適当に次男に挨拶して、プレゼントを渡して、早々と引き上げようとしたところ、誰かの声が聞こえて来た。――考えていることがわかる、このスキルは面倒なことも多い。
『――恐ろしい。あの三男はフェンリルを従えている』
『――あの冷たい目! どうして馴染もうとしないのかしら!』
『――いっそ出て来なければ良かったのに』
――ここの三男はそんなに恐れられているのか。ちょっとした好奇心がわたしを動かした。実際にその三男を見てみようじゃないか、と。そしてその三男を見て驚いた。まだ小さい――いや、小さすぎる躰でコップに持ったジュースをこぼさないようにしている。スキルで聞こえるだけじゃない、耳からかも確かにこの三男を恐れる声が聞こえている。
――これだから貴族は嫌いだ。なんて、自分も貴族の癖に。わたしは小さく肩をすくめてから彼に近付いた。
「はじめまして、きみがメルクーシン家の三男かな?」
こちらに向けられた視線に驚いた。冷たい目、確かにそうだ。だが、わたしはこの瞳が何を訴えているのかがわかるような気がした。
「話しかけないほうが良いです。目を付けられますよ」
「そう言わずに。わたしはサディアス。アシュリー家のものだ」
「ルードリィフ……です」
家名を名乗らなかったのは名乗りたくないからか。アシュリー家、と聞くと彼は顔を上げた。そこからわたしは彼に声を掛けるようになった。彼はいつも人に興味がなさそうだった。わたしは聖騎士団での出来事を話す。彼は、この話だけは真剣に聞いてくれる。
「アシュリー家は人を囲うのでしょう?」
「……否定はしないけど。どうして?」
「どうしてそこまで人に興味が持てるのですか?」
わたしがニコロのことを話していたから、彼は淡々とそう聞いてきた。
「んー、そのうちわかるんじゃないかな。きみが誰かを愛すれば」
「……むずかしそうですね」
でもきっと、きみの心を掴んで離さない人が現れるだろう。それがニコロじゃないことを願うけど。
それから数年が経って、正式に彼は聖騎士団員になった。すぐに一番隊に入れたのは、彼の能力の高さを買っていたから。フェンリルやフラウのこともある。彼が変わったな、と感じ始めたのは十五歳の頃。
魔物討伐中に少しの間消えたと思ったら、なんだか勢いよく魔物を倒し始めた。何らかの力が働いているとしか思えない。さりげなく彼の元に近付いていくと――ニコロの姿が見えた。おかしい。彼は今、違う場所で戦っているはず。
それなのに――。
その人物の髪色や瞳はニコロとはかなり違う。なのに、なぜだろう。わたしには彼がニコロだと確信できていた。わたしの背後に迫る魔物を突風で弾き飛ばす。――本当、ニコロの面倒見の良さには感心してしまう。
それじゃあ、少し本気を出しても大丈夫そうだ。
剣を構えて素早く走る。この辺りに居る魔物はあまり強くはないようだから、一回核を貫くだけで倒せる。浄化はニコロたちに任せればいい。わたしはただ、魔物を倒すことだけを考えればいいのだ。
「団長、お疲れさまでした」
「うん、お疲れ。あれ……」
辺りを見渡すとあのニコロの姿がない。わたしが不思議がっていると、彼はわたしの袖を掴んだ。そして、「お話ししたいことがあります」と口にする。
とりあえず王都は守れたので聖騎士団は盛大に打ち上げをすることになり、わたしと彼はこっそりとそこから抜け出した。
彼の話を聞いて、なるほどと口にする。見えざる助力があったということをすんなりと信じた。だが、それを信じる者は少ないだろう。
「ところで、好きな人でも出来たの?」
「え?」
「なんだか、いつもより表情が明るいような……」
すると彼は、照れたように頬を染めた。その表情を引き出したのは、どんな人なのだろうか。彼はこほんと咳ばらいをして、わたしに向けてこういった。
「運命の人に出逢ったのです」
――と。
自信満々に胸を張ってそういうものだから、わたしはただ「良かったね」としか言えなかった。話すだけ話して彼は頭を下げて去ろうとして、ぴたりと足を止めてわたしを振り返る。
「サディアス、今度からオレの――いや、私のことは『ルード』と呼んで下さい。メルクーシンの名は、もう要らない」
「……そう。それじゃあそう呼ばせてもらうよ」
たったの数日で彼が……いや、ルードが変わった。それもかなり良い方向に。誰か知らないけれど、感謝しよう。
誰がルードを変えたのかを知るのに、八年も掛かるとは思わなかったけど……。幸せそうに笑い合うふたりを見ていると、良かったねと心の底から思う。
――わたしとニコロも、あんな風に笑い合えたら良いなと願った。……以前よりは進展していると信じたい。そろそろ、わたしも本腰を入れてニコロを口説くべきか……。そんなことを考えながら、今日もルードの屋敷に向かう。何だかんだでニコロは話しを聞いてくれるから、ついつい甘えちゃうんだよねぇ。
あ、腫れもの扱いされている。
彼を見て真っ先にそう感じた。
――その日、わたしは初めてメルクーシン家の三男に出会った。メルクーシン家の主催するパーティーに参加するように言われたので、参加した。次男の誕生日パーティーだったらしい。適当に次男に挨拶して、プレゼントを渡して、早々と引き上げようとしたところ、誰かの声が聞こえて来た。――考えていることがわかる、このスキルは面倒なことも多い。
