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090 : 昔日の涙
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そんなある日、クロワが一冊の日記帳を手に、私の所へやってきた。
「マルタンさん、こんなものが…」
クロワは日記帳を差し出した。
「…多分、ジャクリーヌの日記帳なんじゃないかと…」
日記帳を受け取った手から一瞬、力が抜けそうになった。
「ジャクリーヌの…」
「……私が先に見てみましょうか?」
私はその言葉と同時にクロワの前に日記帳を差し出し、彼女が再びそれを受け取ろうとした時…
また、それを自分の方にひっこめた。
「いえ…やっぱり、私が読みます。」
きっとそうすべきなのだと思った。
私は、それを持って彼らの墓に行き、ジャクリーヌに日記を読ませてもらうことを報告してから木陰に座りページを開いた。
彼女の女性らしい美しい文字はそれを見る限りでもはつらつとした物だった。
この町に引っ越してきてからのことや、故郷のこと、そして私達のこともよく書いてあった。
特に、私のことについてはほのぼのとした恋心が綴られていた。
私は、なぜ、彼女に手紙の一枚も送らなかったのかと、今更にして後悔の涙がこぼれた。
そんな内容は後半になるに連れて、身体のことに変わっていく。
それと同時に、文字にも力がなくなっていった。
日を追うごとに「苦しい」「痛い」「怖い」…そんな胸をえぐられるような文字が頻繁に出て来るようになり、「死んでしまいたい」という文字を見た瞬時、私は無意識に日記帳を閉じてしまった。
「マルタン…俺にも見せてくれよ。」
いつの間にか来たのか、リュックがそう言って日記帳を取り私の隣に腰を降ろした。
リュックは黙ってその日記帳のページをめくり、そして、呟いた。
「ジャクリーヌは本当に立派だな。」
「…………」
「最後の最後まで、頑張ったんだな。」
「…………」
私は胸がいっぱいで何も答えられなかった。
「あんたのおかげだな。」
その言葉に、私は思わずリュックの顔をのぞきこんだ。
「マルタンさん、こんなものが…」
クロワは日記帳を差し出した。
「…多分、ジャクリーヌの日記帳なんじゃないかと…」
日記帳を受け取った手から一瞬、力が抜けそうになった。
「ジャクリーヌの…」
「……私が先に見てみましょうか?」
私はその言葉と同時にクロワの前に日記帳を差し出し、彼女が再びそれを受け取ろうとした時…
また、それを自分の方にひっこめた。
「いえ…やっぱり、私が読みます。」
きっとそうすべきなのだと思った。
私は、それを持って彼らの墓に行き、ジャクリーヌに日記を読ませてもらうことを報告してから木陰に座りページを開いた。
彼女の女性らしい美しい文字はそれを見る限りでもはつらつとした物だった。
この町に引っ越してきてからのことや、故郷のこと、そして私達のこともよく書いてあった。
特に、私のことについてはほのぼのとした恋心が綴られていた。
私は、なぜ、彼女に手紙の一枚も送らなかったのかと、今更にして後悔の涙がこぼれた。
そんな内容は後半になるに連れて、身体のことに変わっていく。
それと同時に、文字にも力がなくなっていった。
日を追うごとに「苦しい」「痛い」「怖い」…そんな胸をえぐられるような文字が頻繁に出て来るようになり、「死んでしまいたい」という文字を見た瞬時、私は無意識に日記帳を閉じてしまった。
「マルタン…俺にも見せてくれよ。」
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リュックは黙ってその日記帳のページをめくり、そして、呟いた。
「ジャクリーヌは本当に立派だな。」
「…………」
「最後の最後まで、頑張ったんだな。」
「…………」
私は胸がいっぱいで何も答えられなかった。
「あんたのおかげだな。」
その言葉に、私は思わずリュックの顔をのぞきこんだ。
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