103 / 230
ギルド職員編
おやじ狩りでクロノ死す
しおりを挟む
突然ですが心理テストです。夜に人気のない通りで、いかつい男が少女に絡んでいます。しかも、少女はミラちゃんです。あなたならどうしますか?
俺の答えはもちろん、見なかったことにする、である。ヤンキー怖いし。
『うーん、このクズ』
そう思ったそこのあなた。ちょっと待って欲しい。本当に襲われているのだろうか? 実は、そういうプレイなのではなかろうか?
人通りの多い道で声をかけられ、誰だかよく知らないけど知人っぽい空気だから手を挙げて返事したら、相手は後ろのやつに話しかけていた。なんてことが平然と起こる世の中である。
もしあれがプレイなら、誰も得しない。よって、俺は静かに距離を詰めて様子を伺うのである。早くチューしろ。まず口を開けるんだ。
「こ、困ります。もういい加減にしてください」
「こっちも困ってんだよ。あんたを守ってやったんだから、お礼はちゃんといただかないとなぁ。大人に教わらなかったか?」
なるほど! 体で払えってシチュエーションか! 古典的だが悪くない。相手の弱みにつけ込んむほど、物事はスムーズに進むからな。まさに大人の嗜みだ。
「守ったって……勝手に着いてきただけじゃないですか。迷惑してるって、他の娼婦の人も言ってましたよ」
ほぅ、ストーカー的なキャラ設定か? それなら、拉致監禁陵辱レイプと相場は決まっている。せめて黒い布で目隠しして、雰囲気を出すべき。
「踏み倒そうってか? そうはいかねぇ! 俺がアニキにシメられちまう」
「一緒に謝ってあげますから、諦めてくださいよ……」
おぉ、3Pだな。大柄な男ふたりにされるがままの少女か。いいね! 興奮しちゃう。
「ふざけんじゃねぇ! この町でウリ出来ないようにしてやろうか!?」
なるほど。一人二役か。二度美味しいじゃん。あいつまじ天才じゃね?
「許可なんて必要ないです。元から非認可娼婦なんですから……いい加減にしないと、大声出しますよ……」
そして激情した男は、少女の細い腕を掴んでハイ○ースして、薄暗い地下室に――。
「あんまりゴネると、お前の大事なお友達が不幸な目に合うかもしれねぇなぁ」
「と、友達は関係ないです。巻き込まないでください……」
「脅しで済む方法は、もう分かったよな? それとも、薄汚い娼婦は、自分の体だけじゃなくて、ダチまで売っちまうのかぁ?」
過激な言葉を使うじゃないか。プレイには節度が必要だぞ。それにしても、ミラちゃんの泣き真似は上手いな……あれ? ひょっとして、ガチじゃね?
『プレイだと思ったのは、心の汚れたキミだけだよ』
本格的なプレイの可能性だってまだある。何より、相手の男は怖すぎる。丸坊主に剃りこみ入ってるし、ピアスとか付けてるし。首にある模様ってタトゥーじゃね? ヤンキーじゃん。こ、怖すぎる……。
『ほら、はよはよ。何かして』
相棒の無茶振りがキツい。でもいい泣き顔みせてくれたしなぁ。お礼に助けるのが道理ってもんだよなぁ。しょうがない。腹をくくるぞ!
「待ちたまえ(裏声)」
「……あぁ? 何だぁテメェ。この女の知り合いか?」
ミラちゃんと目が合う。くしゃりと顔を歪めて、涙を堪えながら首を振っている。関わるなってことか? やべぇ状況に置かれているのに、俺の身を案じるほど、やべぇ相手ってことだな……? ど、どうしよう……。
「眷属よ、我が魂を喰ら――」
『だが断る。あのねぇ! 命と同等のレベルを、あんなやつに使うことないでしょ!!』
まさか断られるとは思っていなかった。この契約、ナイトメア有利すぎ。いつか抜本的な改善を求めて抗議活動を――。
「そこのブサイクなおっさん! テメェは、こいつの、知り合いか!?」
胸ぐら掴まれちゃった。腕太すぎでしょ。タトゥ多すぎだし。眉毛ないじゃん。やべぇよ、これガチなやつだよ。ヤンキーだよ。おやじ狩りだよ……。
しょうがない。ボコられるか。ミラちゃんと一緒に……。
許可を得るべく、涙を堪えるミラちゃんに目線を送る。すると、またしても首を横に振る。何だこれ……。もう正直に答えるしかないか……。
「し、知り合いかと思ったけど、人違いだったようだ。だって俺の知ってる小人族のミラちゃんは、自分とお金が大好きで、誰かを守るために自分を犠牲にする人間じゃない」
「おじさーん!? 私のこと何だと思ってるんですかっ!?」
「あっ、やっぱりミラちゃんだ」
苛ついていた男が、ニヤリと笑った。嫌な予感がするぞ……。
「知り合いなら話は早い。この女が、俺に借りがある。こいつの代わりに、お前に払ってもらう。嫌だって言ったら、どうなるか分かるよな?」
つまり金を出せと。どれだけ怖くても、ボコボコに殴られても、金を渡してはいけない。骨の髄までしゃぶりつくされる。何なら、医療費のほうが安くつく。
「だが断る。このクロノ・ノワール。楽な交渉だと思ってる相手を、しこたま困らせることを至上の喜びとしている」
『ただのクズ』
男から表情が消えた。握りしめられた拳が、俺の頬に打ち付けられる。ショックで頭が真っ白になった。
殴られた? 俺は殴られたのか? なぜだ?
