養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第47話 追いかけて来た夫③
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しばらくすると、工房長が来るよりも先にヨハンが現れて、うちの野菜です、と、野菜を大量に置いて行ってくれた。
こんなにたくさん、一度に食べきれるかしら?私、ヨハンにどれだけ食べると思われているのかしら。まあ、しばらくモデルも来ることだし、料理して振る舞えばいいわね。
野菜を片付けていると、工房長とアルベルトがやって来た。さっそく工房長には椅子に座ってもらい、アルベルトには工房長の肩に手を置いてもらった。
ようやくこの構図が正確に取れるわね。
私は全体の輪郭線から描き進めていった。
ある程度描いたところで、いったん昼休憩にしようということになり、アルベルトと工房長は自宅へと戻って行った。
「──やっぱり、まだ描いてる。」
昼食も取らずに、一心不乱に描き進めてた私に、後ろから笑うような声が聞こえる。
アルベルトだった。
手にふきんを被せたお皿のようなものを持って、ふふふ、と楽しそうに笑っている。
「あら、つい夢中になってしまって。」
「そう思って、片手で食べられる物にした。
母さんもそうやってよく、食べるのを忘れて絵を描いてた。」
そう言って、ふきんを外して、その下のサンドイッチを見せてくれた。
「そう、お母さまも、よほど絵がお好きだったのね。食事を忘れてしまうくらいに。」
「うん、絵が好き過ぎて、画材工房の近くに引っ越してくるくらい。それで父さんと知り合って、結婚したって言ってた。」
「この村の方ではなかったの?」
「絵を描いて旅をしてたって。ここの画材が気に入って、引っ越して来たって。──アデリナブルーは母さんの為に作ったんだ。」
「アデリナ嬢の為じゃなかったの?」
「よく使ってくれるから、そう呼ばれるようになっただけ。うちの絵の具の大半は、母さんの為に父さんが作ったんだ。」
「そうだったのね……。」
「いつか、あなたの為の絵の具を作りたい。
表現したい色があったら教えて。」
「私の為に絵の具を作ってくれるの?そうねえ、欲しい色が出来たら教えるわ。」
「うん。楽しみにしてる。」
アルベルトはそう言って目を細めた。
私はいただいたサンドイッチを左手でつまみながら、ひたすら絵を描き続けた。
アルベルトにお茶を淹れれば良かったかしら、と頭の片隅で思いつつ。
「──こんなところにいたのか。
ここで何をしている。」
そこに低い声が響いた。
振り返るとそこに──イザークがいた。
腕組みをしながら、開放されたアトリエの入口に仁王立ちしている。
「あなたこそ……。何をしているの?」
「お前が行けるところなんて限られているからな。どうせアンのところだろうと思って立ち寄ったらいないと言う。少なくともこの近くにいるだろうと思って捜してみたんだ。」
捜す?私を?イザークが?なんの為に?
追い出しておいて今更、連れ帰ろうとでも言うの?私が固まっていると、
「だいたい、どうして庭にいなかったんだ。
てっきり庭で震えてるものかと思ったら、どこにもお前の姿がなかった。」
「……あなたが私を追い出したんでしょう?
だから辻馬車を拾ってここに来たのよ。」
「辻馬車だと?あんな危ないものに……!」
「夜中に1人で荷物ごと放り出されたのよ?
泊まれる場所を捜すしかないじゃない!」
「私はしつけ、と言った。本気で放り出すつもりがないことくらいわかるだろう!」
「わからないわよ!私は怖かったわ!……だからここに来るしかなかったんじゃない。」
「はあ……。もういいだろう、少しは頭が冷えたことだろう。帰るぞ。」
「……何を……言っているの……?
帰らないわよ私は。
離婚しましょうと言ったでしょう?
