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第23話 疾風迅雷《シップウジンライ》
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僕はあまりにもおなかが減ったので屋敷に帰った。
実家には情報が入ってなかったらしく、僕が逃亡兵となっていることは知らなかったようだ。
お母様は「おかえりなさい」と迎えてくれた。
フランソワも相変わらずだ。
何故だかわからなかったが、嬉しかった。
「お母様、セージ男爵家について何かご存知ですか?」
「知っていますよ。取り潰しになりましたね」
「どうして教えてくれなかったのですか?」
「あなたは、二人も養うほどの甲斐性がないでしょ? それなら忘れる方が幸せになるかと思ってました」
「そうですか。僕は好きな女の子のピンチに立ち会うこともできない人間だったのですね」
「そうですね。厳しいことを言うとそうなります」
「わかりました。サルビアの行き先はご存知ですか?」
「詳しくは知りませんが、頼る親戚といえば、ラムダン子爵の家かと思います。そちらへ行けば何か情報が得られるかもしれません」
「わかりました。行ってきます」
「気をつけて」
フランソワにラムダン子爵の家まで馬車で連れて行ってもらう。
アイリスが帰ってきてないことを考えると、まだ何も情報が入っていないのであろう。
「アーサー様、落ち着いてくださいね」
フランソワに注意される。
「ああ、事情を聞くだけだよ」
何故かフランソワは馬車で待っているらしい。
「こんにちは。アーサー・ド・サリュームです。開けてください」
「はい。少々お待ちを」
「先ぶれもなく失礼します。急ぎの用件だったもので」
「ええ、子爵様のご予定は空いています。どうぞお入りください」
子爵家の執事が迎えてくれる。
応接室に通される。
コンコンコン
「はい」
「こんにちは、王子様。アートク・ラムダンでございます」
丁寧なお辞儀をしてくれる。
「第六王子アーサーです」
僕も丁寧にお辞儀を返す。
「さっそくですが、セージ男爵の居所をご存知ではありませんか?」
「そうですね。私は知っていますが、会わせるわけにはいかないです」
「どうしてですか?」
「ラムダン家も王家と対立してしまう可能性があるからです」
「それじゃあ、あなたがラムダン家の後押しをしてくださるのなら考えましょう」
「後押しもなにも、どういう立場におられるのかすら知りません。まずは、それを教えて下さい」
「そうでしたか。わかりました。今のラムダン家の置かれている状況をお伝えしましょう……」
子爵はかいつまんで説明してくれた。
サイトを召喚したストライク家と対立していること。
ラムダン家は勇者をもう一人召喚しようとしていること。
僕との婚約の件と、召喚の件の二つでもめたこと。
その結果、王家は一人でいいと判断したこと。
それに異を唱え、強引に召喚しようとしたことで取り潰しとなったこと。
ラムダン家はそれでも、もう一人召喚しようとしていること。
「どうしてそこまで勇者召喚にこだわるのですか?」
「建前としては、魔物の活性化が理由です。本音としては、王家への見返りを求めてです」
「なるほど。それを僕に話すほどの覚悟があるということですね」
「そうです。私たちは止まるつもりはありません」
「それなら、僕が勇者になりますので、過激な行動は慎んでください」
「え? なれるのですか?」
「ええ、『勇者』スキルなら持っています」
自己暗示を使えばだけど……。
今すぐ鑑定はしないだろうから大丈夫だろう。
「さっそくですが、『鑑定』してもよろしいですか?」
え……。
早すぎない?
「わかりました。鑑定士を呼んでください」
「承知しました。少し席を外します」
そう言うと、アートクは退室した。
その時間を使って自己暗示をするしかない。
『催眠術 僕は勇者になる』
『鑑定』
『アーサー・ド・サリューム 14歳 男 スキル【ドラゴンハート レベル2】【ピュア レべル6】(催眠術 レベル1)(剣聖 レベル1)(鑑定 レベル2)(勇者 レベル1)』
うん。
間違いなく勇者だな。
派生スキルであることと、剣聖スキルがバレることが問題かな。
もう、今からじゃ、打つ手がない。
このまま行くしかないな。
なるようになるだろ。
しばらくして、アートクが一人の女性を連れて帰ってきた。
いつもの鑑定お姉さんだ。
この国には鑑定士は一人しかいないのか?
