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090 : 昔日の涙
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「さぁさぁ、行くよ。
泣くとおなかがすくもんだ。
今夜はたくさん食べなきゃだめだよ。
心の中が空っぽになってる時は、なんでも良いから詰めこむのが早く元気になる秘訣さ!」
そう言って、マギーは私の背中を押し出すように叩いた。
何を食べたのか、どんな味だったのか…その晩の食事のことは何も覚えてはいない。
だが、私は、マギーの忠告通り、出来るだけたくさん食べようと考えていたことは事実だ。
彼らに償いをしなければ…という気持ちと、すべてを投げ出したい気持ち…様々な気持ちが複雑にからみあい、自分自身の中で消化しきれないでいた。
そんな中、なぜだか不思議と彼女の言った「心の中がからっぽの時は、なんでも良いから詰めこめ」という言葉が耳に残り、私はその日から貪るように食べ物を口に運んだ。
心の中には感情がいっぱいなのに、それでいて恐ろしい程に空虚だったから。
整理しきれないのに、底無しの穴が開いたような感覚があった。
それを補うために、ひたすら食べ物を口に運んだ。
昼過ぎに目を覚まし、彼らの墓に花を手向け、ひたすら食べ、酒を流し込み無理に眠る。
そんな生活を続けているうちに、身体の傷はいつの間にか癒えていた。
「そろそろ、隣の家の修理でも始めようか。」
「そうだな…」
リュックはもう二~三日前からそんなことを言っていた。
私もそうしよう…と思うのだが、次の日になると身体が動かない。
クロワはもう何日も前から、買い物に行ったり庭の手入れをしたりと着々と家事をこなしていた。
リュックもそんな彼女をよく手伝っていた。
私だけが、立ち直れないでいる。
それを考えると気持ちは焦る。
なのに、気が焦るばかりで何かをする気になれない…そして、その事実がまた自分自身を焦らせてしまう。
原因がわかっていれば解決策はみつかりそうなものなのに、出口が見えない。
手探りで真っ暗な道を歩き続け、やっと光が見えたと思ったらそれは元いた場所だった…まるでそんな気分だった。
泣くとおなかがすくもんだ。
今夜はたくさん食べなきゃだめだよ。
心の中が空っぽになってる時は、なんでも良いから詰めこむのが早く元気になる秘訣さ!」
そう言って、マギーは私の背中を押し出すように叩いた。
何を食べたのか、どんな味だったのか…その晩の食事のことは何も覚えてはいない。
だが、私は、マギーの忠告通り、出来るだけたくさん食べようと考えていたことは事実だ。
彼らに償いをしなければ…という気持ちと、すべてを投げ出したい気持ち…様々な気持ちが複雑にからみあい、自分自身の中で消化しきれないでいた。
そんな中、なぜだか不思議と彼女の言った「心の中がからっぽの時は、なんでも良いから詰めこめ」という言葉が耳に残り、私はその日から貪るように食べ物を口に運んだ。
心の中には感情がいっぱいなのに、それでいて恐ろしい程に空虚だったから。
整理しきれないのに、底無しの穴が開いたような感覚があった。
それを補うために、ひたすら食べ物を口に運んだ。
昼過ぎに目を覚まし、彼らの墓に花を手向け、ひたすら食べ、酒を流し込み無理に眠る。
そんな生活を続けているうちに、身体の傷はいつの間にか癒えていた。
「そろそろ、隣の家の修理でも始めようか。」
「そうだな…」
リュックはもう二~三日前からそんなことを言っていた。
私もそうしよう…と思うのだが、次の日になると身体が動かない。
クロワはもう何日も前から、買い物に行ったり庭の手入れをしたりと着々と家事をこなしていた。
リュックもそんな彼女をよく手伝っていた。
私だけが、立ち直れないでいる。
それを考えると気持ちは焦る。
なのに、気が焦るばかりで何かをする気になれない…そして、その事実がまた自分自身を焦らせてしまう。
原因がわかっていれば解決策はみつかりそうなものなのに、出口が見えない。
手探りで真っ暗な道を歩き続け、やっと光が見えたと思ったらそれは元いた場所だった…まるでそんな気分だった。
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