養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第11話 イザークとの話し合い①
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イザークは、日頃言い返すことのない、気の弱い態度の私が、毅然として言い返すのを見て、少し眉をひそめた。ロイエンタール伯爵家に従順な実家と妻を求めたイザークだから、それが面白くないのでしょうね。
ロイエンタール伯爵家の女主人が、従者たちに見下されていたとしても、そこに文句のひとつもつけない妻を望んでいるのだから。
「……魔石の粉末入りの絵の具は高いものだと聞いている。特にアデリナブルーはひとつで中金貨3枚もするのだと。そのようなものを簡単に人に貸すとは思えんな。
正直に言いたまえ。魔法絵流行りで魔石の粉末入りの絵の具で絵を描いてみたがる御婦人方も多い。君もそうだったのだろう?」
イザークは私の言葉をはなから疑ってかかってきた。だけどこれは無理もない。私がイザークの立場だとしても同じことを思うだろう。私自身、なぜ工房長からそのような申し出をされたのかが不思議だったのだから。
「……実は私には魔法絵師としての能力があるようなのです。魔石の粉末入りの絵の具を貸して下さった方が教えて下さいました。」
「──君が?
もう少しマシな言い訳が出来ないのか。
君は王立学園でも普通科の卒業だろう。
……なぜそんな君に魔法絵が描けるというのだ。もしも君に魔法が使えるのなら、入学前の鑑定で分かる筈だろう。」
イザークはあきれたようにそう言った。
「アデリナ・アーベレ嬢も、卒業後に芸術学校に入学しなおす以前は、普通科の卒業生ですわ。入学前の鑑定は攻撃魔法の属性判定をするもので、無属性は魔力もはかりません。
魔法絵は無属性魔法です。入学前の鑑定では判断出来ません。お忘れですか?スキル持ち以外の魔法絵師は、全員無属性魔法使いですわ。契約魔法を使った契約書に使用する、インクに付与される魔法と同じものです。」
私もあきれてキッパリと言った。
「無属性魔法使いにおいては、学園では鑑定の道具がないので、鑑定を希望する場合、自身で教会におもむくようにとの説明を、入学前の属性判定の際に、学園の案内人が説明していたではないですか。」
無属性魔法は学園での授業がないので、そもそも鑑定を行わないのだ。契約書に使用するインクを作る仕事は、魔石に属性や魔法を付与する職業と同じで、安全で安定した稼ぎを得られるので、戦いたくない平民や、跡取りになれない貴族の次男以下に人気である。
だから鑑定で属性がないと言われても、一応は教会で鑑定して貰う人たちが一定数存在する。無属性魔法付与のやり方は、就職後に就職先で教わるのだ。だけどスキル持ちでない魔法絵師が、インクに無属性魔法を付与できるかというと、それはまた別の話だ。
魔法絵はあくまでも、ごく微細とはいえ、魔石の粉末をかいして魔法を発動している。
だけど契約書に使用されるインクには、もともと魔石の粉末が入っていない。
魔石の粉末なしで無属性魔法を発動出来るだけの魔力があるのなら、ちょっと絵から描いたものが飛び出して、動いて見える程度の魔法にはならない筈なのだ。
だから私がインクに無属性魔法を付与できるかどうかは分からない。だけど描いたものを召喚出来るほどの魔力があるのだから、ひょっとしたら教わって試せば、それも出来るのかも知れなかった。
「……私は自宅で鑑定して貰い、鑑定報告書を学園に提出する形で入学したから、その説明は受けていないんだ。」
王族の親戚を含む子息子女をはじめ、上級貴族の子息子女や、お金持ちの商人の子息子女なんかは、自宅に鑑定師を呼び付けて、幼い頃に鑑定を受けることも多いのだという。
イザークもそうだったということか。入学前の説明会に参加していないのであれば、知らなくても不思議ではないわね。
貴族の令嬢は婚約者がいれば、卒業と同時に結婚するものだから、当然働くことはないので、教会で無属性魔法の鑑定を受けるなんてことはしない。私ももちろんそうだったしアデリナ・アーベレだってそうなのだ。だから実は本人が知らないだけで、無属性魔法が使える貴族令嬢は他にもいるかも知れない。
「──私はとある工房で開催されていた、お試し絵画教室で絵を描きました。それを見ていた工房長が、私に絵の具を貸して下さいました。魔力を感じる力がおありのようでしたから、恐らくは魔法絵であると、その時点でおわかりになられたのだと思います。」
魔塔への報告が義務だと言っていたしね。
「私の描いた絵は現在、私に絵の具を貸して下さった工房の手によって、魔塔に送られ魔法絵であるかどうかの鑑定を待っている状態です。結果が出てそうと認められれば、私ははれて魔法絵師と判定されるのです。」
「──魔塔に?」
魔塔という権威のある存在に、イザークがピクリと反応する。
「……魔石の粉末入りの絵の具を貸して貰えた経緯は分かった。だが、ひとくちに魔法絵師とは言っても、本来のスキル持ちである魔法絵師と違い、魔石の粉末入りの絵の具を使用した魔法絵師は、あくまでも絵そのものが素晴らしいから売れているのだ。あまり分不相応な考えは持たないように。」
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ロイエンタール伯爵家の女主人が、従者たちに見下されていたとしても、そこに文句のひとつもつけない妻を望んでいるのだから。
「……魔石の粉末入りの絵の具は高いものだと聞いている。特にアデリナブルーはひとつで中金貨3枚もするのだと。そのようなものを簡単に人に貸すとは思えんな。
正直に言いたまえ。魔法絵流行りで魔石の粉末入りの絵の具で絵を描いてみたがる御婦人方も多い。君もそうだったのだろう?」
イザークは私の言葉をはなから疑ってかかってきた。だけどこれは無理もない。私がイザークの立場だとしても同じことを思うだろう。私自身、なぜ工房長からそのような申し出をされたのかが不思議だったのだから。
「……実は私には魔法絵師としての能力があるようなのです。魔石の粉末入りの絵の具を貸して下さった方が教えて下さいました。」
「──君が?
もう少しマシな言い訳が出来ないのか。
君は王立学園でも普通科の卒業だろう。
……なぜそんな君に魔法絵が描けるというのだ。もしも君に魔法が使えるのなら、入学前の鑑定で分かる筈だろう。」
イザークはあきれたようにそう言った。
「アデリナ・アーベレ嬢も、卒業後に芸術学校に入学しなおす以前は、普通科の卒業生ですわ。入学前の鑑定は攻撃魔法の属性判定をするもので、無属性は魔力もはかりません。
魔法絵は無属性魔法です。入学前の鑑定では判断出来ません。お忘れですか?スキル持ち以外の魔法絵師は、全員無属性魔法使いですわ。契約魔法を使った契約書に使用する、インクに付与される魔法と同じものです。」
私もあきれてキッパリと言った。
「無属性魔法使いにおいては、学園では鑑定の道具がないので、鑑定を希望する場合、自身で教会におもむくようにとの説明を、入学前の属性判定の際に、学園の案内人が説明していたではないですか。」
無属性魔法は学園での授業がないので、そもそも鑑定を行わないのだ。契約書に使用するインクを作る仕事は、魔石に属性や魔法を付与する職業と同じで、安全で安定した稼ぎを得られるので、戦いたくない平民や、跡取りになれない貴族の次男以下に人気である。
だから鑑定で属性がないと言われても、一応は教会で鑑定して貰う人たちが一定数存在する。無属性魔法付与のやり方は、就職後に就職先で教わるのだ。だけどスキル持ちでない魔法絵師が、インクに無属性魔法を付与できるかというと、それはまた別の話だ。
魔法絵はあくまでも、ごく微細とはいえ、魔石の粉末をかいして魔法を発動している。
だけど契約書に使用されるインクには、もともと魔石の粉末が入っていない。
魔石の粉末なしで無属性魔法を発動出来るだけの魔力があるのなら、ちょっと絵から描いたものが飛び出して、動いて見える程度の魔法にはならない筈なのだ。
だから私がインクに無属性魔法を付与できるかどうかは分からない。だけど描いたものを召喚出来るほどの魔力があるのだから、ひょっとしたら教わって試せば、それも出来るのかも知れなかった。
「……私は自宅で鑑定して貰い、鑑定報告書を学園に提出する形で入学したから、その説明は受けていないんだ。」
王族の親戚を含む子息子女をはじめ、上級貴族の子息子女や、お金持ちの商人の子息子女なんかは、自宅に鑑定師を呼び付けて、幼い頃に鑑定を受けることも多いのだという。
イザークもそうだったということか。入学前の説明会に参加していないのであれば、知らなくても不思議ではないわね。
貴族の令嬢は婚約者がいれば、卒業と同時に結婚するものだから、当然働くことはないので、教会で無属性魔法の鑑定を受けるなんてことはしない。私ももちろんそうだったしアデリナ・アーベレだってそうなのだ。だから実は本人が知らないだけで、無属性魔法が使える貴族令嬢は他にもいるかも知れない。
「──私はとある工房で開催されていた、お試し絵画教室で絵を描きました。それを見ていた工房長が、私に絵の具を貸して下さいました。魔力を感じる力がおありのようでしたから、恐らくは魔法絵であると、その時点でおわかりになられたのだと思います。」
魔塔への報告が義務だと言っていたしね。
「私の描いた絵は現在、私に絵の具を貸して下さった工房の手によって、魔塔に送られ魔法絵であるかどうかの鑑定を待っている状態です。結果が出てそうと認められれば、私ははれて魔法絵師と判定されるのです。」
「──魔塔に?」
魔塔という権威のある存在に、イザークがピクリと反応する。
「……魔石の粉末入りの絵の具を貸して貰えた経緯は分かった。だが、ひとくちに魔法絵師とは言っても、本来のスキル持ちである魔法絵師と違い、魔石の粉末入りの絵の具を使用した魔法絵師は、あくまでも絵そのものが素晴らしいから売れているのだ。あまり分不相応な考えは持たないように。」
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