殴られたのに、これがちっとも痛くない。子供に叩かれた程度の痛みだ。
「……ひょっとして、ドッキリ!? カメラどこ!? うわっ、まじで引っかかったよ。恥ずかしいぃぃぃっ」
「俺のパンチを受けて、強がりを言う気力があるとはなぁ。見た目通りのタフ野郎が、何秒持つか見ものだなっ!」
「とっ、友達には手を出さないって言ったじゃないですかっ!!」
「言ってねぇよ! オラッ、オラァッ!!」
やはりおかしい。そもそも、相手のパンチの軌道って、普通は見えなくね? おじさんはボクサーじゃないし、相手が手を抜いてるのだ。ミラちゃんはガチで心配してくれるが、やっぱり痛くないし、ドッキリじゃないなら何なんだ!?
「はぁはぁ、テメェ……まさかタンクか」
「いや、魔術師だけど……」
「嘘付くんじゃねぇ! 魔術師がこんなに硬いわけあるかっ!」
硬い? ポーション太りで脂肪に覆われたこの俺が硬いだと? もし、相手のパンチが本気だとして、この状況がドッキリじゃないなら、答えはひとつ。
レベルによるステータスの差。相手の筋力を、俺の頑強が大幅に上回っているのか……? 試す価値はある!
「ねぇ、いつ殴るの? ほら、ここだよ。ほっぺたにガツンとさ、ご自慢の怪力をぶつけないのか? んっ? んんっ?」
~旬の言葉に、変顔を添えて。やんちゃ小僧仕立て~ 煽りのオードブルとしちゃ悪くない。
「……死んだぞテメェ!!」
何発殴られても、元気なんだなこれが。避けるのも簡単すぎる。わざと後ろに下がって、直前で回避する。建物の壁を殴って悶える姿は滑稽である。
拳を抑えて怯んでいる男の横に立ち、顔を覗き込む。顔を歪めて、冷や汗を流している。間違いなく、勝機だ。だがおじさんは優しいので、弱いものいじめはしない。
「死んだぞテメェ……ふふっ。死んだぞテメェ、だってさ。あーっはっはっは! 生きてるぞ!? どうした!? お腹痛いのか!? 俺も痛いんだよ。笑いすぎて腹が痛ぇよ!?」
「このっ……あ、アニキ……っ」
「自分より強いやつは、みぃーんなアニキかぁ? 弱いものいじめをして、強者には媚びる。人間の鑑だなぁ、オィ! その潔さを、別のことに使うべき――」
背後に明かりが灯る。無数の足音が聞こえる。振り返ると、いかつい男たちが、それはもう大量に集まっているじゃないか……。武器もあるよ!
「……謝ったら許してくれるかな」
「アニキはそんなに優しくねぇ。終わりだ。俺も……お前も……っ」
武装集団が二手に分かれ、男の花道を進むのは大柄の男。踏みしめる一歩一歩に自信が感じられる。こいつがボスで間違いない。
「兄弟の帰りが遅いから心配して見にくれば……随分と可愛がってくれたな」
落ち着いているなぁ。場数を踏んでいるのだろう。とはいえ、話し合いは望むところである。
「それは誤解だ。こいつが勝手に、壁を殴って腕を痛めただけさ。その証拠に、俺は武器を持っているが、抜いてない」
「……冒険者か。事情はなんとなく分かった。あんたが悪くなかろうと、こっちにも事情がある。タイマンで決着付けねぇか? 勝者がルールだ」
「ほ、本当にタイマンで勝てば、見逃してくれるのか?」
「あぁ、約束する。頭同士のタイマンだ。誰にも邪魔はさせねぇ」
だが断る。本家のように言えればクールなのだが、生憎とおじさんはかっこ悪いのである。だからこの提案には手放しで賛成だ。
取り巻きが広がり、輪を作る。その中に入るには、勇気が必要だ。だからミラちゃんに勇気づけて貰おうとしたら、路地裏に隠れて様子見てる。ちくしょう。やっぱりミラちゃんだわ。
「……安心しな、おっさん。何も殺しはしねぇ。スキルも使わねぇ。使うのは、一本の腕……ワンハンドシェイク・デスマッチだ」
お互いに握手をして、空いた手で殴り合う。倒れたほうが負け。響きは物騒だが、シンプルなルールで助かった。こっちの世界流の決闘だったら質問攻めから始まっていたからな。
「分かった。まずは握手だったな。利き手は、お互いに右だから、左っと」
「俺の仲間が、布を投げる。落ちたら開始だ」
取り巻きのひとりが前に出て、布切れを掲げる。手から布が離れ、地面に着いた……戦闘開始だ!!
「【闇の感覚】」
このスキルは、対象に触れることで発動できる。ご丁寧にもその状況を作ってくれるとは、棚ぼたってレベルじゃない。
奪ったのはもちろん、右腕の感覚だ。右足を強化したことになるが、この場合は問題ない。なにせ空いた腕だけを使って殴り合う。そういうルールだ。
そして、唯一の武器となる右腕が使えなければ、結果は決まっている。宙ぶらりんの右腕で、俺を殴れるもんならやってみな!
