虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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終章

117.終幕

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「フォルテシア様!」

チャンドラさんの声が聞こえます。
けれど、私の視界は暗闇に包まれたまま。
とうとう、視覚も失ったようです。
でもーー最後にいい景色が見えたので、それなりに満足です。
私としては。

「フォルテシア様、まだ生きてくださいっ!」

私を呼ぶ声。
見えないけれど、まだ耳は生きているみたいです。

「……チャンドラさん、どうしてここに?」

口も動きます。
いつ止まるかは分かりませんが。
ーーでは、最後に答え合わせくらいはしておきましょう。
いや、違いますね。
彼は優しいから、きっと私が間違えていても、それを正解にしてしまう。
だから、これはたぶん、ただの自己満足。
でも、それでいいじゃないですか。
最後の最後まで、嘘に満ちた終わり方でいいじゃないですか。
望まない真実よりも、優しい嘘の方が、ずっとずっと、素敵です。

「私はお屋敷の専任料理人ですよ。お屋敷にいなくてどうするんですか」

「私は、もう助かりません」

私は言います。

「ーーですが、最後の景色を変えてくれてありがとうございます」

「もう一度、目を……開けていただけないでしょうか?」

「それは難しいですね」

と言いつつ、やってみます。
まぶたに力を入れて、
ーーあ、開きました。
意外になんとかなるものですね。
神様の粋な計らい、というやつでしょうか。
今更過ぎますけれど。

視界に、トレードマークの帽子を外したチャンドラさんがいました。
目に涙を浮かべ、顔をぐしゃぐしゃに曇らせて。
でも、大事なところはそこではありません。
帽子があった場所、そこには、一本の毛もありません。
見事な丘陵地帯が広がっています。

「フォルテシア様、これに見覚えは?」

これ、と言うのはその頭部のことでしょうか?
と言うより先に。
チャンドラさんは、ポケットからぐしゃぐしゃになった金色のなにかを渡しました。

「これはーー」

「私のです。一度、なくなって困ったことがありました」

「その節は、すみませんでした」

私は謝罪の言葉を口にします。
それは、変わるきっかけになった金色の何か。
まさか、チャンドラさんの私物だったとは。
あの時から、この人に助けられていたとは。
人生、どこでどうなるか、分からないものです。

「いえ、こいつがフォルテシア様の助けになったのならば、私の羞恥などーー」

不意に、視界が暗転。
安堵も束の間、というものです。
再度光を得ようと力を込めましたが、今度はだめでした。
いよいよ、ということのようです。
最期の景色が綺麗な空ではなく、過去の思い出というのは、なかなか洒落が利いているのかもしれません。
地獄の鬼さんへのお土産話ができました。

あぁ、色々ありましたね。
少し、疲れたのかもしれません。
最近、寝不足が過ぎましたし。
びっくりするお話が何度も来ました。
ここで、ゆっくり休みましょうか。

「フォルテシア様?」

「チャンドラさん、私はこの国を滅ぼすことができたでしょうか」

「……、……、……」

声も、聞こえません。
くすんだ音が耳に残るばかりです。

「私は、悪い子だったでしょうか」
一つくらいは、答えが欲しいかも、ですね。

「……、……!、……!」
どうやら、無理、みたいです。

「私は呪われていたのでしょうか」

「……、……!?……?」
ああ、じゃあ、これで、最後ーー

「私が生きてきた意味は、あったでしょうか」

失われていく意識の中、聞こえない返答を待ちます。
けれど、私の命の灯火は、消えゆく。
何も、何一つ分からないまま。
終わっていく。
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