養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第19話 魔物の絵を描く為の護衛②
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「冒険者が魔物を討伐したあとで、討伐数が多すぎて討伐証明部位以外を持ち帰らなかったり、魔物が魔物を食べたり、ナワバリ争いなんかで死骸がそこに残るとする。するとそれにつられて別の強い魔物が寄ってきたり、種類によってはそのままその場で湧くこともあるくらいだ。──血が血を呼ぶ。俺たちはそう呼んでいる。」
血が血を呼ぶ。初めて聞く言葉だった。魔物の死骸が別の魔物を呼び寄せる。ならば私がどの程度で絵を描き終えるかによっては、たくさんの魔物の死骸がそこに積み上がることにもなるわけね。だからこその危険手当ということ。本来その場にいる筈の魔物の討伐だけで済むのならば、必要ではないけれど、私次第では危険もありうるということ……。
「まあ、魔物じゃなくても、血の匂いにつられて肉食動物が集まってくることがあるからな、そっからきた言葉なんだろう。
──どうする?やめておくか?」
「いいえ、お願いします。」
その言葉を聞いて、ヨハンがハラハラしながら私には両手をのばすような仕草をしたけれど、私の決意は変わらなかった。
「いい度胸だ。伯爵夫人なんてもんにおさめておくにゃあ、もったいねえくらいだぜ。」
レオンハルト様がニヤリと笑う。
これは褒められているのかしら?
「それじゃあ3日後、俺の家の前に来な。ここから出発する。別に何時に来てくれたっていいぜ?俺はのんびり待つだけだ。」
「わかりました。当日は契約書をお持ち致します。」
「律儀なこった。」
レオンハルト様が快活に笑う。
「あの……。それでなのですが。」
「ん?」
「護衛の代金を、絵が売れてからにしていただけませんでしょうか?」
「ハハッ。契約書だなんだというから、何かと思えば。別に構わねえぜ、契約書も交わして貰えるし、あんたの素性もわれてることだしな。別にそこまで急いじゃいねえよ。」
「……ありがとうございます。
申し訳ありません。お恥ずかしい話なのですが、ロイエンタール伯爵家で、私の自由になるお金が少なくて……。」
イザークから預かったお金は、魔石の粉末入りの絵の具とキャンバスを購入してもまだかなりあるけれど、このお金には手をつけたくはなかった。どうせ使わなかった分は返せと言ってくるでしょうしね。
危険手当が発生しなければ、毎月渡されているお金の範囲でもなんとかなる。魔物を描いた絵を売る為に行くのだもの。絵を描きあげてしまえばどうとでもなるわ。
問題は果たしてどの程度ので売れるかだけれど、小金貨3枚ということはないだろう。
少しでもたくさん絵を描く為に、私も出来る準備はしておかなくちゃね。
私はレオンハルト様に別れを告げて、ヨハンと共に再び工房を訪れると、今度は持ち帰れる大きさの、一番小さなキャンバスを5枚購入した。このくらいなら持ち運べるわ。
そしてヨハンと共にアンの待つ家へと向かった。ずっと心配していたらしく、玄関のドアをノックした途端、家を飛び出してきた。
アンは嬉しそうな私の顔と、申し訳なさそうなヨハンの顔とを見比べて、自分の願った展開にはならなかったことを知った。そしてヨハンを睨んで頬をふくらませる。
こんな状態のアンの前で、ヨハンを2人きりにさせるのは、さすがに申し訳なかったので、再び家に上がらせて貰って、元王国第一騎士団長がついて来てくれること、安全を保証してくれたことを話した。アンは、もうレオンハルトさんには安く野菜を譲ってあげないわ!とプリプリしていた。
けれど、私が無理を言ったのだから、ヨハンを叱らないであげてね?と言うと、お嬢様がそうおっしゃるのなら許しますけど……と若干まだ不服そうにしながらも了承してくれて、ヨハンは胸に手を当ててホッとため息を漏らしたのだった。
私のせいで頼りない旦那様だと思わせてしまったら、申し訳ないものね。
私は、くれぐれも無茶をなさらないで下さいね?少しでも怖いと思ったら、すぐに逃げて下さいね?と何度も念を押すアンとヨハンに見送られながら、ロイエンタール伯爵家へと戻った。馬車が村の中まで入れないので、外で待っていた御者は、近くに美味しい食堂がありましたよ、と教えてくれた。この村で取れた野菜を使っているのだという。
それもヨハンが考えたのかしら?……ひょっとしたらそうかも知れないわね。
アン、あなたの旦那様はとても頼りになる素晴らしい方よ。私のことで仲違いなんてしないでね。きっとあなたのことを、生涯大切にしてくれるに違いないわ。私はアンの尻に敷かれながらも、幸せそうな2人の姿を思い浮かべながら馬車に揺られていた。
次の日、私は朝食の席で、イザークに、今日は図書館に行きたいのだと告げた。
イザークが別に構わないと了承してくれたので、私はロイエンタール伯爵家の馬車で、久しぶりに街へと向かっていた。
向かうは王立図書館だ。ここには様々な本が置かれていて、身分証明書さえあれば、自由に本を借りることが出来るのだ。
────────────────────
少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
さて、ヒーローが全員登場しましたが、
あなたなら誰を選びますか?
選択次第でお話の展開に影響があるかも?
①宮廷に出入りする化粧師。
②新進気鋭の若手魔法絵師。
③王弟の子息の魔塔の賢者。
④工房長の孫の絵の具職人。
⑤引退した元第一騎士団長。
⑥改心し成長した現配偶者。
番号でお選び下さい(*^^*)
血が血を呼ぶ。初めて聞く言葉だった。魔物の死骸が別の魔物を呼び寄せる。ならば私がどの程度で絵を描き終えるかによっては、たくさんの魔物の死骸がそこに積み上がることにもなるわけね。だからこその危険手当ということ。本来その場にいる筈の魔物の討伐だけで済むのならば、必要ではないけれど、私次第では危険もありうるということ……。
「まあ、魔物じゃなくても、血の匂いにつられて肉食動物が集まってくることがあるからな、そっからきた言葉なんだろう。
──どうする?やめておくか?」
「いいえ、お願いします。」
その言葉を聞いて、ヨハンがハラハラしながら私には両手をのばすような仕草をしたけれど、私の決意は変わらなかった。
「いい度胸だ。伯爵夫人なんてもんにおさめておくにゃあ、もったいねえくらいだぜ。」
レオンハルト様がニヤリと笑う。
これは褒められているのかしら?
「それじゃあ3日後、俺の家の前に来な。ここから出発する。別に何時に来てくれたっていいぜ?俺はのんびり待つだけだ。」
「わかりました。当日は契約書をお持ち致します。」
「律儀なこった。」
レオンハルト様が快活に笑う。
「あの……。それでなのですが。」
「ん?」
「護衛の代金を、絵が売れてからにしていただけませんでしょうか?」
「ハハッ。契約書だなんだというから、何かと思えば。別に構わねえぜ、契約書も交わして貰えるし、あんたの素性もわれてることだしな。別にそこまで急いじゃいねえよ。」
「……ありがとうございます。
申し訳ありません。お恥ずかしい話なのですが、ロイエンタール伯爵家で、私の自由になるお金が少なくて……。」
イザークから預かったお金は、魔石の粉末入りの絵の具とキャンバスを購入してもまだかなりあるけれど、このお金には手をつけたくはなかった。どうせ使わなかった分は返せと言ってくるでしょうしね。
危険手当が発生しなければ、毎月渡されているお金の範囲でもなんとかなる。魔物を描いた絵を売る為に行くのだもの。絵を描きあげてしまえばどうとでもなるわ。
問題は果たしてどの程度ので売れるかだけれど、小金貨3枚ということはないだろう。
少しでもたくさん絵を描く為に、私も出来る準備はしておかなくちゃね。
私はレオンハルト様に別れを告げて、ヨハンと共に再び工房を訪れると、今度は持ち帰れる大きさの、一番小さなキャンバスを5枚購入した。このくらいなら持ち運べるわ。
そしてヨハンと共にアンの待つ家へと向かった。ずっと心配していたらしく、玄関のドアをノックした途端、家を飛び出してきた。
アンは嬉しそうな私の顔と、申し訳なさそうなヨハンの顔とを見比べて、自分の願った展開にはならなかったことを知った。そしてヨハンを睨んで頬をふくらませる。
こんな状態のアンの前で、ヨハンを2人きりにさせるのは、さすがに申し訳なかったので、再び家に上がらせて貰って、元王国第一騎士団長がついて来てくれること、安全を保証してくれたことを話した。アンは、もうレオンハルトさんには安く野菜を譲ってあげないわ!とプリプリしていた。
けれど、私が無理を言ったのだから、ヨハンを叱らないであげてね?と言うと、お嬢様がそうおっしゃるのなら許しますけど……と若干まだ不服そうにしながらも了承してくれて、ヨハンは胸に手を当ててホッとため息を漏らしたのだった。
私のせいで頼りない旦那様だと思わせてしまったら、申し訳ないものね。
私は、くれぐれも無茶をなさらないで下さいね?少しでも怖いと思ったら、すぐに逃げて下さいね?と何度も念を押すアンとヨハンに見送られながら、ロイエンタール伯爵家へと戻った。馬車が村の中まで入れないので、外で待っていた御者は、近くに美味しい食堂がありましたよ、と教えてくれた。この村で取れた野菜を使っているのだという。
それもヨハンが考えたのかしら?……ひょっとしたらそうかも知れないわね。
アン、あなたの旦那様はとても頼りになる素晴らしい方よ。私のことで仲違いなんてしないでね。きっとあなたのことを、生涯大切にしてくれるに違いないわ。私はアンの尻に敷かれながらも、幸せそうな2人の姿を思い浮かべながら馬車に揺られていた。
次の日、私は朝食の席で、イザークに、今日は図書館に行きたいのだと告げた。
イザークが別に構わないと了承してくれたので、私はロイエンタール伯爵家の馬車で、久しぶりに街へと向かっていた。
向かうは王立図書館だ。ここには様々な本が置かれていて、身分証明書さえあれば、自由に本を借りることが出来るのだ。
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少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
さて、ヒーローが全員登場しましたが、
あなたなら誰を選びますか?
選択次第でお話の展開に影響があるかも?
①宮廷に出入りする化粧師。
②新進気鋭の若手魔法絵師。
③王弟の子息の魔塔の賢者。
④工房長の孫の絵の具職人。
⑤引退した元第一騎士団長。
⑥改心し成長した現配偶者。
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