――なっ!? あいつ、スキルを使いやがった!?
汚いとか、卑怯だとか、罵倒が飛び交うが、それらはすべて負け犬の遠吠え……いや、負けたくないがための難癖だ。
「スキルを使わないなんて約束はしてない」
「な、舐めた真似してくれるじゃねぇか。ルールを破ったらどうなるか教えてや――」
「使ったとも言ってない。疑うなら、スキルを使ったって根拠は? 適当に言っただけかもしれないぞ?」
闇の感覚は、星の記憶によって得た未知のスキル。名前も効果も聞いたことがないはず。だからスキルを使ったという証拠にはならない。もっとも、屁理屈が通じる相手と状況ではないのだが。
――構いやしねぇ! やっちまおうぜ!!
「……待てっ!! テメェに聞きたいことがある。なぜ、俺を殴らない?」
「人を殴りたくないからだ。ルールは分かった。了承しなければ進まないとも思った。だからこそ、お前の突きつけてきたルールに、Noと返すぜ」
互いに殴れないこの喧嘩。決着は付かない。野郎の手を握るなんてヘドが出るが、ぶっ倒れるまで付き合ってやるよ。もし相手が断るなら、そのときは――。
「……折れるわけにはいかねぇ。決着が付くまで終わらねぇ」
「そうかな? 【闇の感覚】」
「テメェ……やっぱりスキルを……っ!?」
「脱糞する秘孔を突いた。クソ漏らす前に降参しろ」
ボスとは威厳の塊である。どれだけ格好をつけようと、クソを漏らせば話は別だ。
「そうそう、効果は永続だぞ。一ヶ月後……何人取り巻きが残っているかな?」
相手の苦悩、焦り……そういったものが、この距離なら伺える。しかし、曲がりなりにもヘッドを張っている以上、格好悪いことはできない。威厳を保ちつつ、降参する手立てはないか?
脳筋には浮かばない。だから降参できない。だったら、それを俺が与えてやればいい……。
「お前も強情だな。驚いた。大したもんだ。まさか自分がクソを漏らすことになっても、意地を張る度胸があるなんて。皆に慕われるわけだ。皆が慕うわけだ」
まずは褒める。めっちゃ褒める。これは取り巻きに良い印象を与えるための作戦である。お前たちが信じたボスは、ボス足り得ると褒めちぎるのだ。分裂されても困るしな。
「だけどさ、いつまでも付き合うほど、俺も暇じゃない。あんたが折れないなら、一日ごとに、ひとり。お前と同じ目に合うことになるぞ」
「なっ!? 仲間は関係ねぇ! ヘッド同士の喧嘩だ!」
「あんたがクソを漏らすごとに、仲間の信頼は薄れていく。そうすりゃあんたは、ヘッドじゃない。チンピラたちが勝手に動く前に、若い芽を摘んでおこうと思ってね?」
焦り、怒り、諦め、恐怖……異常な光景に、人は正気を保っていられない。膨れかがる感情×人数。爆発する前に諌めるのも、ボスの役割だと思うがね。
耳元で囁くと、握りしめていた手から力が抜けた。
「……降参だ。もうお前らには関わらない。約束する。それでも腹の虫が収まらないって言うなら、俺はどうなってもいい。仲間には手を出さないでくれ」
「よろしい。お前らのボスは喧嘩には負けたが、仲間思いの良いボスだ。心打たれたよ。だから、俺も約束を守る。あんたがこいつらを率いているうちは、こちらから手を出さない」
闇の感覚を解くと、あらゆる感情が静まっていく。ボスは頭を下げ、取り巻きとともにこの場を後にしようとするが、呼び止めた。
「最後に名前を聞かせてくれ。俺はクロノだ。どうせ呼べないから呼ばなくていい」
「……ロックだ」
振り返ることもなく、名を告げたあと、今度こそ立ち去ろうとするので、またしても声をかける。
「なぁ、ロック。お前ら近いうちに破滅するけど、頑張れよ」
「破滅!? まだ何かスキルが――」
「違うよ。勇者って知ってる? 魔王を倒す正義の味方なんだけど」
当然知っている。ただ、チンピラからすれば、湿気たチンピラをわざわざ勇者が倒しに来るはずがない。そう思っているので意味が分からないだろう。
「バタフライ効果って知ってる?」
――俺、知ってます! 急いで買って来ます!!
えっ? 売ってるの!? 売り物なの!?
――すいやせん! バターフライ、何本くらい食べますか!?
バターフライ!? ハイカロリーなあれ!? そうじゃな――。
「バカ野郎っ!!」
あぁ、よかったロックはちゃんと知ってるようだ。せっかくだしボスの口から説明させれば――。
「10本くらい買っとけ!! あの体型なら、それくらい食べるだろ!!」
「バカ野郎!! バターフライなんざ誰が食うか。俺はただのポーション太りだっ!!」
みんなして『こいつ何を言ってるんだ?』って顔してるけど、バタフライ効果のこと知らないって意味だよね? 体型にツッコまれたわけじゃないよね?