それはいい。
「また会いましたね」
お姉さんに挨拶する。
「そうですね。王子様、奇遇ですね」
「知り合いですか? まあ、いいでしょう。それでは『鑑定』をしてください」
「わかりました。『鑑定』……できました。お伝えしますね。スキルは『ドラゴンハート』レベル2『ピュア』レベル6『剣聖』レベル1『鑑定』レベル2『勇者』レベル1……ですね。間違いなく『勇者』が付いてます」
「まことか? それはすごい。ほれ、報酬を受け取ったら帰ってよいぞ」
「はい。まいどあり~」
お姉さんは機嫌よく帰って行った。
「本当に勇者なんですね。生まれた時からなんですか?」
「いえ、なぜか派生スキルとして発現しました」
「そんなケース初めて聞きました。そんなこともあるのですね」
「僕もよくわかりません」
「それでは、我々の計画に加担いただけると考えてもよろしいですか?」
「いえ、まず、その計画とやらを教えてください」
「ああ、焦っておりました。失礼しました」
計画について説明してくれた。
どうやら、『勇者』を育てて『賢者』と結婚させたいらしい。
あれ? はじめの話に戻ってるよね?
僕はもともとサルビアと結婚するつもりだったし。
サイトもそうなるが、『勇者』というだけで貴族入りできるらしい。
子爵クラスで。
そのために、サイトの結婚式を急いでいたのか。
結婚と同時に爵位を与えると王国の好感度が上がるからだろう。
そこで、新しい勇者を立てて、そいつと『賢者』が結婚するとそれも盛り上がる。
そこにお家復興の最後のチャンスをかけていたのだな。
いいだろう。
乗っかってやろう。
「説明ありがとうございます。ご存じかもしれませんが、僕は元々サルビアと結婚するつもりでした。だから、渡りに船です。よろこんでお受けしますよ」
「ありがとうございます。でも、そうなると、やはり、ストライク家が邪魔ですね。そもそも、今の勇者を召喚したのもストライク家です」
「わかりました。ストライク家とは僕が話をつけてきます。明日には行きたいので、明日にはお邪魔すると、手紙を今日中に送ってくれませんか?」
「承知しました。私たちのためにありがとうございます」
「いえ、僕はサルビアのためにやってるだけですよ。大きな評価はやめてください。あ、あと、何か手土産を用意してくれませんか?今、手持ちのお金がなくて……」
「ええ。承知しました」
僕は明日から忙しくなりそうだ。
実家には情報が入ってなかったらしく、僕が逃亡兵となっていることは知らなかったようだ。
お母様は「おかえりなさい」と迎えてくれた。
フランソワも相変わらずだ。
何故だかわからなかったが、嬉しかった。
「お母様、セージ男爵家について何かご存知ですか?」
「知っていますよ。取り潰しになりましたね」
「どうして教えてくれなかったのですか?」
「あなたは、二人も養うほどの甲斐性がないでしょ? それなら忘れる方が幸せになるかと思ってました」
「そうですか。僕は好きな女の子のピンチに立ち会うこともできない人間だったのですね」
「そうですね。厳しいことを言うとそうなります」
「わかりました。サルビアの行き先はご存知ですか?」
「詳しくは知りませんが、頼る親戚といえば、ラムダン子爵の家かと思います。そちらへ行けば何か情報が得られるかもしれません」
「わかりました。行ってきます」
「気をつけて」
フランソワにラムダン子爵の家まで馬車で連れて行ってもらう。
アイリスが帰ってきてないことを考えると、まだ何も情報が入っていないのであろう。
「アーサー様、落ち着いてくださいね」
フランソワに注意される。
「ああ、事情を聞くだけだよ」
何故かフランソワは馬車で待っているらしい。
「こんにちは。アーサー・ド・サリュームです。開けてください」
「はい。少々お待ちを」
「先ぶれもなく失礼します。急ぎの用件だったもので」
「ええ、子爵様のご予定は空いています。どうぞお入りください」
子爵家の執事が迎えてくれる。
応接室に通される。
コンコンコン
「はい」
「こんにちは、王子様。アートク・ラムダンでございます」
丁寧なお辞儀をしてくれる。
「第六王子アーサーです」
僕も丁寧にお辞儀を返す。
「さっそくですが、セージ男爵の居所をご存知ではありませんか?」
「そうですね。私は知っていますが、会わせるわけにはいかないです」
「どうしてですか?」
「ラムダン家も王家と対立してしまう可能性があるからです」
「それじゃあ、あなたがラムダン家の後押しをしてくださるのなら考えましょう」
「後押しもなにも、どういう立場におられるのかすら知りません。まずは、それを教えて下さい」
「そうでしたか。わかりました。今のラムダン家の置かれている状況をお伝えしましょう……」
子爵はかいつまんで説明してくれた。
サイトを召喚したストライク家と対立していること。
ラムダン家は勇者をもう一人召喚しようとしていること。
僕との婚約の件と、召喚の件の二つでもめたこと。
その結果、王家は一人でいいと判断したこと。
それに異を唱え、強引に召喚しようとしたことで取り潰しとなったこと。
ラムダン家はそれでも、もう一人召喚しようとしていること。
「どうしてそこまで勇者召喚にこだわるのですか?」
「建前としては、魔物の活性化が理由です。本音としては、王家への見返りを求めてです」
「なるほど。それを僕に話すほどの覚悟があるということですね」
「そうです。私たちは止まるつもりはありません」
「それなら、僕が勇者になりますので、過激な行動は慎んでください」
「え? なれるのですか?」
「ええ、『勇者』スキルなら持っています」
自己暗示を使えばだけど……。
今すぐ鑑定はしないだろうから大丈夫だろう。
「さっそくですが、『鑑定』してもよろしいですか?」
え……。
早すぎない?
