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090 : 昔日の涙
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私達は部屋を出た。
他の部屋を見る気力は、誰にもなかった。
居間で、長椅子にぐったりと腰掛け、誰も口を開かなかった。
「そろそろ、晩御飯だよ。」
マギーが、明るい声で私達を呼びに来た。
「どうしたんだい!?
なにか、あったのかい?」
私達の様子に驚くマギーに、クロワがあの紙切れを手渡した。
「まぁ……」
マギーも言葉が続かない様子だった。
「そうだったんだね…
パスカルさん…私はあんた達の気持ちはわかるよ。
本当に仲の良い家族だったものね…
神様だってきっと許して下さるさ。
どうか、天国で幸せに暮らしておくれ。」
マギーは、パスカル達に語りかけるようにそんな言葉を呟いた。
彼女は、彼らの深い事情を知らないはずだ。
パスカルが無実の罪で投獄され、ずっと離れ離れになっていたことも、パスカルはもう家族と会う事は一生出来ないと諦めていたことも。
その事実を知っていれば彼女がそう思うのも無理はないが、知らなかったのに彼らの行為を否定しなかったマギーに、私は胸が熱くなった。
「あ、ありがとう…マギーさん。」
「おや、なんだい。
私はありがとうなんて言われることは言っちゃいないよ。」
「良いんです。
ありがとう、マギーさん!」
私は小柄なマギーの身体を抱き締めていた。
自ら命を断つことが良くないことだなんて、子供だって知っている。
しかし、そうしてしまった背景にはその人なりの事情というものがあるものだ。
悪い事だとわかっていても、そうしてしまうだけのそれなりの深い理由が。
それをわかってほしい等と言えば、甘えだといわれるかもしれない。
身勝手な奴だと思われるかもしれない。
なのに、彼女は理解してくれた。
パスカル夫妻は間違ってはいたが、彼らの深い娘への想いを彼女は理解してくれたのだ。
私は、そのことが嬉しくてたまらなかった。
そのことで私の罪が軽くなる等とは考えてはいなかったが、最後の最後まで生き抜いた彼女と共に、その両親のことも誰かに認めてほしかったのだ。
間違ってはいたが、娘への愛は本物だった…と。
他の部屋を見る気力は、誰にもなかった。
居間で、長椅子にぐったりと腰掛け、誰も口を開かなかった。
「そろそろ、晩御飯だよ。」
マギーが、明るい声で私達を呼びに来た。
「どうしたんだい!?
なにか、あったのかい?」
私達の様子に驚くマギーに、クロワがあの紙切れを手渡した。
「まぁ……」
マギーも言葉が続かない様子だった。
「そうだったんだね…
パスカルさん…私はあんた達の気持ちはわかるよ。
本当に仲の良い家族だったものね…
神様だってきっと許して下さるさ。
どうか、天国で幸せに暮らしておくれ。」
マギーは、パスカル達に語りかけるようにそんな言葉を呟いた。
彼女は、彼らの深い事情を知らないはずだ。
パスカルが無実の罪で投獄され、ずっと離れ離れになっていたことも、パスカルはもう家族と会う事は一生出来ないと諦めていたことも。
その事実を知っていれば彼女がそう思うのも無理はないが、知らなかったのに彼らの行為を否定しなかったマギーに、私は胸が熱くなった。
「あ、ありがとう…マギーさん。」
「おや、なんだい。
私はありがとうなんて言われることは言っちゃいないよ。」
「良いんです。
ありがとう、マギーさん!」
私は小柄なマギーの身体を抱き締めていた。
自ら命を断つことが良くないことだなんて、子供だって知っている。
しかし、そうしてしまった背景にはその人なりの事情というものがあるものだ。
悪い事だとわかっていても、そうしてしまうだけのそれなりの深い理由が。
それをわかってほしい等と言えば、甘えだといわれるかもしれない。
身勝手な奴だと思われるかもしれない。
なのに、彼女は理解してくれた。
パスカル夫妻は間違ってはいたが、彼らの深い娘への想いを彼女は理解してくれたのだ。
私は、そのことが嬉しくてたまらなかった。
そのことで私の罪が軽くなる等とは考えてはいなかったが、最後の最後まで生き抜いた彼女と共に、その両親のことも誰かに認めてほしかったのだ。
間違ってはいたが、娘への愛は本物だった…と。
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