養っていただかなくても結構です!〜政略結婚した夫に放置されているので魔法絵師として自立を目指したら賢者と言われ義母にザマァしました!(続く)
陰陽@3作品コミカライズと書籍化準備中
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第4話 工房長の申し出②
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まだ乾ききっていない絵の具の状態で持ち帰ってしまったから、こうして少しでも早く乾かそうと思ったのだ。
汚れないように木枠のケースに入れてくれたものを、上向きに布袋に入れて持ち帰って来たから、絵はキレイなままだった。
すると窓からヒラヒラと黄色い蝶々が飛び込んで来て、テーブルの上の花瓶にいけられた花のまわりを舞った。
そろそろ日が落ち始める頃だというのに、今夜の寝床をこの花にでも決めたのかしら?私はとても気持ちがなごんだ。
「次はこの子を描きましょう。」
私はパレットに絵の具を取り出して、ああでもないこうでもないと、色を作り始めた。
その時、窓のへりの上に置かれた子猫の絵が、ボウッと薄く光りだしていることに、絵を描くことに夢中になっていた私は、まるで気が付かなかったのだった。
私はあれから夢中で絵を描いた。
「うん、なかなかいい出来ね。」
花瓶にさした美しい花の周囲を黄色い蝶々が舞っている姿を、なんとかキャンバスの上にとどめることに成功したと思う。
もちろんまだまだ拙いけれど、誰が見ても花と黄色い蝶々を描いたことが分かる絵になったと思う。
「これも乾かしておきましょう。」
私は描きあげた絵を、窓のへりの上の子猫の絵の隣に置き、並べて眺めていたく満足した。ふと気が付くと、すっかり日が落ちている。食事の時間はとうに過ぎている筈だったが、呼びに来たが私が気付かなかっただけなのだろうか。そう思うとお腹が空いてくる。
いったんキャンバスと画材と小さなイーゼルをクローゼットの中に隠してから、部屋のベルを鳴らしてメイドを呼ぶと、不機嫌な表情のラリサがやって来た。食事を持ってくるように告げると、舌打ちをしてあからさまに面倒くさそうに部屋を出ていき、台車に乗せられた食事を運んで来た。
料理はすっかり冷めていたが、私の為に料理を温め直すという気持ちがないのは、ロイエンタール伯爵家の料理人も一緒のようだ。
恐らくは蓋も被せずに置いておいたのだろう、少しスープにホコリが浮いていた。
私は何も言わず、ラリサが部屋からいなくなったあとで、ホコリを取り除いて冷めたスープをスプーンですくって飲み込んだ。
食事が終わり、再びベルを鳴らしてラリサを呼んで、食器を下げさせると同時に、今日もベッドメイキングが終わっていないことを告げると、これからやるつもりなのかとたずねた。ラリサは憮然とした表情で、申し訳ありません、とだけ言って部屋を出て行った。
私は夢中で絵を描いていたので、かなり遅くまで待っていたのだが、いつまで経ってもラリサが戻って来ることはなかった。
ラリサに頼むといつもこうだ。なにか1つはやってくれるが、それ以上頼むと無視をする。誰か他のメイドに押し付けてやらせるのであればまだいいほうだ。
「仕方がないわね。もう休みましょう。」
私は小さなイーゼルと画材一式と描いた絵をクローゼットの中にしまうと、ベッドに横たわり、魔道具の明かりを消して休んだ。
──深夜、クローゼットのドアが内側からそっと開かれたが、私は疲れていてまったく気が付かなかったのだった。
「──寝不足なのか?」
「あ、はい、申し訳ありません。」
翌朝の朝食の席で、あくびを噛み殺した私を見てイザークがたずねてくる。
深夜まで夢中になって新しい絵を描いてしまったせいで、私はすっかり寝不足だった。
だが今日は絵を描き始めたことをイザークに報告しなくてはならない。
私は姿勢を正して、イザークをキリッと見つめた。それに気が付いたイザークが、わずらわしそうに視線を上げる。
「……実は絵を描き始めたのです。」
「絵を?」
「はい。
最近は絵を趣味になさる御婦人方も多いのだとか。私も始めてみることにしました。」
「──確かにそう聞いている。魔石の粉末入りの絵の具を使った魔法絵師が増えたことによる影響だろうな。自分でも描いてみたくなったと言って、絵を始められる方が増えているようだ。それはとてもよい趣味だと思う。御婦人方との話も弾むことだろう。」
案の定、イザークは社交に影響があるかどうかを気にして、私が絵を始めたことを喜んでいるようだった。
「確かに貴族の御婦人方の中には、習ってまで始められる方もいるとお聞きしました。」
「……習いたい、ということか?」
金を出せということか、と言いたげなのが見て取れる。イザークは眉根をひそめたけれど、本当に社交の場で貴族婦人たちと話を合わせるつもりで絵を始めるのであれば、習った方が当然よいと思うのだけれど。
「いいえ。とうぶんは自由に描いてみたいと思っております。もちろん、いずれかの御婦人から教室なり家庭教師をすすめられるようであれば、その限りではありませんが。」
「そうだな、そのほうがよいだろう。」
イザークがうなずく。これで家で絵を描いてもよいという言質は取った。私は思わずホッとして胸をなでおろした。
あとは魔石の粉末入りの高級な絵の具を使って描いていることを、知られなければいいだけなのだけれど、イザークは夜の営みの義務の時にも、自分の部屋に私を呼びつけるので、私の部屋に近付くことはない。メイドの出入りにだけ気を付けれは済む話だ。
