養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第20話 失礼な異国の冒険者①
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私は王立図書館で探しものがあったのだ。レオンハルト様と魔物の絵を描きに行くためには、必ず必要になるもの。
いくらレオンハルト様が守って下さるとは言っても、無防備に絵を描いている私を守りながらというのは難しい筈よ。私は私に出来ることを1つでも増やしておきたかった。
身分証明書を提示して、必要な本の場所を司書に尋ねると、持ち出し禁止のものが多かったけれど、王立図書館の敷地内であればどこで読んでも自由だと言われた。やったわ!
王立図書館の敷地内には、併設されたオシャレなカフェと、──広い中庭があるのだ。
周囲を建物に囲まれながらも、日が当たるようになっていて、草木が生い茂る美しい光景。本で目が疲れた人が、緑で目を休める為なのかしら。ベンチがあちこちに置かれていて、そこで本を読む人、休む人。絵を描いている人もいた。私の狙いはそれだった。
それにしても素敵ね。青々と茂った木々も魅力的だけれど、枯れ葉のシーズンに来たらどんなにか美しいだろうか。ベンチの横に立つ背の高い樹木から降り注ぐ、あの葉っぱたちが落ち葉に変わり、黄色、茶色、赤色の枯れ葉に埋め尽くされた絨毯のような足元を、ゆっくりと踏んでベンチに腰掛けて、本を読んだり絵を描いたりするのだ。
受付の窓から見えるベンチの後ろの窓越しの本棚や、本を読み耽る人々の姿も味わい深い。ここはとてもまったりとした時間が流れていて、時間を忘れてゆっくりしたくなる。
今度ゆっくりお茶をしに来ようかしら。
1人になればいくらでも、好きな時に好きなように外出が出来るようになるものね。
今日の目的はここでのんびり過ごすことではないから、それほどゆっくりもしていられないのだけれど。
受付の周辺には、冒険者らしき人の姿もチラホラ見かけた。平民で王立図書館に来るのは、そのほとんどが冒険者だ。
皮の鎧を身につけているから、見た目でそうと、誰でもすぐに分かる。平民には学校がないから、ここで必要なことを学ぼうとする人も多いのだとか。だけど平民の識字率は低いから、お目当てのものはだいたい決まっているんですよ、と司書が教えてくれた。
たぶん私の借りた本がそのお目当てだったのだろう、借りた本を手に中庭に移動して、イーゼルを2つ立てて本を置き、ベンチに腰掛け絵を描いていると、王立図書館の窓ガラス越しに、何やら視線を感じた気がして振り返った瞬間、皮の鎧を身に着けた赤髪の冒険者の女性と、バッチリ目があってしまった。
あっ、それっ!とでも言いたげな表情で口を開けて、じっとこっちを睨んでいる。
ちょっとおっかなそうな女性ね……。
ごめんなさいね、すぐに本棚には戻せそうもないわ。別に1人につき貸し出し時間が決まっているわけではないし、今日は諦めたほうがいいかも知れないわよ?
それに多分あなた、この本を借りられないでしょうし。あきらめて他をあたってちょうだいね。私は彼女に背を向けて、絵を描くことに集中した。それにしてもいい天気。日当たりが優しくてとても気持ちがいいわ。それにまったく風がないわけでもないのね。
ほとんど凹の形に建てられた、王立図書館の凹みの部分にあるカフェの人たちが、中庭を眺めながらお茶を楽しんでいる。
だから中庭で絵を描いている私の姿も観察されているのだけれど、気にしたら負けだ。
別に私は彼らにとって、ただの風景の一部だものね。私も逆の立場ならそうだろうし。
そんな風に思いながら中庭で絵を描いていると、集中していて気が付かなかったのだけれど、いつの間にか後ろに人が近付いて来ていたらしく、──突然パッと、私が借りた本をイーゼルから奪った人物がいた。
あまりに突然のことで、また予想外過ぎて何が起きたのか分からない。
「──え?」
本が、ないわ?
しばらく混乱していたが、すぐに奪われたのだと気が付き、慌てて後ろを振り返ると、まるでそれが当たり前かのように、本を持ってのんびりと去って行く、赤髪の女性冒険者の姿が見えた。
どうしてそんなに堂々と出来るのだろう。
あの本は私の身分証明書で貸出を受けているのだ。だから返却するまで私に権利があるとの同時に、返却するまでに汚損や紛失があった場合は、私の責任になってしまうのだ。
「──待って、待って下さい!!」
私は慌てて赤髪の冒険者のあとを追った。
「──なにさ?」
赤髪の冒険者は足を止めて振り返ると、あろうことかジロリと私を睨んできた。本当に図々しいわね!
「その本は……、私の身分証明書で貸出を受けているものです。返して下さい。」
「は?なんでよ。
本はみんなのものでしょ?
──つかさ、あんた長すぎ。
さっきからどんだけ時間が経ってると思ってんの?いい加減こっちに寄越せっての。」
赤髪の冒険者は腰に手をあてて、ため息をつきながら、本を振りつつ言った。
この国に赤髪は珍しい。というかここまでの燃えるような赤髪なんて見たことがない。
ということは、外国人でこの国のルールをよく知らないということなのかしら?
「王立図書館の本は、貸出し時間が決まっているものではありません。返却するまでは私に権利があるんです。」
「だーかーらー!
一度かえせばいいでしょ?
あんたみたいに時間かかんないんだから、あたしが先に読んだっていいじゃない!