バタフライ効果は、些細なことをきっかけに、大きな現象に発展することだ。
これは知らないらしい。だから状況を整理して教えてあげよう。取り巻きから短剣を借りて、地面に書いていく……。
勇者強い。魔王倒す。国はその力が欲しい。姫と結婚させる。勇者にもっとハクをつけたい。王都のチンピラを倒させる。びびった悪党が逃げる。王都以外で縄張り争いが始まる。田舎のアルバに流れ着く。
「ってことだけど、王都のチンピラよりお前ら強いの?」
「こうしちゃいられねぇ。すぐに戦力をかき集めて――」
「武力はさらなる武力に飲まれる。現に、俺に負けただろ」
「別に、喧嘩で負けたわけじゃ……」
「余計にダメだろ。俺のゴミみたいな屁理屈に、なんやかんや負けたんだから」
『得体のしれないスキルから、クソみたいな屁理屈。落差が酷すぎて、混乱するのもムリないよ』
現状、こいつらの未来は二通りある。力を持たずに外敵に飲まれるか、力を持って危険分子とみなされて衛兵に排除される。どっちにしても詰んでる。
「そんなわけで、チンピラ行為は止めて、おじさんのように清く正しく美しく生きることをオススメするぜ」
俺の中で話は終わった。むさ苦しい集団と同じ空気を吸う理由はない。隠れていたミラちゃんを担ぎ上げ、撤退あるのみである。グッバイチンピラ。
「あのっ、そろそろ降ろしてくださいよっ」
「腰が抜けて歩けないかと思ってね。余計な気遣いだったようだ」
「えっ、その……ありがとうございます。もう大丈夫です」
嘘だけどな! 合法的にセクハラしたかったんだよな。野郎と交わした握手で汚れた右手は、美女の柔肌で浄化する。これ常識である。
危機は去ったが、夜道は危ない。どすけべおじさんが家まで送ってあげる。久々に顔を見たことだし、ついでに世間話といこう。
「なんだか、凄く久々じゃね? 元気してた?」
「……ふふっ、私は売れっ子ですから。北へ南へ大忙しでしたよ」
「おぉー、凄いね。で、本当のところは?」
「嘘じゃないですよ。その筋の人から大人気です。ただ、ちょっと人気が出すぎてですね、身請けを迫られて、身の危険を感じて次の町へ……そんな感じで、帰ってきてたんですよ」
きっとベッドの上で、ちんちんしゃぶらせながら、鼻息荒く言ったんだろうなぁ。ミラちゃんは見た目はロリだけど、中身はお金大好きのおっさんだからな。俺と妙に気が合うから間違いない。
「男を手玉に取ってこそ、いい女さ。とはいえ、さっきはどうして首を振ったんだい? 一緒に謝りに行くとか、ナチュラルに煽ってたし」
「えーっとですね、おじさんに頼りたくなかったので……」
「おや? 反抗期かな。思い返せば、ティミちゃんからミラちゃんの話ってほとんど出なかったなぁ。今回のこともそうだけど、距離を置きたいならひとりで帰ってもいいよ」
そして帰ろうとするミラちゃんを大金で引き止める。金に目がくらんだミラちゃんは、大嫌いなおじさんのチンポをしゃぶる、と……興奮してきた。
「そうじゃないんですよ! その、おじさんに頼ったら、また大怪我するんじゃないかって……もうあんな姿は見たくないですし……」
大怪我……? あぁ、シャドウウルフにバーベキューされたことか。つまり、必死過ぎてキモい。スマートに助けろってことか。ファットマンに高望みしすぎだぜ。
「だから、自分の力で切り抜けようとしたんです。怖くて泣いちゃいましたけど」
「……そっか。変わったんだね。自分とお金が大好きな純粋な女の子だったのに」
「だから違いますってば!? 私にだって良心くらいありますよっ」
「うんうん、冗談だよ。ミラちゃんは良い子だからね」
「鼻ほじりながら言うの止めてくれますか!?」
暗い夜道も誰かと歩けば怖くない。ミラちゃんもらしさが戻ってきてるし、同じ考えだろう。
「とにかく! また助けられてしまったことですし、お礼に今晩どうですか? 大人気すーぱー美少女のミラちゃんが、たったの銀貨1枚です」
「買います!! 値段に釣り合うサービス期待しちゃうねぇ」
「フフフ……雨漏りも直しましたし、隙間風もカット。ベッドだって新調して、ふかふかなんですよ!」
ほほぅ。稼いだ金であのボロ宿を少しずつ改修しているのか。楽しみすぎる。
そして、見えてきたボロ宿は、ボロ宿のままだった。このボロさには味がある。発展途上国で女を買い漁っているようで、気分がいい。どこぞの校長先生には負けるが。
「あっ、ボロいままって思いましたね!? 大事なのは中身です。私と一緒です。さぁさぁ、1名様ごあんなーいっ」
ミラちゃんの魅力は、外見だと思うけどね。まぁ、言葉にはしないけど。合法ロリのサービス、堪能するとしますか。
あとがき
次は100話の節目です(さむお基準)
なんか節目とか考えなかったら週2更新できたんじゃねぇ?