「わかりました。鑑定士を呼んでください」
「承知しました。少し席を外します」
そう言うと、アートクは退室した。
その時間を使って自己暗示をするしかない。
『催眠術 僕は勇者になる』
『鑑定』
『アーサー・ド・サリューム 14歳 男 スキル【ドラゴンハート レベル2】【ピュア レべル6】(催眠術 レベル1)(剣聖 レベル1)(鑑定 レベル2)(勇者 レベル1)』
うん。
間違いなく勇者だな。
派生スキルであることと、剣聖スキルがバレることが問題かな。
もう、今からじゃ、打つ手がない。
このまま行くしかないな。
なるようになるだろ。
しばらくして、アートクが一人の女性を連れて帰ってきた。
いつもの鑑定お姉さんだ。
この国には鑑定士は一人しかいないのか?
それはいい。
「また会いましたね」
お姉さんに挨拶する。
「そうですね。王子様、奇遇ですね」
「知り合いですか? まあ、いいでしょう。それでは『鑑定』をしてください」
「わかりました。『鑑定』……できました。お伝えしますね。スキルは『ドラゴンハート』レベル2『ピュア』レベル6『剣聖』レベル1『鑑定』レベル2『勇者』レベル1……ですね。間違いなく『勇者』が付いてます」
「まことか? それはすごい。ほれ、報酬を受け取ったら帰ってよいぞ」
「はい。まいどあり~」
お姉さんは機嫌よく帰って行った。
「本当に勇者なんですね。生まれた時からなんですか?」
「いえ、なぜか派生スキルとして発現しました」
「そんなケース初めて聞きました。そんなこともあるのですね」
「僕もよくわかりません」
「それでは、我々の計画に加担いただけると考えてもよろしいですか?」
「いえ、まず、その計画とやらを教えてください」
「ああ、焦っておりました。失礼しました」
計画について説明してくれた。
どうやら、『勇者』を育てて『賢者』と結婚させたいらしい。
あれ? はじめの話に戻ってるよね?
僕はもともとサルビアと結婚するつもりだったし。
サイトもそうなるが、『勇者』というだけで貴族入りできるらしい。
子爵クラスで。
そのために、サイトの結婚式を急いでいたのか。
結婚と同時に爵位を与えると王国の好感度が上がるからだろう。
そこで、新しい勇者を立てて、そいつと『賢者』が結婚するとそれも盛り上がる。
そこにお家復興の最後のチャンスをかけていたのだな。
いいだろう。
乗っかってやろう。
「説明ありがとうございます。ご存じかもしれませんが、僕は元々サルビアと結婚するつもりでした。だから、渡りに船です。よろこんでお受けしますよ」
「ありがとうございます。でも、そうなると、やはり、ストライク家が邪魔ですね。そもそも、今の勇者を召喚したのもストライク家です」
「わかりました。ストライク家とは僕が話をつけてきます。明日には行きたいので、明日にはお邪魔すると、手紙を今日中に送ってくれませんか?」
「承知しました。私たちのためにありがとうございます」
「いえ、僕はサルビアのためにやってるだけですよ。大きな評価はやめてください。あ、あと、何か手土産を用意してくれませんか?今、手持ちのお金がなくて……」
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