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恋ってウソだろ?! 35
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「それはぜひ、本人とも会ってやってください」
「何でも、飯倉先生、本人には滅茶苦茶嫌われてるらしうて、会えばお互い喧々囂々やったとかって。あの先生も子供みたいなとこあるし、気まぐれやし、学生もやりにくいでしょうね」
佐々木は面倒くさい画家たちのことを思い出しながら笑みを浮かべる。
「よくわかってるね、佐々木さん。とりあえずゆっくりお茶をどうぞ。いつでもご案内しますよ」
「誰がトウヘンボクだ?」
三浦を従えた河崎がちょうど出かける前に、藤堂の横を通りしな、プランをチラリと覗き込んだ。
「身に覚えがなければ文句は言わないだろうが」
「プラン一だ。それで進めろ」
命令口調で言い渡して河崎はドアに向かう。
「行ってらっしゃい」
浩輔の声に送られて二人が出て行くと、藤堂が「うるさいのがいなくなったし、佐々木さん、羽のばしちゃっていいから」と、茶目っ気たっぷりにウインクしてキッチンに向かう。
「しかし、河崎さん、スパッと決めはって、ちょっと見ただけやのになぁ」
プラン一は佐々木としても押したかったし、藤堂や浩輔の意見も一致している。
「なぁに、あいつのははったりだからね。だまされちゃいけない」
トレーにプリンを載せて戻ってきた藤堂が首を振る。
「まあ、クリエイターとしても一押しのプランならやはり一番に持ってくるだろう? それに佐々木さんならどれを取ったって失敗することはないとふんでるだけ」
プリンの入ったグラスをテーブルに置きながら、藤堂は解説してみせる。
「まあ、河崎の場合、選んだら必ず結果を出さないでかってやつだから。その前にクリエイターを選んだところで既に決まったようなものでしょ?」
「はあ、なるほど」
河崎の揺ぎ無い自信が、今までの成果となっているということだろう。
藤堂が新しく入れてくれたお茶を飲んだあと、三人は上のギャラリーに向かった。
「あれ、藤堂、仕事はもういいのか?」
ギャラリーのドアを開けると、絵を見ていた少年があどけなさの残る笑顔で駆け寄ってきた。
「いや、お客さん。君の絵が見たいって」
少年と思ったのが五十嵐悠と知って、佐々木はちょっと面食らう。
既に大学は卒業しているはずだから、二十三歳くらいのはずだ。
童顔では浩輔と張り合うな。
「佐々木さん、五十嵐悠くんです。こちら、デザイナーの佐々木周平氏」
藤堂が佐々木を紹介すると悠は、えっと、佐々木を見上げた。
「佐々木、周平って、あの、天才クリエイターの? マジ? すげ!」
いきなり尊敬の眼差しでこられて、佐々木は苦笑せざるを得ない。
「佐々木氏のこと、知ってんの?」
「あったりまえだろ? デザイナー連中の間じゃ、カリスマだぜ、カリスマ!」
藤堂の問いに悠は自分のことのように威張って見せる。
「だって、君は油絵だろ?」
「気になるアーティストは何やってたって関係ない」
佐々木は藤堂にくってかかる悠ににっこり微笑んだ。
「こちらこそ、新進気鋭の天才画家に会えて感激やわ」
「何でも、飯倉先生、本人には滅茶苦茶嫌われてるらしうて、会えばお互い喧々囂々やったとかって。あの先生も子供みたいなとこあるし、気まぐれやし、学生もやりにくいでしょうね」
佐々木は面倒くさい画家たちのことを思い出しながら笑みを浮かべる。
「よくわかってるね、佐々木さん。とりあえずゆっくりお茶をどうぞ。いつでもご案内しますよ」
「誰がトウヘンボクだ?」
三浦を従えた河崎がちょうど出かける前に、藤堂の横を通りしな、プランをチラリと覗き込んだ。
「身に覚えがなければ文句は言わないだろうが」
「プラン一だ。それで進めろ」
命令口調で言い渡して河崎はドアに向かう。
「行ってらっしゃい」
浩輔の声に送られて二人が出て行くと、藤堂が「うるさいのがいなくなったし、佐々木さん、羽のばしちゃっていいから」と、茶目っ気たっぷりにウインクしてキッチンに向かう。
「しかし、河崎さん、スパッと決めはって、ちょっと見ただけやのになぁ」
プラン一は佐々木としても押したかったし、藤堂や浩輔の意見も一致している。
「なぁに、あいつのははったりだからね。だまされちゃいけない」
トレーにプリンを載せて戻ってきた藤堂が首を振る。
「まあ、クリエイターとしても一押しのプランならやはり一番に持ってくるだろう? それに佐々木さんならどれを取ったって失敗することはないとふんでるだけ」
プリンの入ったグラスをテーブルに置きながら、藤堂は解説してみせる。
「まあ、河崎の場合、選んだら必ず結果を出さないでかってやつだから。その前にクリエイターを選んだところで既に決まったようなものでしょ?」
「はあ、なるほど」
河崎の揺ぎ無い自信が、今までの成果となっているということだろう。
藤堂が新しく入れてくれたお茶を飲んだあと、三人は上のギャラリーに向かった。
「あれ、藤堂、仕事はもういいのか?」
ギャラリーのドアを開けると、絵を見ていた少年があどけなさの残る笑顔で駆け寄ってきた。
「いや、お客さん。君の絵が見たいって」
少年と思ったのが五十嵐悠と知って、佐々木はちょっと面食らう。
既に大学は卒業しているはずだから、二十三歳くらいのはずだ。
童顔では浩輔と張り合うな。
「佐々木さん、五十嵐悠くんです。こちら、デザイナーの佐々木周平氏」
藤堂が佐々木を紹介すると悠は、えっと、佐々木を見上げた。
「佐々木、周平って、あの、天才クリエイターの? マジ? すげ!」
いきなり尊敬の眼差しでこられて、佐々木は苦笑せざるを得ない。
「佐々木氏のこと、知ってんの?」
「あったりまえだろ? デザイナー連中の間じゃ、カリスマだぜ、カリスマ!」
藤堂の問いに悠は自分のことのように威張って見せる。
「だって、君は油絵だろ?」
「気になるアーティストは何やってたって関係ない」
佐々木は藤堂にくってかかる悠ににっこり微笑んだ。
「こちらこそ、新進気鋭の天才画家に会えて感激やわ」
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