1話の容量は増えたけど抑えようとしてところどころはしょってるしろくなもんじゃねぇわ
自分の計画性のなさを棚に上げて世界に間違ってるとワイルドに吠えるぜ
次はエロ回。すげー久々のエロ回。
俺の答えはもちろん、見なかったことにする、である。ヤンキー怖いし。
『うーん、このクズ』
そう思ったそこのあなた。ちょっと待って欲しい。本当に襲われているのだろうか? 実は、そういうプレイなのではなかろうか?
人通りの多い道で声をかけられ、誰だかよく知らないけど知人っぽい空気だから手を挙げて返事したら、相手は後ろのやつに話しかけていた。なんてことが平然と起こる世の中である。
もしあれがプレイなら、誰も得しない。よって、俺は静かに距離を詰めて様子を伺うのである。早くチューしろ。まず口を開けるんだ。
「こ、困ります。もういい加減にしてください」
「こっちも困ってんだよ。あんたを守ってやったんだから、お礼はちゃんといただかないとなぁ。大人に教わらなかったか?」
なるほど! 体で払えってシチュエーションか! 古典的だが悪くない。相手の弱みにつけ込んむほど、物事はスムーズに進むからな。まさに大人の嗜みだ。
「守ったって……勝手に着いてきただけじゃないですか。迷惑してるって、他の娼婦の人も言ってましたよ」
ほぅ、ストーカー的なキャラ設定か? それなら、拉致監禁陵辱レイプと相場は決まっている。せめて黒い布で目隠しして、雰囲気を出すべき。
「踏み倒そうってか? そうはいかねぇ! 俺がアニキにシメられちまう」
「一緒に謝ってあげますから、諦めてくださいよ……」
おぉ、3Pだな。大柄な男ふたりにされるがままの少女か。いいね! 興奮しちゃう。
「ふざけんじゃねぇ! この町でウリ出来ないようにしてやろうか!?」
なるほど。一人二役か。二度美味しいじゃん。あいつまじ天才じゃね?
「許可なんて必要ないです。元から非認可娼婦なんですから……いい加減にしないと、大声出しますよ……」
そして激情した男は、少女の細い腕を掴んでハイ○ースして、薄暗い地下室に――。
「あんまりゴネると、お前の大事なお友達が不幸な目に合うかもしれねぇなぁ」
「と、友達は関係ないです。巻き込まないでください……」
「脅しで済む方法は、もう分かったよな? それとも、薄汚い娼婦は、自分の体だけじゃなくて、ダチまで売っちまうのかぁ?」
過激な言葉を使うじゃないか。プレイには節度が必要だぞ。それにしても、ミラちゃんの泣き真似は上手いな……あれ? ひょっとして、ガチじゃね?
『プレイだと思ったのは、心の汚れたキミだけだよ』
本格的なプレイの可能性だってまだある。何より、相手の男は怖すぎる。丸坊主に剃りこみ入ってるし、ピアスとか付けてるし。首にある模様ってタトゥーじゃね? ヤンキーじゃん。こ、怖すぎる……。
『ほら、はよはよ。何かして』
相棒の無茶振りがキツい。でもいい泣き顔みせてくれたしなぁ。お礼に助けるのが道理ってもんだよなぁ。しょうがない。腹をくくるぞ!
「待ちたまえ(裏声)」
「……あぁ? 何だぁテメェ。この女の知り合いか?」
ミラちゃんと目が合う。くしゃりと顔を歪めて、涙を堪えながら首を振っている。関わるなってことか? やべぇ状況に置かれているのに、俺の身を案じるほど、やべぇ相手ってことだな……? ど、どうしよう……。
「眷属よ、我が魂を喰ら――」
『だが断る。あのねぇ! 命と同等のレベルを、あんなやつに使うことないでしょ!!』
まさか断られるとは思っていなかった。この契約、ナイトメア有利すぎ。いつか抜本的な改善を求めて抗議活動を――。
「そこのブサイクなおっさん! テメェは、こいつの、知り合いか!?」
胸ぐら掴まれちゃった。腕太すぎでしょ。タトゥ多すぎだし。眉毛ないじゃん。やべぇよ、これガチなやつだよ。ヤンキーだよ。おやじ狩りだよ……。
しょうがない。ボコられるか。ミラちゃんと一緒に……。
許可を得るべく、涙を堪えるミラちゃんに目線を送る。すると、またしても首を横に振る。何だこれ……。もう正直に答えるしかないか……。
「し、知り合いかと思ったけど、人違いだったようだ。だって俺の知ってる小人族のミラちゃんは、自分とお金が大好きで、誰かを守るために自分を犠牲にする人間じゃない」
「おじさーん!? 私のこと何だと思ってるんですかっ!?」
「あっ、やっぱりミラちゃんだ」
苛ついていた男が、ニヤリと笑った。嫌な予感がするぞ……。
「知り合いなら話は早い。この女が、俺に借りがある。こいつの代わりに、お前に払ってもらう。嫌だって言ったら、どうなるか分かるよな?」
つまり金を出せと。どれだけ怖くても、ボコボコに殴られても、金を渡してはいけない。骨の髄までしゃぶりつくされる。何なら、医療費のほうが安くつく。
「だが断る。このクロノ・ノワール。楽な交渉だと思ってる相手を、しこたま困らせることを至上の喜びとしている」
『ただのクズ』
男から表情が消えた。握りしめられた拳が、俺の頬に打ち付けられる。ショックで頭が真っ白になった。
殴られた? 俺は殴られたのか? なぜだ?
