お題小説

ルカ(聖夜月ルカ)

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025 : 牢獄の賢者

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数日が経ち、ケヴィンの体調が少し落ち着いてから、私達は彼の故郷の村を目指し旅立った。

「大丈夫ですか、ケヴィンさん?
具合が悪くなったらすぐに仰って下さいね。」

「ありがとうございます。
お陰さまで私はこの通り元気ですよ。」

彼はそう言って微笑んだ。



彼にとって故郷は懐かしいだけの場所ではなく、辛い記憶の場所でもある。
ましてこれから彼は、自分の犯した罪と向き合おうとしているのだ。
長い間、心の奥底に封じこめていた罪に…

それを考えると、故郷に近付く毎に彼の足が重くなるのではないかと思ったのだが、意外な程、彼は冷静に見えた。

やがて、五日目の昼近くさしかかった頃、やっと彼の故郷に着いた。
彼の話した鉄砲水の時の被害の跡は、微塵も感じられないのどかな村だ。

それも当然のことだ…
それはもう三十年も昔の出来事なのだから…

ケヴィンは、村の入口に立ち止まり、遠い目をして村の風景をみつめていた。
彼がどんなことを考えているのか…その表情からは読み取ることは出来なかった。
ただ、彼の気持ちがとても落ち着いており、揺るぎがないことだけはなんとなく感じられた。



「……行きましょうか…」

人影もまばらな村の広い道を並んで歩いていく。

ケヴィンは何も話さなかった。
クロワも、あの日以来めっきりと口数が減っている。

時折、頭上を通りすぎる鳥の羽音がやけに大きく感じられた。



「……懐かしいです。
あれからもう三十年経っているのが信じられない思いです。
先程、うちの畑があった場所を通ったのですが…
今でもまるで昨日の事のように両親の働く姿が目に浮かびました…」

不意にそう言って微笑むケヴィンの顔は寂しそうにも嬉しそうにも見えた。



「ケヴィンさん、今、どこに向かっているのですか?」

私は、ケヴィンの言葉に返す言葉が思いつかず、つい、そんなことを聞いてみた。



「あぁ…何も言わずに申し訳ありませんでした。
山の牢獄に向かっているのです。
お疲れかもしれませんが、この村には宿屋なんて気の利いたものはありません。
それなら、ここで早めに話を聞いてから隣町に移った方が良いと思ったのです。
隣町はここよりは賑やかな町で宿屋もありますから、ゆっくりと休めますよ。」

「私達なら大丈夫ですよ。
ケヴィンさんさえお疲れでなければ、そうしましょう。」 
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