『――恐ろしい。あの三男はフェンリルを従えている』
『――あの冷たい目! どうして馴染もうとしないのかしら!』
『――いっそ出て来なければ良かったのに』
――ここの三男はそんなに恐れられているのか。ちょっとした好奇心がわたしを動かした。実際にその三男を見てみようじゃないか、と。そしてその三男を見て驚いた。まだ小さい――いや、小さすぎる躰でコップに持ったジュースをこぼさないようにしている。スキルで聞こえるだけじゃない、耳からかも確かにこの三男を恐れる声が聞こえている。
――これだから貴族は嫌いだ。なんて、自分も貴族の癖に。わたしは小さく肩をすくめてから彼に近付いた。
「はじめまして、きみがメルクーシン家の三男かな?」
こちらに向けられた視線に驚いた。冷たい目、確かにそうだ。だが、わたしはこの瞳が何を訴えているのかがわかるような気がした。
「話しかけないほうが良いです。目を付けられますよ」
「そう言わずに。わたしはサディアス。アシュリー家のものだ」
「ルードリィフ……です」
家名を名乗らなかったのは名乗りたくないからか。アシュリー家、と聞くと彼は顔を上げた。そこからわたしは彼に声を掛けるようになった。彼はいつも人に興味がなさそうだった。わたしは聖騎士団での出来事を話す。彼は、この話だけは真剣に聞いてくれる。
「アシュリー家は人を囲うのでしょう?」
「……否定はしないけど。どうして?」
「どうしてそこまで人に興味が持てるのですか?」
わたしがニコロのことを話していたから、彼は淡々とそう聞いてきた。
「んー、そのうちわかるんじゃないかな。きみが誰かを愛すれば」
「……むずかしそうですね」
でもきっと、きみの心を掴んで離さない人が現れるだろう。それがニコロじゃないことを願うけど。
それから数年が経って、正式に彼は聖騎士団員になった。すぐに一番隊に入れたのは、彼の能力の高さを買っていたから。フェンリルやフラウのこともある。彼が変わったな、と感じ始めたのは十五歳の頃。
魔物討伐中に少しの間消えたと思ったら、なんだか勢いよく魔物を倒し始めた。何らかの力が働いているとしか思えない。さりげなく彼の元に近付いていくと――ニコロの姿が見えた。おかしい。彼は今、違う場所で戦っているはず。
それなのに――。
その人物の髪色や瞳はニコロとはかなり違う。なのに、なぜだろう。わたしには彼がニコロだと確信できていた。わたしの背後に迫る魔物を突風で弾き飛ばす。――本当、ニコロの面倒見の良さには感心してしまう。
それじゃあ、少し本気を出しても大丈夫そうだ。
剣を構えて素早く走る。この辺りに居る魔物はあまり強くはないようだから、一回核を貫くだけで倒せる。浄化はニコロたちに任せればいい。わたしはただ、魔物を倒すことだけを考えればいいのだ。
「団長、お疲れさまでした」
「うん、お疲れ。あれ……」
辺りを見渡すとあのニコロの姿がない。わたしが不思議がっていると、彼はわたしの袖を掴んだ。そして、「お話ししたいことがあります」と口にする。
とりあえず王都は守れたので聖騎士団は盛大に打ち上げをすることになり、わたしと彼はこっそりとそこから抜け出した。
彼の話を聞いて、なるほどと口にする。見えざる助力があったということをすんなりと信じた。だが、それを信じる者は少ないだろう。
「ところで、好きな人でも出来たの?」
「え?」
「なんだか、いつもより表情が明るいような……」
すると彼は、照れたように頬を染めた。その表情を引き出したのは、どんな人なのだろうか。彼はこほんと咳ばらいをして、わたしに向けてこういった。
「運命の人に出逢ったのです」
――と。
自信満々に胸を張ってそういうものだから、わたしはただ「良かったね」としか言えなかった。話すだけ話して彼は頭を下げて去ろうとして、ぴたりと足を止めてわたしを振り返る。
「サディアス、今度からオレの――いや、私のことは『ルード』と呼んで下さい。メルクーシンの名は、もう要らない」
「……そう。それじゃあそう呼ばせてもらうよ」
たったの数日で彼が……いや、ルードが変わった。それもかなり良い方向に。誰か知らないけれど、感謝しよう。
誰がルードを変えたのかを知るのに、八年も掛かるとは思わなかったけど……。幸せそうに笑い合うふたりを見ていると、良かったねと心の底から思う。
――わたしとニコロも、あんな風に笑い合えたら良いなと願った。……以前よりは進展していると信じたい。そろそろ、わたしも本腰を入れてニコロを口説くべきか……。そんなことを考えながら、今日もルードの屋敷に向かう。何だかんだでニコロは話しを聞いてくれるから、ついつい甘えちゃうんだよねぇ。
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(この作品は、小説家になろう、カクヨムにも掲載しています)
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