恋ってウソだろ?!

chatetlune

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恋ってウソだろ?! 31

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「そうだ、寒くない? だだっ広いから空調効いてくるの遅いんだよな。向こうでメシ食いましょう。腹減ったでしょ」
 壁というよりパーテーションの向こうはダイニングキッチンになっていた。
 八人がけのテーブルへ、トモがアイランド型のキッチンからレンジで温めた皿を運ぶ。
「手伝おか」
 メインディッシュは大盛のビーフシチュー、温野菜のサラダ、スープ、チーズケーキ、それぞれが丁寧にラップされて冷蔵庫に入っていたらしい。
「シチュー、鍋にまだあるみたいだから、おかわり自由ですよ」
 佐々木がテーブルに皿を並べていると、トモがいたずらっぽく笑いながら、チーズの盛り合わせと、パンが入った籠を持ってきて並べ、最後にワインを開けた。
「うまそう。見たら急に腹が減ってきた。いただきます」
 軽くグラスを合わせたあと、佐々木は遠慮なくシチューをスプーンで口に運ぶ。
「昔からうちに手伝いに来てくれてる近所のおばちゃんが作り置きしてくれたんです」
「へえ、プロ並みや!」
「ケーキはやっぱり近所のケーキ屋で、そこもチビの時からのおなじみで」
 話しながらトモは豪快に口に運ぶ。
「明日は、うまいレストランあちこちにありますから、行ってみましょう」
「うーん、それもええけど、こんな立派なキッチンあるし、俺、何か作ろうか?」
「え………」
 トモがじっと佐々木を見つめるので、佐々木はあまり歓迎しないのかと慌てて訂正する。
「ああ、いや、やっぱやめとこ。俺の下手な料理で腹でもこわしたらあかんしな」
「とんでもない、佐々木さんが料理してくれるなんて、思いもよらなかったから。料理、できるんですか? 俺、からきしダメで」
 一転、トモが嬉しそうに破顔したので、佐々木もつられて苦笑した。
「うち、おかあちゃんがな、何せ貧乏なくせに古いばっかしのうちで、乳母日傘で育ちよって、お茶点てること以外、家事その他何もできひんの。オヤジなんかお話にもならんかったし、昔はおかあちゃんが嫁に来る時もついてきやはったばあやさんが何もかもしてくれてんけど、中学ぐらいから料理教えてもろたし、ばあやさん亡くなってからは俺がやらざるを得なくて、結構、料理だけはマメにやってるから」
 親しくなった友人くらいにしか話さないようなことをトモに語っている自分が佐々木は何だかおかしかった。
「へえ、すっげぇ、楽しみ!」
 にこっと笑ったトモを見て、佐々木はおや、と思う。
 いきなり子供っぽい気がしたのだ。
 もしや、思っているより年は若いのだろうか。
 てっきりどこかの社長だとか思ったし、大きくてやけに落ち着いた雰囲気だったので、三十代半ばだろうかと思ったのだが、そういえばスーツじゃないトモは、藤堂や河崎と比べてもずっと若い気がする。
 ほな、同い年くらいか? ひょっとして俺よか下やったり?
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