殴られたのに、これがちっとも痛くない。子供に叩かれた程度の痛みだ。
「……ひょっとして、ドッキリ!? カメラどこ!? うわっ、まじで引っかかったよ。恥ずかしいぃぃぃっ」
「俺のパンチを受けて、強がりを言う気力があるとはなぁ。見た目通りのタフ野郎が、何秒持つか見ものだなっ!」
「とっ、友達には手を出さないって言ったじゃないですかっ!!」
「言ってねぇよ! オラッ、オラァッ!!」
やはりおかしい。そもそも、相手のパンチの軌道って、普通は見えなくね? おじさんはボクサーじゃないし、相手が手を抜いてるのだ。ミラちゃんはガチで心配してくれるが、やっぱり痛くないし、ドッキリじゃないなら何なんだ!?
「はぁはぁ、テメェ……まさかタンクか」
「いや、魔術師だけど……」
「嘘付くんじゃねぇ! 魔術師がこんなに硬いわけあるかっ!」
硬い? ポーション太りで脂肪に覆われたこの俺が硬いだと? もし、相手のパンチが本気だとして、この状況がドッキリじゃないなら、答えはひとつ。
レベルによるステータスの差。相手の筋力を、俺の頑強が大幅に上回っているのか……? 試す価値はある!
「ねぇ、いつ殴るの? ほら、ここだよ。ほっぺたにガツンとさ、ご自慢の怪力をぶつけないのか? んっ? んんっ?」
~旬の言葉に、変顔を添えて。やんちゃ小僧仕立て~ 煽りのオードブルとしちゃ悪くない。
「……死んだぞテメェ!!」
何発殴られても、元気なんだなこれが。避けるのも簡単すぎる。わざと後ろに下がって、直前で回避する。建物の壁を殴って悶える姿は滑稽である。
拳を抑えて怯んでいる男の横に立ち、顔を覗き込む。顔を歪めて、冷や汗を流している。間違いなく、勝機だ。だがおじさんは優しいので、弱いものいじめはしない。
「死んだぞテメェ……ふふっ。死んだぞテメェ、だってさ。あーっはっはっは! 生きてるぞ!? どうした!? お腹痛いのか!? 俺も痛いんだよ。笑いすぎて腹が痛ぇよ!?」
「このっ……あ、アニキ……っ」
「自分より強いやつは、みぃーんなアニキかぁ? 弱いものいじめをして、強者には媚びる。人間の鑑だなぁ、オィ! その潔さを、別のことに使うべき――」
背後に明かりが灯る。無数の足音が聞こえる。振り返ると、いかつい男たちが、それはもう大量に集まっているじゃないか……。武器もあるよ!
「……謝ったら許してくれるかな」
「アニキはそんなに優しくねぇ。終わりだ。俺も……お前も……っ」
武装集団が二手に分かれ、男の花道を進むのは大柄の男。踏みしめる一歩一歩に自信が感じられる。こいつがボスで間違いない。
「兄弟の帰りが遅いから心配して見にくれば……随分と可愛がってくれたな」
落ち着いているなぁ。場数を踏んでいるのだろう。とはいえ、話し合いは望むところである。
「それは誤解だ。こいつが勝手に、壁を殴って腕を痛めただけさ。その証拠に、俺は武器を持っているが、抜いてない」
「……冒険者か。事情はなんとなく分かった。あんたが悪くなかろうと、こっちにも事情がある。タイマンで決着付けねぇか? 勝者がルールだ」
「ほ、本当にタイマンで勝てば、見逃してくれるのか?」
「あぁ、約束する。頭同士のタイマンだ。誰にも邪魔はさせねぇ」
だが断る。本家のように言えればクールなのだが、生憎とおじさんはかっこ悪いのである。だからこの提案には手放しで賛成だ。
取り巻きが広がり、輪を作る。その中に入るには、勇気が必要だ。だからミラちゃんに勇気づけて貰おうとしたら、路地裏に隠れて様子見てる。ちくしょう。やっぱりミラちゃんだわ。
「……安心しな、おっさん。何も殺しはしねぇ。スキルも使わねぇ。使うのは、一本の腕……ワンハンドシェイク・デスマッチだ」
お互いに握手をして、空いた手で殴り合う。倒れたほうが負け。響きは物騒だが、シンプルなルールで助かった。こっちの世界流の決闘だったら質問攻めから始まっていたからな。
「分かった。まずは握手だったな。利き手は、お互いに右だから、左っと」
「俺の仲間が、布を投げる。落ちたら開始だ」
取り巻きのひとりが前に出て、布切れを掲げる。手から布が離れ、地面に着いた……戦闘開始だ!!
「【闇の感覚】」
このスキルは、対象に触れることで発動できる。ご丁寧にもその状況を作ってくれるとは、棚ぼたってレベルじゃない。
奪ったのはもちろん、右腕の感覚だ。右足を強化したことになるが、この場合は問題ない。なにせ空いた腕だけを使って殴り合う。そういうルールだ。
そして、唯一の武器となる右腕が使えなければ、結果は決まっている。宙ぶらりんの右腕で、俺を殴れるもんならやってみな!
