異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万

文字の大きさ
41 / 56
3章 子どもの終わり

第41話 勇者

しおりを挟む
 サリバン軍の進行の噂を探るため、アイリとマミは旅に出かけた。サリバン軍がコチラに向かって来ていたら、今の俺達の戦力では到底、敵わないだろう。
 魔王討伐に向かった勇者を呼んでもらわないといけないのだ。
 あるいは、この国を捨てるか。

 5年も住んでいる国である。知り合いもいるし、仲の良い人もいる。
 愛着が無いと言えば嘘になる。
 だけど家族を守るために仕方がなかった。人のために犠牲にする命は持ち合わせていない。俺の命を犠牲にしたところでサリバン軍に負けてしまえば国は滅んでしまうのだから。

 何かしらの危機が迫ってきていても俺は慌てない。まだ噂なのだから慌てる必要はない。
 いつものようにネネちゃんと冒険者ギルドに行き、いつものように【愛情】のスキルでステータスアップを売る。1時間で4人のお客さんのステータスを上げて、森に入る。
 ちなみにクエストは取っていない。まだネネちゃんがクエストを取るまで至っていない。
 強さだけなら雑魚魔物の討伐ぐらいは簡単にできるけど、クエストに気を取られて、やらなければいけない基礎訓練がおざなりになってしまう。
 本来ならクエストをこなしながら基礎を叩き込むのだけど、ネネちゃんはまだ5歳なのだ。ケツだけ星人と同じ年齢なのだ。

 まずは気配を察知する訓練からする。
 これがネネちゃんは苦手である。
 音を聞いたり、臭いを感じたり、辺りの違和感を感じたり。
 ネネちゃんは動きたくて仕方がないのだ。
「なにもいなーい」とネネちゃんが動き出す。
「うれゃあ」と俺はネネちゃんの頭を軽くチョップ。
「本当にいないか?」
「いないもん。何もいないもん」
「臭いに集中してごらん」
「鼻詰まってるもん」とネネちゃんが言う。
 アイテムボックスから布を取り出す。コレはマミのスキルである。
 俺は【支配者】というスキルを持っている。それは【庇護下】のスキルを使えるというモノである。
「鼻チーン」と俺は言って、布をネネちゃんの鼻に付けた。
 ブリブリブリ、と怪獣のオナラのような音をしながらネネちゃんが鼻をかんだ。
「すごいセクシーな音をさせるじゃん」
 と俺が言う。
「セクシーってなぁに?」とネネちゃん。
 いや、ちょっと冗談で言っただけなんだよ。
「セクシーって色気があるって意味」と俺が言う。
「色気ってなぁに?」
「すごく可愛いってことだよ」
「鼻をかむ音なんて、可愛くないわい」とネネちゃんが言う。
 語尾の「わい」って誰の真似をしてるんだろう。
「パパにとってはネネちゃんの全てが可愛いんだよ」
「ありがとうパパ」とネネちゃん。
 褒められてお礼を言う。誰に教えられたんだろう?
「匂いをかげる?」
 と俺は尋ねた。
「なんか、ちょっとクサイ」
 ネネちゃんが鼻をクンクンと嗅いで言う。
「木を焼いている匂いがするんだ」と俺が言った。
「それじゃあ木を焼いたり、火を使う魔物は?」と俺が問題を出す。
「わかんなーい」とネネちゃん。
「緑色で小さい魔物だよ」
「またゴブリン?」とネネちゃんが嫌な顔をする。
「仕方ないだろう。この辺にはゴブリンが多いんだから」
「マミお姉ちゃんやアイリお姉ちゃんのように電鳥を倒したい」
「そのうちパパと一緒に倒しに行こう」と俺が言う。
「本当?」
「本当」と俺が答える。
「明日?」とネネちゃん。
「明日なわけないだろう。まだまだネネちゃんは電鳥を倒すレベルに至ってないわい」
 パパも「わい」を使ってみたわい。
「いつ?」とネネちゃん。
「せめてレベル20になったら」と俺が言う。
「今、ワタシはレベルなんぼ?」
「自分でステータス画面を見たらいいじゃん」
 プクッとネネちゃんの頬が膨れる。
「数字、読めないもん」
「ママに教えてもらってるじゃん」
「それでも読めないもん」
「今はレベル5だよ」と俺が言う。
「まだまだじゃん」とネネちゃんが言う。
「あと15だよ」と俺が言う。

「とりあえず今は魔物に集中」
 と俺が言う。
 俺のパッシブスキルに【サポート】というのがある。それは俺が見ている時は集中力を上げる、というモノである。
 集中力が上がっている状態で、この集中力の無さである。

「魔物に近づく時は?」
 と俺は尋ねた。
「気配を消す」
 と元気良く、ネネちゃんが答える。
 その元気良く答える声が気配なんだよ、とはあえて言わない。
「正解」と俺は言う。
「それじゃあ足音を消して、素早く匂いがする方向に近づこう」

 俺達は魔物に見つからないように気配を消して……ネネちゃんは全然気配を消せてません。木々に隠れながら魔物に近づいて行く。
 そして魔物達の群れを発見する。
 10体ぐらいのゴブリンが何かを焼こうとしている。キャンプファイヤーのような焚き火。その横に人間。ココからでは顔はわからない。白い甲冑を着ている。
 ゴブリンは人間を火に入れるところだった。

「していい?」とネネちゃんが尋ねた。
「あの人間は生きているかもしれないから当てないでね」
「わかった」
 とネネが言って、ゴブリンに人差し指を向けた。

「レーザービーム」
 とネネちゃんがスキル名を言った。

 彼女が最初に獲得した攻撃魔法である。ファイアのような初期魔法ではなく、人差し指からレーザーを出すスキルだった。

 きようさ、が全然無いせいでピュンと放たれたレーザービームが明後日の方向に飛んで行く。

 俺はネネちゃんの手首を掴む。
「撃ちたい魔物をよく見る。腕が震えてる」

 レーザービーム。
 レーザービーム。
 レーザービーム。
 レーザービーム。
 レーザービーム。

 2発だけ当たった。
 しかも頭じゃなく、肩と太ももである。

 ゴブリンがコチラに気づいて近づいて来た。

「レーザービームを撃つ時は手を動かさないように左手で手首を固定する」
 と俺は言って、実践する。
 某有名漫画の必殺技みたいになってしまう。
「そして人差し指の先が魔物の頭に向いているのか確認する」
「はいはい」とネネちゃん。
「はい、は一回」と俺。

 レーザービーム。
 実際にレーザービームを俺が出す。
 頭を撃ち抜く。

「やってみて」
 と俺。

 ネネちゃんが手首を固定してレーザービームを撃った。
 ゴブリンの胸に当たる。
「上手じゃん」と俺が言う。

 ゴブリンが接近して来た。
「接近してきたら、どうしたらいいの?」
 と俺は尋ねた。

「剣」とネネが言った。
「正解」と俺が言う。
「シャッキーン」とネネちゃんが言って、子ども用の剣を抜いた。
 抜いた瞬間にネネちゃんが踏み込んだ。
 複数のゴブリンの首を彼女は一瞬で切り落とした。
 ネネちゃんは魔法攻撃は苦手だけど、剣は得意なのだ。

「またつまらないモノを斬ってしまった」
 とネネちゃんは言いながら鞘に剣を仕舞う。もちろんコレは俺の仕込みである。

 全てのゴブリンを倒して、今からゴブリンの腹に入るはずだった人間の元に行く。
 白い甲冑。騎士団の甲冑に似ているけど、それよりも豪華である。
 それに女性だった。
「勇者じゃん」と俺は倒れている女性を見て、呟いた。
 間違える訳がない。5年前にオークキングを倒した勇者である。
「まだ息あるよ」
 とネネちゃんが言った。
「家に連れて帰ろう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

没落貴族と拾われ娘の成り上がり生活

アイアイ式パイルドライバー
ファンタジー
 名家の生まれなうえに将来を有望視され、若くして領主となったカイエン・ガリエンド。彼は飢饉の際に王侯貴族よりも民衆を優先したために田舎の開拓村へ左遷されてしまう。  妻は彼の元を去り、一族からは勘当も同然の扱いを受け、王からは見捨てられ、生きる希望を失ったカイエンはある日、浅黒い肌の赤ん坊を拾った。  貴族の彼は赤子など育てた事などなく、しかも左遷された彼に乳母を雇う余裕もない。  しかし、心優しい村人たちの協力で何とか子育てと領主仕事をこなす事にカイエンは成功し、おまけにカイエンは開拓村にて子育てを手伝ってくれた村娘のリーリルと結婚までしてしまう。  小さな開拓村で幸せな生活を手に入れたカイエンであるが、この幸せはカイエンに迫る困難と成り上がりの始まりに過ぎなかった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~

柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」  テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。  この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。  誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。  しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。  その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。  だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。 「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」 「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」  これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語 2月28日HOTランキング9位! 3月1日HOTランキング6位! 本当にありがとうございます!

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

処理中です...