こっちは時間ないんだっつの!」
知らないわよ、あなたの事情なんて!私だって自由に外出出来る立場じゃないから、時間が有り余っているわけではないのだ。
────────────────────
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いくらレオンハルト様が守って下さるとは言っても、無防備に絵を描いている私を守りながらというのは難しい筈よ。私は私に出来ることを1つでも増やしておきたかった。
身分証明書を提示して、必要な本の場所を司書に尋ねると、持ち出し禁止のものが多かったけれど、王立図書館の敷地内であればどこで読んでも自由だと言われた。やったわ!
王立図書館の敷地内には、併設されたオシャレなカフェと、──広い中庭があるのだ。
周囲を建物に囲まれながらも、日が当たるようになっていて、草木が生い茂る美しい光景。本で目が疲れた人が、緑で目を休める為なのかしら。ベンチがあちこちに置かれていて、そこで本を読む人、休む人。絵を描いている人もいた。私の狙いはそれだった。
それにしても素敵ね。青々と茂った木々も魅力的だけれど、枯れ葉のシーズンに来たらどんなにか美しいだろうか。ベンチの横に立つ背の高い樹木から降り注ぐ、あの葉っぱたちが落ち葉に変わり、黄色、茶色、赤色の枯れ葉に埋め尽くされた絨毯のような足元を、ゆっくりと踏んでベンチに腰掛けて、本を読んだり絵を描いたりするのだ。
受付の窓から見えるベンチの後ろの窓越しの本棚や、本を読み耽る人々の姿も味わい深い。ここはとてもまったりとした時間が流れていて、時間を忘れてゆっくりしたくなる。
今度ゆっくりお茶をしに来ようかしら。
1人になればいくらでも、好きな時に好きなように外出が出来るようになるものね。
今日の目的はここでのんびり過ごすことではないから、それほどゆっくりもしていられないのだけれど。
受付の周辺には、冒険者らしき人の姿もチラホラ見かけた。平民で王立図書館に来るのは、そのほとんどが冒険者だ。
皮の鎧を身につけているから、見た目でそうと、誰でもすぐに分かる。平民には学校がないから、ここで必要なことを学ぼうとする人も多いのだとか。だけど平民の識字率は低いから、お目当てのものはだいたい決まっているんですよ、と司書が教えてくれた。
たぶん私の借りた本がそのお目当てだったのだろう、借りた本を手に中庭に移動して、イーゼルを2つ立てて本を置き、ベンチに腰掛け絵を描いていると、王立図書館の窓ガラス越しに、何やら視線を感じた気がして振り返った瞬間、皮の鎧を身に着けた赤髪の冒険者の女性と、バッチリ目があってしまった。
あっ、それっ!とでも言いたげな表情で口を開けて、じっとこっちを睨んでいる。
ちょっとおっかなそうな女性ね……。
ごめんなさいね、すぐに本棚には戻せそうもないわ。別に1人につき貸し出し時間が決まっているわけではないし、今日は諦めたほうがいいかも知れないわよ?
それに多分あなた、この本を借りられないでしょうし。あきらめて他をあたってちょうだいね。私は彼女に背を向けて、絵を描くことに集中した。それにしてもいい天気。日当たりが優しくてとても気持ちがいいわ。それにまったく風がないわけでもないのね。
ほとんど凹の形に建てられた、王立図書館の凹みの部分にあるカフェの人たちが、中庭を眺めながらお茶を楽しんでいる。
だから中庭で絵を描いている私の姿も観察されているのだけれど、気にしたら負けだ。
別に私は彼らにとって、ただの風景の一部だものね。私も逆の立場ならそうだろうし。
そんな風に思いながら中庭で絵を描いていると、集中していて気が付かなかったのだけれど、いつの間にか後ろに人が近付いて来ていたらしく、──突然パッと、私が借りた本をイーゼルから奪った人物がいた。
あまりに突然のことで、また予想外過ぎて何が起きたのか分からない。
「──え?」
本が、ないわ?
しばらく混乱していたが、すぐに奪われたのだと気が付き、慌てて後ろを振り返ると、まるでそれが当たり前かのように、本を持ってのんびりと去って行く、赤髪の女性冒険者の姿が見えた。
どうしてそんなに堂々と出来るのだろう。
あの本は私の身分証明書で貸出を受けているのだ。だから返却するまで私に権利があるとの同時に、返却するまでに汚損や紛失があった場合は、私の責任になってしまうのだ。
「──待って、待って下さい!!」
私は慌てて赤髪の冒険者のあとを追った。
「──なにさ?」
赤髪の冒険者は足を止めて振り返ると、あろうことかジロリと私を睨んできた。本当に図々しいわね!
「その本は……、私の身分証明書で貸出を受けているものです。返して下さい。」
「は?なんでよ。
本はみんなのものでしょ?
──つかさ、あんた長すぎ。
さっきからどんだけ時間が経ってると思ってんの?いい加減こっちに寄越せっての。」
赤髪の冒険者は腰に手をあてて、ため息をつきながら、本を振りつつ言った。
この国に赤髪は珍しい。というかここまでの燃えるような赤髪なんて見たことがない。
ということは、外国人でこの国のルールをよく知らないということなのかしら?
「王立図書館の本は、貸出し時間が決まっているものではありません。返却するまでは私に権利があるんです。」
「だーかーらー!
一度かえせばいいでしょ?
あんたみたいに時間かかんないんだから、あたしが先に読んだっていいじゃない!
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