――なっ!? あいつ、スキルを使いやがった!?
汚いとか、卑怯だとか、罵倒が飛び交うが、それらはすべて負け犬の遠吠え……いや、負けたくないがための難癖だ。
「スキルを使わないなんて約束はしてない」
「な、舐めた真似してくれるじゃねぇか。ルールを破ったらどうなるか教えてや――」
「使ったとも言ってない。疑うなら、スキルを使ったって根拠は? 適当に言っただけかもしれないぞ?」
闇の感覚は、星の記憶によって得た未知のスキル。名前も効果も聞いたことがないはず。だからスキルを使ったという証拠にはならない。もっとも、屁理屈が通じる相手と状況ではないのだが。
――構いやしねぇ! やっちまおうぜ!!
「……待てっ!! テメェに聞きたいことがある。なぜ、俺を殴らない?」
「人を殴りたくないからだ。ルールは分かった。了承しなければ進まないとも思った。だからこそ、お前の突きつけてきたルールに、Noと返すぜ」
互いに殴れないこの喧嘩。決着は付かない。野郎の手を握るなんてヘドが出るが、ぶっ倒れるまで付き合ってやるよ。もし相手が断るなら、そのときは――。
「……折れるわけにはいかねぇ。決着が付くまで終わらねぇ」
「そうかな? 【闇の感覚】」
「テメェ……やっぱりスキルを……っ!?」
「脱糞する秘孔を突いた。クソ漏らす前に降参しろ」
ボスとは威厳の塊である。どれだけ格好をつけようと、クソを漏らせば話は別だ。
「そうそう、効果は永続だぞ。一ヶ月後……何人取り巻きが残っているかな?」
相手の苦悩、焦り……そういったものが、この距離なら伺える。しかし、曲がりなりにもヘッドを張っている以上、格好悪いことはできない。威厳を保ちつつ、降参する手立てはないか?
脳筋には浮かばない。だから降参できない。だったら、それを俺が与えてやればいい……。
「お前も強情だな。驚いた。大したもんだ。まさか自分がクソを漏らすことになっても、意地を張る度胸があるなんて。皆に慕われるわけだ。皆が慕うわけだ」
まずは褒める。めっちゃ褒める。これは取り巻きに良い印象を与えるための作戦である。お前たちが信じたボスは、ボス足り得ると褒めちぎるのだ。分裂されても困るしな。
「だけどさ、いつまでも付き合うほど、俺も暇じゃない。あんたが折れないなら、一日ごとに、ひとり。お前と同じ目に合うことになるぞ」
「なっ!? 仲間は関係ねぇ! ヘッド同士の喧嘩だ!」
「あんたがクソを漏らすごとに、仲間の信頼は薄れていく。そうすりゃあんたは、ヘッドじゃない。チンピラたちが勝手に動く前に、若い芽を摘んでおこうと思ってね?」
焦り、怒り、諦め、恐怖……異常な光景に、人は正気を保っていられない。膨れかがる感情×人数。爆発する前に諌めるのも、ボスの役割だと思うがね。
耳元で囁くと、握りしめていた手から力が抜けた。
「……降参だ。もうお前らには関わらない。約束する。それでも腹の虫が収まらないって言うなら、俺はどうなってもいい。仲間には手を出さないでくれ」
「よろしい。お前らのボスは喧嘩には負けたが、仲間思いの良いボスだ。心打たれたよ。だから、俺も約束を守る。あんたがこいつらを率いているうちは、こちらから手を出さない」
闇の感覚を解くと、あらゆる感情が静まっていく。ボスは頭を下げ、取り巻きとともにこの場を後にしようとするが、呼び止めた。
「最後に名前を聞かせてくれ。俺はクロノだ。どうせ呼べないから呼ばなくていい」
「……ロックだ」
振り返ることもなく、名を告げたあと、今度こそ立ち去ろうとするので、またしても声をかける。
「なぁ、ロック。お前ら近いうちに破滅するけど、頑張れよ」
「破滅!? まだ何かスキルが――」
「違うよ。勇者って知ってる? 魔王を倒す正義の味方なんだけど」
当然知っている。ただ、チンピラからすれば、湿気たチンピラをわざわざ勇者が倒しに来るはずがない。そう思っているので意味が分からないだろう。
「バタフライ効果って知ってる?」
――俺、知ってます! 急いで買って来ます!!
えっ? 売ってるの!? 売り物なの!?
――すいやせん! バターフライ、何本くらい食べますか!?
バターフライ!? ハイカロリーなあれ!? そうじゃな――。
「バカ野郎っ!!」
あぁ、よかったロックはちゃんと知ってるようだ。せっかくだしボスの口から説明させれば――。
「10本くらい買っとけ!! あの体型なら、それくらい食べるだろ!!」
「バカ野郎!! バターフライなんざ誰が食うか。俺はただのポーション太りだっ!!」
みんなして『こいつ何を言ってるんだ?』って顔してるけど、バタフライ効果のこと知らないって意味だよね? 体型にツッコまれたわけじゃないよね?