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少しでも面白いと思ったら、エピソードごとのイイネ、または応援するを押していただけたら幸いです。
汚れないように木枠のケースに入れてくれたものを、上向きに布袋に入れて持ち帰って来たから、絵はキレイなままだった。
すると窓からヒラヒラと黄色い蝶々が飛び込んで来て、テーブルの上の花瓶にいけられた花のまわりを舞った。
そろそろ日が落ち始める頃だというのに、今夜の寝床をこの花にでも決めたのかしら?私はとても気持ちがなごんだ。
「次はこの子を描きましょう。」
私はパレットに絵の具を取り出して、ああでもないこうでもないと、色を作り始めた。
その時、窓のへりの上に置かれた子猫の絵が、ボウッと薄く光りだしていることに、絵を描くことに夢中になっていた私は、まるで気が付かなかったのだった。
私はあれから夢中で絵を描いた。
「うん、なかなかいい出来ね。」
花瓶にさした美しい花の周囲を黄色い蝶々が舞っている姿を、なんとかキャンバスの上にとどめることに成功したと思う。
もちろんまだまだ拙いけれど、誰が見ても花と黄色い蝶々を描いたことが分かる絵になったと思う。
「これも乾かしておきましょう。」
私は描きあげた絵を、窓のへりの上の子猫の絵の隣に置き、並べて眺めていたく満足した。ふと気が付くと、すっかり日が落ちている。食事の時間はとうに過ぎている筈だったが、呼びに来たが私が気付かなかっただけなのだろうか。そう思うとお腹が空いてくる。
いったんキャンバスと画材と小さなイーゼルをクローゼットの中に隠してから、部屋のベルを鳴らしてメイドを呼ぶと、不機嫌な表情のラリサがやって来た。食事を持ってくるように告げると、舌打ちをしてあからさまに面倒くさそうに部屋を出ていき、台車に乗せられた食事を運んで来た。
料理はすっかり冷めていたが、私の為に料理を温め直すという気持ちがないのは、ロイエンタール伯爵家の料理人も一緒のようだ。
恐らくは蓋も被せずに置いておいたのだろう、少しスープにホコリが浮いていた。
私は何も言わず、ラリサが部屋からいなくなったあとで、ホコリを取り除いて冷めたスープをスプーンですくって飲み込んだ。
食事が終わり、再びベルを鳴らしてラリサを呼んで、食器を下げさせると同時に、今日もベッドメイキングが終わっていないことを告げると、これからやるつもりなのかとたずねた。ラリサは憮然とした表情で、申し訳ありません、とだけ言って部屋を出て行った。
私は夢中で絵を描いていたので、かなり遅くまで待っていたのだが、いつまで経ってもラリサが戻って来ることはなかった。
ラリサに頼むといつもこうだ。なにか1つはやってくれるが、それ以上頼むと無視をする。誰か他のメイドに押し付けてやらせるのであればまだいいほうだ。
「仕方がないわね。もう休みましょう。」
私は小さなイーゼルと画材一式と描いた絵をクローゼットの中にしまうと、ベッドに横たわり、魔道具の明かりを消して休んだ。
──深夜、クローゼットのドアが内側からそっと開かれたが、私は疲れていてまったく気が付かなかったのだった。
「──寝不足なのか?」
「あ、はい、申し訳ありません。」
翌朝の朝食の席で、あくびを噛み殺した私を見てイザークがたずねてくる。
深夜まで夢中になって新しい絵を描いてしまったせいで、私はすっかり寝不足だった。
だが今日は絵を描き始めたことをイザークに報告しなくてはならない。
私は姿勢を正して、イザークをキリッと見つめた。それに気が付いたイザークが、わずらわしそうに視線を上げる。
「……実は絵を描き始めたのです。」
「絵を?」
「はい。
最近は絵を趣味になさる御婦人方も多いのだとか。私も始めてみることにしました。」
「──確かにそう聞いている。魔石の粉末入りの絵の具を使った魔法絵師が増えたことによる影響だろうな。自分でも描いてみたくなったと言って、絵を始められる方が増えているようだ。それはとてもよい趣味だと思う。御婦人方との話も弾むことだろう。」
案の定、イザークは社交に影響があるかどうかを気にして、私が絵を始めたことを喜んでいるようだった。
「確かに貴族の御婦人方の中には、習ってまで始められる方もいるとお聞きしました。」
「……習いたい、ということか?」
金を出せということか、と言いたげなのが見て取れる。イザークは眉根をひそめたけれど、本当に社交の場で貴族婦人たちと話を合わせるつもりで絵を始めるのであれば、習った方が当然よいと思うのだけれど。
「いいえ。とうぶんは自由に描いてみたいと思っております。もちろん、いずれかの御婦人から教室なり家庭教師をすすめられるようであれば、その限りではありませんが。」
「そうだな、そのほうがよいだろう。」
イザークがうなずく。これで家で絵を描いてもよいという言質は取った。私は思わずホッとして胸をなでおろした。
あとは魔石の粉末入りの高級な絵の具を使って描いていることを、知られなければいいだけなのだけれど、イザークは夜の営みの義務の時にも、自分の部屋に私を呼びつけるので、私の部屋に近付くことはない。メイドの出入りにだけ気を付けれは済む話だ。
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