ここに家も借りたし、今引き受けている仕事もあるの。私はあなたに用はないわ。」
「なんだと?」
「話し合いなら離婚について以外お断りよ。
わかったらさっさと帰って……。
──どうしたの?」
突然こわばった表情で固まってしまったイザークに、私は困惑して首をかしげた。
イザークの足元に、真っ赤なリボンをつけたザジーがすり寄っている。
……猫、苦手なのかしら?そう思ったのも束の間、ハァハァと苦しげな荒い息を繰り返して、イザークが胸元をおさえたかと思うと、地面にぐらりと倒れ込んでしまった。
「イザーク!?」
「……雑種の……何が悪い……。」
謎の言葉を呟いて、イザークはそのまま意識を失ってしまった。
────────────────────
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こんなにたくさん、一度に食べきれるかしら?私、ヨハンにどれだけ食べると思われているのかしら。まあ、しばらくモデルも来ることだし、料理して振る舞えばいいわね。
野菜を片付けていると、工房長とアルベルトがやって来た。さっそく工房長には椅子に座ってもらい、アルベルトには工房長の肩に手を置いてもらった。
ようやくこの構図が正確に取れるわね。
私は全体の輪郭線から描き進めていった。
ある程度描いたところで、いったん昼休憩にしようということになり、アルベルトと工房長は自宅へと戻って行った。
「──やっぱり、まだ描いてる。」
昼食も取らずに、一心不乱に描き進めてた私に、後ろから笑うような声が聞こえる。
アルベルトだった。
手にふきんを被せたお皿のようなものを持って、ふふふ、と楽しそうに笑っている。
「あら、つい夢中になってしまって。」
「そう思って、片手で食べられる物にした。
母さんもそうやってよく、食べるのを忘れて絵を描いてた。」
そう言って、ふきんを外して、その下のサンドイッチを見せてくれた。
「そう、お母さまも、よほど絵がお好きだったのね。食事を忘れてしまうくらいに。」
「うん、絵が好き過ぎて、画材工房の近くに引っ越してくるくらい。それで父さんと知り合って、結婚したって言ってた。」
「この村の方ではなかったの?」
「絵を描いて旅をしてたって。ここの画材が気に入って、引っ越して来たって。──アデリナブルーは母さんの為に作ったんだ。」
「アデリナ嬢の為じゃなかったの?」
「よく使ってくれるから、そう呼ばれるようになっただけ。うちの絵の具の大半は、母さんの為に父さんが作ったんだ。」
「そうだったのね……。」
「いつか、あなたの為の絵の具を作りたい。
表現したい色があったら教えて。」
「私の為に絵の具を作ってくれるの?そうねえ、欲しい色が出来たら教えるわ。」
「うん。楽しみにしてる。」
アルベルトはそう言って目を細めた。
私はいただいたサンドイッチを左手でつまみながら、ひたすら絵を描き続けた。
アルベルトにお茶を淹れれば良かったかしら、と頭の片隅で思いつつ。
「──こんなところにいたのか。
ここで何をしている。」
そこに低い声が響いた。
振り返るとそこに──イザークがいた。
腕組みをしながら、開放されたアトリエの入口に仁王立ちしている。
「あなたこそ……。何をしているの?」
「お前が行けるところなんて限られているからな。どうせアンのところだろうと思って立ち寄ったらいないと言う。少なくともこの近くにいるだろうと思って捜してみたんだ。」
捜す?私を?イザークが?なんの為に?
追い出しておいて今更、連れ帰ろうとでも言うの?私が固まっていると、
「だいたい、どうして庭にいなかったんだ。
てっきり庭で震えてるものかと思ったら、どこにもお前の姿がなかった。」
「……あなたが私を追い出したんでしょう?
だから辻馬車を拾ってここに来たのよ。」
「辻馬車だと?あんな危ないものに……!」
「夜中に1人で荷物ごと放り出されたのよ?
泊まれる場所を捜すしかないじゃない!」
「私はしつけ、と言った。本気で放り出すつもりがないことくらいわかるだろう!」
「わからないわよ!私は怖かったわ!……だからここに来るしかなかったんじゃない。」
「はあ……。もういいだろう、少しは頭が冷えたことだろう。帰るぞ。」
「……何を……言っているの……?
帰らないわよ私は。
離婚しましょうと言ったでしょう?
ここに家も借りたし、今引き受けている仕事もあるの。私はあなたに用はないわ。」
「なんだと?」
「話し合いなら離婚について以外お断りよ。
わかったらさっさと帰って……。
──どうしたの?」
突然こわばった表情で固まってしまったイザークに、私は困惑して首をかしげた。
イザークの足元に、真っ赤なリボンをつけたザジーがすり寄っている。
……猫、苦手なのかしら?そう思ったのも束の間、ハァハァと苦しげな荒い息を繰り返して、イザークが胸元をおさえたかと思うと、地面にぐらりと倒れ込んでしまった。
「イザーク!?」
「……雑種の……何が悪い……。」
謎の言葉を呟いて、イザークはそのまま意識を失ってしまった。
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