バタフライ効果は、些細なことをきっかけに、大きな現象に発展することだ。
これは知らないらしい。だから状況を整理して教えてあげよう。取り巻きから短剣を借りて、地面に書いていく……。
勇者強い。魔王倒す。国はその力が欲しい。姫と結婚させる。勇者にもっとハクをつけたい。王都のチンピラを倒させる。びびった悪党が逃げる。王都以外で縄張り争いが始まる。田舎のアルバに流れ着く。
「ってことだけど、王都のチンピラよりお前ら強いの?」
「こうしちゃいられねぇ。すぐに戦力をかき集めて――」
「武力はさらなる武力に飲まれる。現に、俺に負けただろ」
「別に、喧嘩で負けたわけじゃ……」
「余計にダメだろ。俺のゴミみたいな屁理屈に、なんやかんや負けたんだから」
『得体のしれないスキルから、クソみたいな屁理屈。落差が酷すぎて、混乱するのもムリないよ』
現状、こいつらの未来は二通りある。力を持たずに外敵に飲まれるか、力を持って危険分子とみなされて衛兵に排除される。どっちにしても詰んでる。
「そんなわけで、チンピラ行為は止めて、おじさんのように清く正しく美しく生きることをオススメするぜ」
俺の中で話は終わった。むさ苦しい集団と同じ空気を吸う理由はない。隠れていたミラちゃんを担ぎ上げ、撤退あるのみである。グッバイチンピラ。
「あのっ、そろそろ降ろしてくださいよっ」
「腰が抜けて歩けないかと思ってね。余計な気遣いだったようだ」
「えっ、その……ありがとうございます。もう大丈夫です」
嘘だけどな! 合法的にセクハラしたかったんだよな。野郎と交わした握手で汚れた右手は、美女の柔肌で浄化する。これ常識である。
危機は去ったが、夜道は危ない。どすけべおじさんが家まで送ってあげる。久々に顔を見たことだし、ついでに世間話といこう。
「なんだか、凄く久々じゃね? 元気してた?」
「……ふふっ、私は売れっ子ですから。北へ南へ大忙しでしたよ」
「おぉー、凄いね。で、本当のところは?」
「嘘じゃないですよ。その筋の人から大人気です。ただ、ちょっと人気が出すぎてですね、身請けを迫られて、身の危険を感じて次の町へ……そんな感じで、帰ってきてたんですよ」
きっとベッドの上で、ちんちんしゃぶらせながら、鼻息荒く言ったんだろうなぁ。ミラちゃんは見た目はロリだけど、中身はお金大好きのおっさんだからな。俺と妙に気が合うから間違いない。
「男を手玉に取ってこそ、いい女さ。とはいえ、さっきはどうして首を振ったんだい? 一緒に謝りに行くとか、ナチュラルに煽ってたし」
「えーっとですね、おじさんに頼りたくなかったので……」
「おや? 反抗期かな。思い返せば、ティミちゃんからミラちゃんの話ってほとんど出なかったなぁ。今回のこともそうだけど、距離を置きたいならひとりで帰ってもいいよ」
そして帰ろうとするミラちゃんを大金で引き止める。金に目がくらんだミラちゃんは、大嫌いなおじさんのチンポをしゃぶる、と……興奮してきた。
「そうじゃないんですよ! その、おじさんに頼ったら、また大怪我するんじゃないかって……もうあんな姿は見たくないですし……」
大怪我……? あぁ、シャドウウルフにバーベキューされたことか。つまり、必死過ぎてキモい。スマートに助けろってことか。ファットマンに高望みしすぎだぜ。
「だから、自分の力で切り抜けようとしたんです。怖くて泣いちゃいましたけど」
「……そっか。変わったんだね。自分とお金が大好きな純粋な女の子だったのに」
「だから違いますってば!? 私にだって良心くらいありますよっ」
「うんうん、冗談だよ。ミラちゃんは良い子だからね」
「鼻ほじりながら言うの止めてくれますか!?」
暗い夜道も誰かと歩けば怖くない。ミラちゃんもらしさが戻ってきてるし、同じ考えだろう。
「とにかく! また助けられてしまったことですし、お礼に今晩どうですか? 大人気すーぱー美少女のミラちゃんが、たったの銀貨1枚です」
「買います!! 値段に釣り合うサービス期待しちゃうねぇ」
「フフフ……雨漏りも直しましたし、隙間風もカット。ベッドだって新調して、ふかふかなんですよ!」
ほほぅ。稼いだ金であのボロ宿を少しずつ改修しているのか。楽しみすぎる。
そして、見えてきたボロ宿は、ボロ宿のままだった。このボロさには味がある。発展途上国で女を買い漁っているようで、気分がいい。どこぞの校長先生には負けるが。
「あっ、ボロいままって思いましたね!? 大事なのは中身です。私と一緒です。さぁさぁ、1名様ごあんなーいっ」
ミラちゃんの魅力は、外見だと思うけどね。まぁ、言葉にはしないけど。合法ロリのサービス、堪能するとしますか。
あとがき
次は100話の節目です(さむお基準)
なんか節目とか考えなかったら週2更新できたんじゃねぇ?
1話の容量は増えたけど抑えようとしてところどころはしょってるしろくなもんじゃねぇわ
自分の計画性のなさを棚に上げて世界に間違ってるとワイルドに吠えるぜ
次はエロ回。すげー久々のエロ回。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
147
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる