養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@4作品商業化(コミカライズ他)
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第11話 イザークとの話し合い②
しおりを挟む「……承知しております。」
確かにそれはイザークの言うとおりだ。売られている魔法絵は、もともと絵として鑑賞に耐えうるものが、魔法絵になることで付加価値がついたもの。絵として価値がないものは、せいぜい銀貨3枚程度で売られているという。魔石の粉末入りの高い絵の具を使用しているから、少しでも回収しようということなのかも知れないけれど。
普通に売ったら私の絵なんて、値段がついてもせいぜいそんなものだと思うし、イザークの言いたいことも分かる。魔法絵が描けるからといって、生計がたてられるほどの稼ぎは得られないだろうと。だけど私の魔法絵は、本来の魔法絵師のスキル持ちと同じ効果が発動する。──付加価値の方が高いのだ。
まだ試してみてはいないけれど、恐らくは魔物を描けば魔物が召喚出来ると思う。
そこにどんな金額が付けられるものであるのかは、魔塔に鑑定して貰って効果の保証を貰い、絵を売ってみるまでは分からない。
それに、時間を戻せる時計の絵。
そんな魔法聞いたこともない。この絵に価値がつくとしたら、一体いくらになるのか?
ひとつでもかなりの金額で売れる可能性はじゅうぶんにあると思うのだ。
私はつつましく暮らしていかれればそれで満足だから、1つでも高く絵が売れるのであれば、あとは毎日好きな絵を描いて暮らしていきたい。早く楽しい暮らしを始めたい。
そんな風に思っていると、イザークが家令を近くに呼び寄せ、大金貨一枚を取り出して家令に手渡し、家令が私にそれを手渡した。
「……そんな高額なものをずっと借りているなど、ロイエンタール伯爵家としては体面が悪い。今借りているものをすべて購入し、それ以上絵の具を買わないようにしなさい。キャンバスや筆は構わないから。」
と言った。
なんですって!?まだ絵の具は7色しかないというのに。絵の具は使う用途によって色を使い分けるものだ。確かに今のままでも混ぜ合わせることで色を作ることは出来る。だけどそのせいで汚くなってしまって、色の輝きが死ぬことだってある。
魔石の粉末入りの絵の具は特にそうだ。魔石独自の発色が、光を打ち消し合ってしまうのか、特にアデリナブルーは扱いが難しい。
空一つ描くのだって、雲があって、影になっているところがあって、単純にアデリナブルー1色を塗ればいいというものではない。
アデリナブルーを基調として、キャンバスの上で別の絵の具を重ねていったほうが、自然な空の青さが出せるのだ。
私は愕然としてしまった。
だけど、それをイザークに説明しようとしたところで、彼は一度決めたことを翻さないし、そもそも私の話には耳を貸さない。
私は釈然としない感情を押し殺して、わかりましたと言うしかないのだった。
絵の具の受け渡しは、今までだってヨハンを通じてコッソリしていたのだもの。
これからだってそうするだけだわ。
それにこれは今だけのこと。魔法絵が売れれば。この家を出てしまえば。イザークがどう思おうと私にはもう関係がないのだもの。
私は内心そう思って、理不尽なイザークに対する憤りを、なんとか心の内におさめた。
話は以上だ、とイザークが言ったので、私は絵の具を貸していただいたお礼を、直接工房長に申し上げたいので、絵の具の代金の支払いは、ヨハンに頼まず直接工房にうかがいたいとイザークに頼んだ。
失礼があってはいけないので、そのほうがいいだろうな、とイザークが了承してくれたので、私は無事に工房に直接行かれることになった。工房長にお会いしたい。目を見てお礼が言いたい。私はあなたのおかげで心が慰められて、幸せにもなれるかも知れません。
イザークの執務室を出てから自室に戻る最中、メイドたちがラリサの噂話をしていた。
私が呆然としていた間に、ラリサはわめきながら役人に引きずられて行ったという。
私に騙されただの、はめられただの、あんな高価なものだなんて知らなかっただの。
そもそも高価なものでなければ、大して咎めない貴族の風習がおかしいのだ。真面目に働く者たちが損をするだけではないか。
イザーク様に言えば、私にこんなことをするなんて許さない筈よ!とも言っていたらしいが、残念ながらイザークはアッサリとあなたを切り捨てたようよ。
もともとイザークの言う通り、あの2人に何かあったというわけではないのだから。
イザークが欲しいのは従者な妻で、ロイエンタール伯爵家の女主人に、嫌がらせ目的で私物を盗むような女ではないもの。
むしろイザークの求める妻像からすると、ラリサは真逆の存在なのだ。
愛人にするというのならともかく、たとえ私がいなくなって、妻の立場があいたとしても、ラリサを妻に選ぶとは思いにくい。
ラリサは夕食の給仕回数が最も多かったから、そこで酒の入ったイザークに気さくに話しかけられたことで、すっかり勘違いをしてしまったのだろう。
どれだけ親しげにしてくれているように見えても、イザークにとっては女性なんてそんなものなのだから。もしもメイドたちの中から新しい妻が選ばれたとしても、義母がよそから連れて来たのだとしても、私と同じ扱いを、今度はその人が受けるというだけだ。
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2022/03/04 改題しました。(旧題:不器用な辺境伯の不器用な愛し方 ~継母の嫌がらせで冷酷無慈悲な辺境伯の元に嫁がされましたが、溺愛されています~)
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